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金属工学教室小林俊雄   〃    中  尾  善  信

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(1)

純A1およびCo−Sn共晶系合金の凝固におよぼす

      低周波振動の影響

(昭和56年頚月3◎臼 原稿受付)

金属工学教室小林俊雄

   〃    中  尾  善  信

タノ〈大学院)山本  優※

The Influence◎f Low−Frequency Vibration on the S◎lidification of          Pure AI and Co・Sn Eutectic System Alloys

by T()shi◎KOBAYASHI    Yoshinobu NAKAO    Masaru YAMAMOTO

Abstract

   T◎investigate the in舳ence of vibrati◎n◎n solidifymg aluminum casting was made in a mould vibrating at low frequencies with the range 17 to 30 cycles per second and various amplitudes with the range l to 5 mm. Further, the influences of vibration on$olidification of [ 織der£ooled tin and Co−Sn all◎y melt§using a SnCI、 flux and gぬss§lag method were s斑died.

   In case of aluminum vibrati四caused a grain refinement. Vibration had a noticiable effect on cast structure when applied during the early stage of solidification.念Grain refinement is dep飽dent◎n v三bratlonal intensity, wi山changes in amp薮tude having a greater e薮ect than changes in frequency in the present work. Two separate mechanisms of grain refinement by vibration were f◎und. When s◎li翻cation輌s i品dend斑c mamer, nuclel are fom茎ed by fra◇

turing of fine growing dendrites un(ier bending stresses ar1(i when solidification leads to a smooth solid/liquid interface, accelerated nucleation is caused by detachment of crystals formed at the mould聡U.0川he◎ther hand, when vlbrati◎n was a停lied t◎undeτcooled tin melts, ab◎ve a critical vibrational intensity dynamic undercooling was less than static undercooling, showing that v輌bration prom◎ted r搬cleation. However, in case of undercoo▲ed Co−Sr}melts,輌t did n◎t affect the amount of undercooling at which nucleation was initiated.

、瀦言       ら磯輸躍舗握や結果を躍噸‖することは未

       だできていない。

 微細な等軸晶からなる鋳塊は方向性が少なく,均質性    振動凝固の研究の大多数は凝固に際して過冷却がない が高いなど健全性が秀れている。このような鋳塊を得る   場合で,また過冷却があっても小さい場合である。この ための一方法として,凝固しつつある溶湯に振動を付加   意味で大きな過冷却を伴う凝固に対する振動の影響を知 することが行われてきた。振動を付加した鋳塊では柱状   ることは興味深い。本報告では過冷却を伴う溶湯および 晶の成長の抑制2結晶粒微細化;) 2)脱ガス1)パイプ状引   』過冷却を伴わない溶湯の凝固におよぼす振動の影響にっ けの減少力などが認められている。この原因としては,   いて述べる。

振動によって溶湯中の核生成が促進される,振動によっ

       2.実験方法 て凝固中に形成した結晶を破砕し,これを溶湯中に分散

させる,などに基づくものとされている。しかし,これ    これまでに使用されてきた振動は,高振幅・低振動数

※ 現在三井金属鉱業㈱       の穏やかなものから,低振幅・高振動数の超音波エネル

(2)

いるが,振動エネルギーを効率よく伝達させるためには    3.1.A1の凝固におよぼす振動の影響(過冷却がない 溶湯をルツボごと振動させるのがよいとされている6)       場合)

 実験に用いた振動機はカゴ型誘導電動機のローター両    用いたAlは99.7%と99.99%純度で,これに含まれる 軸端に偏心重りを取り付けて回転させ,それによって生   不純物を表一1に示す。試料重量を70〜809とし,最高加 ずる遠心力を振動として利用した。このような振動モー   熱温度を800°Cとして溶解した。

ター2台をローター軸を平行にして互に反対方向に回転

するとほ動的に同期化して左右方向への力は打消され 表一1使用アルミニウムの分析値(wt%)

るので,振動は上下のみの直線方向となる。偏心重りの 取付け位置を変えることにより振幅を,またSCRの点 弧位相を変えて電圧制御を行うことにより振動数を変化 させた。振幅は0〜5.5mm,振動数は1000/min〜1800/

minの範囲でそれぞれ独立に選択することが可能な,い    振動数1800/min,振幅1.Ommの振動条件の時,680°C わゆる低周波振動機である。振動発生装置およびルツボ   から振動を開始し,凝固途中の所要の時期に振動を停止 の取付け法を図一1に示す。      させ,また,振動開始時期を変えて凝固させた鋳塊のマ       クロ組織を,99.7%および99.99%純度の試料について       ←    執電対      写真一1に示す。両者共に傾向は全く同じで,無振動の場       合の粗粒は凝固温度以上の温度からの振動付加により結       晶粒の微細化が起こるのがわかる。凝固中期に振動を停       止しても,凝固終了時まで振動を付加した試料とくらべ       て結晶粒微細化に差は認められない。しかし,凝固開始        _振動台    初期に振動を停止すると微細化の程度は幾分小さく,試       料上部は粗粒となり,沈澱晶があることを示している。

      ←一一バネ     この傾向は99.99%AIで特に著しい。また,凝固中期か       ら凝固終了時まで振動を付加した場合には結晶粒微細化       効果は微弱である。99.99%Alは99,7%Alよりいずれ       の振動条件で処理しても結晶粒は粗い。振動付加が凝固       温度以上の溶湯時だけでは凝固組織に影響しないi)こと       は本実験でも確められ,振動による微細化効果は凝固中   図一1振畷置の概略とルツボ取付肪法  }このみ効果があり臓醐期に著しいことがわかる・

       振動を付加して凝固組織に影響する因子としては振  Alによる実験では,試料はアルミナを塗型した黒鉛ル   幅,振動数,最大加速度がある。これらの因子のうち振

ツボで溶解し・これを徐冷するために予め加熱したイソ   動数と振幅は互に無関係なパラメーターとなるので,こ ライト・レンガ製の保温容器に入れて振動台に固定し,   の影響を調べた。高振幅・高振動数の大きな振動エネル 溶融温度が高いCo−Sn合金の場合は,試料を溶解した   ギーを溶湯に凝固終了時まで付加すると,写真一2に示す タンマン管をそのまま振動台に固定した支柱から伸びて   ように鋳塊に亀裂を生じたり,砂状に分解することが多 いるアームに固定した。試料はアルメル・クロメルまた   い。また,破壊しないまでも溶湯は振動により自由表面 はPt−Pt・Ph熱電対を用いて冷却曲線を自動的に記録   からはね上り,落下を繰り返して凝固組織に影響すると させながら冷却し,凝固過程の種々の段階で振動を加え   考えられる。これを防ぐために,予熱したイソライト・

た。試料は縦方向に切断し,マクロ組織および顕微鏡組   レンガ製の蓋を溶湯に接するようにかぶせた。この場合

←    熱電対

一ルツボ

一一一

\/アンバランスモーター

      一 Z        〇

     不純物純度

Fe Si Cu 99.7%A1 0.14 0.05

99.99%A1 0,002 0,002 0,001

(3)

写真一1 アルミニウムの凝固組織におよぼす振動付加期間の影響     ×L5×%

には試料は破壊することはないが,微細化効果は幾分減 少するように見える。

 凝固組織におよぼす振動数および振幅の影響を99.

7%Alについて写真一3,4に示す。この試料から求めた振 動数および振幅の変化に伴う結晶粒の測定結果を,99.

99%Alについての結果と共に図一2に示す。実験した範 写真一2 振動凝固による試料の亀裂および破壊     囲では,振動数が大きい程微細化の傾向を示すが強いもの      (・)振動数1400/min,振幅4.5mm      ではなく,特に振幅が小さい時には効果は小さい。しか      (b)振動数1800/min・振幅4・5mm       し,振幅の増大による結晶粒微細化効果は顕著に現われ

写真一3 振動凝固組織におよぼす振動数の影響     ×1・5×%

     (670°Cから凝固終了まで振動付加,振幅1.Omm)

写真一4 振動凝固組織におよぼす振動数の影響         ×1.5×%

     (670°Cから凝固中期まで振動付加,蓋使用,振幅4.5mm)

(4)

依存することを示しており2},微量の合金元素を含む時   に柱状晶が存在しないのは,底部のイソライト・レンガ 微細化は効果的で,高純度の金属では振動による微細化   が予熱されているため柱状晶の生成が遅れたか,振動付 が生じ難いことを報告している。これらの結果は本実験   加時に離脱したためで,振動停止後には沈澱晶が生ずる。

結果と一致している。       同じ振動条件で凝固開始から30秒間振動を付加した  黒鉛ルツボ中での徐冷によるAlの凝固は,でたらめな   試料を写真玉・dに示す。振動時間が長いので柱状晶は

方向の核生成と成長によってなされる。この時,99.7%

純度のAlは樹枝状に晶出し,これの振動による機械的 な破壊が結晶粒微細化をもたらすと考えられる。それ故,

ツボとして試料を溶解し,このまま振動台に取付け,円

周方向からの一方向凝固をさせた。      25  振動を付加しない時の凝固は外周部より中心に向って

進行し,凝固組織は写真一5・aに示すように柱状晶とな    蒲20 る。これに種々の条件で振動を付加した時の凝固組織を   習

       む

写真一5・b〜eに不す。       .  罰  振動数1000/min,振幅5mmの振動を溶融状態から試    皇15

料中央に設置した鯛対で綱開始後15秒まで付加し   。一

た場合には,写真一5・bに示すように試料全体が均一に     10 微細化している。また,凝固開始後30秒から凝固終了ま

で振動を付加しても,柱状晶はそのまま成長し,微細化      5 することはなかった。一方,凝固開始後15秒間だけ振動

(振動数1800/min,振幅5mm)を付加した試料は写真

一5・cに示す組織となる。熱電対は試料中央部に設置し      0   1000     1400     1800 ているので,この熱電対での凝固開始は外周部では既に       振動数,cpm

凝固が進行しており,柱状晶として成長していることにな

る・15秒間の醐は溶湯中に微細粒を生ずるが・襯を 図一2籠麟およ ぎす振動数および

停止すると微細粒は下部に沈澱すると考えられる。柱状

780℃から凝固開始 後15秒まで

凝固開始後30秒から

凝固終了まで

写真一5 振動凝固組織におよぼす振動付加期間の影響(金型)        ×1・5×%

(5)

鋳壁から剥離されて溶湯中に混入するが,これが著しく   とはなかった。

破壊されることはなく,未凝固溶湯部分のみが微細化さ    振動を付加させず,種々の過冷度で凝固した試料の凝固 れている。振動を凝固開始後30秒から凝固終了まで付加   組織を写真一6に示す。9.2degC過冷した試料では,空冷 した試料を写真一5・eに示す。振動開始時までに成長し   凝固であるため全体が微細な層状共晶組織であるが,共 た柱状晶の凝固層は強固であり,振動によって剥離され   晶コロニーは外周部から中央に向って幾分長形に成長し ることはない。また,凝固界面は平滑であるため振動に   ている。50.6degC過冷した試料では,外周部は層状共 よって破壌されることもなく,柱状組織が中断されて振   晶組織であるが内部は粒状共晶化した領域が散在し,粒 動開始時期がわかるにすぎない。       状共晶コロニー境界部には層状共晶組織が見られる。

 3.2,溶融ガラス中で過冷する溶湯への振動付加     110.4degC過冷した試料では粒状共晶組織は増加し,

 3.2.1.Co−39.3wt%Sn共晶合金の振動凝固     ほぼ50%近くなる。試料外周部は層状共晶組織が多い。

 本合金試料に付加した振動は前述のAlに用いた振動   198 degC過冷した試料ではさらに粒状共晶組織が増加 機によるもので,1600kgの重量まで振動させることが   し,層状共晶は僅かにその境界部に現われるだけである。

できる。      Murtyらによると,炉冷による1009のCo−CoSn共晶試  溶融ガラス中で溶解した試料は一度過冷能力をもった   料は150degCより大きい過冷却で層状共晶は完全に消

時,振動数1800/min,振幅4.5mmの振動を溶融温度以   滅すると報告している6)が,本実験では309の試料で炉 上の溶湯状態から付加しても,また過冷状態から振動を   冷,空冷共にそれぞれ166,198degCの最大過冷度でも 開始しても,いずれの場合も引続いて過冷却を示し,最   層状共晶は残存している。また,冷却速度の増加により 大189degCの過冷度を得た。これは既報の結果と同じで   層状共晶は幾分減少するとしているが,本実験ではこの傾 ある;しかし,溶融ガラス中で過冷状態にある溶湯をタ   向はむしろ反対で,本実験の冷却速度の増加が層状共晶 ンマン管ごと約25cmの高さからレンガ上に落下させて   組織を増したと考える。

溶湯に衝撃を与えると,衝撃と同時に凝固を開始し,衝    落下衝撃により過冷状態から凝固させても,それによ 撃の種類により過冷溶湯の挙動は異なるかも知れない。    る凝固組織の変化は,幾分粒状共晶コロニーが増加する  過冷度の小さい試料は溶融ガラスの量を少なくすれば   傾向を示すだけである。

容易に得られる。しかし,振動の付加はガラス層を破っ    振動を付加しながら過冷凝固した試料の凝固組織を,

て溶湯のとびはねが起こり,凝固が始まる。多量のガラ   種々の過冷度について写青一7に示す。振動数1800/min,振 スを用いた場合には,振動を付加しても溶湯がとび出すこ   幅4.5mmの振動を溶湯時から凝固終了まで付加した過

×150×%

a) △7 =9.2degC,  b) △7「=50.6degC,

c) △7 =110.4degC, d) △7 =198degC

写真一6 種々の過冷度で凝固したCo−39.3wt%Sn共晶合金のミクロ組織

(6)

分では共晶組織はやや粗くなる。このような傾向は振幅   織変化は層状共晶にだけ現われ,粒状共晶部分には識別 が1.Ommに減少した場合にも観察されるが,現われ方は   できる程には現われていないので,過冷度が大きくなる 弱くなる。過冷度が64.4degCで振動数1800/min,振幅   と粒状共晶が多くなるため,過冷度が100 degC程度まで 4.9mmの振動凝固試料では層状共晶が未だ多いが,こ   しか振動の効果が観察されないと考えられる。また,純 の部分には振動の影響を受けたと思われる円形の共晶コ   Alの凝固に対する振動の効果は凝固初期にしか効果的 ロニーが観察される。96.6degC過冷した,振動数1800/   でなかったことから,本合金では凝固の初期は外周部に min,振幅4.9mmの振動凝固試料では,層状共晶部に同    層状共晶を生ずるので,この組織にだけ効果が現われた 心円状の共晶コロニーを呈する。しかし,振幅を1.Omm   のかも知れない。

に減少すると組織への影響は見られなくなる。140,185

×150×%

a)△7 =OdegC,1800/min,4.5mm b)△T−OdegC,1800/min,4.5mm c)△7 =OdegC,1800/min,1.Omm d)△7「=64.4degC,1800/min,4.gmm e)△7 =96.6degC,1800/min,4.gmm

写真一7 過冷凝固組織におよぼす振動の影響(共晶合金)

×150×%

a) △7「−OdegC,  b) △τ=23degC c) △7 =74degC,  d) △7 =203degC

写真一8 種々の過冷度で凝固したCo・37.3wt%Sn亜共晶合金のミクロ組織

(7)

 3.2.2.Co−37.3wt%Sn亜共晶合金の振動凝固     しているか,または二次枝のない棒状の初晶となる。共  本合金の空冷で得られた溶融ガラス法による最大過冷    晶組織は層状であり,共晶合金で観察された同心円状の

度は203degCであった。振動数1800/min,振幅4.5mm   組織は存在しない。これは初晶の晶出に引続く共晶凝固 の振動を液相線温度以上から,また過冷状態にある溶湯   となるため,Alによる振動凝固では振動の影響は凝固初 に付加しても,共晶合金の場合と同様に過冷能力をもっ   期にのみ効果的であったことを考えれば,亜共晶合金で た溶湯は過冷度が減少することはなかった。しかし,過   は初晶にだけ影響をおよぼしたと考えられる。69degC 冷溶湯の落下衝撃は直ちに凝固を開始させた。        過冷した試料では粒状共晶コロニー外周部のデンドライ  種々の過冷度で凝固した試料の組織を写真一8に示す。    トは分断されている。過冷凝固における凝固潜熱の発生

23degC過冷した試料では初晶は樹枝状に晶出している   はデンドライトを溶断分離するが,振動の付加はこれに が,幾分過冷があるため凝固潜熱の放出による二次枝の   協力的に作用し,デンドライトの分断を強めたといえる。

分断遊離現象が少し観察される。この傾向は試料外周部   過冷度が110degC程度でも上記の組織変化の傾向は変 に見られ,中央部では完全な樹枝状晶が多い。共晶組織    らない。しかし,203degC過冷した試料には初晶は存在 は一部に粒状共晶も見られるが,層状共晶組織が多い。74   しないので,これに振動を付加しても組織変化をもたら degC過冷の試料では,粒状共晶コロニーを取り囲む外   すことはなかった。

側では初晶Coは樹枝状であり,共晶は層状共晶組織を    純Alの振動凝固によれば,振動付加時期によりその 示している。空冷であるため温度回復は完全ではないが   影響は異なる。過冷度が大きい場合には凝固潜熱による 擬共晶凝固範囲を越えて上昇しており,温度回復に伴う   組織変化が大きいので,これに振動を付加しても振動の 凝囲組織変化をよく示している。しかし,203degCの最   影響を確定できない。ガラス量を減らして過冷却がない 大過冷凝固試固試料では粒状共晶コロニーの外周部は層   場合の振動開始時期の影響を調べた。これを写真一10に 状共晶となるが,ここには初晶Coは全く観察されない。   示す。初晶晶出前からの振動付加は,初晶デンドライト  振動(振動数1800/min,振幅4.5mm)を付加して過   の機械的分断をもたらす。共晶組織への影響はない。し 冷凝固した試料の組織を写真一9に示す。18.4degC過   かし,初晶晶出後の振動付加は,初晶デンドライトの分 冷試料では,初晶は樹枝状とはならず,粒状で均一に分散   断傾向が弱くなることを示している。

写真一9 過冷凝固組織におよぼす振動の影響      ×150×%

     a),b)△T=18.4degC, c)△7 =69degC,1800/min,4・5mm

写真一10 ミクロ組織におよぼす振動付加時期の影響     ×150×%

     a)溶湯時から凝固終∫まで振動付加  b)初晶晶出後振動開始

(8)

ス製試験管中で最高加熱温度400℃で溶解し,空冷凝固    振動付加による凝固では動的に刺戟された核生成があ させて過冷度を測定した。静置凝固の場合には,溶湯保   るとされ,これには二つの形式が考えられている。一っ 持時間の増加に従って過冷度の増加が認められた。過冷   は適当な動的結果として核生成を促進するもので,もう 能力がほぼ一定となった試料は400℃で再溶解し,1時   一つは動的手段によって凝固しつつある液体中の結晶の 間保持後,各種の振動条件で凝固温度以上20degCの温度   数を著しく増加させるもので,これは既存の結晶の破壊 から凝固終了まで振動を付加して,過冷度を測定した。    によるものと考えられ,この破片は核として作用できる。

 静止凝固試料の過冷度におよぼす振動の影響を図一3   第一の考え方は振動により溶湯中に生ずる圧力波と に示す。振動数1800/min,振幅4.5mmおよび振動数   ル・シャトリエの原理に基づいて説明される;すなわ 1400/min,振幅4.5mmの振動条件では,過冷度は振動付   ち,凝固収縮する金属では加圧波は金属の融解点を高く 加により減少している。しかし,振動数1800/min,振幅   し,結晶核の臨界大きさを小さくすることにより核生成 1.2mmの振動付加では過冷度はむしろ増加することが   を容易にする。 Clausius−Clapeyronの式から計算した 多い。これは振動エネルギーが不足しており,過冷度を   1気圧の圧力変化は,Niでは2.7×10 3degC程度の変 減少ざせず,溶湯保持による過冷度の増加の傾向が強く   化であり,この値はきわめて小さいものである。本実験 現われたものと考えられる。      に用いた振動機による最大圧力変化は3.5G程度であ  FrawleyらはBiおよびBi−Sn合金の振動凝固の研   り,これによって大きく過冷させることはできない。し 究で;}振動数が900/min〜12000/min,振幅が2mmま   かし,振動のサイクル中の負圧部発生時にキャビテー での範囲の振動を過冷溶湯に付加し,臨界の振動エネル   ションが生ずるならば,キャビテーションの気泡の崩壊 ギー以上になると過冷度が減少し始めること,また溶湯   時の大きな圧力変化によって生ずる平衡温度の変化のた 表面を覆う溶剤の粘性の大小が過冷却に影響し,粘性の   めに,核生成が起こることも考えられるぎ

小さいものは溶湯表面の乱れを容易にして過冷度を減少    溶融ガラス法により大きく過冷したNi, Ni−Ag5}お させることを示した。これらのことから粘性の大きい溶   よびCo−Sn溶湯では,低周波振動は過冷度の減少とい 融ガラスを用いた過冷凝固では,本実験に用いた範囲の   うかたちでは核生成に全く影響しなかった。これは 振動では振動エネルギーが不足し,過冷度の減少に効果   Fehlingらの結果9)と一致している。しかし,塩化第二錫 がなかったことも考えられる。      を溶剤として用いたSnの過冷度は振動の付加により過

40

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冷度の減少をもたらしており;}用いる溶剤により振動の 効果は異なる。これは,もし溶剤が振動を吸収するなら,

結果に差があってもよい。一方,同じ溶融ガラス法によ る過冷溶湯も,落下による衝撃はいかなる過冷度において も必ず凝固を開始しており,これは単一の圧力パルスが 過冷したNi, Co溶湯を核生成させた事実川と一致して

いる。

 第二の考え方は破壊が起こる程度に成長している固体 への応力付加に基づくもので,一つは固体と溶湯の相対 的移動により,他はキャビテーションによって応力を生

ずる。

 固体と溶湯の相対的移動は,溶湯中に密度の異なる固体 が分散している時ルツボを振動することによって期待で 0  5 10 15 20 25 30 35 40     き,その大きさは固体・溶湯の密度の差,粒の大きさ,

    静置凝固時の過冷度・degC      形および溶湯の粘性などに依存すると考えられる。初晶  図一3 過冷度におよぼす振動の影響        を溶湯中に静止している単一梁として考え,この周りの

(9)

溶湯が振動サイクル中に動くと仮定して種々の振動条件   も微細化しているのは,黒鉛ルツボ中では,振動によっ 下で結晶に作用している応力を計算し,これが初晶を破   てもたらされるデンドライトの曲げ応力による破壊のた 壊する応力と同じオーダーとなることから,振動による   めである。ステンレス鋼製円筒をルツボとして用いた場 初晶の破壊が可能なことが示されている劉 一方,   合には,平滑界面で凝固が進行するので,凝固開始前か Johnstoneらは鋳塊の凝固中に生ずる溶湯の流動による   らの振動を付加した時は鋳型壁で生成した結晶核をっぎ 応力でさえも,溶融温度でのデンドライトの枝の降伏応   っぎに剥離して溶湯中に送り出し,微細化をもたらした 力を大きく越す可能性を計算している㌍振動凝固した    と考えられる。しかし,凝固が進行した後の振動付加は,

鋳塊の粒の大きさが,振動強度,固相線温度における固   表皮生成型に成長した柱状晶層を破壊するだけの応力を 体の強さおよび固体と液体間の密度の差に依存するとい   もっておらず,キャビテーションも生じないので,柱状

う事実は破壊説を支持するし,透明有機物による直接観   晶の成長は継続する。

察もこれを確認している㌍もし固相が樹枝状に晶出し,         _

二次枝のつけ根がくびれているならば,曲率による酬, 5・結言

溶湯の流動による分断も可能であり,振動による破壊だ    過冷しないAl溶湯,過冷したC◎−Sn合金およびSn けの結果とはいえないが,デンドライトの分断による微   溶湯の凝固におよぼす低周波振動の影響を調べ,次の結 細化は容易になる。       果を得た。

 Co−Sn亜共晶合金による実験では,過冷度が小さい時    (1)溶融ガラス中で過冷するCo−Sn合金溶湯は,低 には初晶デンドライトの溶断は完全ではなかった。しか   周波振動を加えても,これによって核生成が起こること し,振動付加による二次枝への曲げ応力はこの分断・遊   はない。しかし,塩化第二錫溶剤中で過冷するSn溶湯で 離に協力的に作用したと思われる。過冷度が大きい時に   は,振動数1800/min,振幅4.5mmおよび振動数1400/

は溶湯の粘性が大きくなり,振動による固体・液体の相   n面,振幅4.5mmの振動付加は過冷度を減少させる。

対的移動を困難にするので組織への影響は小さくなると    (2)溶融ガラス中で過冷しているCo−Sn合金溶湯は 考えられる。これは過冷を伴わない凝固1こおいても,凝   落下による衝撃で直ちに核生成する。

固の進行はデンドライトを強化すると共に・凝固しつつ    (3)低周波振動が凝固組織に影響する場合,それは凝 ある溶湯の粘性を増して振動の効果を減ずると考えら   固初期段階で顕著に認められ,液相線温度以上だけの振 れ・凝固終期の振動付加は効果がない。また・過冷が大   動は全く効果は無く,凝固中期からの振動付加は影響が きい時には急冷されることによる凝固時間の短縮は組織    少ない。

への振動の影響を少なくし,温度回復による組織変化が    ④ 本実験でのAlの振動による微細化は,鋳型壁から 著しいことが振動の効果をマスクしている。共晶組織へ   の結晶核の剥離およびデンドライトの機械的破壊であ の振動の影響が過冷度が小さい時にだけ現われる理由も   り,キャビテーション効果によるものではない。

上述と同じと思われる。共晶組織の変化が同心円状に現     (5)本実験の範囲では,Alの微細化効果は振幅の大き われる理由は不明であるが,遠心鋳造で現われる   さに依存し,振動数の影響は少ない。

stractural ballding 14)に類するものと考えられる。     (6)溶融ガラス中で凝固するCo−Sn合金の凝固組織  平滑界面またはセル状界面で凝固しつつある試料に対   への振動付加の影響は小さい過冷度でのみ認められ,共

しては,デンドライトの破壊の如き微細化機構は適用で   晶合金では同心円状の共晶組織が,亜共晶合金では初晶 きない。溶湯への振動がキャビテーションを生ずる時に   デンドライトの分断促進と均一分散化が認められた。

はこれが cavitation attack を導き,固相を破壊して    (7)振動凝固に溶融ガラスおよび溶湯の粘性が著しく これが付加的核として作用することが可能となるき)・川   影響し,過冷による溶湯の粘性の増加は振動の効果を減 Alでは振動により溶湯中にキャビテーションを生ずる   退させると考えられる。

には,6.6G以上の最大加速度が必要とされている;6)本実 験に用いた条件では最大加速度は3.5G程度であるか

      参 考 文 献

ら・99.7%Alではキャビテーションが起こる条件以下   1)R. Sankaran, K. S. Sreenivasa:Trans, AFS,78(1970),

の低い加速度のもとで凝固していることになる。それで    18{駕

(10)

4)R.T. Southin:J. Aust. Inst. Metals, Vol.10, No.2    11)G. Schmid, A・Roll:Z・Electrochem,45(1939),769・

(1965),115.       12)W.C. Johnstone, et a1・,:Trans, AIME,233(1965),

5)小林・中尾・池田:九州工業大研究報告(工学),No.39     1856・

 (1979),89. 、      13)A.Claro F, et aL,:Trans, AFS,78(1970),324・

6)Y.V.V.R.S. Murty, T. Z. Kattamis:J. Cryst. Growth,   14)G. J. Davies:Solidification and Casting, ApPlied  22(1974),219.      Seience(1973),128.

7)J.J. Frawley, W. J. Childs:Trans. AIME,242(1968),   15)M. J. Seemann, M・Staats:Metall,9(1955),868・

256.      16)R.T. Southin:J. Inst. Metals,94(1966),40L 8)J.L. Walker:Physical Chemistry of Process

Metallurgy, Part 2,845.

参照

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