• 検索結果がありません。

学位論文内容の要旨

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "学位論文内容の要旨"

Copied!
5
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

博 士 ( 農 学 ) 洪

  

鎭 成

    

学位論文 題名

IvIolecular Evolution of Cz.tcz.t771

ろぞァ

Mosaic Vir7its Soybean Strains (SSVs) and Their Adaptation     to Cultivated and Wild Soybeans

(キュウリモザイクウイルスダイズ系統の分子進化と

    

ダイズやツルマメヘの適応)

学位論文内容の要旨

  キ ュ ウ リ モ ザ イ ク ウ イ ル ス(CMV)1000種 以 上 の 植 物 に 感 染 し 、 世 界 中 の 作 物に 多大 な被 害を 与え てい る。 特に ダ イズ に感染するもの(CMVダイズ系統)は、過 去に ダイ ズ萎 縮ウ イルス(SSV)と呼ばれ、日本や東南アジアで被害報告が出された。

SSV感染自体はさほ ど減収に直結することはないが、感染種子は表面に褐色の斑紋を形 成し、商品価値が著しく低下してしまう。CMVの普通系統と比較してSSVの宿主範囲は 狭くなっており、SSVの系統とダイズ品種との間には様々な抵抗性が存在する.。他のC MVと 宿主 間に これ ほど多様な抵抗性を観察することはな く、SSVとダイズの組合わせ に特徴的と言える。今回、我々はこの抵抗性の多様性を生み出す原因について考察する ために、8系統のSSVを日本、韓国、中国、イン ドネシアから収集し、分子生物学的、

系統 進化 学的 解析 を試 みた 。以 下に 研 究結 果についてその概略を箇条書きにする。

1. SSVの宿主範囲

  SSVはダイズと野 生ダイズ(ツルマメ)によく感染するが、CMVの一般的な宿主であ るタバコ、トマトそしてキュウりなどには一部 の例外を除いて全身感染しない。これ は、SSVがダイズに よく適応した結果と考えられる。

2.ダイズ品種のSSV抵抗性

  日 本 で 過 去 に 収集 され たSSVを4系統(AB,C,D)、 中国 分離 株(Ch)、 イン ドネ シア 分離 株(In)そ して 当教 室で 独自 に ロシ アで採集したツルマメから分離したもの (WR)、 さ ら に は 韓 国 の ツ ル マ メ か ら 分 離 し たも の(K)の8系統 のSSVを準 備し た。

これらをダイズとツルマメに接種して、SSVの寄生性を調査した結果、特にSSV‑lnが日 本 の 南 部 で 採 集 さ れ た ツ ル マ メ に 全 身 感 染 で き な い こ と が 判 明 し た 。 3. SSVの塩基配列、アミノ酸配列の比較

  SSVは 他 のCMV同 様3本 の ゲ ノ ムRNAを も っ て い る 。 各SSV系 統 のRNAを すべ てク ローニングし、全長の塩基配列を決定した。その結果、ゲノムの構造やコードしている タン パク 質は すべ てCMVのも のと同じであり、高い相同性が観察された。しかし、各

1270

(2)

遺 伝子に ついて塩 基配列 の系統樹を構築すると、SSVは他のCMVと独立したグループを 作ることが明らかになり、ダイズヘの適応の結果だと予想された。多数の植物を宿主と す るCMVがその他 のグル ―プ(subgroup IA,IB,n)を作 っている ことから 、SSVはこ のウイルスの系統の中で例外的な存在といえる。

4.ダイズ品種への全身感染を決定するウイルス因子

  ダイズ品種にはウイルス抵抗性因子が育種によって積極的に導入されているものと考 え られる。もし、SSV抵抗性が複数の遺伝子に制御されているときには遺伝解析が難し く なる可 能性があ るため 、ツルマメにSSVを接種してSSV遺伝子と抵抗性の関係につい て 解析し た。供試 するツ ルマメはSSV‑Dに全身感染して、SSV‑Cに全身感染しないHyou goを 選抜し た。感染 性のあ る転写産 物をcDNAク ローンか ら合成 するシス テムを 構築 し、様々なシュードリコンピナントウイルスやキメラウイルスを接種した。その結果、

Hyougoに全身感染するために必要となる遺伝子は3aタンパク質の遺伝子であることが判 明した。

5. 3a遺伝子の進化

  SSVの3aタンパク質がダイズ(ツルマメ)の品種抵抗性に重要であることが明らかに な ったので、3a遺伝子をさらに詳細な系統進化学的な解析を行った。普通系統のCMVが 属 するsubgroup lAとSSV groupの中での1塩基あたりの非同義置換の数を比較したとこ ろ 、SSVは前者の5倍の スピー ドで変化 してい ることが 判明した。これはSSVがダイズ ヘ適応するために、3aタンパク質が選択圧にさらされて進化してきたことを示唆するも の である 。コ一卜 タンパ ク質(CP)遺伝子についても同様に比較した結果は、両者のグ ループで有意な差が検出できず、CPには3aタンパク質ほどの選択圧がなかったことがわ かった。

6. SSVの進化とダイズ(ツルマメ)への適応

  栽培ダイズは野生のダイズ(ツルマメ)から進化したと考えられ 両者には交配の障 害が全くないため、自然界でも高率で遺伝子を交換している。栽培ダイズは必ずしも現 在 の栽培地で長期間育成されたものではないため、SSVに対する抵抗性の地理的な違い を 観察するのに適していない。したがって、我々はツルマメとSSVの組合せが両者の進 化を考察するために貴重な情報をもたらすものと判断した。SSV‑Inのみが日本の南方の ツルマメに全身感染できないことは、次のように理解できる。インドネシアにはツルマ メが自生していないため、SSV‐Inは栽培ダイズで経代してきたものと考えらる。したが って、インドネシアダイズと異なる遺伝子型をたまたま持つツルマメに感染する能カを も っていなかったとしても不思議ではない。我々が発見したSSVとツルマメとの適応関 係は、「赤の女王仮説」によってよく説明されるかもしれない。「赤の女王仮説」はも ともと進化における有性生殖の意義について説明するために考えられたものであり、病 原体との競争こそ生物の進化の原動カとなるという前提がある。「病原体が宿主を変化 させ、宿主が病原体を変化させる」ということが繰り返し行われ、生物は進化すると説 明される。ダイズやツルマメにたくさんの抵抗性遺伝子が存在することは宿主が変化し て きたことを意味し、SSVの3aタンパクがアミノ酸配列を変えてきたことは、病原体が

1271

(3)

変化したことを意味する。今後、さらなるSSVの分離株の解析を積み重ねることで、

「 赤 の 女 王 仮 説 」 を う ま く 指 示 す る 具 体 例 と な る か も し れ な い 。

1272

(4)

学位論文審査の要旨

    

学 位 論 文 題 名

IVIolecular Evolution of Cucu7nber Mosaic

ri7,1ttS Soybean Strains (SSVs) and Their Adaptation     to Cultivated and Wild Soybeans

    

( キ ュ ウ リ モ ザ イク ウ イ ル ス ダ イ ズ 系 統 の 分子 進 化 と

    

ダ イ ズ や ツ ル マ メ ヘ の 適 応 )

  

本 研究 は 、 図

17

、 表

9

、 引用文 献110 を 含み 、6 章か らな る総 ベージ 数91 の 英 文 論 文 で あ る 。 他 に 参 考 論 文

2

編 が 添 え ら れ て い る 。

  

  

キ ュ ウ リ モザ イ ク ウ イ ル ス

(CMV)

1000

種 以上の 植物 に感 染し、 世界 中の 作物に多大な被害を与えている。特にダイズに感染するもの(CMV ダイズ系統)は、

過去にダイズ萎縮ウイルス(SSV) と呼ばれ、日本や東南アジアで被害報告が出さ れた 。CMV の 普通 系統 と比 較して

SSV

の宿 主範 囲は狭くなっており、

SSV

の系統 とダイズ品種との間には様々な抵抗性が存在し、SSV とダイズの組合せに特徴的で ある。この抵抗性の多様性を生み出す原因について考察するために、8 系統のSSV について分子生物学的、系統進化学的解析を試みた。

1

. SSV の宿主範囲

  SSV

はダイズと野生ダイズ(ツルマメ)によく感染するが、CMV の一般的な宿主 であるタバコ、トマトそしてキュウりなどには一部の例外を除いて全身感染しない。

これは、SSV がダイズによく適応した結果と考えられる。

2.

ダイズ品種のSSV 抵抗性

  

日本で分離されたSSV4 系統

(A

B

C

,AE) 、中国分離株

(Ch)

、インドネシア分 離株

(In)

そし て当教室で独自に分離したもの(WR) 、さらには韓国のツルマメか ら分離したもの(K) 、計8 系統のSSV を準備した。これらをダイズとツルマメに接 種して、SSV の寄生性を調査した結果、特にSSV‑In が日本の南部で採集されたツル マメに全身感染できないことが判明した。

3. SSV

の塩基配列、アミノ酸配列の比較

  SSV

は 他 の

CMV

同 様

3

本 の ゲ ノ ム

RNA

を も っ て い る 。 各

SSV

系 統 の

RNA

を す べてクローニングし、全長の塩基配列を決定した。その結果、ゲノムの構造やコ ̄

郎 税

一  

  久

田 田

上 増

授 授

教 教

査 査

主 副

(5)

ドしているタンパク質はすべて

CMV

のものと同じであり、高い相同性が観察された。

しか し、 各遺伝 子に ついて塩基配列の系統樹を構築すると、SSV は他のCMV から 独立したグループを作ることが明らかになり、ダイズヘの適応の結果だと予想され た。多数の植物を宿主とするCMV がその他のグループ(subgroup IA ,lB ,II) を作っ て い る こ とか ら 、

SSV

は こ の ウ イ ル ス の系統 の中 で例 外的な 存在 とい える 。

4.

ダイズ品種への全身感染を決定するウイルス因子

  

野生ダイズであるツルマメにSSV を接種してSSV 遺伝子と抵抗性の関係について 解析 した 。供試 する ツルマメはSSV‑D に全身感染して、SSV‑C に全身感染しない

Hyougo

を選抜した。感染性のある転写産物をcDNA クローンから合成するシステム を構築し、様々なシュードリコンピナントウイルスやキメラウイルスを接種した結 果、Hyougo に全身感染するために必要となる遺伝子は3a 夕ンパク質の遺伝子であ ることが判明した。

5

3a

遺伝子の進化

  SSV

3a

夕ンパク質がダイズ(ツルマメ)の品種抵抗性に重要であることが明ら かになったので、3a 遺伝子について系統進化学的な解析を行った。普通系統の

CMV

が属するsubgroup IA とSSV group の中での1 塩基あたりの非同義置換の数を比較し たところ、SSV は前者の5 倍のスピードで変化していることが判明した。これはSSV がダイズヘ適応するために、3a 夕ンバク質が選択圧にさらされて進化してきたこと を示唆するものである。コートタンパク質(CP) 遺伝子についても同様に比較した 結果は、両者のグループで有意な差が検出できず、CP には

3a

夕ンパク質ほどの選 択圧がなかったことがわかった。

6. SSv

の進化とダイズ〈ツルマメ)への適応

  

栽培ダイズとツルマメの間には交配の障害がないため、自然界でも高率で遺伝子 を交換している。SSVIn のみが日本の南方のツルマメに全身感染できなかったのは、

インドネシアにツルマメが自生していないため、ツルマメと共進化してこなかった ためではなかろうか。このようなSSV とツルマメとの適応関係は、「赤の女王仮説」

に当てはまるかもしれない。ダイズやツルマメにたくさんの抵抗性遺伝子が存在す ることは宿主が変化してきたことを意味し、SSV の

3a

夕ンパク質がアミノ酸配列を 変えてきたことは、病原体が変化したことを意味する。今後、さらなるSSV の分離 株の解析を積み重ねることで、「赤の女王仮説」をうまく指示する結果が得られるか もしれない。

  

以上のように本論文はウイルスと宿主の共進化を遺伝子の系統進化学的解析によ って説明しようとしたものであり、CMV に対する抵抗性遺伝子の出現メカニズムを 考慮する上で非常に興味深い。これらの研究成果は、関連学会でも学術上の高い評 価を受けている。

  

よって、審査員一同は、洪鎮成氏が博士(農学)の学位を受けるのに十分な資格

を有すると認めた。

参照

関連したドキュメント

.コロニアル文学全体の視野の中でこの作家を位置づけるという試みを行うところまで行

     ス ポンジ中心部において,培養3 日後では未処理のスポンジ内表面には細胞はほとん    どみ られ ないのに対しCNT コートスポ

   第5 章では、第 4 章で構築した軟骨欠損モデルを用いて TGF‑ ロ 3 遺伝子を導入した MSC の軟

   主作物としてダイズとトウモロコシを有機栽培した圃場にカパーク口ップとして秋播き性ライ ムギ

  

なかでも大きな成果をあげたのが、バプティスト派によるスゴー・カレン族を主たる対象とした

論文審査委員 教授 前田 守弘 教授 諸泉 利嗣 教授 森 也寸志

トップハットモードのナノ秒パルスレーザを用いた銀ナノワイヤ透明導電膜の除去加工においては,銀ナ