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博士論文審査報告書

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Academic year: 2021

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早稲田大学大学院アジア太平洋研究科

博士論文審査報告書

論 文 題 目

原題名

Original Title

Globalization, Internationalization and Teacher Education in the Twenty-First Century: Nurturing Local Teachers with International Roles in Singapore

英訳

In Japanese

21世紀におけるグローバル化、国際化と教員養成:

シンガポールの国際的役割を有する地元教員の育成

申 請 者

Last Name Middle Name First Name

Name

Mohamed Nazeer Rita Zamzamah

学籍番号

Student ID

4011S313-8

2016年 1月

(2)

1.本論文の主旨

本研究は、従来国民国家の枠組みにおいて、議論がなされ、実践されてきた「教 師教育」に焦点を当てて、グローバル化と国際化の観点から、その実態を概念化し、

知識基盤経済の形成に向けた将来の展望と課題を、実証的に問うものである。具 体的には、教師教育、高等教育の国際化、グローバル化と知識経済という3種類の 既存研究によって分析枠組みを設定し、シンガポールの教師教育を題材に、(1)

教師教育の国際化の原動力・要因は何か、(2)国際化はどのような形態で、教師 教育を変容させようとしているのか、(3)教師教育の国際化のリスクや課題は何か、

という3つの問いに、本研究は答えようとしている。研究手法としては、404名の教 師教育関係者と教師教育を受けている学生に対して質問紙調査を、60名の様々 なレベルの教育関係者に面接調査を、2度の長期フィールドワークを通じて実施し、

量的と質的なアプローチを組み合わせた研究手法により、多面的に教師教育の国 際化に接近しようと試みた。本研究の結果、シンガポールにおいては、教師教育の 国際化が国家の国際戦略の一環として位置づけられ、国家やその構成要素である 組織や国民が、グローバル化の進む多様性のある社会への変容の中で、21世紀 を生き抜いていくための方策として位置づけられていることが明確となった。しかし 一方で、そうした教師教育の国際化を重要とする共有された認識にも関わらず、国 際化へ向かう度合いには限界があり、その根底には国民国家における位置づけを 中心とする教育の本来的なあり方がある、こともわかった。その結果、高等教育一 般の国際化によく見られる海外機関と共同した国際化(Internationalization of Higher Education Abroad)よりも、カリキュラムや教育プログラムにおける国際的要 素の振興といった(Internationalization at Home)が優先されることも傾向として認め られた。

2.本論文の構成と概要

第 1 章 「The Globalization -Contextulization Conundrum in Teacher Education」

では、社会経済のグローバリゼーションの中で、教育教育の国際化がどのように進 展してきているのかを概観したうえで、教師教育をめぐる近年の学術的・国際政策 的議論を整理し、近年高まりつつある比較国際教育学における教師教育に関する 研究関心の背景を説明している。その後、教師教育、高等教育の国際化、グロー バリゼーションと知識経済の観点から概念枠組みを設定し、教師教育の国際化の 要因と形態・課題を明らかにするという研究目的を設定している。

第 2 章 「Teacher Education in the Twenty-First Century: Orienting from the National to the Intertnational」では、教師教育の国際化に関する既存研究の到達 点を示すために、総合的な文献レビューを行っている。まず、教師教育に関する国 民国家における位置づけと国際的な位置づけの相互関係を明らかにするために、

伝統的な国民教育の中の教師教育に関する文献レビューから始め、国際性を重 視した近年の21世紀型学力論と教師教育の関係性に関する研究を手がかかりに、

教師教育の国際化に関する限られた既存研究に対して、批判的な考察を加えて いる。そして、最後に、本研究のフィールドであるシンガポールの教師教育に関し て、その歴史と現状を先行研究から明らかにしている。

第 3 章「Research Methodology」では、まず本研究の研究手法として、量的・質的

(3)

の両面からアプローチする手法に関して、先行研究の即して説明した上で、2度の 長期フィールドワークの結果、404名の教師教育関係者(365名の教師教育学生 と39名の教師教育機関の教職員)に対して質問紙調査を、60名の様々なレベル の教育関係者(第1フェーズでは19名の教師教育関係者、第2フェーズでは36名 の現職教員と5名の校長)に面接調査を、実施したことが説明されている。そして、

章の最後に、取得データの概要と分析方針が述べられている。

第 4 章「Findings from Analysis」では、本研究の課題である教師教育の国際化の 原動力・要因、形態、リスクと課題に関して、データ分析の結果が示されている。ま ず最初に、教師教育の国際化が教育関係者がどのように受けとめられているかが、

明らかにされ、本研究の第一の視角である、その教育的、社会文化的、経済的、

政治的要因に関する分析結果が提示される。そして、第二の視角であるその形態 と第三の視角であるそのリスク・課題に関して、アクターごとの分析が行われてい る。

第 5 章「Summary, Disucussion and Conclusion」では、データ分析の結果を受けて、

シンガポールにおける教師教育の国際化を展望すると共に、教師教育の国際化に 関する理論的な考察を行おうとしている。本研究の結果、デファクトとしてのシンガ ポールにおける教師教育の国際化は、国家の国際戦略の一環として位置づけら れ、シンガポールにおける、グローバル化・知識経済化の中で進む多様性のある 社会への変容の中で、未来に対する必須の準備・対応として位置づけられている ことが明らかとなった。一方で、そうした教師教育の国際化を重要とする言説には、

国民国家における位置づけを中心とする教育の本来的なあり方に対する固定的な 考え方に基づく限界もあることもわかった。その結果、高等教育の国際化によく見 られる海外機関と共同した国際化よりも、組織内で行われる教育内容・方法の国際 化が優先されることも傾向として認められた。このようなシンガポールでの発見から、

教師教育の国際化は、その社会的な要因や社会的に認知されたリスクや課題によ ってその態様が規定・制限される、という理論的観点が導かれた。

3.口述試験での質疑応答

本論文審査委員会は、申請者から提出された学位請求論文を査読し、2015 年 12 月 10 日に 2 時間余にわたり口述試験を実施した。主たる論点は以下の通 りである。

(1)教育の国民国家における伝統的位置づけと、グローバリゼーションへの対応 という拮抗した方向性の中で、本研究を進める学術的重要性をより具体的に示す べきである。

(2)この研究の対象としてシンガポールを選んだ学術的根拠を具体的に説明す べきである。

(3)グローバリゼーションが高等教育や教師教育に与える影響は明確であるが、

高等教育の国際化がどのように教師教育に結びつくのか、明確に説明すべきで ある。

(4)本研究が教師教育の国際化に関する研究枠組みを提示していることの、学

(4)

術的意義を説明すべきである。

(5)21 世紀型スキルの概念規定をより明確に説明すべきである。

(6)4 章のデータ分析において、どこまでが教育一般の国際化に関する意見・議 論で、どこまでが教師教育の国際化に関するものであるのかを明確にすべきであ る。

(7)グローバル化の教育現場への影響や教師教育の国際化の態様を、概念的 にだけではなく、具体的に事例を交えて示すべきである。

(8)シンガポール教育省とのやりとりについて、全てを Appendix に入れる必要は ない。

口述試験では、以上の指摘や質問に関して回答が示され、修正すべき点につ いては、最終提出までに適切に修正することとなった。審査委員会は修正意見に 対する対応表とともに、修正が適切になされていることを確認した。

4.評価と審査結果

以上のように本論文は、教師教育の国際化の要因・態様・課題に関して、シンガ ポールを事例に分析することにより、この新しい現象を理解し展望するための分析 枠組みを提示するとともに、質的・量的双方のデータを実証的に研究したものであ る。教師教育の国際化は、近年政策的実践的な重要性は指摘されながらも、実証 研究を基とした理念的な考察は十分ではなかった。本研究では、オリジナルな研 究枠組みを設定したうえで、実証分析の結果を基に熟度の高い考察を行うことに 成功しており、これは本研究の大きな学術的貢献と言える。口 述 試 験 の 内 容 を 踏 ま え 、 論 文 に 関 し て 慎 重 か つ 総 合 的 に 審 査 を 行 な っ た 結 果 、 博 士 学 位 請 求 論 文 としての水 準 を満 たしているものと判 断 し、これを受 理 すること に全 委 員 が合 意 した。

(5)

申 請 者 名 : Rita Zamzamah Mohamed Nazeer 博 士 論 文 審 査 委 員 会

主 査 Ch ie f Exam i n e r:

氏 名 N am e: 黒 田 一 雄

( S i g n a t u r e )

所 属 A ffi lia tio n: 早 稲 田 大 学 大 学 院 アジア太 平 洋 研 究 科

職 位 Tit le: 教 授

学 位 De gr e e: Ph.D. in Education 取 得 大 学 Co n fe r r e d b y: コーネル大 学

専 門 分 野 S pe c ial ty: 比 較 国 際 教 育 学 副 査 H e ad De pu ty Ex am in e r

:

氏 名 N am e: Gracia Liu Farrer

( S i g n a t u r e )

所 属 A ffi lia tio n: 早 稲 田 大 学 大 学 院 アジア太 平 洋 研 究 科

職 位 Tit le: 教 授

学 位 De gr e e: Ph.D. in Sociology 取 得 大 学 Co n fe r r e d by シカゴ大 学

専 門 分 野 S pe c ial ty: 社 会 学 副 査 De pu ty Exam in e r

:

氏 名 N am e: 中 嶋 聖 雄

( S i g n a t u r e )

所 属 A ffi lia tio n: 早 稲 田 大 学 大 学 院 アジア太 平 洋 研 究 科

職 位 Tit le: 准 教 授

学 位 De gr e e: Ph.D. in Sociology 取 得 大 学 Co n fe r r e d by:カリフォルニア大 学

バークレー校

専 門 分 野 S pe c ial ty: 社 会 学 副 査 De pu ty Exam in e r

:

氏 名 N am e: 杉 村 美 紀

( S i g n a t u r e )

所 属 A ffi lia tio n: 上 智 大 学 総 合 人 間 科 学 部

職 位 Tit le: 教 授

学 位 De gr e e: 博 士 (教 育 学 ) 取 得 大 学 Co n fe r r e d by:東 京 大 学

専 門 分 野 S pe c ial ty: 比 較 国 際 教 育 学

2016 年 1 月 19 日

参照

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