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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博士 ( 地球 環境科 学)清 野達之

学 位 論 文 題 名

Shoot growth and dynamic architecture of a deciduous       tree, Aca7zthopaTzax sciadophylloides (Araliaceae)

( 落 葉 樹 種 コ シ ア ブ ラ の シ ュー ト 成 長と 樹 形 動態 )

学位論文内容の要旨

森林生態系の三次元構造は,樹木の成長に伴う枝葉の垂直的な配置によって規定される,森林の階層構造 はさまざまなサイズの樹種によって構成されている.そのなかで,高木種は森林構造を規定するのに対し,

亜高木や低木は,森林生態系の多様性に貢献し,高木種と同じ資源を利用する競合関係にある.森林生態 系の構造・多様性の維持機構は,森林を構成する樹木の成長様式,例えば,光合成を行ない同化産物の生 産過程を担っている枝先のシュートの成長パターンと,その積み重ねである樹形の構築過程に着目した種 間比較を行なうことで理解できるだろう.本研究では,亜高木種の成長に着目して,枝先のシュー卜の成 長バターンと,樹形構築の生態学的意義を明らかにし,森林生態系の構造と多様性維持機構の解明への手 掛かりを探った.本研究ではュニークなシュート伸長様式を持ち,日本の温帯林を中心に分布するウコギ 科の亜高木落葉広葉樹であるコシアブラを主な対象とし,生態学的に類似した生活特性を持つ他の亜高木 種 群 と の 比 較 解 析 を 通 し て , 亜 高 木 種 の 樹 形 動 態 特 性 と , そ の 多 様 性 を 調 査 し た .

1.シュート成長の伸長様式

ウコギ科の落葉広葉樹であるコシアブラの当年シュートには,春先に一斉に葉を展開させ,約2 cm程度 のみ伸長するシュート(停滞成長シュートS期)と,30 cm以上伸長し,夏まで伸長成長と展葉を続ける シュート(伸長成長シュートE期)が存在する.コシアブラの伸長成長は,このニつの伸長成長パター ンの,一定の間隔をもった同じ軸上での繰り返しによって進行する,コシアブラのシュートの成長特性と その意義について,分枝前,あるいはほとんど分枝をしていない稚樹を材料に調査したところ,S期シュー トは5月下旬に伸長と展葉を終えているのに対し,E期シュートは5月下旬に一度展葉した後,8月中旬 まで伸長成長と展葉を行なっていた.光環境の違いを考慮して,E期とS期の頻度を閉鎖林冠下とギャツ プで比較した結果,閉鎖林冠下ではよりS期を繰り返し,ギャップではE期を繰り返す頻度が高くなって いた.S期成長時は,伸長成長を制限し,将来の成長に備えて同化産物を蓄える時期であるのに対し,E 期成長時は上方のより良い光環境への伸長を行なう時期であると考えた.

2.シュートの形態的・機能的な分化

コシアブラのシュート成長にみられたS期とE期へのシュート分化システムを,一生育シーズンを通した シュートの発達過程から解析した.シュート成長にみられるS期とE期のシュート分化は形態的な特性か ら識別できた.当年生シュートの資源配分比から,成長期間を通して,S期は葉群維持を,E期は茎ヘ多 くを配分して,垂直方向への伸長を促進する機能分担を行なっていた.両フェイズ間の比葉面積に顕著な 違いはなく,シュートの分化は個葉特性の変化を伴わないことがわかった.両期ともに,葉身と葉柄の長 さをシュート内で調整することによって,個葉間の相互被陰を回避し,光獲得に効率的な葉の配置を行なっ ていることがわかった,E期シュートの春先に展葉する葉を季節の時期別に切葉した結果,切葉を行なっ た年のシュート成長には影響ないものの,翌年の成長とシュート分化に影響することがわかった.以上か

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ら,コシアブラの年間成長は,展葉前にシュートのタイプがすでに決定されており,前年の成長期間の初 期に翌シーズンの成長パターンがすでに決定されると結論した.

3.個体の成長過程における樹形の発達と樹冠内のシュートの分布

実生から成木までの個体成長の過程における樹形の発達段階を,シュート集団間の関係に着目して解析し た.樹高Im以下の実生は分枝をせず,シュート成長の二極分化を示さなかった,樹高1―2m程の小さな 稚樹でも未分枝の個体がほとんどであるが,幹ではシュート成長の分化が認められた.樹高2m以上の稚 樹から分枝が認められ,その側枝のほとんどがS期のみからなっていた.樹高4m以上の成木からは,側 枝でもシュート成長の分化が認められた.分枝をする個体の樹冠内では,シュート成長の同調性が樹冠内 で確認され,シュー卜集団としての伸長成長の切り替えが示唆された,分枝によって,個体の葉群構造が 分枝をしない傘型から細長い筒型に変化し,成長段階に応じた効率的な光獲得方法をとっていることがわ かった,これらの成長バターンの変化は,個体のサイズによってニつのシュート成長期の組み合わせを変 え る こ と に よ っ て , 林 冠 下 で の 生 存 を 可 能 に し て い く 適 応 で あ る と 結 論 し た .

コシアブラの伸長成長のみにみられた,S期とE期へのシュート成長の分化のニつに分化は,個体の生産 性,シュート・フウノ口ジー,そして葉の配置から,展葉前にすでに決定されることが示唆された.また,

個体内の同化産物の蓄積状況による個体内でのシュート成長の制御の可能性が示唆された,コシアブラは 亜高木種で,その生活史を林冠下で完結する.そのため,実生から成木に至るまで,常に限られた光環境 下での成長を余儀なくされている.このコシアブラのS期とE期からなる繰り返し成長は,この種の林冠 下での成長を可能とする可塑性をもたらしていると結論した,

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学位論文審査の要旨 主 査

  

教 授

  

甲 山 隆 司 副査

  

教授   山本興太朗 副査

  

教授   原

  

登志彦

    

学位論文題名

Shoot growth and dynamlc architecture ofadeciduous     tree

,Acan チカのanax scicrdophylloides (Araliaceae)

    

(落 葉樹種コシアブラのシュート成長と樹形動態)

  

森林生態系の三次元構造は,樹木の成長に伴う枝葉の垂直的な配置によって規定され る.森林生態系の構造や種多様性の維持機構は,森林を構成する樹木の成長様式,例え ば,光合成を行ない同化産物の生産過程を担っている枝先のシュートの成長パターンと,

その積み重ねである樹形の構築過程に着目した種間比較を行なうことで理解できるだろ う.本研究では,ユニークな伸長成長特性を持つ落葉亜高木種コシアブラに着目して,

枝先のシュートの成長パターンと樹形構築の生態学的意義を明らかにし,生態学的に類 似した生活特性を持つ他の亜高木種群との比較解析を通して,亜高木種の樹形動態特性 を論じた.

  

コシアブラの当年シュートには,春先に一斉に葉を展開させ,約2 cm 程度のみ伸長す るシュート(停滞成長シヱートS 期)と,30 cm 以上伸長し,夏まで伸長成長と展葉を続 けるシュート(伸長成長シュートE 期)が存在する.コシアブラの伸長成長は,このニ つの伸長成長パターンの,一定の間隔をもった同じ軸上での繰り返しによって進行する.

コシアブラの分枝前,あるいはほとんど分枝をしていない稚樹を材料に調査したところ,

S

期シュートは5 月下旬に伸長と展葉を終えているのに対し,E 期シュートは5 月下旬に一 度展葉した後,8 月中旬まで伸長成長と展葉を行なっていた.E 期とS 期の頻度を閉鎖林 冠下と林冠ギャップで比較した結果,閉鎖林冠下ではよりS 期を繰り返し,ギャップで はE 期を繰り返す頻度が高くなっていた.S 期成長時は,伸長成長を制限し,将来の成長 に備えて同化産物を蓄える時期であるのに対し,E 期成長時は上方のより良い光環境へ の伸長を行なう時期であると考えた.

  

コシアブラのシュート成長にみられたS 期とE 期へのシュート分化システムを,一生育

シーズンを通したシュートの発達過程から解析したところ,シュート分化は形態的な特

性から識別できた.成長期間を通して,S 期は同化産物を葉群維持に,E 期は茎に多くを

配分していた.両フェイズ間の比葉面積に顕著な違いはなく,シュートの分化は個葉特

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性の変化を伴っていなかった.両期ともに,葉身と葉柄の長さをシュート内で調整する ことによって,個葉間の相互被陰を回避し,光獲得に効率的な葉の配置を行なっていた.

E

期シュートの春先に展葉する葉を季節の時期別に切葉した結果,切葉を行なった年の シュート成長には影響なく,翌年の成長とシュート分化に影響することがわかった.以 上から,コシアブラでは,前年の成長期間中に翌シーズンのシュート成長パ夕一ンがす でに選択・決定されていると結論した.

  

実生から成木までの個体成長の過程における樹形の発達段階を,シュート集団間の関 係に着目して解析した.樹高lm 以下の実生は分枝をせず,シュート成長の二極分化を 示さなかった.樹高1‑2m 程の小さな稚樹でも未分枝の個体がほとんどであるが,幹で はシュート成長の分化が認められた.樹高

2m

以上の稚樹から分枝が認められ,その側 枝のほとんどがS 期のみからなっていた.樹高4m 以上の成木からは,側枝でもシュート 成長の分化が認められた.分枝をする個体の樹冠内では,シュート成長の同調性が樹冠 内で確認され,シュート集団レベルでの伸長成長の切り替えが示唆された.分枝によっ て,個体の葉群構造が分枝をしない傘型から細長い筒型に変化し,成長段階に応じた効 率的な光獲得方法をとっていた.これらの成長バターンの変化は,個体のサイズによっ てニつのシュート成長フェーズの組み合わせを変えることによって,林冠下での生存を 可能にしていく適応であると考えた.コシアブラは亜高木種で,その生活史を林冠下で 完結する.そのため,実生から成木に至るまで,常に限られた光環境下での成長を余儀 なくされている.このコシアブラのS 期とE 期からなる繰り返し成長は,この種の林冠下 での成長を可能とする可塑性をもたらしていると結論した.

  

申請者は大学院博士課程を通して,精力的に野外調査とデー夕解析に取り組み論文を まとめてきた.また,北海道や東南アジア熱帯の森林調査プ口ジェクトに加わり,後進 大学院生の調査補助や助言も熱心に行なってきた.今後も,こうした経験を生かして,

研究者として実カを発揮していくものと判断する.以上から,審査員一同は申請者が博

士 ( 地 球 環 境 科 学 ) の 学 位 に 相 当 す る 充 分 な 資 格 を 有 する も のと 判 定し た .

参照

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