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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 薬 学 ) 黒 田 垂 歩

     学位論文題名

    Slp and Slac2 , novl Rab27A effectors that     control membrane rtansport

(膜輸送を制御する新規Rab27A エフェクターslp およびSlac2 の同定)

学位論文内容の要旨

  細胞内には様々な脂質二重層に包まれたオルガネラが存在し、それらの多くは小胞輸送 を介して情報交換を行っている。小胞輸送は数多くの因子が関与することが知られている が、生体内の膜輸送のメカニズムは各組織ごと、あるいは各オルガネラごとに特殊化した メカニズムを有しているため非常に多様性に富んでおり、未だ見っかっていない制御因子 が多数存在すると考えられている。

  シナプ卜夕グミンは神経細胞におけるシナプス小胞のカルシウムセンサーとして知られ ており、神経終末のエキソサイトーシスを司る分子の1つである。シナプトタグミンはN 末端側に膜貫通領域を有しており、またC末端側にはカルシウムおよびりン脂質の結合ド ヌインであるC2ドメインを2つ有している。シナプトタグミンは主に神経系で機能する が、非神経系の他の細胞、組織で働くシナプトタグミンはこれまであまり明らかではなく、

シナプトタグミンファミリーの何らかの分子、あるいはシナプトタグミンに類似したタン パ ク 質が 存 在 し、 非 神 経系 で の 小 胞輸 送 を 制御 し て いる 可 能 性が考え られた 。   そこで本研究では、小胞輸送を制御する新たなタンパク質の同定を目的としてデ一夕ー べース検索とRT‑PCRを行い、シナプトタグミン様夕ンバク質Slp(synaptotagmin‑like protein)およびSlac2 (Slp homologue lacking C2 domains)を新規に同定した。またこれら のタンパク質の膜輸送における機能解析、特にメラニンを運ぶ小胞、ヌラノソームの輸送 に焦点を当てて解析を行った。

第1章SlpおよびSlac2のSHDは新規Rab27A結合ドメインである

≦!ロ蠱よ埜Slac2蛋白質Q!迭構造

  ヒ卜およびマウスにおいて、Slpファミリーは5つの分子(Slpl〜Slp5)から構成されて いる。SlpはC末端側にC2ドメインを2個持つ点でシナプ卜夕グミンと共通しているが、

N末端にシナプトタグミンとは異なるSlp特有の相同領域SHD (Slp homology domain)を 有して いる。またSHDは有しているがC2ドヌインを持たない蛋白質として、Slac2の3 つの分子Slac2−aからSlac2―cもまた同定した。Slac2−aとSlac2−cは中央部、C末端側に1 っずっ保存されたドメインを有している一方、Slac2―bにはそのようなドヌインは存在して いなかった。

SHD鐘金蛋自質Q丕クリーニング

  Slp、Slac2はN末端側にSHDを有しているが、このドメインがどのような機能を持つ

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(2)

の か は 全く 明ら かで はな か った 。唯 一の 情報 は 、SHDがNoc2、Rabphilin、RIMと いっ た 既 存 のRab3A結 合 ド メ イ ン と 低 い相 同性 を示 し た事 であ った 。Rab蛋 白質 は ヒ卜 では60 種類 以 上の 存在 が確 認さ れ てい るが 、そ れ ぞれ のRabに 対す る特 異的 な 結合蛋白質(Rab エ フ ウ ク タ ー ) は あ ま り 分 か っ て い な い。 そこ で私 はSHDが 何ら か のRab蛋 ロ質 の結 合 ドヌ イ ンと して 機能 する のではないかという 仮説を立てて検討した。細胞 内で発現させた 20種 類 のRab蛋 白 質 を 用 い て 、GST pull−down法 に よ りSHDに結 合 するRab蛋白 質の ス クリ ー ニン グを 行っ た。 そ の結 果、Slp4‑aを除 く殆 どのSlp、Slac2はRab27Aに特異的に 結 合 し た 。 またSlp、Slac2はGTP結合 型 (活 性化 型) のRab27Aに 直接 結合 す る事 も明 ら かと な った 。

第2章Slac2‑a、Rab27A、myosin Vaヽactin複 合 体 は メ ラ ノ サ イ ト に お け る メ ラ ノ ソ ー ム輸送に必要である

ヒ 卜Griscelli syndromeQ亟圏 遺伝王産物ユRab2ヱ△とmyosm塑

  Griscelli syndromeは毛髪 や肌の色素異常、免疫不全、 神経障害を症状とするヒトの常染 色 体劣性遺伝性疾患である。Griscelii syndrome患者の色 素異常はメラノサイトに存在する ヌ ラ ノソ ーム とい う メラ ニン色素を 運ぶ小胞(オルガネラ)の異 常蓄積が非常に特徴的で あ る 。正 常な メラ ノ サイ トではメラ ノソームは微小管とアクチン 線維によって細胞膜周辺 に 運ばれるのに対して、Griscelli syndrome患者のメラノサイ卜では正しい輸送が行われず、

メ ラノソームは核周辺に蓄積 するためである。近年Griscelli syndromeの原因遺伝子産物が Rab27Aとmyosinvaで ある こと が明 らか と なっ たが 、な ぜこ れ らの 遺伝 子の 欠損で発症す る のかという分子機構は不明 であった。

S!盤生aユ馳墜ひュ璽YQ≦ln堕ユ盤!iDからな塗生壷複金 笠Q回定

  Rab27Aとmyosinvaはメ ラノ ソー ム輸 送 過程 にお いて 間接 的 に結 合す る事 が示唆されて い た が、 両者 を結 び っけ る分 子は これ ま で明 らか にさ れて い なか った 。そ こでRab27Aの 結 合 夕ン パク 質で あ るSlpある い はSlac2のい ずれ かがmyosinVaと も結 合し 、両者を結び っ け るの では ない か と考 え検討した 。その結果、Slac2−aがmyosinVaと結合することが明 ら かとな った。さらにこれらの解析を している中で、Slac2−aのC末端部分に強く結合する タ ンパク 質が存在することがわかり、 その後の解析によりこのタ ンパク質がactlnであるこ と が明らかとなった。

S! 盤 釜 塾 壘Q璽 也 ゑ 坐 旦 皇g! n塑 変 異 垈 璽 △ に よ る メ ラ ノ ソ ニ ム 輸 遊 異 堂   メ ラノ ソー ム輸 送 過程 にお いてSlac2−aがRab27A、myosinva、actinの全てと結合する 必 要があるのか確かめるために、Slac2一aのdominantnegatlve変異体を用いて解析を行った。

GFPを 融合 し たSlca2−awildりpeをメ ラノ サイ ト に導入すると、 メラノソームは細胞膜周 辺 へと正常に分布し、GFP―Slac2―a、Rab27A、myosinVaの3者はメラノソーム上ニで共局在 し た。一 方、Rab27A、myosinva、actinのいずれかとの結合が損な われたSlac2−aの点変異 体 を導入したところ、いずれ の場合もメラノソームは核周 辺に蓄積し、Slac2一a丶Rab27A、 myosinvaの3者の 共局 在も 見ら れ なく なっ た。 こ のことから、ヌ ラノソームの微小管から ア ク チン 線維 への 受 け渡 しに はS1ac2―aにRab27A、myosinVa、actlnの全てが結合する必 要 があることが明らかとなっ た。

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(3)

学 位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 助教授 助教授

有賀 五十嵐 松本 井/口

寛芳 靖之 健一 仁一

     学位論文題名

Slp and Slac2 ,novl Rab27A effectorsthat     COntrolmembranertanSport

(膜輸送を制御する新規Rab27A エフェクターslp およぴSlac2 の同定)

細胞内には様々な脂質二重層に包まれたオルガネラが存在し、それらの多くは小胞輸送を介し て情報交換を行っている。小胞輸送は数多くの因子が関与することが知られているが、生体内 の膜輸送のメカニズムは各組織ごと、あるいは各オルガネラごとに特殊化したメカニズムを有 しているため非常に多様性に富んでおり、未だ見っかっていない制御因子が多数存在すると考 えられている。

  シナプトタグミンは神経細胞におけるシナプス小胞のカルシウムセンサーとして知られてお り、神経終末のエキソサイトーシスを司る分子の1つである。シナプトタグミンはN末端側に 膜貫通領域を有しており、またC末端側にはカルシウムおよびりン脂質の結合ドメインである C2ドメインを2つ有している。シナプトタグミンは主に神経系で機能するが、非神経系の他 の細胞、組織で働くシナプトタグミンはこれまであまり明らかではなく、シナプトタグミンフ ァミリーの何らかの分子、あるいはシナプトタグミンに類似したタンパク質が存在し、非神経 系での小胞輸送を制御している可能性が考えられた。

  そこで本研究では、小胞輸送を制御する新たなタンパク質の同定を目的としてデ一夕ーベー ス検索とRTPCRを行い、シナプトタグミン様夕ンパク質Slp (synaptotagmin‑likeprotein) およびSlac2  (Slp homologue lacking C2 domains)を新規に同定した。またこれらのタンパ ク質の膜輸送における機能解析、特にメラニンを運ぶ小胞、メラノソームの輸送に焦点を当て て解析を行った。

第1章SlpおよびSlac2のSHDは新規Rab27A結合ドメインである Slp壷よ墜Slac2蛋自質Q!迭撞造

  ヒトおよびマウスにおいて、Slpファミルーは5つの分子(Slpl‑‑Slp5)から構成されてい る。SlpはC末端側にC2ドメインを2個持つ点でシナプトタグミンと共通しているが、N末 端にシナプトタグミンとは異なるSlp特有の相同領域SHD (Slp homology domain)を有して いる 。またSHDは有しているがC2ドメインを持 たない蛋白質として、Slac2の3つの分子 Slac2‑aからSlac2‑cもまた同定した。Slac2‑aとSlac2‑cは中央部、C末端側に1っずつ保存 されたドメインを有している一方、Slac2‑bにはそのようなドメインは存在していなかった。

    ‑ 890―

(4)

SHD釐合蛋自璽Q丞2竺二二ング

  Slp、Slac2はN末端側にSHDを有しているが、このドメインがどのような機能を持つのか は全く明らかではなかった。唯一の情報は、SHDがNoc2、Rabphilin、RIMといった既存の Rab3A結合ドメインと低い相同性を示した事であった。Rab蛋白質はヒ卜では60種類以上の 存在が確認されているが、それぞれのRabに対する特異的な結合蛋白質(Rabエフェクター)

はあまり分かっていない。そこで私はSHDが何らかのRab蛋白質の結合ドメインとして機能 するのではないかという仮説を立てて検討した。細胞内で発現させた20種類のRab蛋白質を 用いて、GST pull‑down法によりSHDに結合するRab蛋白質のスクリ一二ングを行った。そ の結果、Slp4.aを除く殆どのSlp、Slac2はRab27Aに特異的に結合した。またSlp、Slac2は GTP結 合 型 ( 活 性 化 型 ) のRab27Aに 直 接 結 合 す る 事 も 明 ら か と な っ た 。 第2章Slac2‑a、Rab27A、myosin Va、actin複合体はメラノサイトにおけるメラノソーム輸 送に必要である

ヒヒGr盪gQ也8Y亘蠱恕璽QQ厘因遺伝壬産物ユBab27Aとm.Y塑也ユ塑

  Gn8celh8yndromeは毛髪や肌の色素異常、免疫不全、神経障害を症状とするヒトの常染色 体劣性遺伝性疾患である。Gri8celli8yndrome患者の色素異常はメラノサイトに存在するメラ ノソームというメラニン色素を運ぶ小胞(オルガネラ)の異常蓄積が非常に特徴的である。正 常なメラノサイトではメラノソームは微小管とアクチン線維によって細胞膜周辺に運ばれるの に対して、Grぬcelhsyndrome患者のメラノサイトでは正しい輸送が行われず、メラノソーム は核 周 辺 に蓄 積 する ためであ る。近 年Grbceui8yndromeの原因 遺伝子産 物がRab27Aと my08inVaであることが明らかとなったが、なぜこれらの遺伝子の欠損で発症するのかという 分子機構は不明であった。

S1ac2.a、Rab27A丶璽迎血nVa、actinからなる4童複金佳Q回定

  Rab27Aとmyosinvaはメラノソーム輸送過程において間接的に結合する事が示唆されてい たが、両者を結びつける分子はこれまで明らかにされていなかった3そこでRab27Aの結合夕 ンバク質であるS1pあるいはSlac2のいずれかがmyosinVaとも結合し、両者を結びっけるの ではないかと考え検討した。その結果、Slac2.aがmy08inVaと結合することが明らかとなっ た。さらにこれらの解析をしている中で、Slac2.aのC末端部分に強く結合するタンパク質が 存在することがわかり、その後の解析によりこのタンパク質がactinであることが明らかとな った。

S1ac2‐ adominant塑 醫 量 ! i塑 蛮 異 笠 導 △ ヒ よ る メ ラ ノ ソ ー ム 輸 遊 墨 堂   メラノソーム輸送過程においてSlac2 ̄aがRab27A、my08inVh、actinの全てと結合する必 要があるのか確かめるために、S1ac2.aのdominantnegative変異体を用いて解析を行った。

GFPを融合したS1ca2‐awildtypeをメラノサイトに導入すると、メラノソームは細胞膜周辺 へと正常に分布し、GFP.S1ac2‐a、Rab27A、my08in丶bの3者はメラノソーム上で共局在し た。一方、Rab27A、my08inVa、act血のいずれかとの結合が損なわれたSlac2・aの点変異体 を導入したところ、いずれの場合もメラノソームは核周辺に蓄積し、S1ac2.a、Rab27A、my08m Vaの3者の共局在も見られなくなった。このことから、メラノソームの微小管からアクチン線 維への受け渡しにはSlac2‐aにRab27A、my08inVa、actinの全てが結合する必要があること が明らかとなった。

この よ う に, 黒 田 垂 歩は 精 力 的にRab27Aエフェク ターSlpおよびSlac2の 機能解析 を行 ない,多くの成果をあげた.これらの業績は古澤誠に博士(薬学)の学位授与に十分値し,

推薦するものである.

    ―891―

参照

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