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‐学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

博 士( 地 球環 境科 学 )金    龍況

     学位 論 文題 名

  Studies on Fluxes of Trace Gases through the Snowpack:their Implication to the Global Budgets      (亜 寒 帯地 域に おける積 雪を通した温室効果 気体の      フラ ッ クス :地 球規模収 支への寄与に関する 研究)

‐学位論文内容の要旨

  地球規模での温室効果気体の循環を考える上で、土壌から大気ヘ放出される C02.N20量と、大気から土壌ヘ除去されるCH4量の正確な見積もりが重要であ る。これまでは積雪で覆われた地域での温室効果気体の交換は無視された場合 が多く、実測された例も非常に少ないのが現状である。

  そこで、本研究では1995年から1996年まで低温科学研究所、北大植物園、

手稲山と野幌森林公園において、1996年から1997年まで低温科学研究所におい て、冬季の間、1)積雪で覆われた土壌の中での温室効果気体(C02`CH4とNz0) の生成と除去の変動要因を調べ、2)積雪中での拡散係数を求め、それらの気体 のフラックスを見積もった。また、3)積雪表面に設置したチャンバーを用いて それらの気体のフラックスを見積もり、前述2)との比較・検討を行った。さら に、4)高緯度地域での積雪を通したC'02`CH4やN20のフラックスの見積もり を行い、全球的な規模での冬期亜寒帯域の重要性と地球規模の収支への寄与度 を明らかにした。

  個々の詳細な研究成果は以下の通りである。

1)土壌と積雪中での002`N20、CH4と222 Rriの濃度分布は気温と積雪深によっ   て大きく変動した。積雪深が20 cm以下の場合、零下の気温の影響を受けた   土壌表面が凍ってこれらの気体の濃度勾配が大きくなった。積雪深が50 cm   以上の場合、気温の影響を受けずに土壌表面が解け、土壌表面付近にたまっ   たClozとN20は 下部 積雪ヘ放出 され、大気CH4は逆 に土壌ヘ移 動した。

2)土壌内でのN20生成は、くD2の生成メカニズムとは異なり、土壌中の酸素濃     度によって大きく変動し、N20濃度と0斛ユの濃度比は逆の相関性を示し     た。これは窒素固定によるのか、脱窒反応によるのかは同定できなかった。

    また、C02の最大濃度は39,000ppmvで、土壌深40Cmにおいて初冬(1996     年12月1日)に観測された。NユOの最大濃度は11,000ppbvで、土壌深30cm     において冬中頃(1997年2月4日)に観測された。

(2)

3)95年と96年の冬季の積雪を通した(め:の年平均フラックスはそれぞれ35+19     と25+19 mmol/m2/dayであり、CH。の平均フラックスはそれぞれ−16土10と―

    7.5+3.1 limol/m2/dayであった。これらの年間フラックスは、誤差範囲以内で     一致した。また、96年度のNユOの平均フラックスは5.1+3.1 ymol/m2/dayで     あった。

4)強い季節 風による 影響を最 小化するため設計されたチャンバーは気象の変動     に関係なく 、冬季の 間、得ら れたそれ らの気体 のフラッ クスは一定であっ     た。しかし ながら、 拡散計数 による気体のフラックスは、前述1)のように     気温と積雪 深に大き く左右さ れた。

5)2年間か けて見積 もった冬 季フラッ クスと現 在までの 研究報告からの見積も     りを 合 わ せて 得られ た、雪で覆 われた北 半球の高 緯度地域 におけるC02の     フラックスは1.50 Pg('/seasonから1.98 Pgcrseasonであった。この量はIPCC     の報告書 による、 一年間に 海が吸収 するC02量に 相当する 。N20の冬季フラ     ックスに 関する研 究報告は わずかで あるが、 亜寒帯地 域では冬季フラック     ス(11+6.5 mgN/m/se譌0n)が年間総フラックスの70%以上を占めた。CH4     の場合、亜寒帯地域での冬季フラックス(22土8mgc/m2/SeaSon冫が年間総フラ     ックスの27%を占めた。

    以 上 のよ う な こと か ら亜 寒 帯 地域 を 含む 北 半球の高 緯度地域 において 冬 季フ ラックス の見積も りは地球 規模の収 支を考え る上で無視 できない量と考え られ る。さらに、これらの温室効果気体に関する多くのフイー´レド観測のデー タは モデルに よる地球 規模の収 支のより 正確な見 積もりに大 きく寄与すると思 われ る。

(3)

学 位 論 文 審 査 の要 旨 主 査

副 査 副 査 副 査 副 査

教授 教授 助教授 助教授 室長

角皆 静 男 乗木 新 一 郎 田中 教 幸 渡辺 修 一

原薗 芳 信 (農 業環境技 術研究所)

     っ

     学位論文題名

  Studies on' Fluxes of Trace Gases through the Snowpack:their Implication to the Global Budgets      (亜寒帯地域における積雪を通した温室効果気体の      フラックス:地球規模収支への寄与に関する研究)

二 酸 化 炭 素 (C02)、 メ タ ン(CH4)、 亜 酸 化 窒 素(N20)な ど 温 室 効 果 気 体 による 地球温暖化 を明らか にするた めには、 地表を通 して移動 するこれらの輸 送量( フラックス )を正確 に見積も ることが 必要であ る。これ まで積雪で覆わ れ た 地 域 の 土 壌 か ら のC02とN20の 放 出 や 土 壌 へ のCH4の 吸 収 量 に関 し て は 無視さ れる場合が 多く、実 測された 例も非常 に少なか った。そ こで、申請者は 2回 の 冬 季 に 、 札 幌 周 辺 域 に お い て 積 雪 を 通 し て 移 動 す るC02、CH4お よ ぴ N20のフ ラ ック スを 見積り、 それらの 温室効果気 体の収支 における 役割を解 明 しよう とした。審 査員一同 が評価し た点は以 下である 。

  1)積 雪 中を 移動 する物質 のフラッ クスを求め るために 必要とな る拡散係 数 を 放 射 性 核 種 ( 半 減 期3.82日) で あ る2URnを 用 いて 決 定 する 方 法を 確 立 し たこと 。希ガスで ある222Rriは化 学的に安 定であり 生物活動 の影響を受けない ので、 その積雪中 での分布 は自己の 放射壊変 と拡散に よっての み決まる。これ を利用 するととも に、積雪 表面に設 置したチ ャンバー を用いて 得たフラックス の 値と も 比較 し た。その 結果22ZRnによ る拡散係数 は、ほぽ 雪の密度 に支配さ れてお り、積雪の上部では放射平衡になっていない場合があることがわかった。

また、 土壌中の222Rriを 用いて得 た積雪下 の土壌中 空気の拡 散係数は温度に大 きく依 存すること もわかっ た。

  2)1995年 か ら1996年 ま での 冬 季 にお い て 異な る 植生 を 持 つ低 温 科学 研 究

(4)

所、北大植物園、野幌森林公園と手稲山において積雪を通してのC02 とCH4 のフラックスを見積もり、植生による変動がそれほど大きくないことを明らか にしたこと。そして、各測点において積雪下のフラックスに最も大きな効果を 及ぽすものは土壌温度であることを明らかにしたこと。土壌からの積雪を通し て大気に放出されるフラックスは大きく変動するが、C02 とCH4 の冬季フラッ ク ス が 年 間 フ ラ ッ ク ス の 10 % と 25 % に な る こ と が わ か っ た 。   3 )土 壌か らのC02 、N20 と CH4 のフ ラッ クスと 積雪 深との関係を 1996 年 から1997 年までの冬季、低温科学研究所における約十日おきの観測結果から 明らかにしたこと。土壌中で形成される C02 ヤ N20 は、積雪が少ないと土壌 表面が凍結し、土壌の亜表層に貯まっていく。観測された土壌C02 の最大濃度 は 39 , OOO ppmv で、大気濃度の100 倍以上であった。また、N20 については、

大気 濃度 (310 ppbv) の300 倍 以上 であっ た。 なお 、N20 が高濃度になるの は、02 膩2 の体積比と逆相関になることから硝化反応によるものと推定したが、

脱窒反応の可能性がまったくないわけではなかった。積雪が厚くなると(50cm 以上)、雪が保温効果を示し、土壌の氷が融け、土壌中気体は活発に移動する ようになり、雪の中で高純度のC02 が観測された。融雪期には、土壌表面が溶 けた水で覆われ、土壌空隙が閉じ、気体の移動が押さえられて以前より小さな フラックスになった。

  4 )これらの亜寒帯地域で得られた2 年間のフラックスと、これまでに北半 球高緯度地域において観測された積雪期のフラックスを集め、北半球の植生分 布を 考慮し て、 土壌 から のC02 と N20 の放出量や、CH4 の土壌中での酸化量 を見積もったこと。その結果は、40 度以上の高緯度地帯からのC02 の冬季放 出量が約2GtC/season ( 1 く孔=1012gC )に達すること示している。これは、海 洋における正味の年間 C02 吸収量に相当し、雪で覆われた地帯からのC02 放 出量が無視できないことがわかる。

   審査員一同は、以上の評価をもとに、また、申請者は日本語を全く知らない 状態で4 年前に来日し、誠実、熱心に研鑽した結果、研究面ばかりではなく、

日本語も十分に習得していることや大学院課程における必要な単位も取得して

いることも考慮し、博士(地球環境科学)学位を受けるのに充分な資格を有す

るものと判定した。

参照

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