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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 水 産 科 学 ) 帰 山 秀 樹

    学位論文題名

    Ecologicalandphysiologicalf・eatures

  OfpelagiCOStraCOdSintheSubarCtiCPaCifiCOCean

亜寒帯太平洋における浮遊性貝虫類の生理・生態学的特性に関する研究

学位論文内容の要旨

  貝虫類は淡水および海洋に出現し、その生態も浮遊性、底生性と多様であり、これま でに化石種、現生種を含め約40000種が確認されている。海洋において浮遊生活を営む貝 虫類の大部分はミオドコーパ日ハロキプリス科であり、これまでに約150種が確認されて いる。浮遊性貝虫類は中・深層性魚類ハダカイワシやクラゲの重要な餌資源となってい ることが報告されている。また、浮遊性貝虫類は雑食性であり中・深層において個体数 が多いこと、生息深度が表層から深層ヘ広範囲であることなどから海洋生態系内の物質 循環およびエネルギーフローにおいて何等かの役割を担っていると考えられる。しかし これらの機能を解明するのに必要な浮遊性貝虫類の生理学的・生態学的知見は非常に乏 しいのが現状である。

  本研究は、亜寒帯太平洋およびその周辺海域に出現する浮遊性貝虫類の群集および個 体群構造、鉛直分布、優占種の生活史、代謝活性(酸素消費速度)、体化学成分(炭素・

窒素)を解析・測定し、これらの結果を総合して貝虫類の生理・生態学的特性を明らか にするとともに、親潮域の中・深層における貝虫類群集によるPOCフラックスーの捕食圧 を 見 積 も っ た も の で 、 得 ら れ た 結 果 は 以 下 の よ う に 要 約 さ れ る 。     1.亜寒帯太平洋およびその周辺海域の6地点(西部、中央および東部亜寒帯太平洋、

べーリング海、オホーツク海および日本海)において、水深2000m以浅を5層(0nr水温 躍層、水温躍層一250m、250―500m、500−1000mおよび1000−2000m)に分け、閉鎖式ネッ ト(口径60 cm、目合い0.10 mm)による鉛直区分採集を行った。全地点を通して12種の 貝虫類が出現し、いずれの海域においても貝虫類の出現個体数は表層ではなく中・深層 に 多 か っ た 。 日 本 海 を 除 く す べ て の 海 域 に お い て3種(Discoconchoecia

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pseudodi scophora,Orthoconchoecia haddoniお よびMetaconchoecia skogsbergi)が優 占 した 。日 本海 では1種、D. pseudodiscophoraのみが出現した。さらに数種の成体の体 長 (殻 長) につ いて 比較 を行 った 結果、 北太 平洋 およ ぴそ の周 辺海域内、もしくは太平 洋ー大西洋間で地理変異が認められた。

  2. 北 海道 釧路 沖の 親潮 海域SiteHにお いて1996年9月 から1997年10月に かけ て毎 月ほ ば1回 の頻度 で動 物プ ラン クト ン試 料を 採集 し、 優占3種の 個体 群構造(発育段階組成)

お よ び 生 活 史 を 解 析 し た 。 周 年 を 通 し3種の 主分 布水 深はn pseudodiscophoraで300ー 1000m、〇Ihaddoniで450―800m、 〃.skogsbergiで650ー900mであった。これら3種につ い て発 育に 伴い 分布 深度 が浅 くな る「個体発生に伴う鉛直移動」が認められた。なお、3 種 いず れに つい ても 体長 の季 節変 化は認 めら れな かっ た。 さら に、発育段階組成の季節 変 化よ り、n pseudodiscophoraの 世代時 間は1年 であ ると 推定 したが、〇.haddoniおよ O:M. skogsbergiにっいては世代時間の推定はできなかった。

    3.抱卵雌の一腹あたりの抱卵数は季節により変動しn pseudodiscophoraで10―25(年 平均:18.8)、〇.haddoniで2−54 (22.0)、Mskogsbergiで1―5(3.3)であった。生鮮 個体を用いた産卵実験では、3種の抱卵雌は15ー27日間隔で2ー4回産卵を繰り返した。また、

1回の平均産卵数はO. haddoniで最も多く(21.6)、D. pseudodiscophora (10.8)、〃・

skogsbergi (5.9)がこ れに 続い たが 、一 腹あ たり の抱 卵数と 若干 異な った 。水 温3℃に お ける3種の 孵化 時間 はい ずれ も14−16日であった。産卵回数および最大産卵数より見積 も っ た 最 大 生 涯 産 卵 数 は そ れ ぞ れn pseudodiscophoraで93、 〇Ihaddoniで392、M skogsbergiで40であった。

    4.現場水温下(3℃)において測定した酸素消費速度(Hl 02/ind/h)は種によって異な り 、n pseudodiscophoraの雌成体でO.026、〇Ihaddoniで0.127(雄成体)、0.159(雌 成体)、〃. skogsbergiで0.033(Instar VII/成体)であった。一方、単位重量あたりの 酸素消費速度(Iil 02/mg DW/h,ル102/mgや.85/h)に換算すると種間差が認められなかった こ とよ り、 種間 で認 めら れた 酸素 消費速 度の 差は 種に よる 体重 量の違いによるものと考 えられた。

  5. 炭素・窒素含量はそれぞれn pseudodiscophoraの雌成体で50.8%および7.8%、〇I haddoniの雄 成体 で42.3% およ び9.2% 、雌 成体 で45.7% およ び8.7%、Mskogsbergiの Instar VII/成体 で39.8% およ び9.4%で あっ た。C:N比は それ ぞれD.pseudodiscophora

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の雌成体で6.6、〇. haddoniの雄成体で4.6、雌成体で5.3、MskogsbergiのInstar VII/

成体で4.2であった。これら3種の炭素・窒素含量およぴC:N比は北太平洋に生息する甲殻 類プランクトンにおける既報値の範囲内であった。

    6.体サイズおよび生息水温が貝虫類3種とほば等しい表層性カイアシ類Pseudocalanus newman1と本研究結果を比較したところ、貝虫類の生理・生態学的特性として長い世代時 間、少ない生涯産卵数およぴ代謝活性の低下が明らかとなった。これらは貝虫類独自の 特性 と 考え る より も むし ろ 生 息環 境 (中 ・深層)を 反映してい ると推察さ れた。

    7.同化効率および総成長効率をそれぞれ70%および30%と仮定し、親潮域における個 体数データおよび酸素消費速度を総合して貝虫類3種の年間摂食量(mgC/m2/yr)を求めた ところ、n pseudodiscophoraでは393、D.haddoniでは451、Mskogsbergiでは31となっ た。貝虫類3種を合計すると、年間摂食量は875 mgC/m2/yrとなり、これは本動物群の分 布中心深度である水深400mにおける年間POCフラックス(2400 mgC/m2/yr)の3.7%に相当 すると見積もられた。

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学位論文審査の要旨 主 査    教 授    池田    勉 副 査    教 授    仲谷一宏 副査   助教授   志賀直信

    学位 論文題名

    Ecological and physiological features

  of pelagic ostracods in the subarctic Pacific Ocean 亜寒 帯太平洋に おける浮遊 性貝虫類の生理・生態学的特性に関する研究

  浮遊性貝虫類は中・深層性魚類ハダカイワシやクラゲの重要な餌資源となっているこ とが報告されている。また、浮遊性貝虫類は雑食性であり中・深層において個体数が多 いこと、生息深度が表層から深層へ広範囲であることなどから海洋生態系内の物質循環 およびェネルギーフ口ーにおいて何等かの役割を担っていると考えられる。しかしこれ らの機能を解明するのに必要な浮遊性貝虫類の生理学的・生態学的知見は非常に乏しい のが現状である。本研究は野外採集試料の解析と室内飼育実験を合わせて行い、北太平 洋亜寒帯域およびその周辺海域に出現する浮遊性貝虫類の生理・生態学的特性を明らか にするとともに親潮域の中・深層における貝虫類群集によるPOCフラックスヘの捕食圧 を見積もった。これら野外試料の解析および飼育実験により得られた結果およびそれに 基づく論議のうち、審査員一同は以下の諸点を特に評価すべきものとしてとりあげた。

  第一に、北太平洋亜寒帯域およびその周辺海域における貝虫類の群集構造を初めて明 らかにしたことが挙げられる。全調査海域を通して12種の貝虫類が出現し、いずれの海 域においても貝虫類の出現個体数は表層ではなく中・深層に多かった。日本海を除くす べての海域において3種(DiscoconchoecfapSeud〇ばSC嚠ユ〇ra、〇r舶〇CのユCわ〇eCfa カa〔!d〇nお よ びMeぬc〇n曲〇e曲政〇gsbe瓱 めが優占し た。日本海 では1種D. pSeud〇CぬC嚠】()raのみが出現した。

  第二に、親潮域における優占3種の個体群構造と鉛直分布の季節変化および産卵数を 初めて明らかにしたことが挙げられる。3種の主分布水深はD.pseud〇出sc叩ぬ〇raで 300ー1000m、〇.カadd〇njで450ー800m、M.s丘〇邵焼.rgfで650―900mであった。これ ら3種について発育に伴い分布深度が浅くなる「個体発生に伴う鉛直移動」が認められた。

3種の成熟雌雄が調査期間を通して出現していたことから再生産は周年行われていると考

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えられた。発育段階組成の季節変化よりD. pseudodiscopカc)raの世代時間は1年であると 推定したが、〇,カadd〇njおよびM.蝣〇邵b昭fについては世代時間の推定はできなかっ た。 また 、生 鮮個 体を 用い た産 卵実 験に より 得られ た産卵回数および最大産卵数より見 積もった最大生涯産卵数はそれぞれD,pseud〇ばsc〇pn〇raで93、〇.カadd〇mで392、M. s々〇鉛f艇嚠で40であった。

  第 三に 、優 占3種の代 謝速 度と 体構 成元 素量 を測 定し 、そ の生 理学 的特 性を明 らかに した こと が挙 げら れる 。酸 素消 費速 度( ル2/dWweight/h)は3種 を通 してO.3〜0.4の 範囲 であ り、 種間 差は 認められなかった。炭素・窒素含有量は3種を通しそれぞれ乾燥重 量の40〜51%および8〜9%であった。

  第四に、表層性カイアシ類Pseud〇caZ伽usneu′ manjと本研究結果を比較し貝虫類3種 の生 理・ 生態 学的 特性 を明 らか にし たこ とが 挙げら れる。全体として長い世代時間、少 ない 生涯 産卵 数お よび 代謝 活性 の低 下が 明ら かとな った。これらは貝虫類独自の特性と 考え るよ りも むし ろ生 息環 境( 中・ 深層 )を 反映し ていると推察された。さらに、親潮 域に おけ る個 体数 デー タお よび 酸素 消費 速度 を総合 して貝虫類3種の年間摂食量(mgC/ m2/yr) を 求 め た と こ ろ 、D.pseud〇dSc刪 】C惚で は393、〇 .hadd〇 匝で は451、M. 政 〇gsb昭fで は31と な っ た 。 貝 虫 類3種 を 合 計 す る と875mgC/m2/yrと な り 、 こ れ は 本 動 物 群 の 分 布 中 心 深 度 で あ る 水 深400mに お け る 年 間POCフ ラ ッ ク ス (2400mgC/

m2/yr)の3.7%に相当すると見積もられた。

  上 記の 内容 は、 北太 平洋 亜寒 帯海 域の 生物 生産構 造の解明と生物海洋学の発展に大き く貢 献し たも のと して 高く 評価 でき る。 よっ て審査 員一同は本論文が博士(水産科学)

の学位を授与される資格のあるものと判定した。

参照

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