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ステント支援下コイル塞栓術で治療に成功した動脈瘤破裂による直接型内頚動脈海綿静脈洞瘻例におけるMRA元画像・再構成画像の初期診断・評価としての有用性

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Academic year: 2021

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全文

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緒 言

 直接型内頚動脈海綿静脈洞瘻(direct carotid cavernous fistula: d-CCF)では,内頚動脈から異常な瘻孔を介し て,海綿静脈洞内へ直接動脈血が流入する.急激な海 綿静脈洞内圧上昇が主な要因となり,瘻孔の大きさ, シャント血流量,静脈灌流ルート,側副血行路の発達 等の条件により,様々な臨床症状を呈する.  近年,d-CCF の治療は血管内治療が主流となってい るが,瘻孔の閉鎖のために,経動脈的塞栓術,経静脈 的塞栓術,それらの複合治療,母血管閉塞術などの 様々な治療法が行われており,最近では新しいデバイ スを用いた治療例も報告されている.  今回われわれは,動脈瘤破裂による d-CCF に対し て,(破裂)内頚動脈瘤と同様の経動脈的なステント支 援下コイル塞栓術を行い,瘻孔の閉鎖と母血管の順行 性血流の温存に成功した例を経験した.3D time-of-flight(TOF)MRA 元画像とその再構成画像が初期診 断・治療法の選択に有用であり,破裂瘤とその頚部, 瘻孔の部位と大きさを把握できた.これらの所見は 3D-CT angiography(CTA)・rorational angiography(RA) の元画像と再構成画像で確認できた.MRA の初期診 要  旨 【目的】動脈瘤破裂による直接型内頚動脈海綿静脈洞瘻に対する,MRA 元画像・再構成画像の初期 診断・評価と,ステント支援下コイル塞栓術の有用性について報告する.【症例】73 歳女性.突然 の右眼症状が出現.MRA 元画像・再構成画像により,右内頚動脈海綿静脈洞部動脈瘤破裂による 内頚動脈海綿静脈洞瘻と初期診断し,治療に必要な情報が得られた.3D-CT・RA で確認後にステ ント支援下のコイル塞栓術を行い,動静脈瘻は消失し,症状も消失した.【結語】MRA 元画像・再 構成画像により初期診断された動脈瘤破裂による直接型内頚動脈海綿静脈洞瘻に経動脈的ステント 支援下の破裂動脈瘤コイル塞栓術を行い,短時間で経済的に治療することができた.

Keywords  direct carotid cavernous fistula (d-CCF), ruptured cavernous sinus aneurysm, stent-assisted coil embolization, endovascular treatment, source and reformatted MRA images

ステント支援下コイル塞栓術で治療に成功した動脈瘤破裂による

直接型内頚動脈海綿静脈洞瘻例における MRA 元画像・

再構成画像の初期診断・評価としての有用性

源甲斐信行1) 長谷川仁2) 岡本浩一郎3) 小林勉1) 竹内茂和1) 宮川照夫1) 山崎一徳1) 恩田清1) 1)新潟脳外科病院 脳神経外科 2)新潟大学脳研究所 脳神経外科 3)新潟大学脳研究所 トランスレーショナル研究分野

症例報告

連絡先:源甲斐信行 新潟脳外科病院 脳神経外科(〒 950-1101 新潟県新潟市西区山田 3057) E-mail: [email protected] Tel: 025-231-5111 Fax: 025-231-5130

2021 年 2 月 2 日受付  2021 年 3 月 14 日採択

本論文は,クリエイティブ・コモンズ CC-BY-NC-ND(表示–営利利用不可–改変禁止)の条件下で利用できる.©2021 日本脳神経血管内治療学会

脳血管内治療 J-STAGE 早期公開 2021 年 4 月 15 日 doi: 10.20626/nkc.cr.2021-0011jnet

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断と経動脈的なステント支援下コイル塞栓術の有用性 につき,文献的考察を含め報告する. ¥

症例呈示

患者:73 歳,女性 主訴:突然の眼球突出,眼球結膜充血,複視 既往歴:骨粗鬆症で近医通院中.明らかな頭部外傷の 既往はない. 家族歴:特記事項なし 現病歴:当院受診 2 週間前,散歩中に突然の右眼球突 出,右眼球結膜充血と複視を発症した.近医眼科から 近医脳神経外科を紹介され,頭部 MRI・MRA にて内 頚動脈海綿静脈洞瘻(carotid cavernous fistula: CCF)が 疑われたため,当院へ紹介された. 入院時所見:顔貌・皮膚など身体や体格・体形に異常 は見られない.  意識清明,右眼球突出,右眼球結膜充血,右眼内転 位で,外転制限を認めた.右眼球部で血管雑音を聴取 した.右視力は,指数弁まで低下していた. 神経放射線学的所見  3T-MRI 装置による頭部 MRI では,頭蓋内病変を認 めなかった.頭部 TOF MRA 元画像(Fig. 1A,B)で, 右海綿静脈洞・右蝶形頭頂静脈洞(Fig. 1A 大矢印)と 右浅中大脳静脈・右眼静脈(Fig. 1A 小矢印)の拡張と

高信号を認めた.MRA 元画像(Fig. 2A,B),再構成

斜位冠状断(Fig. 2C,D)・斜位矢状断(Fig. 2E,F)で,

右内頚動脈海綿静脈洞部より内側に突出する 6.5 mm 大の動脈瘤を認めた(Fig. 2A∼F 大矢頭).動脈瘤は広 頚(5.5 mm,Dome/ Neck ratio = 1.18)で(Fig. 2B 中矢 頭),動脈瘤の内側前方に,1.5 mm 大の狭い瘻孔を認 めた(Fig. 2B,C,E,F 小矢頭).3D-CTA でも,同様 の所見が確認された(動脈瘤 / 動脈瘤頚部 / 瘻孔 = 6.8 mm/5.5 mm/1.6 mm)(Fig. 3A∼F).  脳血管造影(DSA)では,右内頚動脈撮影で海綿静脈 洞が早期に描出され,右上眼静脈,および蝶形頭頂静 脈洞から右浅中大脳静脈への顕著な逆流所見が認めら れ(Fig. 4A),内頚動脈海綿静脈洞部に内側に突出す る動脈瘤が認められた(Fig. 4B 矢頭).右眼動脈は描 出されなかった.静脈相では右下錐体静脈洞は描出さ れなかった.右外頚動脈・左内頚動脈・左外頚動脈・ 椎骨動脈撮影では異常所見を認めなかった.3D-RA の再構成画像では,動脈瘤・動脈瘤頚部・瘻孔がより 明瞭に描出された(動脈瘤 / 動脈瘤頚部 / 瘻孔 = 6.9 mm/5.6 mm/1.9 mm)(Fig. 5A∼F).  引き続き施行したバルーン閉塞試験では,前交通動 脈を介した良好な側副血行を認め(Fig. 4C),神経学 的異常所見は出現しなかった.  以上より,右内頚動脈海綿静脈部動脈瘤破裂による Fig. 1 MRA 元画像(横断像) (A)右海綿静脈洞・右蝶形頭頂静脈洞(大矢印)と右浅中大脳静脈・右眼静脈(小矢印)の顕著 な拡張と速い血流による高信号を認める. (B)右内頚動脈海綿静脈洞部(ICA C4-5)より内側に突出する動脈瘤を認める(大矢頭).動脈 瘤の頚部は広頚である(中矢頭).

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Genkai N, et al. d-CCF と診断した. 治療経過 1)治療計画  CCF のシャント血流は比較的豊富であるが,内頚 動脈海綿静脈洞部動脈瘤破裂が原因で,MRA を含め た治療前画像の解析から,動脈瘤(6.5∼6.9 mm)の内 側前方に存在する瘻孔部は 1.5∼1.9 mm と,動脈瘤の 大きさと比較して小さいと判断し,瘤内塞栓術により 瘻孔の閉鎖が可能と考えた.瘻孔を越えて海綿静脈洞 内にコイルが迷入する際は,海綿静脈洞内も同時に塞 栓する方針とした.治療前画像の解析から,動脈瘤頚 部は 5.5∼5.6 mm(Dome/ Neck ratio = 1.18–1.23) と広頚 で,コイル塞栓術中に内頚動脈へコイルが逸脱する可 能性を考え,バルーンアシストテクニックではなく, 動脈瘤塞栓用のネックブリッジステントを用いたステ ント支援下コイル塞栓術とした.シャント血流が残存 した際は,残存症状と経過により二期的治療として経 静脈的に塞栓術を追加する方針とした.バルーン閉塞 試験は臨床的に陰性と判断したが,可能な限り内頚動

B

F

A

D

E

C

Fig. 2 MRA 元画像からの再構成画像 (A, B)横断像:右内頚動脈海綿静脈洞部より内側に突出 する動脈瘤(大矢頭)が認められる.動脈瘤頚部は広頚 (中矢頭)で,動脈瘤内側前方に小さな海綿静脈洞との瘻 孔(B, 小矢頭)が認められる. (C, D)斜位冠状断像:海綿静脈洞部動脈瘤(大矢頭)の内 側前方に小さな瘻孔(C, 小矢頭)を認める. (E, F)斜位矢状断像:海綿静脈洞部動脈瘤(大矢頭)の内 側前方に小さな瘻孔(小矢頭)を認める.MRA 元画像に おける計測では,動脈瘤は 6.5 mm,動脈瘤頚部は 5.5 mm,瘻孔は 1.5 mm である.

B

F

A

D

E

C

Fig. 3 3D-CTA からの再構成画像 (A, B)横断像:右内頚動脈海綿静脈洞部より内側に突出 する広頚の動脈瘤(大矢頭)が認められる.動脈瘤内側前 方に小さな海綿静脈洞との瘻孔(B, 小矢頭)が認められ る. (C, D)斜位冠状断像:海綿静脈洞部動脈瘤(大矢頭)の内 側前方に小さな瘻孔(C, 小矢頭)を認める. (E, F)斜位矢状断像:海綿静脈洞部動脈瘤(大矢頭)の動 脈瘤内側前方に小さな瘻孔(小矢頭)を認める.3D-CTA における計測では,動脈瘤は 6.8 mm,動脈瘤頚部は 5.5 mm,瘻孔は 1.6 mm である.

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脈の順行性血流を保つため,予測不能の虚血性合併症 のリスクのある母血管閉塞は最終手段とした.周術期 の出血性イベントの発生を危惧し,治療前からの抗血 小板薬投与や,roading dose の抗血小板薬を術中に導 入することは行わなかった.なお,破裂脳動脈瘤での 脳動脈瘤塞栓術支援ステントの使用は,当院の倫理委 員会にて承認を受けている. 2)血管内治療  全身麻酔下に右総大 動脈を穿刺し,8Fr ロング シースを留置した後に,全身ヘパリン化を行い,活 性化凝固時間(activated clotting time: ACT)を 250∼ 300 秒に延長させた.ガイディングカテーテル 8Fr

ROADMASTER TH(グッドマン,愛知)を右頚部内頚 動脈の分岐部近傍に誘導した.中間カテーテル(distal access catheter: DAC)として,6Fr Cerulean DD6(メディ キット,東京)を FUBUKI 4.2Fr(朝日インテック,愛 知)を同軸にして,右内頚動脈錐体部に留置した(Fig.

6A).マイクロガイドワイヤー CHIKAI black 14 soft tip

(朝日インテック)を用いて,マイクロカテーテル Headway21(テルモ,東京)を瘻孔より末梢の右内頚動 脈頂部近傍に留置し,同様にマイクロガイドワイヤー CHIKAI black 14 soft tip を用いて,マイクロカテーテ ル Phenom17 45°pre-shaped(Medtronic, Minneapolis, MN, USA)を右内頚動脈海綿静脈洞部動脈瘤内に留置 Fig. 4 術前脳血管造影(DSA) (A)右内頚動脈撮影側面像:海綿静脈洞が早期に描出され,右上眼静脈,および蝶形頭頂静 脈洞から右浅中大脳静脈への逆流が認められる.右眼動脈は描出されない. (B)右内頚動脈撮影側面像:動脈相早期にて,内頚動脈海綿静脈洞部に動脈瘤(矢頭)を認める. (C)左内頚動脈撮影正面像(BOT):前交通動脈を介した良好な側副血行路を認める.

BOT: balloon occlusion test

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Genkai N, et al.

した.その後,マイクロカテーテル Headway21 より, LVIS stent 4.5 × 23 mm(MicroVention, Aliso Viejo, CA, USA)を瘻孔近傍の内頚動脈に展開し,jailing technique にてコイル塞栓術を施行した.最初のコイル Target XL 360°soft 6 mm × 20 cm(Stryker, Kalamazoo. MI, USA)を 用いて framing を行ったところ,動脈瘤内より瘻孔を 越えて,海綿静脈洞内へコイルループの迷入を認めた が(Fig. 6B 小矢印),数回の巻き直しでほぼ動脈瘤内 に収まる framing が完成した(Fig. 6B 矢頭).その後 は,瘻孔を越えて海綿静脈洞内にコイルが迷入するこ となく,ステント支援併用により内頚動脈内へのコイル 逸脱もなかった.合計 14 本,138 cm のコイルを用い, 顕著なシャント血流の減少が得られた状態で塞栓を終 了した(Fig. 6C). 術後経過

 治療翌日より,dual antiplatelet therapy(Aspirin 100 mg + Clopidogrel 75 mg)を開始した.治療直後より眼 症状は顕著に改善し,いったん退院とした.2 週間 後,状態確認のための予定再入院時には,すべての眼 症状が消失,DSA にて d-CCF の完全閉塞を確認した (Fig. 6D). Fig. 5 3D-RA からの再構成画像 (A, B)横断像:右内頚動脈海綿静脈洞部より内側に突出する広頚の動脈瘤(大矢 頭)を認める.動脈瘤内側前方に小さな海綿静脈洞との瘻孔(B, 小矢頭)を認める. (C, D)斜位冠状断像:海綿静脈洞部動脈瘤(大矢頭)は広頚(D, 中矢頭)で,動脈瘤 内側前方に小さな瘻孔(C, 小矢頭)を認める. (E, F)斜位矢状断像:海綿静脈洞部動脈瘤(大矢頭)の内側前方に,小さな瘻孔(小 矢頭)を認める.3D-RA における計測では,動脈瘤は 6.9 mm,動脈瘤頚部は 5.6 mm,瘻孔は 1.9 mm である.

B

F

A

D

E

C

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考 察

 本例は,MRA 元画像とその再構成画像から,内頚 動脈海綿静脈洞部の動脈瘤破裂による d-CCF と初期 診断し,破裂動脈瘤は広基性で比較的小さな瘻孔であ ることから,同部の広基性(破裂)動脈瘤の血管内治療 に準じてステント支援下コイル塞栓術が可能で,瘻孔 閉鎖と母血管である内頚動脈の順行性血流を保つこと ができると考えた.  CCF は,内頚動脈と海綿静脈洞との間に瘻孔がで き,海綿静脈洞内への異常なシャント血流が出現した 病態であり,血管構築により d-CCF(type A)と indirect

CCF(type B, C and D)に分類される1).d-CCF では,内 頚動脈より瘻孔を介して海綿静脈洞へ直接血流が流入 するが,indirect CCF は,内・外頚動脈の硬膜枝より 血流を受ける(type B:内頚動脈硬膜枝から,type C: 外頚動脈硬膜枝から,type D:内・外頚動脈両方の硬 膜枝から).d-CCF(type A)は,一般にシャント血流が 非常に豊富で,その約 80%は外傷性で重症頭部外傷 の既往があり,非外傷性(約 20%)の多くは,海綿静 脈洞部動脈瘤の破裂が原因である2).非外傷性のその 他の原因としては,医原性(血管内治療や経鼻下垂体 手術),Marfan 症候群,Ehlers-Danlos 症候群3),弾性 線維性仮性黄色腫,線維筋性異形成症4),骨形成不全 Fig. 6 右内頚動脈撮影側面像 (A)血管内治療前:内頚動脈海綿静脈洞部の動脈瘤と海綿静脈洞の早期描出を認める. (B)血管内治療中:LVIS stent が留置され(大矢印),数ループのコイルが海綿静脈洞内へ迷 入しているが(小矢印),ほぼ動脈瘤内に 1stコイルが挿入されている(矢頭). (C)血管内治療後:内頚動脈海綿静脈洞瘻からのシャント血流は,顕著に減少している. (D)血管内治療 2 週間後:右内頚動脈海綿静脈洞瘻は,完全に閉塞している.

D

C

(7)

Genkai N, et al. 症等の結合織異常で,血管壁に脆弱性のある疾患に d-CCF(type A)が合併する.治療前に動脈瘤の有無を 確認することは,上記結合織異常を伴う疾患との鑑別 や合併症予防に,動脈瘤や頚部の大きさ・瘻孔の部位 や大きさを治療前に把握することは,d-CCF の治療法 や使用デバイスの選択において重要であり,最初に撮 像される MRA で動脈瘤破裂による d-CCF と初期診断 でき,瘻孔の部位・大きさがわかれば,その後の画像 検査での解析が容易になり,適切な治療方針決定に役 立つ.d-CCF の診断においては DSA が gold standard

とされるが5,6),特に high flow shunt が顕著な非外傷例

においては,時に瘻孔の同定や原因の診断が容易では ない.本例では,最初に撮像された MRA の元画像・ 再構成画像から,広基性の動脈瘤破裂による d-CCF であるが,比較的小さな瘻孔であり,同部の広基性 (破裂)動脈瘤の血管内治療に準じたステント支援下コ イル塞栓術が治療法として有効と考えられた.非造影 3D-TOF MRA は,非侵襲的な血管評価法として日常 的に脳血管病変のスクリーニングに用いられ,元画像 やその再構成画像は,特別な撮像法や特殊なソフト ウェアを必要とせず,評価・作成が可能である.非造 影 3D MRA 画像に元画像や再構成画像を併用するこ とで,脳動脈瘤検出の感度・特異度向が向上し7,8),脳 動脈瘤の分枝を含めた頚部評価9),コイル塞栓術後の 脳動脈瘤評価10)においても有用で,DSA 所見に相補 的な情報を加える11).しかし,MRA 元画像の枚数が 多く,これらを詳細に評価することや,評価項目に最 適な再構成画像を作成するための時間や労力を要する ことなどの理由により,実際の臨床の現場では日常的 に活用されていない12).本例では,脳動脈瘤破裂によ る d-CCF の初期診断に非造影 MRA 元画像・再構成画 像が有用で,治療法選択にも寄与した.これらの情報 により,3D-CTA・RA 再構成画像では,容易にかつ 詳細に確認できた13).d-CCF でシャント血流が多い場 合に血管撮影で瘻孔を同定する方法として,用手的に 頚 動 脈 を 圧 迫 し て 椎 骨 動 脈 撮 影 を 行 う Huber maneuver,同側の総頚動脈を圧迫しながら内頚動脈造 影をする Mehringer-Hieshema maneuver,バルーンで血 流を制御しながら内頚動脈を造影するなどの手技が行 われるが5,13),MRA の元画像・再構成画像などで瘻 孔の部位や大きさが把握できれば,これらの煩雑な手 技は省略できる.外傷性 d-CCF において,3D-CTA の 元画像・再構成画像の有用性を述べた論文はある が14),脳動脈瘤破裂による d-CCF で,非造影 MRA 元 画像・再構成画像の有用性について記載した報告は見 当たらない.  d-CCF の自然閉鎖は,1.2∼4%と稀で,動脈瘤破裂 例での自然閉鎖はほとんど報告されていない15,16).眼 球突出・血管雑音・眼球結膜充血の Dandy's 3 徴に加 え,視力障害,頭蓋内圧亢進症状や脳出血,脳虚血等 の重篤な病態を伴う場合,早期の診断と治療が望まし い5,16).d-CCF では,保存的治療,外科的治療,放射 線治療,血管内治療と様々な治療が行われてきた が5),1974 年に Serbienko が離脱型バルーンを用いた 血管内治療に成功してから血管内治療が主体になっ た.しかし,現在は離脱式バルーンの入手が困難で, バルーンカテーテルを用いて離脱式コイルが内頚動脈 に突出しないようにしながら,経動脈的に瘻孔を通し て海綿静脈洞内に離脱式コイルを留置する方法が主流 である5)  内頚動脈側から瘻孔部へマイクロカテーテルが挿入 できない場合や,経動脈的塞栓術にて瘻孔の閉鎖が困 難な場合,離脱式コイルを用いた経静脈的海綿静脈洞 内塞栓術が行われる.これらの治療でも十分な効果が 得られず,脳皮質静脈への逆流による頭蓋内圧亢進や 脳出血,顕著な盗血現象に伴う脳虚血等の,生命を脅 かすような d-CCF では,虚血耐性を確認した上で, 内頚動脈閉塞を考慮する5,17)  van Rooij らは,血管内治療を行った 689 例の破裂 脳 動 脈 瘤 の う ち 10 例(1.5%)に d-CCF を認め,low-flow で自然閉塞した 2 例を除く 8 例で治療を行い,5 例で離脱式コイルを用いた脳動脈瘤内塞栓術のみで瘻 孔の閉鎖に成功している16)  Morón らのステント支援下コイル塞栓術でシャント 血流の完全閉塞を得た d-CCF5 例中 1 例が,本例のよ うに内頚動脈海綿静脈洞部の動脈瘤破裂であり18),動 脈瘤破裂による d-CCF でのステント支援下コイル塞 栓術は有用と考えられる.  Chi らは,血管撮影上で描出される中大脳動脈と前 大脳動脈の血流に応じて,外傷性 d-CCF の瘻孔の大 きさを small,medium,large に分類している.Small, medium size の d-CCF では,瘻孔を通した海綿静脈洞 の選択的な塞栓術を推奨し,large size の d-CCF では 内頚動脈の中枢側閉塞や瘻孔を挟んだ内頚動脈の閉塞 を奨めているが17),動脈瘤破裂による d-CCF にも適 応できると思われる.本例では,DSA で前大脳動脈

(8)

ルの逸脱を防ぐために,内頚動脈側でのバルーン併用 が行われるが,本例ではステント支援を併用すること で,瘻孔閉鎖と母血管の順行性血流を確保できた.  この治療法では,ステントを併用するが,瘤内塞栓 術を主体とするため,海綿静脈洞内塞栓術に比べ少な い本数のコイルの使用で治療でき19),医療経済的にも 優れている.Prasad らは,動脈瘤破裂 3 例を含めた d-CCF8 例に対して,離脱式コイルと安価なプッシュ コイルを併用した“sandwich technique”法により,さら に治療費を抑えることができるとしている6)

 最近,新たな治療方法として,flow diverting stent (FD)や flow diversion 効果のある covered stent で瘻孔

を閉鎖する治療法が報告されている5).本邦では CCF

に対する FD や covered stent の使用は off label である が,内頚動脈の血流を保ちながら CCF の閉鎖が可能 である一方,蛇行血管への留置が困難,ステント内閉 塞,エンドリーク,穿通枝梗塞,内頚動脈解離や破裂 等の合併症や長期の抗血小板薬内服の必要性があり, 追加治療法も限られるなど,現時点では課題も多い. 長期的な治療成績も不明であるが,今後,柔軟性に優 れ た FD 単独での治療法が,動脈瘤破裂を含めた d-CCF 治療の第一選択肢になる可能性が考えられる.  最後に,本症例は,破裂脳動脈瘤の急性期治療にも かかわらず,広頚の動脈瘤のためにステント支援が必 要であった.破裂脳動脈瘤の急性期治療においてステ ントを留置する際は,血栓塞栓性の合併症を回避する ために,十分な抗血小板効果が発現している必要性が ある一方で,治療前の複数の抗血小板薬投与は,出血 性合併症を発生させる危険性がある20).本症例では, 術翌日より 2 剤の抗血小板薬投与を開始し,幸いにも 周術期に血栓塞栓性合併症やステント内血栓症等の出 現は認めなかった.しかし,破裂脳動脈瘤の急性期治 療にステント支援下コイル塞栓術を行う際や,FD を 用いて治療を行う際の周術期の抗血小板薬の使用に関 しては,施設や地域,使用できる薬剤などにより様々 で,現在専門家の意見集約が行われている20).周術期 再構成画像が,初期診断と治療法選択に有用であり, 3D-CTA・RA の元画像・再構成画像で確認できた. ステント支援下コイル塞栓術は,医療経済的にも優 れ,動脈瘤破裂による d-CCF の治療法の優れた選択 肢の一つと考えられる. ¥

利益相反の開示

 本論文に関して,筆頭著者および共著者全員が利益 相反はない. References

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Initial Diagnosis and Evaluation with Source and Reformatted MRA

Images for Direct Carotid Cavernous Fistula (d-CCF) Caused by a

Ruptured Cavernous Sinus Aneurysm and Successfully Treated with

Stent-assisted Coil Embolization: A Case Report

Nobuyuki GENKAI,1) Hitoshi HASEGAWA,2) Kouichirou OKAMOTO,3) Tsutomu KOBAYASHI,1) Shigekazu TAKEUCHI,1) Teruo MIYAKAWA,1) Kazunori YAMAZAKI,1) and Kiyoshi ONDA1)

1) Department of Neurosurgery, Niigata Neurosurgical Hospital, Niigata, Niigata, Japan

2) Department of Neurosurgery, Brain Research Institute, Niigata University, Niigata, Niigata, Japan 3) Department of Translational Research, Brain Resource Institute, Niigata University, Niigata, Niigata, Japan

Objective: We present a case of direct carotid cavernous fistula (d-CCF) caused by a ruptured cavernous sinus

aneurysm treated with stent-assisted coil embolization successfully. MRA source and reformatted images were helpful for the initial diagnosis and evaluation of the d-CCF.

Case Presentation: A 73-year-old female complained sudden onset of right exophthalmos, conjunctival

congestion, and diplopia without a previous history of head trauma. MRA source images revealed a d-CCF draining into the right superior ophthalmic vein, sphenoparietal sinus, and superficial middle cerebral vein in a retrograde manner through the fistula of a ruptured cavernous sinus aneurysm. The location and size of the aneurysmal neck and the fistula were suggested on the MRA source and reformatted images, and confirmed on 3D-CTA and rotational angiography (RA). The lesion was successfully treated with stent-assisted coil embolization in a relatively short time, and her symptoms disappeared completely soon after the procedure.

Conclusion: Source and reformatted images of MRA were helpful for the initial diagnosis and evaluation of

the d-CCF caused by a ruptured aneurysm. Stent-assisted coil embolization based on the pretreatment images including MRA images was an effective treatment for the d-CCF, as completed in a shorter time and was inexpensive than transvenous cavernous sinus coil packing.

Keywords direct carotid cavernous fistula (d-CCF), ruptured cavernous sinus aneurysm, stent-assisted coil

参照

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