博 士 ( 医 学 ) 小 松 博 史
学 位 論 文 題 名
肥大型心筋症における心筋血流予備能の低下は 心筋内血液量の減少によって規定される
学位論文内容の要旨
ポジ ト ロン 放射 形断 層撮 影法(PET)を用いた研究により,肥大 型心筋症(HCM)では単位心筋 重量当た りの分 時心筋血流量(MBF)は,安静 時には正常に保たれるが,反応性充血時には低下していることが知ら れ て い る . こ のMBFは 心 筋 内 の 血管 容積 分画 で ある 心筋 内血 液量(MBV)と 心 筋内 血流 速度 (血 液 の mean transit rate)の2つのコンポーネントの積として表すことができる,HCMでは心筋細胞の肥大,問質の 線 維化 , 小・ 細動 脈壁 の肥 厚 など からMBVが低 下し ていると予 想されるが,これまでにHCMのMBVに関 す る報 告 はな く, また ,反 応性充血 時のMBF低下がMBVあるいは 心筋内血流速度のどちらの低 下による のかは 解明されていない.さきに山田らは,心筋コントラストエコー法(MCE)において超音波照射野の音場 不 均一 性 を克 服し ,HCMな ど彌慢性 の心筋疾患でもMBVの定量的 な評価が可能となる方法を報 告した,
本研 究 では ,(1) HCM患者 の左 室 心筋 でMBVが 低下している か否か,(2) HCM患者の反応 性充血時 のMBF低下が,MBVと心筋内血流速度のどちらの低下に起因するかを検討した.
方 法
対 象 は , 非 対称 性心 室中 隔肥 大 を呈 する 非閉 塞性 のHCM患 者22名(HCM群) と年 齢 ・性 別を 一致 さ せ た健 常ボ ランティア9名 (健常対照群),全例で通 常の心エコー法とMCEを施行 した.MCEにて心室中 隔 領域 と左 室 後側 壁領 域に お ける 安静時およびアデ ノシン三リン酸(ATP)による 反応充血時のMBVを測 定 した .HCM群 のう ち13例 と健 常対 照群 全 例で150水PETを 施行し,心室中隔と左 室後側壁の安静時と 充血時のMBFを測定した.
MCEは フィリップスメディカルシス テム社製超音波診断装置Sonos 5500とS3探触子を用いて施行した.
超 音波 造影 剤Levovistを750 mg/minで持続投与し ながら,6心拍に1回の拡張末 期同期の間歇送信法 で,心尖部四腔像または五腔像のハーモニック.パワードプラ画像を安静時とATP(O.16mg瓜ガInjn)による 反応性充 血時に記録した,画像はYD社製解析ソフトウエアVoluMap・445を用い解析した,中部レベルの 心室中隔 と左室後側壁の心内膜側心 筋と隣接する左室内腔に楕円 形の関心領域を設定し,心筋のコント ラスト強度(CIエy0)と内腔血液のコントラスト強度(CIblーd)をdBで計測した.補正心筋コントラスト強度
(relativecontrastintensity:RelCI)はRelCI=CIエyo−CIblood[dB]で求め,心筋内血液量はMBV= 10Rd噺0x100%で算出した.
150水PETは シ ー メ ン ス ノCTI社 製 ス キ ャ ナEa虹EXACTHR十 と 住 友 重 機 器 工 業 社 製 サ イク ロ卜 ン
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CYPRIS−HM18で 精 製 さ れ た150標 識 水 を 用 い て 施 行 し た .1500 MBqの150水 を 持 続 静 注 し な が ら , 安 静 時 と 灯Pに よ る 反 応 性 充 血 時 に6分 間 の ダイ ナ ミ ッ ク スキ ャ ン を 行 い, 左 室 内 腔 と心 筋 の 時 間 放 射能 曲 線 を シ ン グ ル コ ン パ ー ト メ ン ト 動 態 モ デ ル に 基 づ く ア ル ゴ リ ズ ム に よ っ て 解 析 し て , 左室16セ グ メン ト の MBF[ml/min/g】 を求 め た . 心 室中 隔4セ グ メン ト と 後 壁 お よび 側 壁 の4セグメ ントのMBFを 平均し て, それぞ ´ れ 心 室 中 隔領 域 と 後 側 壁領 域 のMBFと し た .
MCEで 求 め たMBVと150水PETで 求 め たMBFか ら , 心 筋 内 血 流 速 度 を 表 すmean transit rate(B) を ロ = (MBF/MBV)x1.67[sec‑l]で算 出 し た .
結 果
HCM群 の 心 室 中 隔 厚 は19.2土4.6 mmと 著 し く 厚 く , 左 室 後 壁 厚 は10.2土1.5 mmで と も に 対照 群 よ り 有 意 に 高 値 で あ っ た . 心 室 中 隔 で は ,HCM群 のMBFは 安 静 時 に は 正 常 に 保 た れ て い た が ( 対 照 群vs HCM群 ;0.69土0.17 vs 0.73土0.15 ml/min/g p=0.56), 反 応 性 充血 時 に は 有 意に 低 下 し て い た(3.46土 1.30 vs l.52土0.55 ml/min/g pく0.001) .HCM群 の 心 室 中 隔のMBVは 対照 群 と 比 べ 安静 時(3.47土1.05 vs 2.05土0.79,pく0.001)充 血時(4.28土1.65 vs 2.18土1.17,pく0.001)ともに有意に低かった.一方,HCM群 の 心室 中隔の 心筋内 血流 速度ロ は安静 時には 対照 群より も高く(0.36土0.16 vs 0.65土0.25,pく0.01),充 血 時 に は 有 意 差を 認 め な か った (1.43土0.59 vs l.55土0.90,p―0.73) .左室 後側壁 では,HCM群のMBFは心 室 中隔 と同様 に,安 静時 には保 たれて いたが(0.98土0.26 vs 0.99土0.18,p 0.91), 充血時 には対 照群よ り も 有 意 に 低 下 し て い た(3.41土1.15 vs 2.23土0.67pく0.01) .後 側 壁 のMBVお よ び 口 は安 静 時 お よ び充 血 時 ともに 両群 間で有 意差を 認めな かった .
両 群 の 心 室 中 隔 と 左 室 後 側 壁 を 合 わ せ た 安静 時 のMBVは 局 所 壁 厚 と有 意 な 逆 相 関を 示 し た(r=―0.69。 pく0.0001) . 健 常 対 照 群9例 とHCM群13例 の 中 隔 と 後 側 壁 の 充 血 時 の ロ はMBFと 相 関 し な か っ た が
(r 0.20,p=0.21),充 血時のMBVはMBFと の問 に有意 な正相 関を示 した (r 0.69,pく0.0001).また,安静 時 のMBVと充血 時のMBFと の間に も有意 な正相 関を 認めた(r=0.62,pく0.0001) .
考 察
HCM患 者 の 肥 大 の 強 い 左 室 心 筋 で は , 安 静 時 と 反 応 性 充 血 時 と も に ,MBVは 正 常よ り 低 下 し てい た . こ の 低 下 は 局 所 壁 厚 と 関 連 し , 壁 が 厚 い ほ どMBVは 低 か っ た .HCMのMBV低 下 は , 心 筋 細 胞 の 肥 大 , 問 質 の 線 維 化 , 小 ・ 細 動 脈 血 管 壁 の 肥厚 , 毛 細 血 管密 度 の 減 少 など の 心 筋 組 織に お け る 病 理 学的 変 化 を 反 映 し て い る と 考 え ら れ る . 過 去 の 報 告 と 一 致 し て , 本 研 究 で もHCM患 者 の 安 静 時 のMBFは 保 たれ る が 反 応 性 充 血 時 のMBFは 正 常 よ り も 低 下 し , 心 筋 血 流 予 備 能 は 障 害 さ れ て い た .HCM患 者 の 肥 大 の 強 い 心 室 中 隔 で は , 安 静 時 の 心 筋 内 血 流 速度 は 亢 進 し てお り , 充 血 時の 心 筋 内 血 流速 度 は 正 常 と 同等 で あ っ た . 更 に , 反 応 充 血 時 のMBFは 心 筋 内 血 流 速 度 で は な くMBVと の 間 に 有 意 な 相 関 を認 め た . こ れら の 結 果 か ら ,HCMで は , 安 静 時 に はMBVの 低 下 を 心 筋 内 血 流 速 度 の 亢 進 に よ っ て 代 償 する 機 序 に よ り, 心 筋 組 織 へ の 酸 素 供 給 を 規 定 す るMBFが 正 常 に 保 た れ て い る と 考 え ら れ る . し か し , 反 応 性充 血 時 に はMBV の 低 下 を 心 筋 内 血 流 速 度 の 更 な る 亢 進 で 十 分 に 代 償 す る こ と が でき ず ,MBVの 低 下 が 主 たる 規 定 因 子 と な っ てMBFが 低 下 し て い る と 考 え ら れ る ,
結 語
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本研究は,MCE を用いてHCM 患者 の左室心筋の局所MBV を定量評価し,局所の壁厚やMBF との関 連を明らかにした初めての報告である. HCM 患者の左室心筋では,MBV は局所壁厚と関連して低下して いた.安静時には,心筋内血流速度が上昇しMBF を正常に保っているが,反応性充血時には MBV の低
`下に応じてMBF が低下していた,
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学位論文審査の要旨 主 査 教 授 筒井裕之 副 査 教 授 松居喜郎 副 査 教 授 玉木長良
学 位 論 文 題 名
肥大型心筋症における心筋血流予備能の低下は 心筋内血液量の減少によって規定される
ポジ トロン放 射形断 層撮影法 (PET) を 用いた研究により、肥大型心筋症(HCM) では分時 心筋 血流量(MBF) は、安静時には正常に保たれるが、反応性充血時には低下していること が知 られてい る。この MBF は 心筋内の 血管容積分画である心筋内血液量(MBV) と心筋内血 流速度の2 っのコンポーネントの積として表すことができる。HCM では心筋細胞の肥大、問質 の線維化、小・細動脈壁の肥厚などからMBV が低下していると予想されるが、反応性充血時 の MBF 低 下が MBV ある いは心 筋内血流 速度のど ちらの 低下によ るのか は解明さ れてい な い。 そこで本 論文では 、(1 ) HCM 患者の 左室心筋でMBV が低下しているか否か、 (2) HCM 患 者の 反 応性 充血時の MBF 低 下が、 MBV と心筋 内血流 速度のど ちらの 低下に起 因する か を検討した。
対象 は、非対 称性心 室中隔肥 大を呈す る非閉 塞性の HCM 患者 22 名と年齢・性別を一致 させ た健常対 照9 名 。全例 で心エコ ー法と MCE を施行し、心室中隔領域と左室後側壁領域 にお ける、安 静時およぴアデノシン三リン酸(ATP) による反応充血時のMBV を測定した。
HCM 群 の う ち 13 例 と健 常 対 照全 例 で 150 水 PET を 施行し、 心室中 隔と左室 後側壁の 安静 時 と充 血 時 の MBF を 測定 し た 。ま た 、 MCE で 求め た MBV と 150 水 PET で求め た MBF から、
心 筋 内 血 流 速 度 ( ロ ) を ロ = (MBF / MBV)x1.67 [sec‑1] で 算 出 し た 。 HCM 群の心室 中隔は著しく厚く、左室後壁厚は対照群に比しわずかではあるが有意に高 値で あった。 心室中隔 では、 HCM 群の MBF は 安静時には正常に保たれていたが、反応性充 血 時に は 対照 群に比し 有意に 低下して いた。HCM 群の 心室中隔 のMBV は、安静 時・充 血 時と もに対照 群と比べ有意に低値であった。一方、HCM 群の心室中隔の心筋内血流速度ロ は、安静時には対照群よりも高く、充血時には有意差を認めなかった。左室後側壁では、
HCM 群のMBF は、心室 中隔と 同様に、 安静時 には正常と同等に保たれていたが、充血時に
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