• 検索結果がありません。

学位論文内容の要旨

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "学位論文内容の要旨"

Copied!
5
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

博 士 (農 学 ) / 弋 サ ン タ ク マ ル ノ ヾル モン

     学位論文題名

    Socio ―Economic Impacts of

Rice − Prawn Gher Farming System in Bangladesh

(バングラデシュにおけるゲールファーミング(水稲―エビ養殖)の      社会経済的影響)

学位論文内容の要旨

  バ ングラデ シュでは 農業が 基幹産業であるが、エビ養殖も重要な外貨獲得源となっている。

1980年 代以降、 急速に 拡大した 輸出志向 型のエ ビ養殖は 、農家 経済に対 して多 大なインパク トを 及ばし たと考え られる 。本論文 では「 稲作十エ ビ養殖」 という ゲール農 法の普 及が農家 経済 にいか なる影響 を及ぼ したかを 明らか にするこ とを主た る目的とした。エビ(prawn)の主 産地である´ふンヴラデシュ南部のクルす地域のピル´弋ブラ輔を対象ヒし、ザー)¥革兪ヒ丶ヽわ れる ゲール 農業の普 及過程 や農家経 済に及 ぼした影 響を農村 調査に よって明 らかに したもの である。

  本 論 文 は 、 9章 に よ り 構 成 さ れ て い る 。 各 章 の 要 旨 は 以 下 の と お り で あ る 。   第1章に おいては 、既存 統計の分 析を通 じて、バ ングラデ シュにおけるエビ養殖の概要とそ の 経 済 的 位 置 づ け に つ い て 述 べ 、 課 題 を 提 示 し 既 存 研 究 の 動 向 を 整 理 し た 。   第2章で は、調査 対象地 域の農村 および ゲールフ ァーミン グの概要にっいて述べている。調 査対 象地域 はバング ラデシ ュ、クル ナ地域 のビルパ ブラ村で ある。2003年に実 施した村の悉 皆調 査によ れば、村 の総世 帯数は401戸で ある。そ のうち332戸の 世帯主が エビ養 殖に携わっ ている。ゲール農家一戸当たりの農地面積は5.98Bigha(lBigh舮0.2ha)で自作地が2.57Bi曲ん借 入地 が3.41Bi如aである 。ゲール 農家のエビ養殖による経済効果をとらえるために、比較対象 とす る伝統 的稲作農 村の概 要につい ても述 べている 。伝統的 稲作農村はビルパブラ村から約7 kmほ ど離れた コウルト リ村で ある。こ の村で は伝統的 なアウ スとアモ ン稲が栽 培されていた が、 近年で はボロと アモン 稲が栽培 されて いる。こ のような 稲作は エビ養殖 が導入 される以 前のビルパブラ村の農業に近く、貧困農民が大多数を占めている。

  第3章で は、ゲー ル農法 の歴史と その普 及過程に っいて述 べている。1980年代半ば以降、調 査対 象村で は急速に ゲール 農業が普 及した 。エビの 養殖はフ ァキル ハットの クルシ ャリ村の 農民 によって開始された。調査対象地であるビルパブラ村からは約3()km離れている。稚エビ を捕 獲し、 さらにエ ビの餌 となるタニシ(mudsnail)も近辺の湿地帯から調達可能であった。

緑の 革命と は対照的 に、エ ビ養殖に 際して は、灌漑 施設の整 備や肥 料、高収 量稲品 種など、

農民 にとっ てみれば 高価な 投入要素 が必要 なかった ことがゲ ール農 法普及の 一因で あった。

さら に、エ ビの出荷 先は世 界市場に 向けら れていた ために、 価格が 高かった ことも あって、

エビ 養殖は 急速に普 及した 。エビ導 入当初 、エビの 後作であ る稲作 が次年度 のエビ 養殖に悪

1275

(2)

影 響を及ぼすのではないかと危惧されたが、「米十エビ養 殖」は軌道に乗った。これにより、

調 査対象農村は稲作を基幹とした農業(ricebased)からエ ビ養殖を基幹とした農業(prawn‑base d)に変化した。

  第4章 では 、「 米十 エビ養 殖」による農業所得と農家所得の増加効果を調査した。 ゲール農 家 ( 「稲 作十 エビ 養殖 」 ビル パブ ラ村 )40戸、 伝統的稲作農家(「ボロ十アモン 」 ̄コウ ル ト リ村 )10戸を 選定 し、 これ らの 農家 の所 得を 比較 した 。1戸 当た ルゲ ール農家 の農業所 得 は 伝統 的稲 作農 家に 比較して約17倍、農家所得は2倍、全国の平均的な農村地帯の 所得水準 よ り約3倍ほど高かった。

  第5章 では ゲー ル農 法の労 働需要について調査した。前章と同様にゲール農家と伝 統的稲作 農 家との労働力需要を比較した。ゲール農業は労働集約的 であった。エビの餌の調達や加工、

エ ビ が盗 まれ るこ とを 防ぐ ため のモ ニタ リン グと して多大な労働投入が必要である 。特に、

エ ビの餌を準備するためのタニシの殻を取り除くために女 性に対する労働力需要が拡大した。

ゲ ー ル農 家の 年雇 ・臨 時雇 とも に増 加し てり 、家 族労働と年雇労働は代替していた 。あわせ て 、労働需要の季節性も明らかとなった。

  第6章 はエ ビ養 殖導 入後 の女 性 労働 力需 要の 変化 と彼 女ら の獲 得所 得の 変化につ いて分析 し た 。エ ビ養 殖は 、女 性の 労働 機会 を拡 大を 通じ て所得を増やした。伝統的稲作と 比較した 結 果 、2倍ほ ど雇 用機 会を 拡大 し てい た。 ビル パブラ村 のエビ養殖は約7km離れてい るコウル ト リ 村の 女性 労働 就業 機会 を拡 大す るま でに 影響 を及ばしていた。ビルパブラ村の 稲作の収 穫 作 業は 村外 の女 性の 雇用 労働 力、 ゲー ルの 畦( 堤防)の維持管理は主として男性 が行う。

他 方 、エ ビの 収穫 のた めの 労働 カは 村内 から 調達 される。村内では大多数の人がゲ ール農業 を 営んでいるので、エビの収穫に熟達しているからである 。

  第7章 では ゲー ル農 法が農 地貸借制度に及ばした影響を分析している。エビ養殖が 導入され る 以 前は 、苅 分小 作が 主流 であ った 。そ の後 、エ ビ養殖の導入と共にこの制度は、 定額小作 に 変 化し た。 モニ タリ ング コス トや エビ 収量 の不 確実性の視点から小作制度の変化 要因を考 察 し た。 ゲー ル農 法の 普及 には 苅分 小作 制度 から 定額小作制度への制度革新が不可 欠であっ た 。小作地地代はゲールの立地特性に依存しておりBigha当たり4,000〜5,OOOTk.であった。ま た 、 事例 農家 をと りあ げて 、土 地な し農 民か ら自 作地農民ヘ、さらに雇用労働を導 入するま で に 至っ たゲ ール 農家 の成 長過 程に つい て分 析し た。ゲール農業の農地の再配分効 果は大き か ったといえる。

  第8章 では エビ 養殖 が水田 の土壌養分に及ばす影響を分析している。エビの養殖前 後で土壌 中 の 栄養 分が どの よう に変 化す るか を50の農 地を 標本選定し調査した。その結果、 稲作とエ ビ 養 殖は 補完 関係 にあ ると 考え られ た。 エビ や魚 が食べ残した餌は、後作である稲 の養分と し て 利用 され てい ると 推察 され た。 ゲー ル農 法の 稲作の単位面積当たり肥料コスト は慣行的 稲 作に比べ約1/6であるにもか かわらず、単収の格差は小さかった。

  第9章 は結 論で ある 。本論 文の分析結果から明らかなように、ゲール農法は在来自 然資源と 豊 富 な労 働力 、そ して エビ 養殖 の技 術の みに よっ て実現可能であった。この点で、 「緑の革 命 」 が「 高収 量品 種十 肥料 十灌 漑施 設」 から 成る パッケージを必要としたのとは対 照的であ っ た 。ゲ ール 農業 は労 働集 約的 であ り、 貧困 層に 多くの雇用労働の機会を提供し、 土地なし 農 業 労働 者や 貧困 農民 層の ゲー ル農 法へ の参 入を も実現させた。ゲール農法は農業 所得を増 加 さ せ、 この 地域 の貧 困削 減に 寄与 した 効果 は大 きいと結論される。現時点では稲 作部門と エ ビ 養殖 部門 との 補完 関係 を確 認で きた が、 稚エ ビや餌であるタニシの投入財価格 が上昇し

1276 ‑

(3)

続けており、この農法の持続可能性にっいては予断を許さない状況にある。バングラデシュ の稲作研究に比較して、エビ養殖に関する研究はきわめて手薄である。ゲール農業の社会的 経済的インパクトの大きさを考慮したとき、農民自身の試行錯誤を経て普及していったゲー ル農法を支援することの重要性が示唆される。

1277

(4)

学位論文審査の要旨 主査    教 授    長南 史男 副査    教 授    出村 克彦 副査    助教授   近藤   巧

    学 位 論 文 題 名

    Socio―Economic Impacts of

Rice― Prawn Gher Farming System in Bangladesh

( バ ン グ ラ デ シ ュ に お け る ゲ ー ル フ ァ ー ミ ン グ ( 水 稲 一 エ ビ 養 殖 ) の     社 会 経 済 的 影 響 )

  本 論 文 は 図16, 表40を 含 み , 総 頁 数152頁 ,9章 か ら な る 英 文 論 文 で あ る 。別 に 5編の参考論文が添えられている。

  バングラ デシュにおいて、エビ養殖は重要な外貨獲得源となっている。1980年代以降、

急速に拡大 したエビ養殖は、農家経済に対して大きなインパクトを 与えた。本論文では 乾 季の 水稲 作と 雨季 の エビ 養殖 とを 組み 合わ せたゲール農法の 普及が農家経済にいか なる影響を 及ぼしたかを社会経済的に明らかにすることを目的とし ている。エビの主産 地であるバ ングラデシュ南部クルナ地域のビルパブラ村を調査対象 とし、ゲール革命と い われ るゲ ール 農法 の 普及 過程 や農 家経 済へ の影響を農村実態 調査によって明らかに したもので ある。

  第1章 にお いて は、 既存統計の分析を通じて、バングラデシュ におけるエビ養殖の概 要 と そ の 経 済 的 位 置 づけ につ いて 述べ 、課 題を 提示 し既 存研 究の 動 向を 整理 した 。   第2章およぴ第3章では、調査対象地域のクルナ地域のビルパブラ 村においてゲールフ アーミング の概要と1980年代半ば以降のゲール農業普及過程につい て分析している。エ ビ の養 殖は 調査 対象 地 であ るビ ルパ ブラ 村か ら約30km離れてい るファキルハット地域 クルシャリ 村の農民によって開始された。緑の革命とは対照的に、エビ養殖に際しては、

灌漑施設の 整備や肥料、高収量稲品種など、農民にとって高価な投 入要素が必要なかっ たことが普 及の大きな要因であった。稚エビを捕獲し、エビの餌と なるタニシが近辺の 湿地帯から 調達可能であった。さらに、エビの輸出価格が高かった こともあって、エビ 養殖は急速 に普及し、調査対象農村は稲作を基幹とした農業からエ ビ養殖を基幹とした 農業に変化 した。

  第4章 では 、「 水稲 十エビ養殖」による農業所得と農家所得の 増加効果を調査した。

ビルパブラ 村のゲール農家を40戸、コウルトリ村の伝統的稲作農家(「ボロ十アモン」)

を10戸 選定 し、 これ らの農家の所得 を比較した。1戸当たルゲー ル農家の農業所得は伝 統 的稲 作農 家に 比較 して約17倍、農 家所得は2倍、全国の平均的 な農村地帯の所得水準 より約3倍高かった。

    ー1278ー

(5)

    第5章ではゲール農法の労働集約性を検討し、第6章ではとくに女性労働力需要の変   化と獲得所得の変化について分析した。伝統的稲作と比較した結果、エビ養殖は雇用機   会を約2倍拡大し、労働所得を増加させた。ゲール農家の年雇・臨時雇はともに増加し、

  家族労働と年雇労働は代替していた。特に、エビの餌としてタニシの殻を取り除く女性   労働力需要が拡大し、約7km離れているコウルトリ村の女性労働の就業機会の拡大とい   う波及効果をもたらした。

    第7章ではゲール農法が農地貸借制度に及ばした影響を分析している。エビ養殖が導   入される以前は苅分小作が主流であったが、エビ養殖の導入と共にこの制度は、定額小   作に変化した。定額地代はゲールの立地特性に依存して決定され、1 Bigha当たり4,000   〜5,OOOTk.であった。モニタリングコストの増加やエビ収量の不確実性要因から、ゲー   ル農法の普及には苅分小作制度から定額小作制度への制度革新が不可欠であった。また、

  事例分析によって土地なし農民から自作地農民へ、さらに雇用労働を導入するまでに至   ったゲール農家の成長過程を明らかにし、ゲール農法の農地再配分効果の大きさを示し   ている。

    第8章ではエビ養殖が水田の土壌養分に及ばす影響を分析している。エビの養殖前後   で土壌中の栄養分がどのように変化したかを50の農地を標本選定し、調査した。その結   果、化学肥料の節約効果が認められ、稲作とエビ養殖は補完関係にあると考えられた。

    本論文の分析結果から明らかなように、ゲール農法は在来自然資源と豊富な労働力、

  そしてエビ養殖技術によって実現可能であった。この点で、「緑の革命」が「高収量品   種十肥料十灌漑施設」から成る高額のパッケージを必要としたのとは対照的であった。

  ゲール農業は労働集約的であり、貧困層に多くの雇用労働機会を提供し、土地なし農業   労働者や貧困農民層のゲール農法への参入をも実現させた。ゲール農法は農業所得を増   加させ、この地域の貧困削減に寄与した効果は大きいと結論している。バングラデシュ   の稲作研究に比較して、エビ養殖に関する研究はきわめて手薄である。ゲール農法の社   会的経済的インパクトの大きさを考慮したとき、農民自身の試行錯誤を経て普及してい   っ た ゲ ー ル 農 法 を 政 策 的 に 支 援 す る こ と の 重 要 性 を 示 唆 し て い る 。     以上、本論文はゲール農法の実態調査に基づき、その社会経済的インパクトを明らか   にしている。研究課題は開発経済学分野において未解明なものであり、その学術的貢献   は大きい。よって審査員一同はバサンタクマルバルモンが博士(農学)の学位を受け   るのに十分な資格を有するものと認めた。

1279

参照

関連したドキュメント

なお︑本稿では︑これらの立法論について具体的に検討するまでには至らなかった︒

うことが出来ると思う。それは解釈問題は,文の前後の文脈から判浙して何んとか解決出 来るが,

はある程度個人差はあっても、その対象l笑いの発生源にはそれ

本来的自己の議論のところをみれば、自己が自己に集中するような、何か孤独な自己の姿

相対成長8)ならびに成長率9)の2つの方法によって検

従来より論じられることが少なかった財務状況の

 この論文の構成は次のようになっている。第2章では銅酸化物超伝導体に対する今までの研

で得られたものである。第5章の結果は E £vÞG+ÞH 、 第6章の結果は E £ÉH による。また、 ,7°²­›Ç›¦ には熱核の