博 士 ( 理 学 ) 居 弥 口 大 介
学位論文題名
Structural Studies of Sequence ー Specific and Nonspecific DNA − Binding Proteins
(配列特異的および非特異的な DNA 結合夕ンパク質に関する 構造学的研究)
学位論文内容の要旨
生 体内 では ,多 種多 様なDNA結 合夕 ンバク 質が存在し,DNAの複製,修 復,組み換え など,あるいは遺伝子の転写制御やDNAの高次構造の制御など,さまざまな生理反応に関 与している.これらのタンパク質は,その機能に応じて,DNA配列に特異性をもって結合 する もの とDNA配 列に非特異的に結合するものがある.本研究では,これ ら2種類のDNA 結合夕ンパク質の代表として,原核生物のヒストン様DNA結合夕ンバク質であるBacillus stearothermophilus由来HUの結晶構造解析,および,肝特異的転写因子であるラット由来 HNF‑6aと その 認識DNAとの複合体の結晶構造解析を行った.以下に論文の 内容に沿った 要旨を示す.
HU夕 ンバ ク質 は,配列非特異 的にDNAに結合することによ り,ヌクレオソーム構造の 制 御, ある いはDNAの 複製 ,組 み換 え, およ び転写などの生理反応におけるDNAの構造 変化に関与し,これら の促進因子として機能することが知られている.HU夕ンバク質はホ モあるいはへテロダイマーとして存在し,コンバクトな分子基部より伸びた一対のBアーム に よ っ てDNAと 副溝 を介 して 結 合す るこ とが ,Anabaena由 来HUとDNAの複 合体 の結 晶 構造によって明らかと なった.しかし,DNA非結合 型HUのpアーム構造について は,これ ま で の 結 晶 構 造 中 で は デ ィ ス オ ー ダ ー し て お り , 詳 細 な 報 告 が な か っ た . 本研究では,Bacillus由来HUの結晶構造を決定し,非対称単位中の6種類の構造を比較 することにより,はじ めてDNA非結合型pアームについての詳細な構造的知見を得た. DNA 非結合型のHUは,二量 体化によって形成される分子基部は6種類の構造間でほとんど構造 変化がなかった,一方 ,DNAの副溝と相互作用するDアームについては構造変化が大きく,
分子基部を重ね合わせ ると,アームの末端はおよそ20Aの開きがあった.本研究では,非 常に特徴的なDNA結合pアームのフレキシピリティについての構造学的な分析と ともに,
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DNAとの配列非特異的相互作用 に関連があるとされている,アミノ酸側鎖間の塩橋につい て 報告する.
栄養素や薬物の 代謝など多様な生理機能を有する肝臓は,その機能発現のために非常に 高度に分化した組 織である.肝臓組織の発生や分化は肝細胞に特異的な転写調節機構によ り制御されており,Hepatocyte Nuclear Factor (HNF)などのような肝特異的転写因子群により 厳密に調節されて いる.HNF‑6夕ンバク質はこ のような転写因子群のひとつであり,肝細 胞の発生や分化, 増殖などの調節のほか,代謝に関連する多様な遺伝子の転写調節機能も ま た有 して いる ,HNF‑6のDNA結合 領 域はCUTドメ イン とホ メオ ド メイ ンと いうニつの DNA結 合 ドメ イン から 成っており,ONECUTホメオドメインタンバク質と 呼ぱれている.
こ のタ ンパ ク質 は, 認識 するDNA配 列の 種類 によ って,異なるDNA結合 特性,あるいは 転 写活 性化 特性 を示 す.本研究では,ラッ ト由来HNF‑6aのDNA結合ドメ インと,トラン ス サ イ レ チ ン(TTR)遺伝 子の プロ モー ター 領域 を含 む14塩 基対 の認 識DNAと の複 合 体 の結晶構造を2.0A分解能で決定した.
解析の結果,CUTドメインとホメオドメイン はDNAの同じ主溝に入り込み ,二つのドメ インをっなぐりン カーを介して巻きっくようにDNAに結合していた.各ドメインの認識す るDNA配 列は オー バー ラッ プし てお り, これ らニ つのドメインは,DNAの構造変化を介 して協同的に結合 していることが明らかとなった.また,CIYrドメインについては,DNA との結合によって 広範囲に構造変化を起こしていることが,DNA非結合型構造との比較に よって明らかになった.
HNF‑6夕ン パク 質のDNA結合あるいは転写 活性化能については,TTRプ ロモーターとと もにHNF‑3pプロモ ーターについても詳細に研究されている.TTRプロモーターを認識する 場合においては,CUTドメインおよびホメオド メインが,共にDNA結合に関 与するが,こ れまでの実験から ,HNF‑3pを認識する場合には,ホメオドメインはDNA結合に関与せず,
転写活性化に関与 することがわかっている.さらに,転写活性化の際に相互作用するコア クチベーターの種 類,そして相互作用する部位もまた変化することが,これまでの実験お よび今回の解析から明らかとなった.
本研究では,こ れらニつのプロモ一夕ーの識別をどのように行い,そして,どのように してコアクチベー ターとの相互作用に多様性を生み出しているかについて,CUTドメイン およびホメオドメ インの結合特性の変化,CUTドメインにおける構造変化,そしてニつの ドメインによる協同的DNA結合から報告する.
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学 位 論 文 審 査 の 要旨 主 査
副 査 副 査 副 査
教授 教授 助教授 助教授
田中 佐々木 出村 渡邉
勲 直樹 誠 信久
学位論文題名
Structural Studies of Sequence −Specific and Nonspecific DNA ―Binding Proteins
(配列特 異的および 非特異的な DNA 結合夕 ンパク質に関する 構造学的研 究)
生体内では,多種多様なDNA 結合タンパク質が存在し, DNA の複製,修復,
組み換えなど,あるいは遺伝子の転写制御やDNA の高次構造の制御など,さま ざまな生理反応に関与している.これらのタンパク質は,その機能に応じて,
DNA 配 列に特異性 をもって結 合するもの と DNA 配列に非特異的に結合するも のがある.本研究は,これら2 種類のDNA 結合タンパク質の代表として,原核 生物のヒストン様DNA 結合タンパク質であるBacillus stearothermophilus 由来 HU の結晶構造解析,茄よび,肝特異的転写因子であるラット由来HNF‑6a とそ の 認 識 DNA と の 複 合 体 の 結 晶 構 造 解 析 を 行 っ た も の で あ る . HU タンパ ク質は,配列非特異的にDNA に結合することにより,ヌクレオソ ーム構造の制御,あるいはDNA の複製,組み換え,およぴ転写などの生理反応 におけるDNA の構造変化に関与し,これらの促進因子として機能することが知 られている.HU タンパク質はホモあるいはへテロダイマーとして存在し,コン パクトな分子基部より伸ぴた一対のp アームによってDNA と副溝を介して結合 するこ とが,Anabaena 由来HU と DNA の複合体の結晶構造によって明らかとさ れている.しかし,DNA 非結合型 HU のp アーム構造にっいては,これまでの結 晶構造中ではディスオーダーしており,詳細な報告がなかった.本研究は,
Bacillus 由来HU の結晶構造を決定し,非対称単位中の6 種類の構造を比較する ことにより,はじめてDNA 非結合型p アームについての詳細な構造的知見を得 たものである.
栄養素や薬物の代謝など多様な生理機能を有する肝臓は,その機能発現のた
めに非常に高度に分化した組織である.肝臓組織の発生や分化は肝細胞に特異
的な転写調節機構により制御されており,Hepatocyte Nuclear Factor (HNF)などの よ う な肝 特 異 的転 写 因子 群 に より 厳 密 に調 節されて いる.HNF‑6タ ンパク質 は こ のような転 写因子群 のひとっ であり,肝細胞の発生や分化,増殖な.どの調節 の ほか,代謝 に関連す る多様な 遺伝子の 転写調節 機能もま た有している.HNF‑6 のDNA結 合 領 域 はCUTド メ イ ン と ホ メ オ ド メ イ ン と い う ニ つ のDNA結 合 ド メ イ ン から 成 っ てお り ,ONECUTホ メオ ド メ イン タ ンパ ク 質 と呼 ば れて い る.こ の タ ン パ ク 質 は , 認 識 す るDNA配 列 の 種 類 に よ っ て , 異 な るDNA結 合 特性 , あ る いは 転 写 活性 化 特性 を 示 す. 本 研 究で は ,ラ ッ ト 由来HNF‑6a,のDNA結合 ド メ イ ン と , ト ラ ン ス サ イ レ チ ン(TTR)遺伝 子 のプ ロ モ ータ ー 領域 を 含 む14 塩 基 対 の 認 識DNAと の 複 合体 の 結 晶構 造 が2.0A分 解 能 で決 定 さ れた . 解析 の 結 果 ,CUTド メ イン と ホメ オ ド メイ ン はDNAの 同 じ主 溝 に 入り 込 み, 二 つのド メ イ ンを っ な ぐり ン カー を 介 して 巻 き っく ようにDNAに 結合して いた.各 ドメ イ ンの認識す るDNA配列は オーバー ラップし ており, これらニ っのドメインは,
DNAの 構造 変 化 を介 し て協 同 的 に結 合 し ている ことが明 らかとな った.ま た,
CUTド メイ ン に つい て は,DNAと の結 合 に よっ て 広範 囲 に 構造 変 化を 起 こして い る こと が ,DNA非 結 合型 構 造 との 比 較 によ っ て明 ら か にな っ た.HNF‑6タン パ ク 質のDNA結 合あ る いは 転 写 活性 化 能 にっ い ては ,TTRプロ モ ータ ー ととも にHNF‑3pプ ロ モ ータ ー につ い て も詳 細 に 研究され ている.TTRプロモー ターを 認 識 する 場 合 にお い ては ,CUTドメ イ ン およ び ホメ オ ド メイ ン が, 共 にDNA結 合 に 関与 す るが ,これま での実験 から,HNF‑3pを認 識する場 合には, ホメオド メ イ ンはDNA結 合に 関 与せ ず , 転写 活 性 化に関 与するこ とがわか っている .さ ら に ,転 写 活性 化の際に 相互作用 するコアク チベータ ーの種類 ,そして 相互作 用 す る部 位 もま た変化す ることが ,これまで の実験お よび今回 の解析か ら明ら か と なっ た ,本 研究は, これらニ つのプロモ ーターの 識別をど のように 行い,
そ し て, ど のよ うにして コアクチ ベーターと の相互作 用に多様 性を生み 出して いるかにっいての構造学的基盤を与えるものである.
以 上, 本 研究 は ,X線 結晶 構 造解 析法を用 いること により, 配列特異 的,及 び 非 特 異的 にDNAに 結 合 する タ ンパ ク質にっ いて,構 造学的に 研究した もので あ る .本研究 が生物科 学に及ばす 貢献には 多大なも のがある と考えら れ,よっ て 審 査員一同 は申請者 が博士(理 学)の学 位を得る 十分の資 格がある ものと認 め た .
―295ー