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3.本邦都鄙結核死亡率の研究
第一報全結核
(衛生)藤屋スエ
本邦全結核死亡について,明治39年から昭和13年に
至るまで入口10万以上の都市とそれ以下の市郡に於て
年次的に粗死亡率と訂正死亡率を観察した。訂正死亡
率ぽ都市と農村の体性及び年令構成を同一と見倣した
ものと男女の比較のために男女夫々の年令構成を訂正
して算出したものについて夫々を男女総数の粗死亡
率.男女別死亡率と比較した。
者肺の粗死亡率は明治から大正の中頃迄著しく高率で
大正7年即ち第一次大戦後インフルエンザ流行時に最
高を示した。その後急激に減少して昭和7年頃から再
び上昇する。訂正死亡率では明治から大正初期にかけ
て粗死亡率よりも一層高率に現われ,昭和7年以後は1
粗死亡率よりも低位となる。農村の粗死亡率郷国の
tt?S率より長々低いがtれと併行している。訂正死亡
.率では粗死亡率と大差なく朧かにそれよりも高位を示
している。従って都市と農村の死亡率の差は明治年間
に著しく近年に接近して来るが訂正死亡率ではとの関
.係が一層著明である。
男女別死亡率でば都鄙ともに明治大正年間にぽ女子
が高率であるが昭和7年頃からその位置は逆転し男子
が高率を示す。tれを男女別に年令構成を訂正して男
女別死亡率と比較すると同様に明治大正に女子が高率
’であるが後年都市では:男子が一層著明に高率を示す。
4。細胞内に微小電極を挿入する方法
による槻細胞活動の記録に就て
(生理)冨 田 恒 男
本研究は先端の外径0.5μ前後の超微小電極を細胞
tt
烽ノ挿入して,その活働電位を誘導記録するLing及
びGerard等の方法をカブトガニの視細胞に応用した
ものである。使用した増巾器は当教室米満の製作にな
るもので,』
薗iに6BE6を空間電荷型接続により使
.用するととと,之を低線条電圧下に働作させることに
より,その格子電流を10−i2Amp以下に滅少せしめ得
’た。又電極,並に格子一陰極間容量は,適当な正鎭還
を利用した負容量を加える事により,入力に20MΩを
接続しても倫〆1,000cps入力矩形波が殆んど原波形の
ままで出力側から得られる迄にその影響を減殺し得
『た。
以上の条件下にカブトガニの視細胞から得られた活
働電位は正方向の主波を以って初まる2相性を示し,
その刺棘高は照射の初期に大で時間と共に世々場数函
数的な滅弱を示し,外部電極を視細胞に発する視神経
繊維起始部に近く置いた場合に得られる刺棘高の時聞
的変化と略々等しい関係にある事を知り得た。
5.大量観察にもとづいた男女の差異について
(衛生)諸岡妙子
ズ=…一スミルビは男女の出生数の一日目比を神の摂
理に帰したが,もとより現代入の自然科学観を満足せ
しめるものではない。よって大数現象よりみた男女の
差異について,手持の資料により検討をカll%る。
1)最近の日本の死亡率性比レ柔110∼115。出生性比
は105∼107。死産性比は120∼130。受胎時には男性の
割合は頗る高いが,次第に小となり,少年期に男女同
数となり,以後女性が次第に多くなる。
2)最近の日本入口性比は95∼96。特に30∼40才の
野生が少いのぽ戦後の変態的現象である。
・3)、受胎時の性比(第一次性比)を,仮に妊娠4ヵ
月の胎児の性比を以て代えれば,1G6∼106。即ち男児
の受胎率は女児より高い。
4)男児の生れる割合は,母の年令及び妊娠回数と
ともに低くなる。
5)嫡出子の男子出生の割合は私生子のそれより高
し、0
6)乳幼児期から少年期にかけて一旦死亡率性比は
下り100以下となるが,その後は年令とともに上り,
60オまでに頂点に達する。
7)死亡の原因をなす疾患別に男性と女性の抵抗を
比べると,男性が悪状態にあるのは,昭和以後の結
核,殊に都会の結核,脳盗血殊に農村の月灘血,癌殊
に農村の癌,肺炎殊に農村の肺炎。女性が悪状態にあ
るのは明治∼大正末期までの都会の結核,老衰殊に都
会の老衰,都会の癌,者陽洪に腎臓炎,殊に都会の腎
臓炎,者区皆皆に下痢,腸炎殊に都会。
8)男女の入口構成の影響を除くために死因男tiの男
女別訂正死亡率を算出して男女を比べると,女子が悪
状態なのは1920年までの結核,老衰,謹かの差で心臓
病と下痢,腸炎のみ。脳溢血,癌,肺炎,腎臓炎は今
世紀を通じ,叉前記疾患は:1920年以後現在ま:で悉く男
子が悪状態にある。
即ち,男性はその生命の始めに僅かに女性よりも多
数形成せられるが,その後は常に女性よりも生命の脅
威にさらされ,現代の文明生活はあらゆる疾患を通し
て男1性に酷に作用し,より大なる犠牲を強要しつつあ
るといえる。
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