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溶接継手部の疲労強度に対する主応力方向の変動の影響

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Academic year: 2022

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(1)

1.はじめに

橋梁中の溶接継手部の主応力は,荷重の移動により その方向と大きさが変化する.本研究では溶接継手部 の疲労き裂の発生および発展などの疲労特性に対し て,主応力の方向および大きさの変動が及ぼす影響を 明らかにすることを目的とし,移動荷重をシミュレー トした大型試験体に対する疲労試験と,詳細なFEMに よる主応力解析を行った.

2.実験方法および試験体

本研究では図 1 に示すような形状および寸法を有す る桁試験体を用いた.桁試験体には,板厚12mm長さ

200mmの面外ガセットを,水平,垂直,45°の角度で

傾けて,非仕上げのすみ肉溶接により配置している.

疲労試験における移動荷重は,図 2 に示すように,三 連アクチュエータの載荷波形をサイン波とし,位相を ずらして載荷することで再現した.個々の荷重範囲は 北・南アクチュエータで200kN,中アクチュエータで 250kNとした.

3.移動荷重による主応力の方向および大きさの変動 溶接止端部の名称および,静的載荷試験において各 アクチュエータでの載荷時に生じた最大主応力のベク トル表示を図 3 に示す.載荷点の内側にあるガセット

(図 3-(d)~(f))では主応力の方向が水平軸に対して 上下に変化することが分かった.また,その振れ幅は 15度~20度程度となった.載荷点より外側にある水平 ガセット(図 3-(g))では主応力方向の変動は 1 度以 下であり,単一方向載荷の疲労試験における応力挙動 と同様となった.

4.疲労試験結果

き裂は,引張側の水平・斜めガセット溶接止端部か ら発生した.478,000 回および 600,000 回で斜めガセ ットの止端(b),(f)からき裂が発生,650,000 回,

800,000回,828,000回で水平ガセットの止端(a),(g),

(e)からき裂が発生し,1,028,000 回で試験体下フラン ジが破断して実験を終了した(表 1).公称応力範囲で 整理したS-N線図を図 4に示す.図 4には小型試験体 による疲労試験1)の結果を併せて示す.主応力が変動し ない水平ガセットおよび主応力が変動する斜めガセッ

図 1:試験体設置図

図 5:FEM解析モデル キーワード:溶接継手,疲労き裂,主応力,移動荷重

連 絡 先 :東京工業大学 東京都目黒区大岡山 2-12-1 TEL:03-5734-2596

図 4:公称応力範囲

溶接継手部の疲労強度に対する主応力方向の変動の影響

○東京工業大学 学生会員 朴 宇龍 東京工業大学 学生会員 平林 雅也 東京工業大学 フェロー 三木 千壽

■:南アクチュエータ CL

■:中アクチュエータ

■:北アクチュエータ

2000 1000 1000 2000

500

□:水平ガセット

□:45°傾けたガセット

□:垂直ガセット

(a) (b)(c)(d) (e) (f) (g)

■:南アクチュエータ CL

■:中アクチュエータ

■:北アクチュエータ

2000 1000 1000 2000

500

□:水平ガセット

□:45°傾けたガセット

□:垂直ガセット

(a) (b)(c)(d) (e) (f) (g)

5

6

5

6

■南: 133.0MPa,-10.5°

■中: 110.4MPa, 9.2°

■北: 70.8MPa, 8.9°

■南: 100.2MPa, -9.7°

■中: 102.7MPa, 10.4°

■北: 59.5MPa, 10.0°

主応力 , 角度

1 2

1

2

■南: 63.1MPa,-11.6°

■中: 108.2MPa,-11.0°

■北: 78.7MPa, 12.2°

■南: 67.3MPa, -8.4°

■中: 113.7MPa, -6.7°

■北: 75.1MPa, 15.0°

主応力 , 角度

3

4

■南: 98.1MPa,-12.0°

■中: 130.4MPa, 2.9°

■北: 77.3MPa, 3.8°

■南: 97.5MPa, -4.7°

■中: 156.0MPa, 9.2°

■北: 92.4MPa, 10.0°

主応力 , 角度

3

4

(d) (e)

(g) (f)

7 8

■南: 130.7MPa, 6.5°

■中: 110.4MPa, 7.0°

■北: 64.3MPa, 7.1°

■南: 139.7MPa, 10.9°

■中: 117.7MPa, 11.3°

■北: 68.6MPa, 11.1°

主応力 , 角度

7

8

図 3:止端に生じる主応力

公称応力MPa

繰り返し回数(回)

105 106 107

100 E

G F 200

300 C

D

H

:水平ガセット(e)

:水平ガセット(a), (g)

(主応力変動なし)

:水平ガセット

(小型試験体)

:斜めガセット(b), (f)

:垂直ガセット(d)

:水平ガセット(e)

:水平ガセット(a), (g)

(主応力変動なし)

:水平ガセット

(小型試験体)

:斜めガセット(b), (f)

:垂直ガセット(d)

表 1:疲労試験の結果

図 2:載荷パターン

サイクル数 場所

478,000 (b) 600,000 (f) 650,000 (a) 800,000 (g) 828,000 (e)

-30 -25 -20 -15 -10 -5 0 5

0 720

時間

荷重(tonf

南アクチュエーター 中アクチュエーター 北アクチュエーター

1cycle 土木学会第59回年次学術講演会(平成16年9月)

‑1125‑

1‑564

(2)

トはG等級以上,主応力が変動する水平ガセットはF 等級以上となり,主応力の変動するガセットの方が長 寿命となった.これは,き裂進展において支配的と考 えられるモードⅠの方向が,主応力方向の変動のため にねじれ,一定とならないため,き裂の進展が遅くな るためであると考えられる.

水平ガセットで,桁試験体と小型試験体の結果を比 較すると,桁試験体の方が明らかに疲労強度が低くな った.これは,構造物に近い桁試験体の主応力の多軸 性や拘束度が,小型試験体と異なるためであると考え られる.

5.FEMを用いた主応力解析

試験体を対象構造物として,汎用有限要素解析プロ

グラムABAQUSを用い,FEM解析を行った.図 5に

示すように,シェル要素で全体モデルを作成し,ソリ ッド要素で継手止端部の詳細モデルを作成し,全体モ デルの解析結果を用いたズーミング解析により,詳細 モデルの解析を行った.総要素数・節点数は全体モデ ル,詳細モデル共に 6 万程度である.想定した載荷荷 重は,静的載荷試験と同様に北・南アクチュエータで

200kN,中アクチュエータで250kNとした.

図 6 に止端部近傍での応力分布を示す.これより,

載荷するアクチュエータによって,応力集中の大きさ と位置は変化することがわかる.図 7 に回し溶接コー ナー部に生じる主応力の変化を示す.ある角度の止端 で応力集中が最大となり,その止端において大きさの 最高となる主応力が生じることがわかった.

6.主応力ベースの疲労試験結果の考察

応力集中が生じる範囲はガセットの中心線からずれ ているので,最大主応力ベースのホットスポット応力

2)(図 8)を用いる.G法を用いた主応力ベースのホッ トスポット応力による疲労寿命をS-N線にプロットし たものを図 9 に示す.この場合のホットスポット応力 範囲は,移動荷重時での,最も高い値を用いる.すべ てのガセットがD等級以上となり,ガセットの種類に おける,顕著な差は見られなかった. なお,疲労設計 において非仕上げの止端部のホットスポット応力に対 する疲労等級はE等級である.

7.結論

・ 最 大 主 応 力 の 大 き さ と 方 向 が 変 化 す る よ う な 溶接継手の疲労強度は,変化しない継手に比べ安全 側となる.

・ 最 大 主 応 力 の 大 き さ と 方 向 が 変 化 す る よ う な 溶接継手の疲労強度は,小型試験体に比べ非安全側 となる.

・ 移動荷重下において,値が最高となる最大主応力ベ ースのホットスポット応力を用いることで疲労照 査が行える.

参考文献

1) Kengo Anami : FATIGUE STRENGTH IM- PROVEMENT OF WELDED JOINTS MADE OF HIGH STRENGTH STEEL, Dissertation of Tokyo Institute of Technology, pp.25-69, 2000 2) E. Niemi:Structural HOT-SPOT Stress Ap-

proach to Fatigue Analysis of Welded Compo- nents,IIW XIII-1819-00

図 7:値が最高となる最大主応力が発生する点

図 9:主応力ベースホットスポット応力範囲 図 8:主応力ベースホットスポット応力の考え方

4mm 6mm

主応力ベースのホットスポット応力

(回し溶接コーナー部に発生)

ホットスポット応力

ホットスポット応力算出法 G法:4と6mmで外挿 4mm

6mm

主応力ベースのホットスポット応力

(回し溶接コーナー部に発生)

ホットスポット応力

ホットスポット応力算出法 G法:4と6mmで外挿

図 5:FEM解析モデル

-θ-30度

+30度

0度 +20度 +10度

-20度

-10度 +0度

-0度

0 50 100 150 200

1

+30度 +20度 +10度 +0度 0度 -0度 -10度 -20度 -30度

時間

大主応力(MPa

:南max :中max :北max Max

Max

1cycle中に最大主応力の 値が最高となる点

1cycle

主応力ベースホットスポット応力(MPa)

繰り返し回数(回)

105 106 107

100 E

G F 200 300 C

D

H

:水平ガセット(e)

:水平ガセット(a), (g)

(主応力変動なし)

:斜めガセット(b), (f)

:垂直ガセット(d)

:水平ガセット(e)

:水平ガセット(a), (g)

(主応力変動なし)

:斜めガセット(b), (f)

:垂直ガセット(d)

■:北アクチュエータでの載荷

■:中アクチュエータでの載荷

■:南アクチュエータでの載荷

応力集中

■:中 ■:南

■:北

0MPa 300MPa

止端(e)

■:北アクチュエータでの載荷

■:中アクチュエータでの載荷

■:南アクチュエータでの載荷

応力集中

■:中 ■:南

■:北

0MPa 300MPa

止端(e)

図 6:移動荷重により生じる応力集中点の変化

Number of Node : 68753 Element : Shell Element 最小要素サイズ: 5mm

Number of Node : 60221 Element : Solid Element 最小要素サイズ:0.5mm

全体モデル 詳細モデル

ウェブ

ガセット

土木学会第59回年次学術講演会(平成16年9月)

‑1126‑

1‑564

参照

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