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IRUCAA@TDC : 一次性舌痛症における唾液アミラーゼ活性測定の試み

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Academic year: 2021

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Title

一次性舌痛症における唾液アミラーゼ活性測定の試み

Author(s)

桃田, 幸弘; 高野, 栄之; 可児, 耕一; 松本, 文博; 青

田, 桂子; 山ノ井, 朋子; 高瀬, 奈緒; 宮本, 由貴; 小

野, 信二; 東, 雅之

Journal

日本口腔検査学会雑誌, 10(1): 64-67

URL

http://hdl.handle.net/10130/4538

Right

Description

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一次性舌痛症における唾液アミラーゼ活性測定の試み

桃田幸弘

1)2)*

、高野栄之

2)

、可児耕一

1)

、松本文博

1)

、青田桂子

1)

山ノ井朋子

1)

、高瀬奈緒

1)

、宮本由貴

1)

、小野信二

2)

、東 雅之

1)2) 1)徳島大学大学院医歯薬学研究部口腔内科学分野 2)徳島大学病院口腔管理センター *:〒 770-8504 徳島市蔵本町 3 - 18 - 15 Tel: 088-633-7352 Fax: 088-633-7388 E-mail: [email protected] 抄 録  一次性舌痛症は舌に疼痛などの異常感を訴えるものの、器質的または精神的要因の何 れも見出せないものとされるが、われわれは本症と自律神経系の異常との関連を見出し た。唾液アミラーゼは交感神経-副腎髄質系(SAM axis)によって制御され、交感神経 活動のバイオマーカーとされる。今般、われわれは本症患者の唾液アミラーゼ活性を測 定し、その有用性を検討したので報告する。2010 年 1 月から 2013 年 12 月までに徳 島大学病院口腔内科を受診し、本症と診断された患者 32 名(女性 32 名、年齢 41-82 歳(平均 63 歳 4 か月))を対象とした。唾液アミラーゼ活性は平均 75.6 ± 43.6 KU/l であり、26 名(81.3%)の唾液アミラーゼ活性が亢進していた。上記の 17 名に対して 直線偏光近赤外線星状神経節近傍照射を施行し、11 名(64.7%)に治療効果が認めら れた。さらに、唾液アミラーゼ活性は 93.4 ± 41.0 KU/l から 71.4 ± 22.3 KU/l に低下 した。したがって、唾液アミラーゼ活性の測定は本症の診断と経過のモニタリングに有 用である可能性が示唆された。 Keywords: 一次性舌痛症、唾液アミラーゼ活性、近赤外線星状神経節近傍照射 受付:2017 年 12 月 20 日 受理:2018 年 2 月 6 日 緒 言  一次性舌痛症は舌に疼痛などの異常感を訴えるも のの、器質的または精神的要因の何れも見出せない ものとされるが1,2)、われわれは本症と自律神経系の 異常との関連を見出した3,4)。唾液アミラーゼ(α -アミラーゼ)は交感神経-副腎髄質系(SAM axis) によって制御される5)。すなわち、血中ノルアドレ ナリンによって内分泌性に6)、または交感神経によっ て直接的に制御される7)。それゆえ、唾液アミラーゼ は交感神経活動のバイオマーカーとして利用される。 今般、われわれは本症患者の唾液アミラーゼ活性を 測定し、その有用性を検討したので報告する。   対象および方法  本研究は徳島大学病院臨床研究倫理審査委員会の 承認(承認番号 876)のもと、患者に対して説明・ 同意のうえ実施された。2010 年 1 月から 2013 年 12 月までに徳島大学病院口腔内科を受診し、一次性 舌痛症と診断された患者を対象とした。本症の診断 は下記の方法に従った3,4)。初めに、病歴を聴取した 後、視診・触診などにより口腔内・外診査を行った。 すなわち、聴取内容と口腔内・外所見から歯科医学 的妥当性(つまり理論的に矛盾しないか、支離滅裂・ 荒唐無稽でないか)の有無を判断した。舌表面に発

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日本口腔検査学会雑誌 第 10 巻 第 1 号:     , 2018 赤、腫脹、びらんまたは表在性潰瘍が認められるも のは舌炎として取り扱った。次に、スクリーニング を目的に血液一般(白血球数、赤血球数、血色素量、 平均赤血球容積、平均赤血球ヘモグロビン量および 平均赤血球ヘモグロビン濃度)・生化学(C 反応性蛋 白、血清鉄・銅・亜鉛、不飽和鉄結合能、抗 SS-A/ Ro 抗体および抗 SS-B/La 抗体)検査を行った。すな わち、小球性または大球性貧血が認められた場合、 Plummer-Vinson 症候群または悪性貧血を疑い、血液 内科に紹介した。さらに、病原微生物の有無を確認 する目的に培養検査を行った。すなわち、滅菌処理 済み綿棒にて舌当該部位を 10 回擦過して検体を採取 し、カンジダ GS 培地(栄研化学、東京)またはクロ ムアガーカンジダ寒天培地(日本ベクトン・ディッ キンソン、東京)に塗布し、いずれかにコロニーが 検出されたものは口腔カンジダ症として取り扱った。 また、唾液分泌検査としてガムテストまたはサクソ ンテストを行った。すなわち、健全歯を有する者に 対しては 10 分間のガム咀嚼による吐出唾液量、義 歯を装着している者に対しては 2 分間のガーゼ咀嚼 による吐出唾液量を測定し、ガムテストでは 10.0 ml 以下のもの、サクソンテストでは 2.0 g 以下のものは 口腔乾燥症として取り扱った。上記のいずれの診査・ 検査においても陽性所見が認められないもの、かつ 精神神経疾患と認知症の既往がないものを本症とし た(図 1)。唾液アミラーゼ活性の測定は酵素分析装 置(唾液アミラーゼモニター、CM-2.1、ニプロ株式 会社、大阪)(図 2)を用い、添付プロトコールに従っ た。すなわち、舌下小丘部に専用チップを挿入し、 30 秒間唾液を浸漬させた後、同チップを装置に装着 し、測定値を得た。その評価は、30 KU/l を超えるも のを唾液アミラーゼ活性の亢進ありとした。さらに、 治療の同意が得られた 17 名に対して直線偏光近赤外 線星状神経節近傍照射(SGR)(表 1)を行い、治療 前後に唾液アミラーゼ活性を測定した。また、舌痛 の程度を Visual Analogue Scale(VAS)にて表し、治 療前後で VAS 値が 70% 以下に減少したものを治療効 果ありと判定した。なお、これらの診断と治療は同 一の者によって実施された。   結 果  一次性舌痛症と診断された患者は 32 名(女性 32 名,年齢 41-82 歳(平均 63 歳 4 か月))であった。 本症患者の唾液アミラーゼ活性は平均 75.6 ± 43.6 KU/l であり、唾液アミラーゼ活性が亢進していたも 舌痛・灼熱感など 主訴 現症と病歴 評価・検査 症状の歯科医学的妥当性 妥当性あり 口腔内・外診査 血液検査 培養検査 唾液分泌検査 一次性舌痛症 異常なし 異常なし 異常なし 異常なし 精神疾患・認知症など 二次性舌痛症 (舌炎など) 妥当性なし 異常あり 二次性舌痛症 (プランマ― - ビンソン症候群・ハンター舌炎など) 異常あり 二次性舌痛症 (口腔カンジダ症など) 異常あり 二次性舌痛症 (口腔乾燥症・シェ―グレン症候群など) 異常あり 図 1 舌痛症の診断アルゴリズム  初めに、病歴を聴取した後、視診・触診などにより口腔内・外診査を行い、歯科医学的妥当性の有無を判断した。次に、スクリー ニングを目的に血液一般・生化学検査を行った。さらに、病原微生物の有無を確認する目的に培養検査を行った。また、唾液分泌 検査としてガムテストまたはサクソンテストを行った。上記のいずれの診査・検査においても陽性所見が認められないもの、かつ 精神神経疾患と認知症の既往がないものを一次性舌痛症とした。 表 1 SGR の概要 SGR: 直線偏光近赤外線星状神経節近傍照射 使用機器 直線偏光近赤外線照射治療器 (SUPER LIZER PX Type 2,東京医研株式会社,東京) 照射出力 5.0 W(最高出力の 100%) 照射方法 パルス照射 治療時間 3 分 治療回数 10 回 64 - 67

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のは 26 名(81.3%)、亢進していなかったものは 6 名(18.7%)であった(図 3)。さらに、前者の 14 名、後者の 3 名(合計 17 名)に対して SGR を施行 し、 前 者 の 10 名(64.3%)、 後 者 の 1 名(33.3%) に治療効果が認められた。なお、両者の奏功率に統 計学的有意差は認められなかった(Chi-square test, P>0.05)(表 2)。また、治療効果が認められたもの 11 名に関して、SGR によって唾液アミラーゼ活性が 93.4 ± 41.0 KU/l から 71.4 ± 22.3 KU/l に低下し、 統計学的有意差が認められた(Wilcoxon signed-rank test,*P<0.05)(図 4)。 考 察  唾液は非侵襲的に採取可能であり、唾液アミラー ゼ活性の測定は随時性・簡便性に優れる7,8)。その測 定原理は唾液中のα - アミラーゼが基質であるα -2-クロロ -4- ニトロフェニル - ガラクトピラノシルマル トサイド(Gal-G2-CNP)を加水分解し、2- クロロ -4-ニトロフェノール(CNP)を生成する際の反射光強 度変化を測定するものである9)。本測定はストレス 負荷の有無を検討する際に用いられることが多く7) その評価は 30 KU/l 以下:ストレスなし、31-45 KU/l: ストレスややあり、46-60 KU/l:ストレスあり、61 KU/l 以上:ストレスかなりありとされる10,11)。本研 究においても、一次性舌痛症患者の唾液アミラーゼ 活性は亢進し、交感神経活動の亢進によるストレス 負荷の存在が示唆された。本症において唾液アミラー ゼ活性が亢進するか否かに関する統一した見解はな いものの12 ー 14)、本研究結果は、同じくストレス性に 交感神経活動の亢進によって発現する手掌部発汗が 本症患者に高率に認められた事実とも矛盾しないと 考える3, 4)。SGR は自律神経系の異常を正すとされ、 われわれは本症に対して SGR を施行し、その有用性 を報告した15)。本研究においても、SGR 奏効例の唾 液アミラーゼ活性は低下し、SGR による交感神経活 動の鎮静化が示唆された。一方、本研究において、 唾液アミラーゼ活性が亢進していないものや SGR に よってその活性が低下しないものも認められた。こ れらの原因は明らかではないが、われわれは自律神 経非依存性または低反応性の本症の存在を想定して いる。本研究で使用した酵素分析装置は、小型で携 行可能、操作も簡便、所用時間も 1 分程度であり、 日常臨床における利便性は極めて高い。したがって、 表 2 SGR の奏効率 SGR:直線偏光近赤外線星状神経節近傍照射、Chi-square test,P>0.05.  唾液アミラーゼ活性が亢進していた者の 14 名、亢進していな かった者の 3 名(合計 17 名)に対して SGR を施行し、前者の 10 名(64.3%)、後者の 1 名(33.3%)に治療効果が認められた。 なお、両者の奏功率に統計学的有意差は認められなかった。 SGR 効果あり (n=11) 効果なし(n=6) 唾液アミラーゼ 亢進あり(n=14) 10 4 亢進なし(n=3) 1 2 図 2 酵素分析装置  唾液アミラーゼモニター,CM-2.1,ニプロ株式会社,大阪. 唾液アミラーゼ亢進あり 唾液アミラーゼ亢進なし 図 3 一次性舌痛症患者の唾液アミラーゼ活性  本症患者の唾液アミラーゼ活性は平均 75.6 ± 43.6 KU/l であ り、唾液アミラーゼ活性が亢進していたものは 26 名(81.3%)、 亢進していなかったものは 6 名(18.7%)であった。 図 4 唾液アミラーゼ活性の変化(治療前・後) 〇:治療効果あり,●:治療効果なし.(Wilcoxon signed-rank test,*P<0.05)  直線偏光近赤外線星状神経節近傍照射(SGR)の治療効果が 認められたもの 11 名に関して、SGR によって唾液アミラーゼ 活性が 93.4 ± 41.0 KU/l から 71.4 ± 22.3 KU/l に低下し、統 計学的有意差が認められた。 治療前 治療後 (KU/l) 100 80 60 40 20 0 唾液アミラーゼ活性

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日本口腔検査学会雑誌 第 10 巻 第 1 号:     , 2018 唾液アミラーゼ活性の測定は本症の診断と経過のモ ニタリングに有用である可能性が示唆され、本症の 治療における利用が期待される。   結 語  唾液アミラーゼ活性の測定は一次性舌痛症の診断 と経過のモニタリングに有用である可能性が示唆さ れ、本症の治療における利用が期待される。 謝 辞  本研究は JSPS 科研費 16K11888 の助成を受けた。 利益相反  本論文について申告すべき利益相反はない。   参考文献 1) 永井哲夫:舌痛症、日本心身医学会編、歯科心身医学,第 1 版、医歯薬出版、東京、2003、247-256

2) Scala A, Checchi L, Montevecchi M, Marini I, Giamberardino MA: Update on burning mouth syndrome: overview and patient management, Crit Rev Oral Biol Med, 14: 275-291, 2003 3) 桃田幸弘、高野栄之、可児耕一、松本文博、茂木勝美、青 田桂子、山村佳子、大守真由子、東 雅之:舌痛などの舌 症状を主訴とする患者の臨床統計学的検討-舌痛症の特異 性について-、日口顔面痛誌、5:27-35、2012 4) 桃田幸弘、可児耕一、高野栄之、松本文博、青田桂子、武 川大輔、山ノ井朋子、近藤智香、東 雅之:一次性舌痛症 における手掌部発汗の発現-皮膚水分量測定の有用性につ いて-、日歯人間ドック誌、9:18-23、2014 5) Nater UM, Rohleder N: Salivary alpha-amylase as a non-invasive biomarker for the sympathetic nervous system. current state of research, PNEC, 34: 486-496, 2009 6) 中野敦行、山口昌樹:唾液アミラーゼによるストレスの評 価、バイオフィードバック研究、38:3-9、2011 7) 山口昌樹、金森貴裕、金丸正史、水野康文、吉田 博:唾 液アミラーゼ活性はストレス推定の指標になり得るか、医 用電子と生体工学、39:234-239、2001 8) 山口昌樹:唾液マーカーでストレスを測る、日薬理誌、 129:80-84、2007 9) 山口昌樹,花輪尚子,吉田 博:唾液アミラーゼ式交感 神経モニタの基礎的性能、生体医工学、45:161-168、 2007 10) 下村弘治,金森きよ子,西牧淳一,芝 紀代子:教育現 場でのストレスマーカーとしての唾液アミラーゼと唾液 コルチゾール測定の有用性について、生物試料分析、33: 247-254、2010 11) 白川晶一、手島一也:薬学教育における CBT のストレ スについて、教育開発センタージャーナル、4:59-64、 2013 12) 中川誠仁、酒匂 潤、山田耕治、吉田博昭、井関富雄、紙 谷仁之、林 輝嘉、森田章介:Burning mouth syndrome 患者における HADS と唾液中α - アミラーゼ濃度の推移、 日口診断誌、22:214-219、2009 13) Kim HI, Kim YY, Chang JY, Ko JY, Kho HS: Salivary cortisol, 17 β -estradiol, progesterone, dehydroepiandrosterone, and α -amylase in patients with burning mouth syndrome, Oral Dis, 18: 613-620, 2012 14) Nosratzehi T, Salimi S, Parvaee A: Comparison of salivary cortisol and α -amylase levels and psychological profiles in patients with burning mouth syndrome, Spec Care Dent, 37: 120-125, 2017

15) Momota Y, Kani K, Takano H, Matsumoto F, Aota K, Takegawa D, Yamanoi T, Kondo C, Tomioka S, Azuma M: High-wattage pulsed irradiation of linearly polarized near-infrared light to stellate ganglion area on burning mouth syndrome, Case Rep Dent, 2014: Article ID 171657, 4 pages, http://dx.doi.org/10.1155/2014/171657 64 - 67

参照

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