博士論文審査報告書
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全文
(2) 1.本論文の主旨 本研究は、韓国と米国・韓国と日本の高等教育における二国間関係を比較事例 として、高等教育における国際関係を概念化し、世界の学術システムにおける中 心周辺関係の変容を実証しようとした研究である。世界の学術・高等教育システム における国際関係に関しては、国際高等教育の指導的研究者である Altbach が、 その構造化された状況を、従属論・中心周辺理論の立場から説明したものが、最も 影響力のある理論的視点として、多くの研究に引用され、学術的な影響力を有して てきた。しかし、本研究では、歴史的に所謂世界的周辺に位置した韓国の高等教 育・大学が、急速な発展を遂げたことより生じた米国・日本の高等教育との関係の 変容に着目し、高等教育の国際関係に関する従属論的説明の反証を試みた。具 体的には、韓国と日米との両二国間における、短長期の留学生交流や国際共同 学位プログラム、大学間協定、国際共同研究、教員の国籍・学位取得等の高等教 育の国際化・高度化に関する状況・様態の変化を、韓国の高等教育全体の政策文 書や統計資料の把握と韓国の 2 大学の事例研究を基に、量的・質的に分析した。 このようなデータ分析の結果、韓国の高等教育は日米両国の高等教育に対して、 従属・中心周辺関係を脱しつつあること、特に日本との関係については水平的な 協力関係がアジアの高等教育の地域化の動向と共に進展していること、しかし、米 国との関係では、英米の高等教育をモデルとする新自由主義的至上主義の高等 教育改革が進展する中、教育政策や研究者・教員の養成・教授言語などの面にお いて従属関係が残っている状況があること等が実証された。 本研究は、Altback 等が世界的学術システムが構造化された従属・中心周辺関 係にあるという理論的な考え方に反論しながらも、植民地支配などの歴史的要因よ りも、高等教育政策における新自由主義の展開や、英語を共通言語とするグロー バリゼーションの動向、世界大学ランキングを基とした世界水準大学への希求、高 等教育の地域化等の新しい要因が、高等教育の国際関係に強く影響し、現代の 高等教育における国際システムを構成していることを示した。 2.本論文の構成と概要 第 1 章 「Introduction」では、世界的学術・高等教育システムに関する従属論・中 心周辺理論的概念化と、韓国と日米の高等教育における二国間関係の歴史的概 観が説明され、その上で、本研究の背景・意義・目的・研究設問、研究枠組みと研 究方法の概要が示されている。 第 2 章 「Revisiting Bilrateral Relationship between Korea and US and Korea and Japan」では、本研究の基となる、韓国と日米両国との関係が歴史的・政治的に概 観されている。後半では、特に韓国の近代高等教育の形成過程における米国と日 本の影響・果たした役割が歴史的に説明された上で、現代の韓国高等教育の社 会的状況と日米の影響が概観されている。 第 3 章 「Korea as a National Case」では、韓国の高等教育の状況を概観し、 1980 年代から新自由主義がその中心的な政策枠組みになっていることを明らかに している。その上で、本研究の分析枠組みとなる高等教育の国際化と世界水準大 学をめぐる政策動向とこれに対する評価や批判などを説明している。 1.
(3) 第 4 章 「Literature Review」では、本研究のための先行研究のレビューが提示さ れている。最初に、国際高等教育関係を説明した従属論に関係する先行研究が 説明され、あわせて世界システム論、新帝国主義論等が議論されている。そして、 本研究の研究枠組みの基として、高等教育の国際化に関する先行研究と、世界水 準大学(World Class University)論に関する先行研究が示され、それぞれについて の本研究における分析視角と、韓国と日米との両二国間における、短長期の留学 生交流や国際共同学位プログラム、大学間協定、国際共同研究、教員の国籍・学 位取得等の高等教育の国際化・高度化に関する状況・様態の変化に関する 7 つの 指標が提示されている。 第 5 章「Methodology」では、本研究が韓国の高等教育全体と日米との二国間関 係と、韓国の 2 つの事例大学の分析の 2 つの方法で行われたことが説明され、韓 国全体に対しては、韓国の政策文書分析、政策担当者へのインタビュー、統計 データの概観などが研究方法として示されている。また、事例 2 大学についてはそ れらの大学の概観・国際化・世界水準大学への戦略と、事例大学として選んだ理 由について説明されている。また、この章の後半では、本研究の質的・量的分析の 方法と、データ処理方法が詳述されている。 第 6 章「Findings and Analyses」では、本研究の二つの視角である高等教育国際 化と世界水準大学に関するデータ分析の結果が示されている。この 2 つの動向を 示す 7 つの指標に関して、韓国と米国・日本の二国間関係に関わる分析がなされ ている。 第 7 章「Analyses and Discussion」では本研究のデータ分析によって明らかになっ た韓国と米国・日本の高等教育における二国間関係について、従属・中心周辺関 係の検証を中心に、理論的な観点からの分析と議論を行っている。 第 8 章「Conclusion」では、本研究を総括して、世界の学術・高等教育システムが 構造化された従属・中心周辺関係にあることを反証しながら、新自由主義による市 場的な競争と学術研究の独立という対立軸や、地域主義の影響などを踏まえて議 論を行っている。その上で、将来の研究についての提案がなされている。 3.口述試験での質疑応答 本論文審査委員会は、申請者から提出された学位請求論文を査読し、2017 年 11 月 29 日に 2 時間余にわたり口述試験を実施した。委員会からの主たる助言、 修正要求の論点は以下の通りである。 (1)高等教育の二国間関係の概念化が、国際高等教育研究にとってどのような 意味・学術的意義をもつのかを明らかにすべきである。そして、これを主要な研究 課題の一つとして、加えるべきである。 (2)高等教育の国際化と世界水準大学という 2 つの事象を、本論文の主要な研 2.
(4) 究枠組みとして選択した理由を明確にし、十分な説明を行うべきである。 (3)本研究より明らかとなった高等教育における新自由主義的市場主義と地域 化の相克について考察を深め、韓国だけではなくアジアの高等教育全般に見い だされる動向として議論すべきである。 (4)結論は、単にこれまでの議論を要約するだけではなく、その学術的意義・貢 献を明らかにする章とすべきである。 (5)英語の文法的誤り、過去形と現在形の混合、韓国名の記述法不統一等、文 章の問題が散見される。十分な改善を行うべきである。 (6)韓国の高等教育に関する章は本研究の背景なので、文献研究の前にもって くるべきである。 (7)事例大学名や面談した個人の匿名性に配慮すべきである。 口述試験では、以上の指摘や質問に関して回答が示され、修正すべき点につ いては、最終提出までに適切に修正することとなった。審査委員会は修正意見に 対する対応表とともに、修正が適切になされていることを確認した。 4.評価と審査結果 以上のように本論文は、世界的学術システムにおける高等教育の国際関係の変 遷・変容に焦点を当て、韓国と日米の高等教育における二国間関係を事例に、実 証的・理論的に考察したものである。国際高等教育研究においては、Altbach の従 属論的な説明が支配的で、本研究のようなこれを反証する議論や実証研究は十分 ではなかった。本研究では、韓国と日米の高等教育の二国間関係という世界の高 等教育史において独自の事例を検証し、新自由主義的高等教育改革や地域化の 影響もあわせた理論的考察を行うことに成功しており、これは本研究の大きな学術 的貢献と言える。口 述 試 験 の 内 容 を 踏 ま え 、 論 文 に 関 し て 慎 重 か つ 総 合 的 に審 査 を行 なった結 果 、博 士 学 位 請 求 論 文 としての水 準 を 満 たしてい るものと判 断 し、これを受 理 することに全 委 員 が合 意 した。. 3.
(5) 申請者名:. JungHyun RYU. 博士論文審査委員会 主査. Chief Examiner:. 氏 名 Name: 黒 田 一 雄 ㊞(Signature) 所 属 Affiliation: 早 稲 田 大 学 大 学 院 アジア太 平 洋 研 究 科 職 位 Ti t l e : 教授 学 位 Degree: Ph.D. in Education 取 得 大 学 C o n f e r r e d b y : コーネル大 学 専 門 分 野 Specialty: 比較国際教育学 副査. Head Deputy Examiner:. 氏名 所属 職位 学位. Name:. 副査. Deputy Examiner:. 李 鍾元 ㊞(Signature) Affiliation: 早 稲 田 大 学 大 学 院 アジア太 平 洋 研 究 科 Ti t l e : 教授 D e g r e e : 博 士 (法 学 ) 取 得 大 学 Conferred by: 東 京 大 学 専 門 分 野 Specialty: 国 際 政 治 学. 氏 名 N a m e : Gracia Liu-Farrer ㊞(Signature) 所 属 Affiliation: 早 稲 田 大 学 大 学 院 アジア太 平 洋 研 究 科 職 位 Ti t l e : 教授 学 位 D e g r e e : Ph.D. in Sociology 取 得 大 学 C o n f e r r e d b y : シカゴ大 学 専 門 分 野 Specialty: 社会学 副査. Deputy Examiner:. 氏名 所属 職位 学位. Name:. 杉村美紀 Affiliation: 上智大学総合人間科学部 Ti t l e : 教授 D e g r e e : 博 士 (教 育 学 ) 取 得 大 学 Conferred by: 東 京 大 学 専 門 分 野 Specialty: 比 較 国 際 教 育 学. 2017 年. 11 月. 29 日 4. ㊞(Signature).
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