Al−SiおよびAl−Fe合金のスチールショット によるエロージョン表面および組織観察
(平成1年5月31日 原稿受付)
物質工学科村上信義
〃 小 林 俊 雄
〃(大学院)北村彰浩
Observation of surface.and micro−structure of Al.Si and Al−Fe alloys eroded by steel balls by Nobuyoshi MURAKAMI Toshio KOBAYASHI Akihiro KITAMURA
Synopsis
The surface eroded by 210μsteel balls was characterized by dimples at normal impingement angle or by lipple patern at shallow impingement angles about the size of 500μ. These dimples and lipples were accompanied with lips. By the observation of microstructure, it was found that the main process of erosion was formation and removal of these lips inspite of so called micro.
machining.
Further, it seemed to suggest that the erosion mechanism of solid solution, hypoeutectric and hypereutectric alloys should be distinguished respectively, because the dependence of the erosion rate of each alloy on alloy content was different mutually.
_ チールショットを高速で吹き付けるときのエロージョン 1.緒 盲
試験を行い,エロージョン表面および断面の組織観察を Al−SiおよびAl−Fe合金,特にその過共晶合金は,優 行って,合金組織や硬さとの関連性を調べた。
れた耐熱性や摩耗特性を示し,摺動摩耗を受ける部分で
の利用が多いようである.これは,両合金とも漱らか 2・試料および実験方法 いα相中に脆いが硬く,高温まで安定なSiまたは 2.1試料
FeAl3相が分散した組織を持つためであると考えられる。 試料は, Al−35%SiおよびAl−8%Fe母合金を,純Al 一方,これらの合金を集塵装置や空気輸送機などに使 (99.7%)で希釈し,Al−2,9,14,20%si合金,およ 用した場合,高速の空気中に浮遊する固体粒子の繰り返 びA1−1,1.9,2.3,2.6,3.5,4.5%Fe合金を溶製した。
し衝突による摩耗いわゆるエロージョンを生じる。 溶解は電気炉で行い,液相線より100℃高温で,軟鋼製 これからの合金のエロージョンに関して,いくつかの 金型およびイソライトレンガ製鋳型に注湯した。これか 報告1〜5)があるが,合金組織の影響や衝突角度の依存 ら,直径12mm,厚さ10mmの円盤を作製し,表面を 性など不明な点が多く,一致した見解が得られていない 1000番のエメリー紙で仕上げ,実験に供した。
ようである。このため,本実験では,エアーブラスト機 Al−Si合金の共晶組成は,平衡状態では11.7%Siであ
を利用して,Al−SiおよびAl−Fe合金試料表面に,ス る。本実験では組織検査の結果,非平衡凝固のため14%
Siで共晶組織を示していた。また, Al−Fe合金では, の範囲で変化させた。試験時間は60minとし,その間5 平衡状態では1.9%Feであるが,イソライト鋳型試料で minごとに0.1mg単位で,試験片の重量測定を行った。
は2.3%Fe,金型試料では2.6%Feで共晶組織を示して 試験後の試料は, SEMおよび実体顕微鏡によってエ いた。したがって,本実験では上記組成をそれぞれの合 ロージョン表面の観察を行うとともに,断面の光学顕微 金の共晶組織として取り扱った。 鏡観察を行い,エロージョン面の形態や組織変化を調べ 2.2 実験装置および方法 た。なお,断面観察では,試料の研磨時の端面のだれを エロージョン試験にはエアーブラスト機(厚地鉄工製 防ぐため,2〜5μの無電解Ni−Pメッキを施した。
B−0)を使用し,略図をFig.1に示す。これは,ホッ また,スチールショットは,市販の鋳鋼ショットで,
パーに装入された一定量のスチールショットを,圧縮空 硬さHv448kg/mm2,球形率95.8%,平均粒径210μ 気で吸引しながら,ノズルから高速で噴出させる。噴出 (#30)を使用した。
後のスチールショットは再びホッパーに集められ,循環
3.結果および考察 使用される。
本実験では,スチールショットの量を1500g,空気圧 3.1エロージョン表面の観察
5kg/cm2の一定条件で行った。また,ノズルと試料間の Fig.2は純Alのエロージョン表面の実体顕微鏡写真で 距離は100mmとした。ここでは,直径12mmの試験面に ある。衝突角度α=90°の場合には,ショットの衝突に
ショットが,ほぼ均一な密度で衝突していることを予め よる均一な凹凸模様すなわちdimpleとその周辺の盛り 確認している。なお,試料の側面は,ゴム板で保護し, 上がりが認められる。各dimpleの間隔は約500μである。
上表面のみがエロージョンを受けるようにした。 α=75°,60°と小さくなるにしたがって,衝突方向と垂 スチールショットと試料の衝突角度(α)は20°〜90° 直に筋状の模様,すなわちlipple paternが認められる ようになる。α=60°でのlipple paternの間隔は約500μ でdimpleの間隔と同程度であるが,α=45°では少し大 きいようである。A1−SiおよびAl−Fe合金でも,同様の Compressor 表面形態が観察された。
Pressure
gauge
Solenoid
va1>e
Nozzle
_』鍵ample
一 一
讃
Fig.2 0bservation of eroded surface
Fig.1 Schematic drawing of apparatus. of pure aluminum.(stereo microscope)
Fig.3は,エロージョン表面のSEM写真である。(A)〜
(D)は衝突角度α=90°の場合である。(A)に示すように,
エロージョン表面は全面を50〜100μの小さなdimpleで 覆われている。さらに,広い範囲でみると,500〜600μ の大きなdimpleを形成している。したがって, Fig.2で 観察されるdimpleは,ここでのおおきなdimpleである ことが分かる。
(B)のように拡大して見ると,各dimpleの周辺部は盛 り上がり,その先端は片状のlipを形成している。1ipは 非常に薄く引き延ばされており,その後のショットの衝 撃によって,一部は再び下地に圧着され,一部は摩耗片 として脱落するように思われる。
(C,D)のようにSi量が多くなると, dimpleの大
(C)Al−14Si gO°
織隔、_ . . 一
(A)Pure Al 90° (D)Al−20Si 90°
(B)Pure Al 90° (E)Al−20Si 45°
Fig.3 0bservation of eroded surface.(SEM)
きさはあまり変化がないが,dimple周辺部に形成され 3.3 エロージョン速度に及ぼす合金組成の影響 るlipが小さくなるようである。これは, Si量の増加に Fig・5はAl−Si, Fig・6はAl−Fe合金のエロージョン速 よって延性が低下するためと考えられる。 度および硬さを示している。
(E)はα=45°の場合である。大きなdimpleでは,変形 硬さは,両合金とも合金組成の増加とともに大きく がショットの下流方向に流れ,また,dimpleの下流側 なっている。また,金型試料の方がイソライト鋳型試料 にのみlipを形成している。 よりも硬い。これは,冷却速度が大きく,微細組織を示 このように,エロージョン表面がdimpleによって覆 すためである。
われており,かつ,ショットによる摩耗条痕が観察され Al−Si合金では,0〜2%Siでの硬度増加が著しく,
ないことは,エロージョンの進行が,いわゆるmicro− 2%Si以上ではほぼ直線的な硬度増加を示している。
cuttingによるものではなく, dimpleの生成にともなう 0〜2%Siは固溶体組成範囲であるため,ここでの硬 lipの形成とその剥離によると考えられる。 度増加はα相中のSi固溶量の増加によるものである。
3.2摩耗曲線とエロージョン速度 また,2%Si以上ではα相と硬いSi相の2相域である Fig・4はAl−Si合金の摩耗曲線である。縦軸の摩耗量 ため,ここでの硬度増加は, Si相ρ晶出量に比例して
は,元の試験片重量と試験後の試験片重量との差である。 いる。
合金組成にかかわらず,試験開始後初期摩耗の曲線を示 一方,Al−Fe合金では,全組成にわたり直線的な硬度 した後,一定時間後には,摩耗量が直線的に増加する定 増加をしめしている。これは,α相の最大固溶限が0.
常摩耗に達している。これは,ショットの衝撃によって, 05%Feと非常に小さく,α相の硬度増加が無視出来る 表面形状,表面の加工硬化の程度,塑性変形能などが安 程度であるため,硬いFeAl3相の晶出量に比例した硬度 定することによって定常状態が実現されると考えられる。 増加を示すためと考えられる。
本報では,定常摩耗での直線の勾配,すなわち単位時 エロージョン速度を見ると,Al−SiおよびAl−Fe両合 間,単位面積当りの摩耗量をエロージョン速度ERとし 金とも,共晶組成で最小値を示している。
た。 Al−Si合金では,0〜2%Siでの減少が著しく,
2%Siから共晶組成まで直線的に減少している。また,
Al−Fe合金では,0%Feから共晶組成まで,ほぼ直線 80
ご60
ω 口 む
パ 40 5
;
2
山20
0
Al−si alloys
(Hetallic mold)
α=90°
0 20 40 60
的に減少している。したがって,亜共晶合金のエロー ジョン速度の減少傾向は,硬さの増加傾向と非常に良い 一致を示すことが分かる。
一方,過共晶合金では,合金組織が増加するほど硬度 が大きくなるにもかかわらず,エロージョン速度も増加 し,亜共晶合金とは異なった傾向を示している。初晶の SiやFeAl3は脆く,また,共晶中のSiやFeAl3に比べ て大きいため,ショットの衝撃によって容易に破砕し,
脱落する。また,脱落後の凹部はその後の引っかき摩耗 の起点として作用するため,エロージョン速度の増加を 助長すると考えられる。
従来から,摩耗におよぼす因子として硬さに着目され ることが多い。Fig.5およびFig.6に示すように,金型試 料は,イソライト鋳型試料に比べ,エロージョン速度が 小さい。これは,金型試料の方が組織が小さく,硬いた めと考えられ,硬さの影響は大きい。しかし,過共晶合
Time・・i・ 金のように,硬いほどエ。一ジ。ン搬が大きい場合も
Fig・4 Erosion loss vs time curves of AI−Si alloy. あり,材料の硬さのみに影響されるのではなく,組織や
7 6 N 5 E O
lsolite
mold
Hv , b α=45° 9トノ
\ ,
c 4 ρ/
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・ 30 40 6
5 30 9
20
0 10 20 0 10 20
si , wt,駕 si , wt、駕
Fig.5 Erosion rate and hardness vs content in Al−Si alloys at various umpingement angle.
7
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