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角鋼を用いた鋼橋脚隅角部の疲労損傷事例

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Academic year: 2022

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(1)I‑162. 土木学会第57回年次学術講演会(平成14年9月). 角鋼を用いた鋼橋脚隅角部の疲労損傷事例 首都高速道路公団. 正会員. ○木ノ本. 日本鋼管(株). 正会員. 津村. 剛 直宜. 首都高速道路公団 東京工業大学. 正会員. 下里. 哲弘. フェロー. 三木. 千壽. 1.はじめに 近年,高度経済成長期以降に急速に増加した社会資本の維持 管理が重要な課題となっている.首都圏の大動脈を担う首都高 速道路においては,日交通量約 115 万台,最大年間平均大型車 混入率約 18%という過酷な交通荷重作用下にあり,特に建設から 約 40 年を経過した鋼構造物に疲労損傷が多数発生している.現 在,これらの疲労損傷に対し各種疲労基準. 1)2). に基づき原因の. 究明及び補修・補強対策を鋭意実施中である.本文では,鋼橋 脚隅角部で発見された損傷のうち,角鋼(スクエアバー)を用い た隅角部における事例とその特徴について報告する.. 2.角鋼を用いた鋼橋脚 今回対象とする構造は,図-1 に示すような鋼橋脚の隅角部に 一辺 80~100mm の角鋼を配置し,その四つの頂点に梁,柱フラ ンジおよびダイヤフラムを溶接することにより直線型隅角部を. 図-1. 角鋼を用いた鋼橋脚の例. 構成したものである.この構造は一般の隅角部(十字溶接継手, 図-2 参照)で懸念されるラメラティアに関する問題に対処する とともに,フランジの応力をウエブに伝達する際に生じるせん 断遅れ,応力の攪乱の緩和を目的に採用されたと考えられる 3). 首都高速道路においては昭和 30 年代後半から昭和 40 年代前半 にかけて,約 80 基の橋脚に 400 本以上の角鋼の使用が確認され ている.. (a) 一般. (b) 角鋼. 角鋼の製法は一部を除いて明らかでないが,資料調査や材料 図-2. 分析の結果を総合すると,ほとんどは圧延鋼材(鋼板を切断し たものまたは棒鋼)であり,一部に鋳鋼品が使用されたものと. 隅角部の溶接構造. 梁フランジ. 考えられる.強度区分はビッカース硬さ試験の結果フランジ材 ウエブ. ウエブ. と同程度の材質が使用されている.. 3.板組とき裂の関係 角鋼を用いた隅角部の板組としては図-3 に示す二種類があ る.タイプ1の板組みでは角鋼端部をウエブが覆う形式であり,. き裂 B. 全体としてはこの形式のものが圧倒的に多い.この板組に見ら れる典型的なき裂としては,フランジ溶接部に作用応力と直角 き裂. A き裂 C. 方向に生じるき裂 A と,ウエブこば面の角溶接部に沿って作用 応力と平行に生じるき裂 B が挙げられる. 一方,タイプ2の板組みでは角鋼端部がウエブ面に露出して. 柱フランジ. (a)タイプ1 (b) タイプ2 図-3 板組と典型的なき裂の関係. いる形式であり,角鋼端部とウエブとの溶接線に沿って生じる キーワード. 鋼橋脚隅角部,角鋼,疲労き裂,応力集中,非破壊検査. 連絡先. 〒104-0041. 東京都中央区新富 1-1-3. 首都高速道路公団東京第一保全部設計課. ‑323‑. TEL.03-3552-1476.

(2) I‑162. 土木学会第57回年次学術講演会(平成14年9月). き裂 C が認められている.タイプ2の板組みにおいてもき裂 A は発生し得る 梁フランジ と考えられるが,橋脚数が少ないためかき裂は確認されていない. このほか板組みとは無関係に角鋼母材表面にも磁粉探傷試験によりきず磁 粉模様が検出されたが,棒グラインダーによる研削の結果いずれも表面から 数 mm の深さに留まるものであった.これらの多くは,スンプ試験によるミク ロ組織の観察の結果,脱炭層が確認されたことから製造時に生じた表面キズ 角鋼 であると判断された.また一例ではあるが,鋼組織中の非金属介在物が角鋼 表面で開口した欠陥も見られた.. 写真-1. タイプ 1. ウェ ブ. 4.損傷事例 写真-1 にタイプ 1 の板組みで見られるき裂 A の磁粉探傷結果を. タイプ1の事例(き裂 A) 梁フランジ. 示す.写真右端がウエブのこば面に当り,き裂は図-3(a)の模式図と同様に. 角鋼. 梁フランジとの溶接部に生じている.超音波探傷の結果では,梁フランジ先 端の広い範囲でエコ-を検出しており,き裂は溶接ル-ト部から進展した疲 労き裂の可能性が高いと判断された. 写真-2 はき裂 B の磁粉探傷結果である.このき裂は,図-4(a)に示すよ. 柱フランジ. うに角鋼端部とウエブの溶接の不溶着部より生じたものと考えられる.. タイプ2 写真-3 に板組タイプ2で見られたき裂 C の磁粉探傷結果を示す. 写真-2 タイプ 1 の事例(き裂 B) き裂の位置関係は図-3(b) と同様である.写真-4 はこのき裂の一端を棒グ ラインダーにて穿孔した結果である.き裂は角鋼表面に沿って板厚方向へ伸. 梁. ウェブ. び,図-4(b)に示すウエブ開先奥に残るルートフェースに繋がっていた.. ルートフェースに よる不溶着部. 欠陥の発生が予想される位置. 角鋼. 写真-3 F-F タイプの事例(き裂 C). 不溶着. 柱フランジの溶接が 困難な位置 鋼材端部の不溶着部. (a)タイプ 1 図-4. (b)タイプ 2 角鋼の不溶着部. 6.まとめ 角鋼を用いた隅角部を有する鋼橋脚では,一般隅角部で知られている典型 的な疲労き裂(A)に加えて角鋼を用いた板組みに特有のき裂(B,C)が認め. 写真-4. き裂 C の穿孔結果. られた.これらき裂発生の原因としては,溶接の不溶着部とせん断遅れによる応力集中部とがほぼ一致していて, 疲労上の弱点となっていることが考えられる.また,角鋼の方向によっては破壊じん性値が低いことが予想され, 通常の十字溶接継手構造とは異なった注意が必要である.これらの補修,補強方法については現在検討中であり, き裂の重要性に応じ順次工事を実施していく予定であるが,今後は疲労上の弱点となる不溶着部を残すことの無い ように設計・製作が行われることを切に願いたい.. 参考文献 1) 日本鋼構造協会編:鋼構造物の疲労設計指針・同解説. 技報堂出版. 2)日本道路協会:鋼橋の疲労 3)奥村敏恵ほか:薄板構造ラーメン橋脚隅角部の応力計算について、土木学会論文集、1968 年 5 月 ‑324‑.

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参照

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