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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 医 学 ) 小 松 博 史

学 位 論 文 題 名

肥大型心筋症における心筋血流予備能の低下は 心筋内血液量の減少によって規定される

学位論文内容の要旨

  ポジ ト ロン 放射 形断 層撮 影法(PET)を用いた研究により,肥大 型心筋症(HCM)では単位心筋 重量当た りの分 時心筋血流量(MBF)は,安静 時には正常に保たれるが,反応性充血時には低下していることが知ら れ て い る . こ のMBFは 心 筋 内 の 血管 容積 分画 で ある 心筋 内血 液量(MBV)と 心 筋内 血流 速度 (血 液 の mean transit rate)の2つのコンポーネントの積として表すことができる,HCMでは心筋細胞の肥大,問質の 線 維化 , 小・ 細動 脈壁 の肥 厚 など からMBVが低 下し ていると予 想されるが,これまでにHCMのMBVに関 す る報 告 はな く, また ,反 応性充血 時のMBF低下がMBVあるいは 心筋内血流速度のどちらの低 下による のかは 解明されていない.さきに山田らは,心筋コントラストエコー法(MCE)において超音波照射野の音場 不 均一 性 を克 服し ,HCMな ど彌慢性 の心筋疾患でもMBVの定量的 な評価が可能となる方法を報 告した,

  本研 究 では ,(1) HCM患者 の左 室 心筋 でMBVが 低下している か否か,(2) HCM患者の反応 性充血時 のMBF低下が,MBVと心筋内血流速度のどちらの低下に起因するかを検討した.

    方  法

  対 象 は , 非 対称 性心 室中 隔肥 大 を呈 する 非閉 塞性 のHCM患 者22名(HCM群) と年 齢 ・性 別を 一致 さ せ た健 常ボ ランティア9名 (健常対照群),全例で通 常の心エコー法とMCEを施行 した.MCEにて心室中 隔 領域 と左 室 後側 壁領 域に お ける 安静時およびアデ ノシン三リン酸(ATP)による 反応充血時のMBVを測 定 した .HCM群 のう ち13例 と健 常対 照群 全 例で150水PETを 施行し,心室中隔と左 室後側壁の安静時と 充血時のMBFを測定した.

  MCEは フィリップスメディカルシス テム社製超音波診断装置Sonos 5500とS3探触子を用いて施行した.

超 音波 造影 剤Levovistを750 mg/minで持続投与し ながら,6心拍に1回の拡張末 期同期の間歇送信法 で,心尖部四腔像または五腔像のハーモニック.パワードプラ画像を安静時とATP(O.16mg瓜ガInjn)による 反応性充 血時に記録した,画像はYD社製解析ソフトウエアVoluMap・445を用い解析した,中部レベルの 心室中隔 と左室後側壁の心内膜側心 筋と隣接する左室内腔に楕円 形の関心領域を設定し,心筋のコント ラスト強度(CIエy0)と内腔血液のコントラスト強度(CIblーd)をdBで計測した.補正心筋コントラスト強度

(relativecontrastintensity:RelCI)はRelCI=CIエyo−CIblood[dB]で求め,心筋内血液量はMBV= 10Rd噺0x100%で算出した.

  150水PETは シ ー メ ン ス ノCTI社 製 ス キ ャ ナEa虹EXACTHR十 と 住 友 重 機 器 工 業 社 製 サ イク ロ卜 ン

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(2)

CYPRIS−HM18で 精 製 さ れ た150標 識 水 を 用 い て 施 行 し た .1500 MBqの150水 を 持 続 静 注 し な が ら , 安 静 時 と 灯Pに よ る 反 応 性 充 血 時 に6分 間 の ダイ ナ ミ ッ ク スキ ャ ン を 行 い, 左 室 内 腔 と心 筋 の 時 間 放 射能 曲 線 を シ ン グ ル コ ン パ ー ト メ ン ト 動 態 モ デ ル に 基 づ く ア ル ゴ リ ズ ム に よ っ て 解 析 し て , 左室16セ グ メン ト の MBF[ml/min/g】 を求 め た . 心 室中 隔4セ グ メン ト と 後 壁 お よび 側 壁 の4セグメ ントのMBFを 平均し て, それぞ ´ れ 心 室 中 隔領 域 と 後 側 壁領 域 のMBFと し た .

  MCEで 求 め たMBVと150水PETで 求 め たMBFか ら , 心 筋 内 血 流 速 度 を 表 すmean transit rate(B) を ロ = (MBF/MBV)x1.67[sec‑l]で算 出 し た .

    結  果

  HCM群 の 心 室 中 隔 厚 は19.2土4.6 mmと 著 し く 厚 く , 左 室 後 壁 厚 は10.2土1.5 mmで と も に 対照 群 よ り 有 意 に 高 値 で あ っ た . 心 室 中 隔 で は ,HCM群 のMBFは 安 静 時 に は 正 常 に 保 た れ て い た が ( 対 照 群vs HCM群 ;0.69土0.17 vs 0.73土0.15 ml/min/g p=0.56), 反 応 性 充血 時 に は 有 意に 低 下 し て い た(3.46土 1.30 vs l.52土0.55 ml/min/g pく0.001) .HCM群 の 心 室 中 隔のMBVは 対照 群 と 比 べ 安静 時(3.47土1.05 vs 2.05土0.79,pく0.001)充 血時(4.28土1.65 vs 2.18土1.17,pく0.001)ともに有意に低かった.一方,HCM群 の 心室 中隔の 心筋内 血流 速度ロ は安静 時には 対照 群より も高く(0.36土0.16 vs 0.65土0.25,pく0.01),充 血 時 に は 有 意 差を 認 め な か った (1.43土0.59 vs l.55土0.90,p―0.73) .左室 後側壁 では,HCM群のMBFは心 室 中隔 と同様 に,安 静時 には保 たれて いたが(0.98土0.26 vs 0.99土0.18,p 0.91), 充血時 には対 照群よ り も 有 意 に 低 下 し て い た(3.41土1.15 vs 2.23土0.67pく0.01) .後 側 壁 のMBVお よ び 口 は安 静 時 お よ び充 血 時 ともに 両群 間で有 意差を 認めな かった .

  両 群 の 心 室 中 隔 と 左 室 後 側 壁 を 合 わ せ た 安静 時 のMBVは 局 所 壁 厚 と有 意 な 逆 相 関を 示 し た(r=―0.69。 pく0.0001) . 健 常 対 照 群9例 とHCM群13例 の 中 隔 と 後 側 壁 の 充 血 時 の ロ はMBFと 相 関 し な か っ た が

(r 0.20,p=0.21),充 血時のMBVはMBFと の問 に有意 な正相 関を示 した (r 0.69,pく0.0001).また,安静 時 のMBVと充血 時のMBFと の間に も有意 な正相 関を 認めた(r=0.62,pく0.0001) .

    考  察

HCM患 者 の 肥 大 の 強 い 左 室 心 筋 で は , 安 静 時 と 反 応 性 充 血 時 と も に ,MBVは 正 常よ り 低 下 し てい た . こ の 低 下 は 局 所 壁 厚 と 関 連 し , 壁 が 厚 い ほ どMBVは 低 か っ た .HCMのMBV低 下 は , 心 筋 細 胞 の 肥 大 , 問 質 の 線 維 化 , 小 ・ 細 動 脈 血 管 壁 の 肥厚 , 毛 細 血 管密 度 の 減 少 など の 心 筋 組 織に お け る 病 理 学的 変 化 を 反 映 し て い る と 考 え ら れ る . 過 去 の 報 告 と 一 致 し て , 本 研 究 で もHCM患 者 の 安 静 時 のMBFは 保 たれ る が 反 応 性 充 血 時 のMBFは 正 常 よ り も 低 下 し , 心 筋 血 流 予 備 能 は 障 害 さ れ て い た .HCM患 者 の 肥 大 の 強 い 心 室 中 隔 で は , 安 静 時 の 心 筋 内 血 流 速度 は 亢 進 し てお り , 充 血 時の 心 筋 内 血 流速 度 は 正 常 と 同等 で あ っ た . 更 に , 反 応 充 血 時 のMBFは 心 筋 内 血 流 速 度 で は な くMBVと の 間 に 有 意 な 相 関 を認 め た . こ れら の 結 果 か ら ,HCMで は , 安 静 時 に はMBVの 低 下 を 心 筋 内 血 流 速 度 の 亢 進 に よ っ て 代 償 する 機 序 に よ り, 心 筋 組 織 へ の 酸 素 供 給 を 規 定 す るMBFが 正 常 に 保 た れ て い る と 考 え ら れ る . し か し , 反 応 性充 血 時 に はMBV の 低 下 を 心 筋 内 血 流 速 度 の 更 な る 亢 進 で 十 分 に 代 償 す る こ と が でき ず ,MBVの 低 下 が 主 たる 規 定 因 子 と な っ てMBFが 低 下 し て い る と 考 え ら れ る ,

結   語

―59 −

(3)

     本研究は,MCE を用いてHCM 患者 の左室心筋の局所MBV を定量評価し,局所の壁厚やMBF との関 連を明らかにした初めての報告である. HCM 患者の左室心筋では,MBV は局所壁厚と関連して低下して いた.安静時には,心筋内血流速度が上昇しMBF を正常に保っているが,反応性充血時には MBV の低

`下に応じてMBF が低下していた,

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(4)

学位論文審査の要旨 主 査    教 授    筒井裕之 副 査    教 授    松居喜郎 副 査    教 授    玉木長良

学 位 論 文 題 名

肥大型心筋症における心筋血流予備能の低下は 心筋内血液量の減少によって規定される

   ポジ トロン放 射形断 層撮影法 (PET) を 用いた研究により、肥大型心筋症(HCM) では分時 心筋 血流量(MBF) は、安静時には正常に保たれるが、反応性充血時には低下していること が知 られてい る。この MBF は 心筋内の 血管容積分画である心筋内血液量(MBV) と心筋内血 流速度の2 っのコンポーネントの積として表すことができる。HCM では心筋細胞の肥大、問質 の線維化、小・細動脈壁の肥厚などからMBV が低下していると予想されるが、反応性充血時 の MBF 低 下が MBV ある いは心 筋内血流 速度のど ちらの 低下によ るのか は解明さ れてい な い。 そこで本 論文では 、(1 ) HCM 患者の 左室心筋でMBV が低下しているか否か、 (2) HCM 患 者の 反 応性 充血時の MBF 低 下が、 MBV と心筋 内血流 速度のど ちらの 低下に起 因する か を検討した。

   対象 は、非対 称性心 室中隔肥 大を呈す る非閉 塞性の HCM 患者 22 名と年齢・性別を一致 させ た健常対 照9 名 。全例 で心エコ ー法と MCE を施行し、心室中隔領域と左室後側壁領域 にお ける、安 静時およぴアデノシン三リン酸(ATP) による反応充血時のMBV を測定した。

HCM 群 の う ち 13 例 と健 常 対 照全 例 で 150 水 PET を 施行し、 心室中 隔と左室 後側壁の 安静 時 と充 血 時 の MBF を 測定 し た 。ま た 、 MCE で 求め た MBV と 150 水 PET で求め た MBF から、

心 筋 内 血 流 速 度 ( ロ ) を ロ =  (MBF / MBV)x1.67 [sec‑1] で 算 出 し た 。   HCM 群の心室 中隔は著しく厚く、左室後壁厚は対照群に比しわずかではあるが有意に高 値で あった。 心室中隔 では、 HCM 群の MBF は 安静時には正常に保たれていたが、反応性充 血 時に は 対照 群に比し 有意に 低下して いた。HCM 群の 心室中隔 のMBV は、安静 時・充 血 時と もに対照 群と比べ有意に低値であった。一方、HCM 群の心室中隔の心筋内血流速度ロ は、安静時には対照群よりも高く、充血時には有意差を認めなかった。左室後側壁では、

HCM 群のMBF は、心室 中隔と 同様に、 安静時 には正常と同等に保たれていたが、充血時に

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(5)

は 対照群よりも有意に低下していた。後側壁のMBV および口は安静時およぴ充血時ともに 両群問で有意な差を認めなかった。さらに、両群の心室中隔と左室後側壁を合わせた安静時 の MBV は 、局 所の 壁厚 と有 意な 逆 相関 を示 した 。健 常対 照群 9 例と HCM 群 13 例の中隔と 後 側 壁の 充血 時の ロは MBF と相 関 しな かっ たが 、充 血時 のMBV は MBF と の間 に有意な正 相 関を示した。また、安静時の MBV と充血時のMBF との問にも有意な正相関が認められた。

  HCM 患者の左室心筋では、MBV は局所の壁厚と関連し低下 しており、心筋細胞の肥大、

問 質の線維化、小・細動脈血管壁の肥厚、毛細血管密度の減少などの心筋組織における病 理 学的変化を反映していると考えられた。HCM では、安静時にはMBV の低下を心筋内血流 速 度の亢進によって代償する機序により MBF が正常に保たれるが、反応性充血時には心筋 内 血流速度の更なる亢進で代償することができず、MBV の低下が主たる規定因子となって MBF が 低 下 し て い る と い う 、 心 筋 血 流 予 備 能 低 下 の 機 序 が 示 さ れ た 。      丶

   口頭発表に際し、副査の松居教授から、他の成因による肥大心のMBV の変化や薬物治療 の影響について質問がなされた。申請者は、他の研究結果に基づき、高血圧性心疾患による 肥 大心でも健常に比し MBV が低 下しており、薬物治療にて左室肥大の退縮とともにMBV が 改 善したと述べた。副査の玉木教授からは、 HCM における冠微小循環の肥大部と非肥大部 で の差違や、 MBV 計測の臨床的 意義につぃヽての質問がなされた。申請者は、HCM の肥大 の 著しくない後側壁の MBV は、 統計学的に有意差はないものの充血時に健常より低い傾向 があり、このために非肥大部でも組織学的変化や冠微小循環障害が生じているものと考えら れ ると回答した。また、安静時のMBV が充血時のMBF 低下と関連することから、本法には、

薬物負荷なしで冠微小循環障害をとらえることができるという臨床的に重要な意義があると回 答 した。さらに、主査の筒井教授からは、HCM における安静時の心筋内血流速度亢進の機 序 について質問がなされた。申請者は、肥大心では安静時の心筋酸素需要は健常と同等で あ る にも かか わら ず血 管容 積で ある MBV が 低下 して いる ため ,代 償的 に血 管抵抗が低 下 し 心筋 内血 流速 度を 亢進 させ るこ とに よっ てMBF を正 常に 保っ とい う機 序が推測さ れると回答した。

   本 論 文 は 、 MCE を 用 い て HCM 患 者 の 左 室 心 筋 の MBV を 定 量 評 価 し 、 局 所 の 壁 厚 や MBF との関連から心筋血流予備 能低下の機序を明らかにした初めての報告である。HCM に 韜 ける心筋微小循環障害の病態生理の解明は重要な成果であり、また本法は種々の疾患に お ける冠微小循環障害の機序や薬物治療による心筋の組織学的変化の評価法として大いに 期待される。

   審査員一同は、以上の研究成果を高く評価し、申請者が博士(医学)の学位を受けるに充

分な資格を有するものと判定した。

参照

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