応用力学論文集Vol.12 (2009年8月) 土木学会
ラングミュアー循環流の生成特性に関する実験的研究
Experimental study on generation property of Langmuir circulation
山上路生*・禰津家久**・秋谷優***
Michio Sanjou, Iehisa Nezu and Yu Akiya
*博(工)京都大学助教, 工学研究科社会基盤工学専攻(〒615-8540京都市西京区京都大学桂)
** 工博京都大学教授 工学研究科社会基盤工学専攻( 同上 )
*** 京都大学修士課程工学研究科社会基盤工学専攻( 同上 )
Langmuir circulation is a large scale secondary current associated with a generation of wind-induced water waves. This circulation is observed together with high-speed and low-speed streaks, i.e., convergence and divergence zones, respectively. Mass and momentum are transferred significantly from divergence zone toward convergence zone, and consequently, strong down flows are formed in convergence zone. Furthermore, horizontal vortex induced by spanwise variations of primary velocity is tilted by Stokes drift. These hydrodynamic properties promote generation of Langmuir circulation. Such a circulation plays significant roles on three-dimensional mass and momentum exchanges, and thus, it is very important to study hydrodynamic properties of Langmuir circulation in natural lakes and ocean environmental fields. However, there exist a lot of uncertainties for three-dimensional structure of such large scale circulations. So PIV measurements were conducted in order to reveal distributions of velocity vectors on both of cross-sectional and horizontal planes and consider generation mechanism.
Key Words: Langmuir circulation, three dimensional structure, wind-induced waves, PIV
1.はじめに
ラングミュアー循環流は風波をともなう水層で発生す る大規模2次流である.古くはLangmuir(1938)1)によって その存在が予測されており,これまでその発生原理も含め て多くの観測・実験あるいは理論的研究が行われてきた.
ラングミュアー循環流は表層流速のストリーク構造と関 連が深く,低速域から高速域へ物質輸送が促進されること が多くの研究者によって報告されている.すなわち低層か らの上昇流によって低速運動量が低速ストリーク域に輸 送される.さらに低速域から高速域へ運動量が集中的に輸 送される.この結果,連続性を満たすため高速ストリーク 領域では下降流が発生する.Faller & Caponi(1978) 2)は風洞 水層で風波を発生させ,表層と底層の流れを可視化してビ デオ撮影した.その結果,表層と底層のどちらにもストリ ークが認められた.さらにストリークの間隔が水深によっ て決まることを考察するとともに実験水路の計測データ と海洋における観測データの差異についても説明した.
ラングミュアー循環流の発生メカニズムについて現在
最も有力なものがCraik & Leibovich(1976) 3)によるCL2モ デルである.これは波とせん断流の非線形相互作用によっ て縦渦生成を説明するものである.Leibovich(1983)4)はもう 一つの生成メカニズムであるCL1モデルとCL2モデルの 両者を詳しくレビューした.
Li & Garrett(1993)5)はCL方程式からラングミュアー循環 流の発生・発達プロセスを数値解析し,渦のスケールや強 さ,小規模渦が合体し大規模渦を形成するマージングの様 子を詳細に考察した.通常の境界層乱流では同一方向に回 転する微小渦が合体することに対し,ラングミュアー循環 流は逆回転の渦ペアが合体して発達することを示した.さ らにストークスドリフトによる外的な要因がマージング をより促進することや,ラングミュアー数の減少とともに ピッチ(最大下降流速に対する表層の主流速度比)が減少 することを報告している.Mizuno&Cheng(1992)6)は風洞水 槽でラングミュアー循環流を発生させて,3成分電磁流速 計と超音波流速計によって点計測を行った.彼らは流速分 布の空間的な偏差をラングミュアー循環流による効果と し,せん断応力に対するラングミュアー渦の寄与特性を考 応用力学論文集 Vol.12, pp.779-786 (2009年8月) 土木学会
察した.さらに運動量拡散が半水深領域で卓越することを 実験的に示した.Mizunoら(1998)7)は室内実験結果から,
1対のラングミュアー渦が圧力勾配と側壁効果によって 支配されることを示し,アスペクト比が小さい場合には2 つのCLモデルとは異なる生成機構が存在することを報告 した.松永ら(1998)8)は水深を系統変化させて水平面の流速 ストリーク構造を可視化し,循環流の生成に波の役割は大 きくない可能性があることを示唆している.同様に鵜崎・
松永(2004)9)は自由水面変動がない計算条件の下でLESを
行い,波が存在しなくてもラングミュアー循環流が生成す ることを数値予測した.ラングミュアー循環流は鉛直方向 の質量・運動量交換だけでなく水平方向の分散特性と大き な関連をもつ10).したがって海洋や湖沼などの水域環境を 考える上で非常に重要なトピックスである.しかしながら 上述のように発生メカニズムも含めてその流体力学的特 性には統一的見解が十分に得られていないのが現状であ る.
これまでの研究の多くが水平面のストリーク構造をも とに循環流の存在や発生特性を議論しており,横断面の2 次流構造に関するデータは少ない.また循環流の生成と関 連が大きい鉛直軸をもつ水平渦を捉えた結果もほとんど ない.そこで本研究ではPIV計測を行い,前半部では横断 面の流速分布および乱れ統計量の分布特性を考察し,循環 流の存在を明らかにする.後半でラングミュアー循環流を 起因する水平渦構造を可視化する.さらにCL方程式から 循環流生成プロセスの定量的な考察を行う.
2.ラングミュアー循環渦の生成に関する理論背景
Leibovich(1977)11)はストークスドリフトUsが存在する 場合には運動方程式においてドリフトベクトルUsによる 付加応力が発生することを次式のように示した.
Ω
×
=Us
f (1) この応力を考慮した運動方程式(Craik Leibovich 方程式,
CL方程式)からラングミュアー循環流の生成が説明でき る.ここでストークスドリフトは主流成分のみと考えて,
渦度の各成分を次のように近似する.
z U x W z
y =−∂U/∂ +∂ /∂ ≅−∂ /∂
Ω (2) y
U x V y
z =∂U/∂ −∂ /∂ ≅∂ /∂
Ω (3) 式(1)~(3)を使ってf を成分表示すると,
f =(0,Us∂U/∂y,Us∂U/∂z) (4) これより,鉛直方向と横断方向に付加応力が発生すること がわかる.
Leibovich4)はf とUsの分布からCL1とCL2とよばれる 2つの生成機構をまとめている.CL1 モデルの概念を図 -1(a)に示す.Usが横断方向に周期性をもつ波を考える.
一般的に∂U/∂y>0なので,式(4)より全領域で鉛直上向 きの応力が発生するが,高速ドリフト領域の方が低速領域 よりも∂U/∂yが大きくなりfyが横断方向に変化する.
これにより主流軸の回転力が発生し,循環流が発達する.
図-1(b)はCL2メカニズムのスケッチである.主流速の 高速および低速ストリークが交互に分布すれば,式(4)より 横断方向に付加応力が発生する.これによって高速ストリ ーク領域に流れが集まる.集積した流体塊は下降流となる.
同時にU(z)の分布よりせん断不安定となって鉛直軸をも つ水平渦が発生する.一般に∂Us/∂y>0なので横断軸の トルクが発生して水平渦の軸が傾き,縦渦に変わる.これ ら一連のプロセスによって大規模循環流が形成される.2 次元重力波のようにUsが横断方向に一定の場合にはCL1 理論ではラングミュアー循環流に関する説明が難しい.一 方でCL2理論では循環流は式(4)の付加応力の横断成分に よって引き起こされる.図-1 に示す付加応力による高速
(a) CL1 モデル (b)CL2モデル
channel bed
U(z) 水平渦
水平渦
図-1 ラングミュアー循環流のCL1とCL2生成モデルの概念図
ストリークへの運動量の集中輸送はUsの横断分布には関 係ないことから,本研究のような2次元重力波のケースで はCL2の方が適用しやすい.そこで本研究では実験結果 とCL2理論を考慮しながら,ラングミュアー循環流の生 成特性について定量的な評価と考察を行う.
3.実験手法と水理条件
実験装置と計測システムを図-2に示す.全長10m,幅 40cm,高さ50cmの可変勾配型の風洞付き開水路である.
循環式の水流部をバルブで全閉し,いわゆる閉鎖水域を設 定した.水路上流側の大型ファンによって風波を発生させ た.水路は側面および底面ともに強化ガラス製で流れの可 視化撮影が可能である.図中のxは流下方向座標である.
撮影領域の主流方向の中心をx=0とする.yは水路底面 を原点として水面側に向かう鉛直座標である.zは静水面 を原点として底面側に向かう鉛直座標である.U および V はそれぞれxおよびy方向における時間平均流速,u およびvはそれぞれ瞬間流速の時間平均流速からの乱れ 変動を示す.H は静水深,ηは水面変動である.計測部 はフェッチ距離が約7mの領域に設定した.水路下流端に は消波板を設置し反射波による流体の振動乱れを抑制し た.水路のガラス側壁より2Wの連続YAGレーザーをシ ート状に照射した.レーザーライトシート(LLS)上のト レーサー粒子(100µm径のポリスチレン)を水路底面に 上向きに設置した高速度CMOSカメラ(Detect製)によ って撮影した.ファン始動後1時間経過した時点で100Hz のフレームレートで2画像を連続撮影する.この2画像の ペアを50Hzのサンプリングレートで60秒間、制御PCに 記録し,得られた画像ペアからPIVの輝度相関法によって 主流方向と鉛直方向の瞬間流速成分(u~,v~)を時系列に 算出した.
表-1 は水理条件である.砕波を伴わない2次元重力波 を生成するために水深Hは 4cm,風洞断面の最大風速
max ,
Ua は6.8m/sとした.特に側壁の影響を避けるために
アスペクト比を大きくするように水深を決定した.Usは 自由表面におけるストークスドリフト値で30サンプルの フロート計測から求めた.U*は水側の界面摩擦速度で対 数則より評価した.ここでfpは波の卓越周波数である.
Hsは有義波高で容量式波高計により求めた.yLは LLS の照射高さで8通りに変化させた.
4.実験結果と考察
4.1 主流速の時間平均分布
図-3は底面近傍のy/H=0.125,半水深y/H =0.5お よび静水面近傍のy/H=0.95における時間平均した主 流速の水平面コンターを示す.水面近くでは風向きと同じ 方向に主流が形成される一方で,底面ではリターンフロー 表-1実験条件
H(cm) Ua,max (m/s)Us(cm/s) U*(cm/s) fp(Hz) Hs(cm) Hs/H yL /H 0.125 0.250 0.375 0.500 0.625 0.750 0.875 0.950
4 6.8 28.1 1.85 2.2 0.77 0.19
Water Flow
H
x y
u z U,
v V,
w W,
high-speed CMOS camera
Air Flow
LLS
jack open-channel wind-tunnel
50cm
40cm
YAG Laser
traverse
図-2 実験システム
-0.04 -0.03 -0.02 -0.01 0 0.01 0.02 0.03 0.04
0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9
B z /
channel center
y/H
○ 0.125
■ 0.5
△ 0.875 (cm/s)
U
図-3 主流速の横断方向分布
がみられる.また半水深高さではセンターラインは風向き と同じであるが,その周囲から側壁にかけては逆流が発生 し,水面と底面高さの遷移的な現象が観察される.水面付 近では主流軸に沿って高速縞と低速縞が交互に現われる 様子がわかる.既往研究の多くがこのストリークと関連付 けてラングミュアー循環流の生成特性や物質輸送特性を 議論している.Faller & Caponi 2)は可視化計測によってこの ストリークの横断方向の間隔λcが水深H によって決ま ることを示した.次節で彼らの結果と比較する.
4.2 2次循環流のベクトル分布
水平面のPIVを行っているため,鉛直方向の上昇および 下降流成分は直接的に評価できない.しかしながら時間平 均成分であれば,全水平面における主流と横断流速成分を 用いて,次の連続式から間接評価できる.
V x y z U x W z dy
y
) / /
( ) , , (
0
∂
∂ +
∂
∂
−
=
∫
(5)ここでV =0at y=0とする.山上ら(2006)12)はこの方法 を用いて,複断面蛇行流における2次流セルの評価に成功 している.さらにNezuら(2005)13)はLDA結果を用いた詳 細な精度検証を行い,LDA と良好に一致することを報告 している.したがって(1)式を適用すればラングミュアー循 環流を捉えることが期待される.
図-4 にx=0における横断面の時間平均流速ベクトル )
,
(V W を示す.(a),(b)および(c)のコンターはそれぞれ 主流速,鉛直流速および横断流速の分布を示す.U につ いては水面付近のセンターラインを中心に最大流速領域 が分布するが,波状のコンターが現われて図-3 で示した ストリーク構造が確認できる.V の分布から上昇流と下
side-wall side-wall
bottom H
y/ 1.0
0
B z/ 1.0
0.5
V
(cm/s)(b)
0 0
0
0 0
0 0
2(cm/s)
side-wall side-wall
bottom H
y/ 1.0
0
B z/ 1.0
0.5
(c)
2(cm/s)W
(cm/s) 0.5-0.5 0
0
0
U
(cm/s)-4.0 4.0
H y/
(a)
side-wall side-wall
bottom 1.0
0
B z/ 1.0
0.5 0-1.0
2.0 4.0
highspeed streak
A B C
D
E F
0.2 0.2 -0.2 0
-0.2 -0.2
side-wall side-wall
-0.5 0.5
図-4 横断面の流速ベクトル(V,W)の分布
(コンターはa:主流速,b:鉛直流速コンターおよびc:横断流速,風は奥から手前方向に吹く)
降流が横断方向に交互に現われることがわかる.この傾向 は底面よりも水面側で顕著であるが,全水深領域にわたっ てこの特性が観察される.またW の分布から水面付近の 下降流の両サイドから流れが集まる様子がわかる.これは 既往の現地計測や室内実験で報告されているラングミュ アー循環流に特有のconvergence現象である.すなわち式 (4)で示した波による横断方向の付加応力によって高速領 域に流れが集積し,その結果下降流が生ずる.
次に流速ベクトル分布に着目する.主流方向に軸をもつ いわゆる縦渦および縦渦に近い構造をもつベクトル領域 A~Fが観察される.既往研究のラングミュアー循環流の 現象モデルと同様に,高速・低速ストリークと上昇下降流 は縦渦構造と密接していることが本研究でも確認できる.
ここでA,B,CおよびDに注目するとBとCおよびD とEの間にはy/H>0.5で上昇流が発生しているが,同 時にこの領域は主流の低速ストリークに対応する.またA とBおよびCとDの間の領域では下降流が発生するとと もに高速ストリークに対応する.すなわち複数の縦渦構造 によって水面付近の高速流体が底面側に輸送され,底面側 の低速流体が水面領域まで輸送される.このことからも,
従来研究で指摘されているようにラングミュアー循環流 が水平方向および鉛直方向の質量・運動量交換を促進する ことがわかる.
一方で必ずしも縦渦構造は明瞭とはいえず左右(横断方 向)に完全に対象的分布でもない.これは後述する水平面 の瞬間構造からもわかるように,縦渦の横断配置そのもの が時間変動することが一因と思われる.今回の計測は高速 カメラのメモリー制約のため1水平面あたり60sのサンプ リング時間であったが,より長時間のサンプルデータを解 析すればベクトルのばらつきも小さくなると思われる.
/
*' U
u
/'U
*w
0.6 0.5
A
1.00.9 1.2
(a)
side-wall side-wall
bottom H
y/ 1.0
0
B z/ 1.0
0.5
(b)
side-wall side-wall
bottom H
y/ 1.0
0
B z/ 1.0
0.5 0.6
0.4 0.4 0.4
図-6 横断面の乱れ強度分布(a:主流方向乱れ強度,b:横断方向乱れ強度)
0 1 2 3 4 5
0 1 2 3 4 5 6 7
(1.3, (0.25
laboratory experiments (Faller&Caponi(1978)) field observations (Faller&Woodcock(1964)) c/H
λ
w/H
λ
present data ) 3 . 2 / , 0 . 2 /
(λw H= λc H=
図-5 風波波長と高速ストリーク幅の関係
Faller&Capni2)は波長λwと高速ストリークの横断方向間 隔λcに関係性を指摘した.図-5は彼らの結果に本研究の 結果をプロットしたものである.本研究のλcは図-4(a)の
↓印で示した高速ストリーク間隔の平均値を適用した.な お白抜マーカーは海洋データで,黒色マーカーが実験室デ ータである.彼らは実験室スケールではλc/H≥2.0,現 地スケールではλc/H<2.0となり,これらの間にはスケ ール相似則が成立しないことを指摘した.実際に本研究デ ータもλc/H>2となりFaller&Capni2)の知見と一致する.
この原因については明白ではないが,側壁抵抗や水深のみ で一意に無次元化したことが考えられる.
4.3 乱れ強度の分布
図-6 は次式で定義される主流方向と横断方向の乱れ強 度u'およびw'の横断面分布である.
' u2
u ≡ and w'≡ w2 (6) 両者ともに水面で最大値をもち底面に向かって減少する 傾向がみられる.横断方向の変化よりも鉛直方向の変化が 大きい2次元的な分布である.表面流速からの相対座標で 考えるとこの分布は境界層の乱れ構造と類似性がある.し かしながらy/H>0.5の領域では横断方向にも波状に変 化している.特にw'の分布においてセンターラインの半 水深付近で局所的に値の小さな領域(サークルA)が観察 される. w'ほどではないがu'の分布についても若干底面 側からの張り出しが観察される.流速ベクトルと対応させ るとこれは底面からの上昇流に関係すると思われる.すな わち縦渦を構成する上昇流によって底面の小さな乱れが 輸送された結果,このようなバルジ構造が現われたと考え られる.これは一例であり本研究から断定することはでき A
B
u ˆ
(cm/s)0.1 0.3 0.5 0.7 0.9
0.2
0.1 0
B z /
B x/
= t
0.0(s)= t
(a)
(d)
Win d
10 -10
5cm/s
0.12(s) a
a
a
a
b
b b
b c
c d
d
d e e
f f
g
g h
h i
j k
h i l
A
A
A B
B
= t
(c) 0.08(s) f
e
C
= t
(b) 0.04(s)
A
図-7 水平面における瞬間流速ベクトルの時間変化(コンターは主流速成分)
ないが,ラングミュアー循環流によって平均流速分布のみ ならず乱れ構造も大きな変化を受けることが示唆される.
また半水深付近では密なコンターラインがみられ乱れの 変化が大きいが,これは水面からの乱れ輸送のほとんどが 半水深程度までにとどまるからと推察される.
4.4 ストリークと水平渦の瞬間構造
図-7 はy/H=0.75における水平面の瞬間ベクトル分 布を0.04秒ごとに示したものである.コンターは主流速 値を示す.t=0sにおいて主流速の高速領域と低速領域が 観察される.時間平均した結果と異なり,これらの領域は 主流方向に帯状に分布しているものの,大きく蛇行してい るようにみえる.また水路のセンターライン付近に観察さ れる比較的大きな領域をもつ高速流体塊A は時間の経過 とともに下流に輸送されることがわかる.さらに
04 .
=0
t s では A の上流側に別の高速領域 B が現われ 12
.
=0
t sではAとともに流下するとともに新たな高速領 域Cが現われる.
図-7のt=0sに戻ってサークルa~gに着目する.これ らはベクトル図で渦にみえる領域を示したものである.a,
b,e,fおよびgは時計周り,cとdは反時計周りの回転方 向をもつ.t=0.04sではこれらは全て流下方向に輸送さ れる.一方で新たな渦hが現れる.t=0.08sではこれら の渦の移動量は小さく,c,e,gは渦としては不明瞭にな る.t=0.12sではj,およびkが新しく現れる一方でdが 不明瞭になる.これらの渦は横断方向の局所的な主流速勾 配∂U/∂zのせん断不安定性によって生成されると考えら れるが,CL2理論で説明されるように波によって渦軸が傾 くことが予想される.波の軌道運動によってy軸をもつ水 平渦がx軸の縦渦に変わるために渦の不明瞭化が起こっ たと思われる.1ケースの結果からCL2 モデルを支持す るとは断定できないが,少なくともそれに矛盾しない結果 が得られたといえる.また図-4と図-7を比較すると必ず しもストリーク構造が対応していないが,これは平均場と 瞬間場の違いによるものと思われる.
Li & Garrett5)はCL方程式に基づいた数値計算結果を検 証するためにピッチPtを検証した.Ptは主流方向の流速 と下降流の比であり,次のように定義される.
d l
t hV
U
P U −
≡ (7)
UhおよびUlはそれぞれ高速域と低速域の流速値である が,検査水平面上においてUh−Ulの最大値を式(7)に適用 した.またVdは下降流速でここでは横断面における最大 絶対値を適用した.図-8はLi & Garrett5)のFig.14に本 実験結果をプロットしたものである.横軸はラングミュア ー数Laであり5),縦軸はPt値である.S0 =2Us(y=H)
は静水面高さにおけるストークスドリフトの2倍値であ る.Pollrad(1977)12)とWeller & Price(1988)13)による現地観測 結果の分布範囲も示されている.Laを評価するには渦動 粘性係数の値が必要であるが,実験結果では不明なため特 定することができないが,縦軸に示すPt値は14であった.
本結果は既往の観測結果の分布範囲に存在することから も,図-4で示した2次流構造は海洋観測で捉えられたラ ングミュアー循環流の水平流速/鉛直流速比,すなわち3 次元構造におけるスケール相似則が成立することがわか る.一方で数値計算結果はLaの増加とともにPtが増加す ることを予測しているが,全体的に観測および実験値と比 べるとPt値は小さい.Li & Garrett5)は主流方向の流速成分 を過小評価したことが原因としている.
4.5 Craik-Leibovich方程式における付加応力の評価 PIV による流速分布結果から式(4)のストークスドリフ トによる付加応力が評価できる.式(4)から横断方向の成分 はそれぞれ,
z U U
fz = s∂ /∂ (8) と表せる.ストークスドリフトUs(y)は定義に従い次の ように計算する7).
)) ( 2 exp(
)
(y a2k k y H
Us =ω − (9) ωおよびaは波の角振動数と振幅であり,波高計のデー タよりω=2πfp およびa=Hs /2として計算した.
k=1/λwは波数である.図-9に絶対値の最大値fzで無次 元化したfzの横断面分布を示す.図-4で示した2次流ベ クトルも伴示した.半水深以上の水面側の分布に注目する と正負の分布が逆転する領域に上昇流と下降流があられ る.特にfzが対向するconvergence領域では流れが集積し て下降流が生ずる.一方でfzが離散するdivergence 領域 では上昇流が失われた運動量を補間する.これらの上昇下 降流によって2次循環流が形成される.さらに水理条件を 系統変化させて同様の考察を行えばCL2モデルによる縦 渦生成メカニズムの妥当性が断定できるかもしれない.海
1 10 100
0.01 0.1
Present data 14
3 / 2
* 0
U Pt S
La
Field data
(Pollard(1977) and Weller & Price(1988)) Calculation
(Li & Garrett(1993))
図-8 ピッチに関する現地観測および数値計算との比較
洋ではこのような大規模 2次循環流によって水温などの スカラー量,あるいはプランクトンが輸送され海洋生態系 に大きな影響を与えることがわかっており,縦渦生成の原 因解明は水域環境問題においてきわめて重要である.
5. おわりに
本研究では,風波が発生した開水路におけるラングミュ アー循環流をPIV計測によって考察したものである. 以 下に主要な結論を箇条書きにして示す.
(1) 時間平均主流速分布から高速および低速ストリーク 領域の存在が確認できた.またストリークの間隔は既 往研究のスケール相似特性に一致した.
(2) 連続式を2次元データに適用することで横断面2次 流ベクトルの分布を得た.本実験でもラングミュアー 循環流が発生することがわかった.
(3) 水平面の瞬間流速構造より,高速・低速ストリークが 水平渦を誘起することがわかった.この水平渦の存在 は,鉛直方向に変化するストークスドリフトによって 傾けられ縦渦に至るというCL2 モデルと矛盾しない 結果である.
(4) ピッチを評価し,既往の現地観測結果と同オーダーに なることが確認できた.
(5) CL方程式におけるストークスドリフトによる付加応 力を評価した.これらの分布は convergence と
divergenceの2種類の領域を生成し,また上昇・下降
流の分布とも対応する.今後これらの定量評価を進め て縦渦形成機構をより正確に論ずるために水理条件 を系統変化させて追加計測を行う必要がある.
参考文献
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12)山上路生・禰津家久・土井智礼・Hoang Quang:多断層 スキャニングPIVによる蛇行複断面流れにおける水平 組織渦に関する実験的研究,土木学会論文集B,Vol.62, No.4, pp.406-418, 2006.
13)Nezu, I., Sanjou, M. and Kamiya, A.: Development of multi-layer laser-scanning PIV and applications to hydraulic engineering, Proc. of 31th IAHR Conference, Seoul, pp.3496-3505, 2005.
14)Pollard, R. T.: Observations and theories of Langmuir circulations and their role in near surface mixing, Voyage of Discovery, Vol.70, pp.235-251, 1976.
15)Weller, R. A. and Price, J.F.,: Langmuir circulation within the oceanic mixed layer, Deep-Sea Res., Vol. 35, pp.711-747, 1988.
(2009年4月9日 受付)
0 0
0
C : convergence zone D : divergence zone
direction of fz
C D C C D C
0 0 0
0
max
/ z, z f f
D
side-wall
bottom H
y/
1.0
0
B z/ 1.0
0.5
side-wall 0
-0.4 -0.4 -0.4
-0.4
0 0.4 0.4 0
図-9 ストークスドリフトによる付加応力と2次循環流の関係