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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 環 境 科 学 ) 日 野 貴 文

     学位論文題名

    Disturbance effeCtondiVerSityofunderStory

VegetaaonthroughreSOurCeaVailabilityandherbiVOreS

(撹乱が資源利用可能性と植食者を介して林床植物の多様性に与える影響)

学位論文内容の要旨

  群集生態学の目的のーっは、種多様性が種間の相互作用や物理環境によりどのように決 定 されているかを明らかにすることである。撹乱は生物個体に死亡をもたらし資源の利用 可 能性を変化させるイベントで、多種共存を促すメカニズムのーっだと考えられている。

ま た、撹乱後の変化した物理環境下での種間の相互作用も群集構造に影響を与える。落葉 樹 林の林床植物群集は、バイオマスは林冠木の数%だが林冠木の5‑10倍の種数を持ち、多 様 な生活史を持つ種から構成されている。林床植物は、林冠木により光や土壌栄養塩とい っ た資源量を大きく制限されている。そして、撹乱により林冠木が枯死して資源量が増加 す ると、林床植物は敏感に応答する。また植食者との相互作用も撹乱により変化して、間 接 的に林床植物の多様性に影響を与える可能性がある。落葉樹林帯の森林は台風や伐採等 の複数の種類の撹乱を受けている。そこで、林床植物を対象に台風や伐採といった撹乱が、

資 源と植食者を介して多様性にどのような影響を与えるかを明らかにすることを目的とし た 。

  同じ種プールをもつ同一地域において、林床植物の多様性や生産性は現在の環境と撹乱 の 履歴によって大きな影響を受けていると考えられるが、両者の相対的な重要性はあまり 検 証されてこなかった。また、自然撹乱と人為撹乱がそれぞれ林床植物の多様性や生産性 に 対してどのような影響を与えているかを同一地域で検証した例は少なぃ。これらを検証 す るために、台風、伐採、植林回数の組み合わせの異なる撹乱履歴をもつ9つ立地(計116p lot)を対象に種数、多様度指数、生産性の調査を行った。各プロットにおいて種数の計数 と 刈り取り調査による生産性の推定を行った。現在の環境として、林冠木の葉面積指数、

土 壌NH4+、土壌C/N比、斜度、 斜面方位を計測した。種数に対しては現在の環境よりも撹 乱 履歴がその分散の大部分を説明していた。植林回数が増加すると種数やシンプソン指数 は 減少した。撹乱に伴う種の移入や排除が種数を決める大きな要因であると考えられた。

一 方で、生産性に対しては撹乱履歴よりも現在の環境がその分散の多くを説明し(82%)、

資 源量が大きな要因であると考えられた。撹乱の種多様性 に対する効果は撹乱が20‑80年 経 過しても残存していた。そのため、林床植物の多様性を維持しつつ森林管理を行う際に は こ の よ う な 撹 乱 の 長 期 に 渡 る 影 響 を 考 慮 す る 必 要 が 示 唆 さ れ た 。   台風撹乱によって林冠ギャップが形成されると、光や土壌栄養塩といった林床植物にと っ ての資源の利用可能性は変化する。このような林冠ギャップにおける資源の利用可能性 の 変化は、葉形質や植食者のアバンダンスの変化を通して林床植物の食害まで影響を与え る だろう。林床植物は開葉時期の異なる種から構成され、林冠木の開葉による林冠の閉鎖 の 前あるいは後に開葉する種が存在する。林冠ギャップ下における資源の利用可能性の変 化 に対して、開葉時期の違う林床植物はそれぞれ異なった応答を示し、さらにその応答の

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違いは食害まで影響を与えると予測される。異なるギャップサイズ(28.3‑607.6m2: 20plot) と対照区(4plot)において調査を行った。林床植物の資源としては光、土壌N03..NH4+、 土壌水分、土壌温度を計測した。開葉時期の異なる林床植物6種に対して、縮合タンニン、

総フェ ノール 、leaf mass per areaくLMA)、窒素、CN比といった葉形質を計測し、食害 度を推定した。無脊椎動物の植食者をサンプリングすることでアバンダンスを明らかにし た。光資源量と土壌栄養塩はギャップサイズとともに増加したが、土壌水分や土壌温度に は変化 が見ら れなかっ た。防御形質である縮合タンニン、総フェノール、LMAが開葉時期 の遅い種においてギャップサイズとともに増加したが、開葉時期の早い種では防御形質に 変化は見られなかった。鱗翅目や直翅目といった植食者のアバンダンスはギャップサイズ に伴って増加した。食害度は開葉時期の早い種でギャップサイズとともに増加し、遅い種 で逆に減少した。これらの結果から、開葉時期の遅い種ではギャップサイズに伴う防御形 質が食害度に影響したと考えられた。一方、開葉時期の早い種ではギャップサイズに伴う 植食者の増大が食害度に影響したと考えられた。

  森林には林冠ギャップにより林床植物の生産性が高い場所や、林冠が欝閉した生産性の 低い場所が存在する。大型植食者の植物多様性に与える影響を考える上で有効な仮説とし て、「生産性が低い条件下では採食圧は植物多様性を減少させ、逆に高い条件下では増加 させる」がある。このように、シカの林床植物の多様性への影響は生産性の違いによって 異なる可能性がある。しかし、シカの植食圧と生産性の両方を制御する野外操作実験が難 しいため、検証例はほとんどない。そこで1)林床植物の生産性勾配によってシカの植食圧 は変化するか、2)生産性勾配とシカ密度によって林床植物の種数は変化するか、を明らか にすることを目的とし、シカの移動を制限するフェンスを用いてシカ密度と林床植物の生 産性を操作する大規模野外操作実験を行った。シカ密度は高密度区・低密度区・排除区の 3段階設定した。生産性の操作は高木の伐採と施肥(窒素添加)を行い、3つのシカ密度毎に4 つの処理区(無処理、伐採、施肥、伐採・施肥)を設置した。そして林床植物の食害率、出 現種数、多様度指数、被度を調査した。食害率は無処理区に比ベ施肥区では変わらなかっ たが、伐採区で増加した。林床植物のバイオマスは伐採区と伐採・施肥区で増加しており、

林床植物の被度の増加に伴ってシカの処理区への利用頻度が増加し植食圧を増大させたと 考えられた。一方、林床植物の種数に対しては、施肥や伐採処理の効果は見られたが、シ カ密度問に有意な差はなかった。これは、調査対象種の全てが多年生植物であるため地上 部の採食だけでは、個体の消滅にはすぐにはっながらず、シカの植食圧が種数を数年で変 化させる程ではなかったと考えられた。

  本研究により、林床植物の種多様性を決める要因として現在の環境よりも撹乱履歴が相 対的に大きいことが明らかになった。また、植食者は短期間では林床植物の種数へ影響を 与えていなかったが、その相互作用は撹乱により変化した。長期間においては、撹乱が種 多様性に与える影響のメカニズムの中には植食者との相互作用が介在している可能性が示 唆された。

(3)

学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 准教授 准教授

日 浦    勉 甲 山 隆 司 植 村    滋 工 藤    岳

    学 位 論 文 題 名

    Disturbance effeCtondiVerSityofunderStory

VegetationthroughreSOurCeaVailabilityandherbiVOreS

( 撹 乱 が 資 源 利 用 可 能 性 と 植 食 者 を 介 し て 林 床 植 物 の 多 様 性 に 与 え る 影 響 )

  群 集 生 態 学 の 目 的 の ー っ は 、 種 多 様 性 が 種 間 の 相 互 作 用 や 物 理 環 境 に よ り ど の よ う に 決 定 さ れ て い る か を 明 ら か に す る こ と で あ る 。 撹乱 は 生 物個 体 に 死亡 を も たら し 資 源 の 利 用 可 能 性 を 変 化 さ せ る イ ベ ン ト で 、 多 種 共 存を 促 す メカ ニ ズ ムの ー っ だと 考 え ら れ て い る 。 ま た 、 撹 乱 後 の 変 化 し た 物 理 環 境 下 での 種 間 の相 互 作 用も 群 集 構造 に 影 響 を 与 え る 。 落 葉 樹 林 の 林 床 植 物 群 集 は 、 パ イ オ マス は 林 冠木 の 数 %だ が 林 冠木 の 5―10倍 の 種 数 を 持 ち 、 多 様 な 生 活史 を 持 つ種 か ら 構成 さ れ てい る 。 林床 植 物 は、 林 冠 木 に よ り 光 や 土 壌 栄 養 塩 と い っ た 資 源 量 を 大 き く 制 限さ れ て いる 。 そ して 、 撹 乱に よ り 林 冠 木 が 枯 死 し て 資 源 量 が 増 加 す る と 、 林 床 植 物 は敏 感 に 応答 す る 。ま た 植 食者 と の 相 互 作 用 も 撹 乱 に よ り 変 化 し て 、 間 接 的 に 林 床 植 物の 多 様 性に 影 響 を与 え る 可能 性 が あ る。 落 葉 樹林 帯 の 森林 は 台 風や 伐 採 等 の複 数 の 種類 の 撹 乱を 受 け てい る 。 そこ で、

林 床 植物 を 対 象に 台 風 や伐 採 と しゝ っ た 撹 乱が 、 資 源と 植 食 者を 介 し て多 様 性 にど のよ う な 影響 を 与 える か を 明ら か に する こ と を 目的 と し た。

  同 じ 種 プ ー ル を も つ 同 一 地 域 に お い て 、 林 床 植 物 の 多 様 性 や 生 産 性 は 現 在 の 環 境 と 撹 乱 の 履 歴 に よ っ て 大 き な 影 響 を 受 け て い る と 考 え ら れ る が 、 両 者 の 相 対 的 な 重 要 性 は あ ま り 検 証 さ れ て こ な か っ た 。 ま た 、 自 然 撹 乱 と 人 為 撹 乱 が そ れ ぞ れ 林 床 植 物 の 多 様 性 や 生 産 性 に 対 し て ど の よ う な 影 響 を 与 え て い る か を 同 一 地 域 で 検 証 し た 例 は 少 な い 。 こ れ ら を 検 証 す る た め に 、 台 風 、 伐 採 、 植 林 回 数 の 組 み 合 わ せ の 異 な る 撹 乱 履 歴 を も つ9つ 立 地 ( 計116plot)を 対 象 に 種 数 、 多 様 度 指 数 、 生 産 性 の 調査 を 行 っ た 。 各 プ 口 ッ ト に お い て 種 数 の 計 数 と 刈 り 取 り 調 査 に よ る 生 産 性 の 推 定 を 行 っ た 。 現 在 の 環 境 と し て 、 林 冠 木 の 葉 面 積 指 数 、 土 壌NH4+、 土 壌C/N比 、 斜 度 、 斜 面 方 位 を 計 測 し た 。 種 数 に 対 し て は 現 在 の 環 境 よ り も 撹 乱 履 歴 が そ の 分 散 の 大 部 分 を 説 明 し て し ゝ た 。 植 林 回 数 が 増 加 す る と 種 数 や シン プ ソ ン指 数 は 減少 し た 。撹 乱 に 伴 う 種 の 移 入 や 排 除 が 種 数 を 決 め る 大 き な 要 因 で あ る と 考 え ら れ た 。 一 方 で 、 生 産 性 に 対 し て は 撹 乱 履 歴 よ り も 現 在 の 環 境 が そ の 分 散の 多 く を説 明 し (82% )、 資 源 量 が 大 き な 要 因 で あ る と 考 え ら れ た 。 撹 乱 の 種 多 様 性 に 対 す る 効 果 は 撹 乱 が20ー80

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年経 過しても 残存して いた。そ のため、 林床植物の 多様性を 維持しつ つ森林管 理を 行 う 際 に は こ の よ う な 撹 乱 の 長 期 に 渡 る 影 響 を 考 慮 す る 必 要 が 示 唆 さ れ た 。   台風 撹乱によ って林冠 ギャップ が形成さ れると、光 や土壌栄 養塩とい った林床 植 物に とっての 資源の利 用可能性 は変化す る。このよ うな林冠 ギャップ における 資源 の利 用可能性 の変化は 、葉形質 や植食者 のアバンダ ンスの変 化を通し て林床植 物の 食害 まで影響 を与える だろう。 林床植物 は開葉時期 の異なる 種から構 成され、 林冠 木の 開葉によ る林冠の 閉鎖の前 あるいは 後に開葉す る種が存 在する。 林冠ギャ ップ 下に おける資 源の利用 可能性の 変化に対 して、開葉 時期の違 う林床植 物はそれ ぞれ 異な った応答 を示し、 さらにその応答の違いは食害まで影響を与えると予測される。

異なるギャップサイズ(28.3―607. 6rri2:20plot)と対照区(4plot)において調査を行 った。林床植物の資源としては光、土壌N03−.NH4+、土壌水分、土壌温度を計測した。

開葉 時期の異 なる林床 植物6種に 対して、 縮合夕ンニ ン、総フ ェノール 、leaf mass per area (LMA)、窒 素、CN比と いった葉 形質を計 測し、食 害度を推定 した。無 脊椎 動物 の植食者 をサンプ リングす ることで アバンダン スを明ら かにした 。光資源 量と 土壌 栄養塩は ギャップ サイズと ともに増 加したが、 土壌水分 や土壌温 度には変 化が 見 ら れな か っ た。 防 御形 質 であ る縮合夕 ンニン、総 フェノー ル、LMAが開 葉時期の 遅い 種におい てギャッ プサイズ とともに 増加したが 、開葉時 期の早い 種では防 御形 質に 変化は見 られなか った。鱗 翅目や直 翅日といっ た植食者 のアバン ダンスは ギャ ップ サイズに 伴って増 加した。 食害度は 開葉時期の 早い種で ギャップ サイズと とも に増 加し、遅 しゝ種で 逆に減少した。これらの結果から、開葉時期の遅い種ではギャ ップ サイズに 伴う防御 形質が食 害度に影 響したと考 えられた 。一方、 開葉時期 の早 い 種 では ギ ャ ップ サ イズ に 伴 う植 食 者の 増 大 が食 害 度に 影響 したと考 えられた 。   森林 には林冠 ギャップ により林 床植物の 生産性が高 い場所や 、林冠が 欝閉した 生 産性 の低い場 所が存在 する。大 型植食者 の植物多様 性に与え る影響を 考える上 で有 効な 仮説とし て、「生 産性が低 い条件下 では採食圧 は植物多 様性を減 少させ、 逆に 高い 条件下で は増加さ せる」が ある。こ のように、 シカの林 床植物の 多様性へ の影 響は 生産性の 違いによ って異な る可能性 がある。し かし、シ カの植食 圧と生産 性の 両方 を制御す る野外操 作実験が 難しいた め、検証例 はほとんどない。そこで1)林床 植物 の生産性 勾配によ ってシカ の植食圧 は変化する か、2)生産性勾配とシカ密度に よっ て林床植 物の種数 は変化す るか、を 明らかにす ることを 目的とし 、シカの 移動 を 制 限す る フ ウン ス を用 い て シカ 密 度と 林 床 植物 の 生産 性を 操作する 大規模野 外 操 作 実験 を 行 った 。 シカ 密 度は 高密度区 ・低密度区 ・排除区 の3段階設 定した。 生 産性 の操作は 高木の伐 採と施肥(窒素添加)を行い、3つのシカ密度毎に4つの処理区

(無 処理、伐 採、施肥 、伐採・施肥)を設置した。そして林床植物の食害率、出現種 数、 多様度指 数、被度 を調査し た。食害 率は無処理 区に比ベ 施肥区で は変わら なか った が、伐採 区で増加 した。林 床植物の バイオマス は伐採区 と伐採・ 施肥区で 増加 して おり、林 床植物の 被度の増 加に伴っ てシカの処 理区への 利用頻度 が増加し 植食 圧を 増大させ たと考え られた。 一方、林 床植物の種 数に対し ては、施 肥や伐採 処理 の効 果は見ら れたが、 シカ密度 間に有意 な差はなか った。こ れは、調 査対象種 の全 てが 多年生植 物である ため地上 部の採食 だけでは、 個体の消 滅にはす ぐにはっ なが ら ず 、 シ カ の 植 食 圧 が 種 数 を 数 年 で 変 化 さ せる 程 では な か った と 考え ら れ た。

本研 究により 、林床植 物の種多 様性を決 める要因と して現在 の環境よ りも撹乱 履歴 が相 対的に大 きいこと が明らか になった 。また、植 食者は短 期間では 林床植物 の種 数へ 影響を与 えていな かったが 、その相 互作用は撹 乱により 変化した 。長期間 にお

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しゝては、撹乱が種多様性に与える影響のヌカニズムの中には植食者との相互作用が 介在している可能性が示唆された。

  

以上 の通 り、申請者は林床植物の多様性に与える様々な影響を定量的に評価した も ので あり 、攪乱の効果の理解に対して生態学的に貢献するところ大なるものがあ る。

  

よっ て審 査委員一同は,これらの成果を高く評価し,また研究者として誠実かつ 熱 心で あり ,大学院博士課程における研鑽や修得単位などもあわせ,申請者が博士

( 環 境 科 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 充 分 な 資 格 を 有 す る も の と 判 定 し た 。

参照

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