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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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学 位 論 文 題 名

博 士 ( 医 学 ) 丹 田 勝 敏

IN VIVO EFFECT OFASELECTIVE ENDOTHELIN   RECEPTOR ANTAGONIST ,BQ ―123 ,ON RENAL FUNCTION IN CYCLOSPORINA −TREATED RATS .

     (シンク口スポリン投与下ラットにおけるエンドセリンリセプタ一      拮抗薬(BQ ―123) の腎機能に及ぼす効果)

学位論文内容の要旨

研究 目的

  シ ク ロス ポリ ン はぃ ろい ろ な種 類の 臓 器移 植に お いて 生着 率 の向 上さ せ た免 疫抑 制 剤である。 しかし主 たる 副 作用 であ る 腎毒 性た め に, その 使 用に は制 限 や複 雑性 を きた して い る。 近年 そ の腎毒性に 対しては 数多 く の研 究が な され 報告 さ れて いる が 未だ その 作 用機 序に つ いて は不 明 であ る。 一 方エンドセ リンは最 近発 見 され たべ プ タイ ドで あ り、 その 作 用と して 内 因性 の強 カ な血 管収 縮 作用 が知 ら れている。 最近の研 究か ら シク ロス ポ リン の腎 毒 性に この エ ンド セリン(特にエン ドセリン−1(ET‑1))が重要な役割を 演じてい るこ と が明 らか に され 、特 に シク ロス ポ リン による腎血管攣縮 に強く関与してい ることが報告され ている。

そこ で シク ロス ポ リン 腎毒 性 にお ける 内 因性 エン ド セリ ンの 関 与を 調べ る ため に、 シ クロスポリ ン投与下 ラ ッ ト の 腎 に お け るET‑1の 発現 状 況とET‑1の りセ プタ 一 拮抗 剤(BQ‑123)の腎 機 能に 対す る 効果 につ い て 検討 し た。

対 象及 び方 法

  80〜100日齢 のWisLarLewis雄ラ ッ トにBQ‑123を生 理食 塩 水に て250mg/mlにな る よう に調整した後、持 続 的 に か つ 一 定 量 の 投 与 が 可 能 なALZET osmotic minipumpに充 填 し、 これ を 皮下 移植 し たも のをBQ群、

同 様 にBQ‑123の 代 わ り に 対 象 群 とし て生 理 食塩 水の み を充 填し たminipumpを 皮下 移植 し たも のをPS群と し 、 これ ら2群 を比 較 検討 した 。 各ラ ット を 代謝 ケー ジ にて 管理 し 、BQ‑123の 血中 濃度 が 一定 とな る 翌日 よ り24時 間蓄 尿 を開 始し 、 以降 連日 採 尿し た。 皮 下移 植後 か ら4日 目よ り11回50mgg量のシクロスポリ ン を4日 間 違日 腹腔 内 投与 した 。4日 間 投与 終了 後 に下 大静 脈 より 採血 し 、さ らに 腎 臓を 摘出した。全尿の 一部はクレアチニン(Cr)、NAG巛ーaceり1−p.D−glucosamidaSe)、Ca、ET−1の濃度を測定し、mL清はCrとBQ‐123 の 濃 度を 測定 し た。 腎組織 は通常のHE染色の ほかに、ET1の局在をみる ために抗E汀,1抗 体を用いた免疫組 織 染 色法 (ABC法) 、 また りセ プ ター の局 在 は【1IETIlを用 い たAuめ『dLdioraphyにて 観察 し た。

  なお検定にはt検定、WiIcoxon検定を用い危険率5D/。で有意差ありとした。

結果 I.シクロスポリン投与前後における腎機能

  (A)尿量はシ ク口スボリン投与 によりPS群は平均913から19.3BQ群は平均・82から34.6 mUdayと有意に増     加した。しかし両群問をそれぞれ比較したが差を認めなかった。(表1

  (B)尿 中 クレ アチ ニ ン総排泄量もPS群は 平均38.7から30.5、BQ群は平均4013から31.0 mg/day/100gと共に有     意に減少した。しかしこれについても両群間で有意差はなかった。(表1

  (C)尿 細 管障 害の 指 標の ーつ で ある 尿中NAG量 は シク 口ス ポ リン投 与により両群I珂で有意に増 加し、さら     にBQ群ではPS群よりも有意に高値を示していた。(表1

  (D)尿 中Ca/Cr値も シク 口 スボ リン 投 与後 にBQ群 、Ps群と も に有 意に 増 加し た。 し かし両詳問 には差を認     めなかった。(表1

  (E)血 清 ク レ ア チ ニ ン 値 はBQ0.51 PS0.58mg/dIPS群 で 有 意 に 高 値 を 示 し た 。 ( 表2   Dク レ ア チ ニ ン ク リ ア ラ ン ス はBQ0426PS群O366ml/min/100gBQ群で 高か っ た。 (表2   (GBQ群におけるBQ.123の血巾濃度は3.75士0.34FMであり、拈抗作′I]を有するのに |・分な濃度であった。

II.腎におけるBQ・123の結合部位

  A)MaaDaurddiographyでは、PS群で は腎全体広範囲にET1と結 合するりセプター が′作在していたが、

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(2)

    BQ群 で は 皮 質 内 の 腎 小 体 が 描 出 さ れ て い ずBQ‑123が 拮 抗 作 用 を 示し てい ると 思わ れ た。

  (B)これをmicroscopicに観察してみるとBQ群では、リセプターとET‑1が結合していることを示すgrain数が   糸球 体において著明に減少していた。さらに尿細管と小血管を観察したところ、PS群と比較してBQ   で は 、 尿 細 管に つい てはgrain数 はほ と んど 変化 無く 、小 血 管で はgrain数は 減少 して い た。

II[.腎組織内のET‑1の発現状況

  a‑r‑lの局在をみるために抗Er‑i抗体を用いた免疫組織染色で観察したところ両群共に無処置の状態と比 較して尿細管細胞質内にET‑1の発現が増強していたが、その局在については両詳問で差を認めなかった。

IV.尿中ET‑1量の測定

  抗ET‑1抗体を剛い、ELISA法にてシク口スポリン投与前後での尿中ET‑I量を測定したところ両群ともに 有意に増加し、特にBQ群の方が顕著であった。(表3

    考察  

  シク口スポリンの腎毒性において尿細管内の巨大ミトコンドリアやりソゾームに関連する小体の存在、

endoplasmic reLiculumの拡大による空胞化、微少石灰化及び変性が病理学的に確認されている。しかしこの ような病態を引き起こすメカニズムは未だ不明である。最近発見された内因性血管収縮物質であるエンド セリン(特にエンドセルン‑1(ET‑1))がシクロスポリンにより誘発される血管攣縮に関与していることが報 告されて以来、シクロスポリン腎毒性に関するET‑1の研究がなされ、以下のような結果が報告されている。

(1)ラ ッ ト の シ ク ロ ス ポ リ ン 腎 毒 性 モ デ ル で は 循 環 血 液 中 のET‑1値 の 上 昇 が 見 ら れ た 。 (2)ET‑1に対する抗体を投与することでシクロスポリンによって誘発された腎血流の減少を改善させること   が可能であった。

(3)ラットにおいて、シク口スポリンの投与により尿中ET‑I排泄量の増加と腎細織内のET‑1に対する1Jセプ   ターの増加が確認された。

  これらの結果からシクロスポリンの腎毒性にはET‑1による血管攣縮に起因する腎の虚血性変化が関与し ていると考えられる。そこで我々はこのET1による血管攣縮を予防することでシクロスポリンの腎毒性を 抑えることが可能かどうかをEr‑iに対するりセプタ―に対する拮抗剤を用いて検討してみた。その結果拮 抗剤の投与により糸球体濾過率を反映するとされる24時間クレアチニンクリアランスのシクロスポリン投 与による低下を改善させた。このことはautoradiographyによルリセプターが拮抗されていることや尿中ET‑1 排泄量がシクロスポリン投与により増加していることから、シク口スポリン投与によって増加した内因性 ET‑1が腎 の 糸球 体濾 過率 を 低下 させ 、こ の作 用 を拮 抗剤 であ るBQ‑123が抑制したと思われた 。   しかしその反面で尿細管障害の指標となる尿中NAG値が拮抗剤投与により有意に増加し、むしろ尿細管 障害が強調された。この原因としては、腎においてET‑1のりセプターが2種類以上存在することが知られ ており投与した拮抗剤はその一方しか作用を持たないこと、しかもその拮抗されないりセプターは尿細管 の細胞膜に存在し細胞内へのCa++流入に関与していることが培養尿細管細胞で証明されていることから、

結果的にシク口スポリン投与により過剰に産生されたET‑1が拮抗されなかった尿細管におけるりセプター と結合し、その作用を増強させたのではないかと推測した。

    結論

1.シク口スポリン投与によルラット尿細管細胞質内にET‑1の発現が増強し、尿巾ET‑I排泄量も増加し     た。

2. BQ‑123は腎の糸球体や血管に存在するりセプターと結合し拮抗作JHを示し、シク口スポリン投与に     よる腎機能障害のうち、Cr値で反映される腎機能については予防効果を認めた。しかし尿細管障害     はむしろ増強された。

表1シク口スポリン投与前後のBQ群、PS群の腎機能     volume  ToLal Cr  Total NAG

    (ml/day)  (mg/day/100g)  (10‑3U/day)

NAG/Cr (lff2U/g )

Ca/Cf (10‑2)

=  :  :  :    :  :  =:  =:  ご  =ニ =ニニニニ =ニ==ニニごニニごニニニニニニニごニニご=ご=ニニニニニ   (前)BQ詳(n=7)  8.20.34  4013士1.76  97.211.77  7.3土085  2.40.22

    Ps(n=7)  9.3士0.63  38.7士2.21  118.6士8.81  9.1土0.73  2.5O、25

  〔 後 )BQ詳 (n7  346673  3101.87  48132959  521231  501.18     PS膵 (n7  1933.10  30.61.84  382.325.55  4183.71  62130

‑112

(3)

表2シク口スポリン投 与後のBQ群、PS群のCr濃度、24h‑CCr、BQ‑123濃度 serum Cr

(mg/dl)

24h‑CCr (ml/min/100g)

serum BQ‑123     (〃 M)

BQ群(n=7 PS群(n=7

 0.51:t 0.016' 0.58 :t:0.028'

0.426土 0.031         3.75ic 0.34

0.366士0.022                                                   [mean土S.E.,   *  : p< 0.05]

表3シク口スポリン投 与前後のBQ群、PS群の尿中ET‑1排泄量     投与前  投与後

BQ群(n;7 PS群(n=7

n.d.‑ 69.58 n.d.〜 57.75

49.92〜 8047.62    (pg/day)

   n.d.〜 333.35         ( n.d. :  not detccd)

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学位論文審査の要旨

    主査  教授  小柳知彦     副査  教授  菅野盛夫     副査  教授  齋藤秀哉     学位論文題名

IN VIVO EFFECT OFA.SELECTIVE ENDOTHELIN   RECEPTOR ANTAGONIST,BQー123,ON RENAL FUNCTION IN CYCLOSPORINA―TREATED RATS.

    ( シ ン ク 口 ス ポ リ ン 投 与 下 ラ ッ 卜 に お け る エ ン ド セ リ ン リ セ プ タ 一     拮抗薬(BQー123)の腎機能に及ぼす効果)

  研究目的

Endothelin・1(ET―1)がシク口スポリン(CsA)の腎毒性のうちの腎血管攣繍に強く関与してい る こ と が 報 告 さ れ てい る 。 そこ でCsA腎 毒 性に お け る 内因 性 エ ンド セ リ ンの 関 与 を調 ぺ る ため に 、CsA投 与 下ラ ッ ト の腎 に お けるETー1の 発現状 況とり セプター 措抗剤 (BQ‑123) の腎機能に対する効果について検討した。

  対象及び方法

80 ‑‑100日 齢 のWistar系ラッ トにBQ‑123を 生理食塩 水にて 調整した 後、osmotic minipump に 充 填 し 皮 下 移 植 した も の をBQ群 、同 様 に 生理 食 塩 水 を投 与 し たも の をPS群 と し、2群 を 比較 検 討 した 。 各 ラ ットを代 謝ケージ にて24時f飼蓄 尿をぉH始し 、以降連 日採尿 した。

皮下移 植後か ら4日 目より1日1回50mひくg量のCsAを4日RlI]連日腹腔内投与した。投与終了 後 に採 血 し 、腎 臓 を 摘 出し た 。 全尿 の 一 部は ク レ アチ ニ ン(Cr)、NAG、Ca、ET−1の濃度 を 、m清 はCrとBQ・123の濃 度 を 測定 し た 。ET‑1の 局在 は抗ET.1抗体 を用い た免疫組 織染 色法(ABC法)、リ セプタ ーの局在 は[1251] ET̲1を 用いたAutoradiographyに て観察し た。

  結果

I. CsA投与前後における腎機能

(A)尿量は(ニsA投与によりBQZ:Tは平均8.2から34.6、Pszrrは平均り.3から19.3ml/dayと有意     に増加した。而群tnjの比較では差を認めなかった。

(B)尿 巾Cr量もPS群 は平均38.7から30.5、BQ群 は平均40.3から31.0m〆day/100gと共に有   意に減少した。これも両群fmで差はなかった。

(C)尿 中NAG量 はCsA投 与に よ りBQ群 は 平均97.2か ら481.3、ps群 は平 均118.6から382.3     (10'3XU/day)と 有 意 に 増 加 し 、BQ7(TはPS群 よ り も 有 意 に 高1虹 を 示 し た 。 ゆ)尿 巾Ca/Cr値もCsA投与後BQ群、Ps群 共に有意 にょ田加 したが両群f‖Jに差はなかった。

(E)Jfll清Cr1直 はBQ7rcO.s1、Ps71T0.58mg/dlとPsi洋 で 有 意 に 高1血 を 示 し た 。   (F)Cr clearanceはBQ群0.426、PSiぽ0.366ml/min/100gとBQ11Tで ュ も か っ た 。 (G) BQ群におけるBQ,123のIfll巾濃度は3.75土0.34PMであった。

II.1欝におけるBQ‑123の結合音b位

    Ps群では腎糸球体や亅rIL管をq・】´C、に、ETー1と結合するりセプ夕一が存祉していたが、

    BQ7i'Cでは糸球体や【缸管が描出されていずBQ‑123が拮抗作J司を示していると思われた。

III.腎組織内のET・1の発現状況

    抗ET‑1抗 体を用い た免疫 組織染色にて、而i洋共に無処證の状態と比[陵して尿釧管ネm胞   質 内 にET― 1の 発 現 が 増 強 し て い た が そ の 局 在 は 而 群 川 で 差 を 認 め な か っ た 。   IV.尿中ET・1量の測定

    抗ET・1抗体を胴い、ELISA法にてCsA投与前後での尿l・書亅ET‑1量をm0定したところ両群と

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もに有意に増加し、 特にBQ群の方が顕著であった。

  考察

  CsAで 誘 発 さ れ る 血 管攣 縮へ のET‑1の関 与が 報告 され て以 来、 ラッ ト腎 毒性 モデ ルで の 循環血液中のET・1値の上昇、ET‑1の抗体によるCsA誘発の腎血流減少の改善、CsA投与 後 のラ ット 腎組 織内ET‑1リセ プタ ーの 増 加等 が報 告さ れた。我々はErr11の 血管攣縮の予 防 がCsA腎 毒 性を 抑制 する かど うか をET−1の りセ プタ ー拮 抗剤 を用 いて 検討 した 。結果 と して 、拮 抗剤 投与 によ り糸 球体 濾過 率 を反 映す るCrclearanceのCsA投 与に よる 低下を 改善させた。このこ とはautoradiographyにてり セプターが拮抗されていることと尿中ET−1 量 の増 加し てい るこ とか ら、CsA投 与に よっ て増 加し た内 因性 のET―1が 腎の 糸球 体濾過 率 を 低 下 さ せ 、 こ の 作 用 を 拮 抗 剤 で あ る BQ―123が 抑 制 し た と 思 わ れ た 。   し か し そ の 反 面 で 尿 細管 障害 の指 標と なる 尿中NAG値 が拮 抗剤 投与 によ り有 意に 増加 し 、む しろ 尿細 管障 害が 強調 され た。 こ の原 因と して は、腎においてET‐1のりセプター が2種 類 以 上 存 在 す る こと が知 ら れて おり 投与 した 拮抗 剤は その 一方 しか 作用 を持 たな いこと、しかもその 拮抗されないりセプターは尿細管の細胞膜に存在し細胞内へのくニa十十 流 入 に 関 与 し て い る こ とが 培養 尿細 管細 胞で 証明 され てい る こと から 、結 果的 にCsA投 与 により過剰に産生されたET―1が拮抗されなかった尿細管におけるりセプタ ーと結合し、

その作用を増強させ たのではないかと推測した。

  結論

1.CsA投与 によ ルラ ット 尿細 管細胞質内にET・1の発現が増強し、尿中ET.1排泄量も増加 した。

2.BQ・123は腎 の糸 球体 や血 管に 存在 す るり セプ ター と結合し拮抗作用を示し、CsA投与 に よる 腎機 能障 害の うち 、Cr値で 反映 さ れる 腎機 能に つい ては 予防 効果 を認 めた 。しか し尿細管障害はむし ろ増強された。

  以上 本研 究はCsAの 腎毒 性に 関与 するET‐1の役 割を 詳細 に検 討し その 機序 を明 らかに し た も の で 学 術 的 意 義 は 高 く 学 位 博 士 ( 医 学 ) 授 与 に 値 す る も の と 判 定 さ れ た 。

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