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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 (農 学 )エ レガ ド エヴ ェリ ン バン ズェ ラ      学位論文題名

Analyses of Recombinational Repair Genes      ●

    mtheRiCeBlaStFunguS

     (イネいもち病菌の組換え修復遺伝子の解析)

学位論文内容の要旨

  いもち病はイネの最重要病害であり,その病原菌は,子のう菌類のいもち病菌Magnaportheg′iseaである.

いもち病菌はイネ品種への感染範囲に従って「病原性レース」に分類されている,いもち病防除における最 重要課題は圃場に導入した抵抗性品種に感染可能な病原菌が出現するいわゆる「抵抗性の崩壊」である.抵 抗性の崩壊はこれまでの研究から,いもち病菌の宿主範囲が広がるような変異,いわゆる「病原性レース変 異」が生ずることによると考えられている,いもち病菌の宿主特異性はいわゆる「遺伝子対遺伝子説」に従 うことが知られており,病原性レースの変異は非病原性遺伝子の変異ととらえることができる,これまでの 非病原性遺伝子のクローニングおよび解析の例はきわめて少ないが,それらの研究成果から,病原性レース の変異には点変異に加えて,トランスポゾンの挿入や遺伝子そのものの欠失が関わっていることが知られて いる.さらにいもち病菌は染色体構造が菌株毎に高度に多様化しており,高頻度の染色体再編成が起こって いることも,上記のレース変異に何らかの影響を与えていることも考えられる.転移因子の転移や,遺伝子 の欠失,染色体再編成はDNA鎖の組換えを伴う現象である.

  生体内でのDNA鎖の組換えは組換え修復に関与するRAD52遺伝子群のコードするタンバクが行っている ことが出芽酵母の解析から知られている.そこで,本研究はいもち病菌におけるRAD52遺伝子群ホモログ のクロー ニングを行い,いもち病菌におけるその機能について解析を行うことを目的として行った.

1.いもち病菌の組換え修復遺伝子のクロ―ニング

  まず,いもち病菌Ina168株のゲノムDNAから,Degenerate PCRにより酵母RAD52,RAD54ホモログの断 片の増幅を行った,RAD52,RAD54はともに相同組換えに関与する遺伝子である.増幅されたDNA断片を 用いて,Ina168コスミドゲノムライプラリーから得られた全長を含むクローンおよびRTPCRによってえら れたcDNAクローンの塩基配列解析を行った.RAD52ホモ口グはRhm鉈(&dめmolog蠱幺g門印Drめピ)と名付 けられ,全長1867bp,2つのイントロンを含み,575アミノ酸をコードしていた.MD舛ホモログは勵′′t舛 と名付けられ,全長2484bp,1つのイントロンを含み,804アミノ酸をコードしていた.相同性解析の結 果,これらのタンバク質はアカバンカピ(AをH′DヤD陷cmjsロ)のホモログと最も高い相同性を持ち,RHM52 はMUS11と42%,RHM54はMUS25と84%相同で あった. サザン 解析,あ るいは 公開され ているい§ち 病菌のゲノム解析データとの相同性からこれらの遺伝子はゲノム中に1コピー存在することがわかったr 2.組 換え 修 復 遺伝 子Rhm銘舛 の機能解 析

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  Rhm52, Rhm54の 機能 を調 ぺ るた め, 最も 高い 相 同性 を示 した ア カバ ンカ ピ(N. crassa)のホモログの変 異 を相 補 でき るか 試み た.Rhm52,54の全 長を 含む コス ミ ドク ローン,遺伝子領 域をGatewayシステムによ り 糸状 菌 形質 転換 用ペ クタ ーpCSN43―DESTにク ロ ーニ ング した ものを用いて, それぞれアカパンカピmus‑

〃 ,ア ロs‑25変異 株に 形質 転 換に より 導入した.形 質転換株は変異株のMMS(メ チルメタンスルホン酸,放 射 線 模 倣 変 異源 )感 受 性を 相補 され ,い も ち病 菌ホ モロ グ は機 能す る遺 伝子 で ある こと が証 明さ れ た.

  こ れ ら の 組 換 え 修 復 遺 伝 子 はMMSやUVな どの 変異 源に よ るス トレ スに よる 転 写誘 導が ある こと が 知ら れ てい る .ま たい もち 病菌 で は活 性酸 素ストレスを 与えるメチルヴァイオロゲン(Methyl Viologen)や熱ス ト レス に よル レトロトラ ンスポゾンの転写が増大する ことが知られている,そこ でいもち病菌において,こ れ ら の ス ト レス によ り 組換 え修 復遺 伝子 の 転写 の増 大が あ るか をノ ザン 解析 に より 調べ た, いも ち 病菌 Ina168株分生子を液体培地中で発芽させ,MMS (0.10/o),UV(100,200 J/n12),メチルヴァイオロゲン(0.1,10 mM), 熱 シ ョ ッ ク(42℃ ) を そ れ ぞ れ与 え,RNAを抽 出し た .Rhm52,Rhm54のcDNAを プロ ープ とし て ハイ プ リダ イ ゼー ショ ンを 行っ た とこ ろ, それ ぞれ の スト レス で転 写 の誘 導が 確認 され た .MMS,UVによる転 写 の増 大 から いもち病菌 においてもこれまでに酵母や アカパンカピで知られてい るものと同様の転写誘導機 構 があ る こと が示された ,両遺伝子ともメチルヴァイ オロゲンと熱ショックで特 に顕著に転写誘導が起こっ た .メ チ ルヴ ァイ オロ ゲン は 活性 酸素 スト レス を 細胞 に与 える , 活性 酸素 スト レス はDNA鎖の切断を引き 起 こし , 組換 え修復系を 活性化させることが知られて いる.熱ショックは活性酸 素ストレスと同様の作用が あ るこ と が知 られている .いもち病菌は感染時に宿主 から活性酸素ストレスを受 けることが知られており,

いもち 病菌が感染時に遺伝子の組換 えを行っている可能性が示 唆された.

  いも ち 病菌 のRhm52,54の欠 失変 異 株の作成を試み た,それぞれの遺伝子の内 部に外側に向かって増幅す る プ ラ イ マ ーを 作成 し ,制 限酵 素で 切断 し たゲ ノムDNA断片 の自 己環 化 物か らイ ンバ ー スPCRによ る 増幅 を 行い , その 増幅 断片 をGatewayシ ス テムにより糸状 菌遺伝子破壊用ベクターpDESTRにクローニングした.

こ う し て 作 成 さ れ た 破 壊 用 プ ラ ス ミ ドDNAを ゲ ノ ムDNAの 切 断 に使 用し た制 限 酵素 で切 断し ,い も ち病 菌 株 を 形 質 転換 する こ とで ,2重相 同組 換え によ り 欠失 変異 株を 作成 し た, 作成 した 変 異株 のMMS,UVへ の感受 性は解析中である,

3.組 換え 修復 遺伝 子 を誘 導す るス 卜レ ス によ るい もち 病 菌の ゲノ ムの 変化

  活 性酸 素ストレスと熱 ストレスにより,組換え修 復遺伝子の転写誘導が起こる ことから,これらのストレ スに より いもち病菌ゲノ ムに変化が起こるかどうか を調べた.各ストレスを与え た菌体を分生子形成させ,

そ こ か ら 単 胞 子 分 離 し た 菌 株 よ ル ゲ ノ ムDNAを 抽 出 し てMGR586 (DNA型 トラ ン スポ ゾンPot3を 含む ),

pING2(レ ト ロト ラン スポ ゾ ンInag02を含 む) を プロ ーブ とし たサ ザ ン解 析を 行っ た,その結果,MGR586 のハ イプ ルダ イゼ ー ショ ンの バタ ーンに変化は見ら れなかったが,pING2をプロ ーブとした場合には活性酸 素ス トレ ス, 熱ス ト レス とも にバ ンド の 欠失 ,あ るい は 増加 が見 られ ,ゲ ノ ムDNAに変化が生じているこ と が 示 さ れ た , こ れ ら の ス ト レ ス に よ り , 変 異 が 導 入 さ れ る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た .

  以 上, 本研究はいもち病菌から組換 え修復に関与する遺伝子群 を初めてクローニングし,そ れらが宿主感 染時 に転 写誘導される可能性を明らか にした.いもち病菌の病原 性レース変異機構に関して, 組換え修復遺 伝子 から の 考察 を行 った 例は 今まで になく,今後,その他のホモ ログや,GFPレーポーターな どの解析が必 要であるが,「レース 変異の抑制」というこれま でにない新たな防除法の確立にっながる重要なものである.

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学 位 論 文 審 査 の 要 旨

     学位論文題名

Analyses of Recombinational Repair Genes     in the Rice Blast Fungus

     (イネいもち病菌の組換え修復遺伝子の解析)

   本 論 文 は 英 文 133 ベ ー ジ , 図 49 , 表 24 , 8 章 か ら 成 り , 参 考 論 文 6 編 が 添 え ら れ て い る.

   い も ち 病 は イ ネ の 最 重 要 病 害 で あ り , そ の 病 原 菌 は , 子 の う 菌 類 の い も ち 病 菌 Magnapor .めP 呂′むP ロである.いもち病防除における最重要課題は圃場に導入した抵抗性品 種 に感 染可 能な 病原 菌が 出現す るい わゆる「抵抗性の崩壊」である.抵抗性の崩壊はこれ ま での 研究 から ,「 病原 性レー ス変 異」が生ずることによると考えられている.いもち病 菌 の宿 主特 異性 はい わゆ る「遺 伝子 対遺伝子説」に従うことが知られており,病原性レー ス の変 異は 非病 原性 遺伝 子の変 異と とらえることができる.これまでの研究成果から,病 原 性レ ース の変 異に は点 変異に 加え て,トランスポゾンの挿入や遺伝子そのものの欠失が 関 わっ ていることが知られている.転移因子の転移や,遺伝子の欠失,染色体再編成はDNA 鎖の組換えを伴う現象である.

   生 体 内 で の DNA 鎖 の 組 換 え は 組 換 え 修 復に 関与す る兄 伽艶 遺伝 子群 のコ ード する タン パ クが 行っ てい るこ とが 出芽酵 母の 解析から知られている.そこで,本研究ではいもち病 菌 にお ける兄虹び2 遺伝子群ホモログのク口ーニングを行しゝ,いもち病菌におけるその機      )

能について解析した.

1 .いもち病菌の組換え修復遺伝子のクローニング

   まず ,い もち 病菌 Ina168 株の ゲノ ムDNA か ら, DegeneratePCR により酵母見佃髭,凡ゆW ホ モロ グの 断片 の増 幅を 行った .尺 AD 髭,兄ゆ舛はともに相同組換えに関与する遺伝子で あ る . 増 幅 さ れ た DNA 断 片 を 用 い て , Ina168 コスミ ドゲ ノム ライ ブラ リー から 得ら れた 全 長 を 含 む ク 口 ー ン お よ び RT − PCR に よ って えられ たcDNA ク 口ー ンの 塩基 配列 解析 を行 った.相同性解析の結果,これらのタンパク質はアカバンカビ(A を甜m 甲〇r ロcr 卿ロ)のホ モ ロ グ と 最 も 高 い 相 同 性 を 持 ち , ゲ ノ ム 中 に 1 コ ピ ー 存 在 す る こ と が わ か っ た .

郎 哲

一  

  輝

野 田

藤 根

浅 上

内 曾

授 授

授 師

教 教

教 講

査 査

査 査

主 副

副 副

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2. 組換え修復遺伝子Rhm52 ,騨の機能解析

  Rhm52 , Rhm54 の 機能を 調べるた め,最も 高い相同 性を示した アカバン カピ(N. crassa) のホ モ 口グ の 変 異を 相補でき るか試み た, Rhm52 , 54 の全 長を含む コスミド ク口ーン ,遺 伝予 領 域を Gateway システム により糸 状菌形質 転換用ベク ター pCSN43 − DEST ↓ こク口ー ニ ングした ものを用 いて,それ ぞれアカ パンカビ mus‑ll , mus ー 25 変異株に形質転換により導 入し た .形 質 転 換株 は 変 異株 の MMS ( メ チ ルメ タ ンス ル ホ ン酸 , 放射 線 模 倣変 異源)感 受 性 を 相 補 さ れ , い も ち 病 菌 ホ モ ロ グ は 機 能 す る 遺 伝 子 で あ る こ と が 証 明 さ れ た.

   そこでい もち病菌 において, ス卜レス により組 換え修復 遺伝子の 転写の増 大があるかを ノ ザ ン 解 析 に よ り 調 べ た . い も ち 病 菌 Ina168 株 分 生 子 を液 体 培 地中 で 発芽 さ せ , MMS

(O . 1 %),UV (100 ,200 J/m2) ,メチルヴァイオ口ゲン(0.1 ,10 mM) ,熱ショック(42 ℃)をそれ ぞ れ 与 え , RNA を 抽 出 し た . Rhm52 , Rhm54 の cDNA を プ 口 ーブ と し てハ イ ブ リダ イ ゼー ションを 行ったと ころ,それ ぞれのス トレスで 転写の誘 導が確認 された. 両遺伝子ともメ チルヴァ イオ口ゲ ンと熱ショ ックで特 に顕著に 転写誘導 が起こっ た.メチ ルヴァイオ口ゲ ンは活性 酸素スト レスを細胞 に与える .いもち 病菌は感 染時に宿 主から活 性酸素ストレス を受ける ことが知 られており ,いもち 病菌が感 染時に遺 伝子の組 換えを行 っている可能性 が示唆された.

3. 組 換 え 修 復 遺 伝 子 を 誘 導 す る ス ト レ ス に よ る い も ち 病 菌 の ゲ ノ ム の 変 化    活 性酸素ス トレスと 熱ストレ スによりい もち病菌 ゲノムに 変化が起 こるかどうかを調べ た .各スト レスを与 えた菌体 を分生子形 成させ, そこから 単胞子分 離した菌株よルゲノム DNA を 抽 出 し て MGR586 (DNA 型 ト ラ ン ス ポ ゾ ン Pot3 を 含 む ) , pING2 ( レ ト ロ ト ラ ン ス ポ ゾ ン Inag02 を 含 む) を プ ロー ブ と した サ ザン 解 析 を行 っ た. そ の 結果 , MGR586 の ハ イ ブ リダ イ ゼー ションの パターン に変化は 見られな かったが, pING2 をプ口ー ブとした 場 合には活 性酸素ス トレス, 熱ストレス ともにパ ンドの欠 失,ある いは増加が見られ,ゲ ノ ム DNA に変 化 が生 じ て いる こ とが 示 さ れた . こ れら の スト レ ス によ り ,変 異が導入 さ れ る可能性 が示唆さ れた.

   以上 ,本研究 はいもち病菌から組換え修復に関与する遺伝子群を初めてク口一二ングし,

それ らが宿主 感染時に 転写誘導 される可能 性を明ら かにした ,いもち 病菌の病原性レース 変異 機構に関 して,組 換え修復 遺伝子から の考察を 行った例 は今まで になく,今後,「レ ース 変異の抑 制」というこれまでにない新たな防除法の確立にっながる重要なものである・

   よっ て審査員 一同は, Elegado , Evelyn Banzuela が博士(農学)の学位を受けるのに十分

な資 格を有す るものと 認めた.

参照

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