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博士論文審査報告書

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Academic year: 2022

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(1)早稲田大学大学院アジア太平洋研究科. 博士論文審査報告書 論 原題名 Original Title. 英訳 In Japanese. 文. Global Governance and the Response to the Financial Crisis: from the Viewpoint of Legitimacy. 申. 名. Name 学籍番号 Student ID. 目. グローバル・ガバナンスと金融危機対応―正当性の視点から―. 姓 Last Name. 氏. 題. 請. 者. Middle Name. 岩崎. 名 First Name. 淳. 4012S0021. 2018 年 1 月. 0.

(2) 1.. 本論文の主旨. 本論文は、グローバリゼーションとグローバル・ガバナンスに関する議論を整理した上で、 特にグローバル・ガバナンスの正当性を中心的な射程に据え、その理解を深めることを目 指すものである。具体的には、「グローバリゼーションの進展はグローバル・ガバナンスにお ける正当性向上の要求を高める」との点を中心的な命題に掲げて、議論を展開する。また、 正当性に関し、従来から指摘されていた「インプット面の正当性」と「アウトプット面の正当 性」との分類に加え、前者を「垂直的な正当性」と「水平的な正当性」、後者を「時間軸の正 当性」と「効果軸の正当性」との判断基準に分けて論じた上で、これらの判断基準を勘案す るとインプット面の正当性とアウトプット面の正当性を同時に達成することは困難であり、これ を達成するために必要とされるのがリーダーシップの存在との命題を掲げる。こうした命題を 検証するために用いるのが、2000 年代後半の金融危機と、それを受けて創設された新たな グローバル・ガバナンスの枠組みである G20 サミット、そしてこの G20 サミット主導で行われ た銀行規制見直しを事例として検証する。 2.. 本論文の構成と概要. (1)構成 序章:はじめに 第1章:グローバリゼーションとグローバル・ガバナンス 1-1.グローバリゼーションの定義 1-2.グローバル・ガバナンスの定義 1-3.グローバリゼーションの進展とグローバル・ガバナンスの関係 1-4.グローバリゼーションの下での国家の役割 第2章:グローバル・ガバナンスにおける正当性についての考察 2-1.グローバル・ガバナンスを機能させる規則遵守の諸動機 2-2.正当性に関する議論 2-3.正当性の判断基準 2-4.インプット面の正当性と民主主義 2-5.インプット面の正当性とアウトプット面の正当性の緊張関係 2-6.インプット面の正当性とアウトプット面の正当性の両立 第3章:命題提示-グローバリゼーションの進展と正当性向上 3-1.グローバリゼーションのトリレンマと正当性向上 3-2.強制・自己利益の質的変化と正当性向上の要求増大 3-3.リーダーシップの重要性 第4章:金融危機の実相 4-1.金融危機の特徴:グローバル公共財の重要性再認識 4-2.金融危機とグローバリゼーション 4-3.国家の役割(金融・財政政策)の再認識 4-4.金融危機における IMF の存在感低下 第5章:グローバル・ガバナンスの新体制 5-1.G20 サミットの創設 5-2.G20 サミットに関する先行研究 1.

(3) 5-3.G20 が国際的な銀行規制見直しに果たした役割 5-4.バーゼルⅢの概要 5-5.FSF の拡充、FSB の創設 5-6.BCBS メンバーの拡充 第6章:命題の検証1(正当性向上) 6-1.金融危機後の銀行規制見直しを用いることの妥当性 6-2.正当性向上要求命題の検証 第7章:命題の検証2(リーダーシップの重要性) 7-1.ターナー報告書を通じた英国のリーダーシップ発揮 7-2.英国当局が主導的な役割を果たしたことの背景 7-3.リーダーシップの行使 終章:おわりに (2)概要 序章では、本論文の問題意識を掲げた上で、各章の概要を説明し、本論文の射程・目的 を示す。 第1章ではグローバリゼーションとグローバル・ガバナンスにつき、先行研究を用いて議論 を整理する。そこでは、なぜグローバリゼーションやグローバル・ガバナンスの定義が困難か、 といった点を踏まえた上で、本稿におけるそれらの用語の定義を試みる。また、本稿の主た る研究対象であるグローバル・ガバナンスが抱える根源的・構造的問題を指摘するほか、グ ローバル・ガバナンスを考える上で重要な論点である、グローバリゼーションの下での国家 の役割についても考察を加える。 第2章では、グローバル・ガバナンスを機能させるために必要な規則遵守の動機を構成す る要素、すなわち前述のハードの主張に則り、強制、自己利益、正当性について説明し、 特に正当性に関して、前述の通りシャープの示したインプット面とアウトプット面の正当性と の観点をさらに掘り下げた判断基準を示して、この概念の具体的把握を試みる。その中で、 正当性と民主主義の関係なども含めた議論を展開する。また、インプット面とアウトプット面 の正当性は、相互にトレードオフの関係にあり、その同時達成が難しいこと、それを克服す るにはリーダーシップの発揮が重要であることの2点を指摘する。 第3章では、グローバリゼーションの進展が正当性向上への要求を高めるとの命題、またイ ンプット面とアウトプット面の正当性が包含する構造的な問題を解決するために正当性を備 えたリーダーシップが求められるとの命題を提示し、これを説明する。 第4章では、2000 年代後半の金融危機について、グローバリゼーションとグローバル・ガバ ナンスの観点を視野に入れて、その実相について分析する。そこにおいては、2000 年代後 半の世界的な金融危機は、その被害が非常に甚大で、グローバルな金融安定というグロー バル公共財の重要性が改めて示されたこと、この金融危機は金融のグローバリゼーション の進展を明確に反映したイベントであったことの2点が指摘される。また、この金融危機を受 けた対応において、まずは国家の役割、すなわち金融・財政政策の重要性が改めて認識さ れたこと、その過程において既存の国際組織である国際通貨基金(International Monetary Fund、IMF)は有効性を発揮できず、その背景には正当性の欠如が指摘出来ることの2点を 説明する。 2.

(4) 第5章では、この金融危機への対応として生まれた G20 サミットというグローバル・ガバナン スの新体制について、先行研究も踏まえて分析し、今回の銀行規制見直しがこの G20 サミ ットの主導の下に行われたことを指摘する。その上で、バーゼルⅢと呼称される今回の銀行 規制見直しの具体的内容、並びにその策定作業を担当した組織である金融安定化理事会 (Financial Stability Board、FSB)並びにバーゼル銀行監督委員会(Basel Committee on Banking Supervision、BCBS)について説明する。 第6章では、第3章で提示した命題を金融危機後の銀行規制見直しの事例を用いて検証 する。そこにおいては、インプット面の正当性(垂直的・水平的正当性)、アウトプット面の正 当性(時間軸、効果軸)の双方から検証して、グローバル金融危機後の銀行規制見直し作 業においては、従来と比べ、格段に正当性が向上していることが説明され、グローバリゼー ションの進展が正当性向上への要求を高めるとの命題が検証される。 第7章では、この銀行規制見直しで正当性向上を達成する上で、G20 サミット主導の枠組 みの下で、英国のリーダーシップが重要な役割を果たしたことを説明し、インプット面・アウト プット面の正当性を同時達成する上で正当性を備えたリーダーシップが求められるとの命 題の検証を試みる。 終章では、この論文の目指す学術的貢献を説明する。また、グローバリゼーションの限界 を示すとされる最近の国際的な事象や、逆にグローバリゼーションのさらなる進展を示す IT 金融分野での動きに触れた上で、正当性の重要性を改めて指摘する。 3.. 口述試験での質疑応答. 本論文審査委員会は、申請者から提出された学位請求論文を査読し、2017 年 12 月 16 日に 2 時間余にわたり口述試験を実施した。主たる論点は以下の通りである。 ・バーゼル III の最終決着はつい最近のことであるが、垂直的正当性の側面から実際の 効果はどのように評価できるのか。 ・国際金融システム安定が公共財であるなら、中央銀行は、国内政策を勘案しつつ、どの ように役割を果たすべきなのか。 ・IT 化の進展やビットコインなどの出現により国家の役割について本論文はどのような示唆 を与えるのか。国家主権に質的な変質をもたらすのか。 ・本論文の出発点として、グローバル・ガバナンスありきという前提で論旨が組み立てられ ているが、より経済学的な視点から考えることもできるのではないか。事例が先に問題意識 としてあったことは理解できるが、グローバル・ガバナンスの枠組が最適といえるのか。 ・ハードが提示した公共財に伴う「強制」の構成概念として、「正当性」に主として依拠して いるが、「自己利益」概念と比較し、詳細な検討が必要ではないか。 ・イギリスの政治的リーダーシップをバーゼル III 妥結では評価しているが、これは Brexit の事例にどのような意味合いを有するのか。 修正については下記の点が指摘された。 ・バーゼルⅢに関する正当性評価の部分で、その効果に関する評価を明確化すべきであ る。 ・ビットコインなど IT 技術の進展とグローバル・ガバナンスの関係についての記述を追加す 3.

(5) べきである。 ・ゲーム論・制度経済学における「ナッシュ均衡・自己拘束性」を勘案した正当性の評価を 追加すべきである。 ・口語的表現、誤字、脱字、行間の不整合性がみられるので、修正した方がよい。 ・最終審査の口頭発表で使用された理論的枠組を示す概念図を論文本体にも挿入すべ きである。 口述試験では、指摘や質問に関して適切に回答が示され、修正すべき点については、最 終提出までに適切に修正することとなった。審査委員会は修正意見に対する対応表ととも に、本 論 文 の学 問 的 意 義 は、何 よりもまず、国 際 金 融 規 制 というこれまでグローバ ル・ガ バ ナンス論 では、論 証 されていなか っ たテーマを とりあげ検 証 した ことである。 修正が適切になされていることを確認した。 4.. 評価と審査結果. 1. グローバル・ガバナンス研 究 分 野 では近 年 実 証 研 究 が蓄 積 されていると は いえ 、環 境 や人 権 などの分 野 での研 究 が多 かっ た 。しかし ながら 、本 論 文 では 、 国 際 金 融 規 制 という高 度 の 専 門 性 を要 する分 野 においてもグローバル・ガバナン スという 分 析 枠 組 が 有 効 で あると いう こ と を 、後 述 す るよ う に自 己 の分 析 枠 組 か ら 立 証 したことは高 く評 価 される。 2.実 証 研 究 という視 点 からもバーゼル III がどのような過 程 を経 て妥 結 していった かを丁 寧 かつ堅 実 に論 証 している。最 終 的 に、イギリスのリーダーシップが重 要 で あっ た ことを 議 論 に組 み込 み、 テク ノク ラート(金 融 問 題 専 門 家 ) の役 割 と政 治 的 リーダーシップの関 わりについて 検 討 しており、質 の高 い実 証 研 究 となっている。 3.グロ ーバ ル・ガバ ナンスについての多 岐 にわた る先 行 文 献 を幅 広 くまた 深 く洞 察 し、グローバル・ガバナンスについて概 念 整 理 を わかりやすく おこなっている。そ の よ う な 先 行 文 献 の 検 証 を 行 っ た う え で 、国 際 金 融 統 制 に つ い て 、 「 正 当 性 」 の 概 念 が 重 要 であることを 見 出 したうえ で、著 者 自 らこの「正 当 性 」概 念 を 発 展 さ せ、 「正 当 性 」概 念 には 垂 直 性 ・水 平 性 、ならびにインプ ット・アウトプットという側 面 が 考 察 されるべきことを指 摘 しており、理 論 的 な貢 献 が認 められる。 4 . 論 文 構 成 が し っ か り とし て い る 。 こ れ は 単 に 論 旨 の 明 確 性 、 問 題 意 識 の 提 示 及 び解 析 の妥 当 性 と いう 点 で評 価 されるだ けでは ない。理 論 的 枠 組 とし ての「正 当 性 」を 語 る 部 分 が 政 治 哲 学 的 な 重 厚 感 を も つ 一 方 で 、実 証 部 分 は 国 際 金 融 という 専 門 性 を要 する内 容 を 論 述 しているが、この二 つの面 が違 和 感 なく整 合 性 もち説 得 的 に叙 述 が展 開 されており 、そのアンサンブルは見 事 である。 口 述 試 験 の内 容 を 踏 まえ 、論 文 に関 し て慎 重 か つ総 合 的 に審 査 を行 なった 結 果 、 博 士 学 位 請 求 論 文 と し ての 水 準 を 十 分 満 た し て い る も の と 判 断 し 、 こ れを受 理 することに全 委 員 が合 意 した。. 4.

(6) 申請者名:. 岩崎 淳. 博士論文審査委員会 主査. Chief Examiner:. 氏 名 Name: 篠 原 初 枝 ㊞(Signature) 所 属 A f f i l i a t i o n : 早 稲 田 大 学 、大 学 院 アジア太 平 洋 研 究 科 職 位 Ti t l e : 教授 学 位 Degree: PhD 取 得 大 学 C o n f e r r e d b y : Univ. of Chicago 専 門 分 野 Specialty: 国際関係論 副査. Head Deputy Examiner:. 氏 名 Name: 翁百合 所 属 Affiliation: 日本総合研究所 職 位 Ti t l e : 副理事長 学 位 Degree: 博 士 (学 術 ) 取得大学 専 門 分 野 Specialty: 金 融 論 副査. ㊞(Signature). Conferred by:. Deputy Examiner:. 氏 名 Name: 神津多可思 ㊞(Signature) 所 属 Affiliation: リコー経 済 社 会 研 究 所 職 位 Ti t l e : 所長 学 位 Degree: 博 士 (経 済 学 ) 取 得 大 学 Conferred 専 門 分 野 Specialty: マクロ経 済 学 ・金 融 副査. 京都大学. by. 埼玉大学. Deputy Examiner:. 氏 名 Name: 山岡道男 ㊞(Signature) 所 属 A f f i l i a t i o n : 早 稲 田 大 学 、大 学 院 アジア太 平 洋 研 究 科 職 位 Ti t l e : 教授 学 位 Degree: 博 士 (学 術 ) 取 得 大 学 C o n f e r r e d b y :早 稲 田 大 学 専 門 分 野 Specialty: 国 際 関 係 論 ・地 域 研 究. 2018 年 1. 月 22 日 5.

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参照

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