博 士 ( 歯 学 ) 菊 池 正 浩 学 位論 文題 名
Laser perforatedCOllagenmembrane:pore SiZe_dependentboneinduCtionaSaneWBMPCarrier
( レー ザー 穿孔 コラ ーゲ ン膜 の開 発:BMP骨 誘導 にお ける 穿孔 直径依 存性)
学位論文内容の要旨
【緒言】
骨 形 成 蛋 白 質(BMP)を 用 い て 生 体内 に骨、 軟骨 なら びに 歯周 組織 を誘 導し 、あ るい は 再建 する ため には 、BMPを一 定の 担体 に結 合さ せて から 埋植 することが必要である。本研 究で はこ の担 体が いか なる 性質 を必 要と するか を追 究す ると 同時に、新しい膜状のBMP担 体を開発することを目的とする。
一 般 に 硬 組 織 形 成 に 必 要 な 要 素 に は 、 @ 細 胞 、 ◎ 基 質 、 ◎ 体 液 お よ び @ 制 御 因 子 と い う4大 要 素 と ◎ メ カ ニ カ ル ・ ス ト レ ス と い う カ 学 的 要 素 が あ げ ら れ る 。 こ の う ち 細 胞 、 体 液 、 メ カ ニ カ ル ・ ス ト レ ス は 生 体 内 に 既 に 備 わ っ て い る と 考 え ら れ る の で 、 本 研 究 の 実 験 系 で は 、 基 質 と し て の 担 体 と 制 御 因 子 と し て のBMPの 2点 を 組 み 合 わ せ て 投 与 す る こ と と し た 。 担 体 は BMPの 機 能 発 現 に き わめ て重 要で あり 、そ の諸 性質 によって骨又は軟骨が優先的に誘導される事実、すなわち
「BMPの 担 体 依 存 性 」 が 明 ら か に さ れ て き た 。 し たが っ てBMPを臨 床的 に応 用す るた め に は 、 各 種 の 症 例 に 適 レ た 最 適 の 担 体 を 用 い るこ と が 望 ま し い 。BMP担 体 とし て の 主 な 必 要 条 件 に は 、 @ 細 胞 支 持 体 と し て の 機 能 、 ◎BMP及 び そ の 他 の 生 体 分 子 と の 親 和 性 、 ◎ 機 械 的 性 質 と 操 作 性 、 @ 再 建 し よ う と す る 組 織 に 適 し た カ 学 的 ・ 幾 何 学 的 要 素 が 考 え ら れ る 。 こ れ ま で に10種 類 以 上 のBMP担 体 が 開 発、 報 告 さ れてきたが、局所の骨再建に適する膜状でしかも生体吸収性の担体は少なく、主にコラーゲ ン線 維膜(F、CM)が利用されてきた。しかしF℃Mは製法によって再現性が乏しく、最適の BMP担体とは言えなかった。
本 研究 では 、一 定の 細胞 通過 性と 支持 カをも ち、 再現 性を 持って製作できる吸収性BMP 担体を得る目的で、レーザー光線によルコラーゲン膜にそれぞれ異なった直径の穿孔を行い、
BMP誘導異所性骨形成の担体としての有効性を比較検討した。
【材料と方法】
未 変性 ペプ シン消化処理I型コラーゲンから成る膜(厚さ35 lun、高研製)に、工キシ マレーザー発生装置(穿孔直径O.l mm)及び炭酸ガスレーザー発生装置(穿孔直径0.2 nun 以上 )に よっ て直径0.1、0.2、0.3、0.5、0.75及び1.0 mmの正円形の穿孔を行った。穿
孔はコ ンピュー夕制御により自動化した。穿孔面積は一定にし、全体の20%とした。
各サイ ズの孔径を もつレーザ ー穿孔コラ ーゲンaP)膜を、幅10x5 mmにカットし、
BMP及 び細胞保持能カを増加させる目的で、膜を2枚重ねにして4隅のみ100%シアノア ク1jレートで接着し、膜と膜との間に空間をもたせた。
これらのIP膜に、thBMP−2(5ug)(山之内製薬より供与)を含浸し、凍結乾燥後、4週 齢のウイスター系雄ラッ卜の背部皮下に埋植した。コント口ールとして非穿孔膜を同様に埋 植した 。1〜4週目にサンプルを取り出し、組織学的観察、アルカリフォスファターゼ 仏IJ) ) 活性 、 カル シウム(Cめ含有 量ならびにR卜PCR法によるオ ステオカル シン mRNAの発現を測定した。
【 結 果】
組 織 学 的 観 察 : 埋 植 後2週 の 孔 径O.l mm LP膜 で は 、 膜 表面 に 対し 垂 直方 向 の 組 織 切 片 で 、 す で に 孔 内 に 骨 が で き 、 場 所 に よ っ て はLP膜 の 外 側 に お い て も 骨 が 連 続 的 に 形 成 さ れ て い た 。3週 に は 膜 自 体 の 吸 収 も 見 ら れ 、 膜 と 骨 と が 融 合 し て い る 様 子 も 観 察 さ れ た 。 膜 表 面 に 対 し 水 平 方 向の 組 織切 片 では 、 穿 孔パ タ ー ンど お りに 、 周囲 か ら孔 を 埋め る よ うな 形 で同 心 円状 に 、孔 の周 囲カゝら中 心 に 向か っ て層 状 に骨 形 成が 観 察さ れ た 。場 所 によ っ ては 膜 は分 解・ 吸収され、
骨 が 連続 し てい る 部分 も 観察 さ れた 。
孔 径0.5 mm LP膜 の 2週 目 の 垂 直 方 向 の 組 織 切 片 に お い て 骨 は 、 孔 径O.l mm LP膜 と は 違 い 、 孔 の 内 部 か ら で は な く 、 、2重 に な っ た 膜 と 膜 の 聞 や 、 膜 の 外 側 表 面 上 に 不 規 則 に 形 成 さ れ て い た 。4週 日 に な る と 、 膜 の 吸 収 も 進 み 、 中 心 部 で は 、 す で に り モ デ リ ン グ が お き て い る 像 が 観察 さ れ、 骨 内は 脂 肪 細胞 も 増 加し 、 骨髄 様 の組 織 で満 た され て い た。
非 穿 孔 膜 に お い て は 、2重 膜 間 に ご く 一 部 で は あ る が 、 骨 形 成 が み ら れ た 。 ま た 、 ア ル シ ア ン ブ ル ー 染 色 で は 、LP膜 お よ び 非 穿 孔 膜 で 軟 骨 の 存 在 は 確 認 出 来 なか っ た。
生 化 学 的 観 察 : 孔 径 0.3 mm LP膜 に お け るALP活 性 とCa含 有 量 の 経 時 的 変 化 を み る と 、ALP活 性 は2週 目 で ピ ー ク が 見 ら れ 、 Ca含 有 量 で は3週 日 に ピ ー クが 見 られ た 。
そ こ で 、 孔 径 の 異 な る LP膜 に お い て 、2週 のALP活 性 を 比 較 検 討 し た 結 果 、 孔 径 の 大 き な も の ほ ど 高 値 を 示 し た 。3週 のCa含 有 量 で は 、 膜 の 孔 径 が 増 す ご と に 値 も 増 加 し た が 、 孔 径0.5 mm以 上 で は さ ら な る 増 加 は 見 ら れ な か っ た 。 非 穿 孔 膜 と 比 較 し て 孔 径0.5、0.75及 び1.0 mrnの 値 は 平 均 約3倍 の 高 い 値 を 示 し た 。 孔 径0.3 mm LP膜 で 、 オ ス テ オ カ ル シ ン mRNAの 発 現 の 経 時 的 変 化 を 測 定 す る と 、1週 目 は 発 現 が 見 ら れ ず 、2週 目 以 後 で 発 現 が 見 ら れ た 。 各 孔 径 の3週 で の オ ス テ オ カ ル シ ン mRNAの 発 現 を 比 較 す る と 、 非 穿 孔 膜 を 合 め 、 全 て の LP膜 に お い て 、 オ ス テ オ カ ル シ ンmRNAの 発 現 が 見 ら れ た 。
【考察】
コラ ー ゲン 膜 に一定の大き さの穿孔をす ることで BMP 担体と しての効率が 顕 著 に増 大 した 理由は、 担体に幾何学 的要素を加える ことで、@ BMP の膜 へ の定着性、ならびに、◎細胞の支持性が顕著に増加したためであると考えられ る 。 孔の 大 きさ を変えて 検討した結果 、とくに孔径0.5 mni 以上 のLP 膜は、
骨形成用の担体として有効であると考えられる。
孔径 O.lmm LP 膜で 観 察さ れ た特 異な 同 心円 層 状の骨形 成像は、この 部分 の骨形成が、孔の周囲縁から開始され次第に、孔の中心部に向かって進んだこ とを明瞭に物語っている。この特異な骨形成像は、過去において報告された長 さ 1.0 ー 1 . 5mm の円 筒 形ス ペ ース を もつ BMP 担 体 における ハパース系様 の骨 形 成パターンと 酷似している 。今回のような 孔内の骨形成の連続性がO.l mm の孔においても同様に観察されたことは、人工細胞支持体の幾何学的要素によ って組織形成が影響を受ける現象の例証と考えられる。
今回 、 開発 し た LP 膜は BMP 担体とし て、今後その 孔径、厚さ、 吸収性など を調節していくことにより、骨および歯周組織の再建など、歯科領域における 組織工学への応用が期待される。
【結論】
1 .異なる 直径の孔をあ けた LP 膜をBMP 担体とし、非穿孔膜と比較した結果、
全ての LP 膜において、より効率よく骨が誘導された。
2 .孔径 O . 1 mm か ら0.5 mm までの LP 膜では孔 径の増加と共 に ALP 活性および Ca 含有量が増加する傾向がみられ、 0.5 mni から1.0 mm までは、さらなる増加 はみられなかった。
3 .非穿孔 膜と比較した 結果、 0.5 mrn 以上の孔径 を持つLP 膜は、 3 週のCa 含 有量において約 3 倍の値を示した。孔径には骨形成にとって最適径があると考 えられる。
4 .本研究によって膜状の細胞支持体の幾何学的要素が、骨形成のバターンに
顕著な影響を与えることが示されたが、この現象は今後の組織工学の細胞支持
体(スカフオールド) .の設計において重要な手がかりを与えると考えられる。
学位論文審査の要旨
主 査 教 授 久 保 木 芳 徳
副査 教授 加藤 副査 教授 松本
亜・B
章
学 位論 文 題名
Laser perforatedCOllagenmembrane : pore SiZe ‐ dependentboneinduCtionaSaneWBMPCarrier
(レーザー穿孔コラーゲン膜の開発:BMP骨誘導における穿孔直径依存性)
本 論 分 の 審費 淵 ま、各 審査担 当者 からの 口頭蠹q謁 丶なら びに主 査によ る筆 記試験 の形で 行わゎ た。 まず、
審劃 旦 当 者 に 対 して、 学位申 請者か ら本論 文の 轌頃に ついて 、研究 の背 景、目lrl実 験方法 、結果 、考 察、結 諭と 今 後 の 展 望 の順 で 、 次 の よう な 口 頭 で の説 明 が 行 わ わた 。
【背景と目白9】歯科俸瀬£では、ロ胆鏐も患の予防カ趨氈巨であると同時に、すでに失わ期た―‐部の碾繁i織と歯周 組 織、 あるい1妄 それら の障 害され た櫓能 を再建 するこ とカ 韆匁‑Cあ る。そ のた めの科 学離麟 と体系 離戯 謝劫j 求められている。琴強―自質(BMPは骨贓を黝触、なら硼こ嗣維に鱒ずる、最捕カな
サ イト カイン であ るが| これを 用いて 生内勾 に骨 、轍嚼 ならび に歯周 組織 を誘導 し、あ るいは 再建す るた めに は 、BMPを 一定 の 「 担 齣 に結 合さ 世て ・から 埋植す ること カ鑓鰰 ある 。この 場合、 担崩ま 人工 の基質 であり 、 BMP| 拙 幽 税 制 餓 野 に 倣 ヱ ら な 。 丶 こ れ ま で10種 類 以 ヒ の BMP担 黼 輔 懇 研 究 さ れ 担 黻 くBMPの 機 能 発 呪 に き わ め て 重要 で あ り 、 そ の諸 性 質 に よ っで 骨 又 | 鋪 髀靹 甥 暁 的 に 誘導 さ れ る 職 す なわ ち 『BMP 蹴 縦 拵 髄 ぼ 抑 に 明 ら か に さ れ て い る 。 し 勘bてBMPを 嚠 瑚 | 硫 用 す る た め に は 各 種 の 症 例 | 鑓 した昂 適の担 体を 用いる ことガ 聾まし い。 歯周組 織)再 建には 、膳銑 ぐでしかも生偽唖糾対生の挂坿蝋ましくこ れ ま で 、 主 に コ ラ ー ヴ ン 纖 帆m棚 翻 さ れ て き た し か し FCMは 製 法 に よ っ て 再 現f生 カ 泛 し く 、 最 適 のBMP担体 とは言 えな かった 。そこ ‐¢輯 瀦恕 では、 一定 の細胞 透過睦 と支 持カを もち、 しかもBMp担 体と しての 要件を 備え た荊と して、 レーt卜_ グヒ線 によ ルコラ ーゲン 膜に穿 冗する とい う、ま ったく新しいアイデ ア を 導 入 し 、 歯 周 組 織 再 建 を 目 指 し た 新 し い 囀 斟 起 のBMP担 体 を 開 瞬 け る こ と を 目 的 と し た 。 潮 料 と 方 法 】 未 変f生 ペ プ シ ン 消 化 処 理I型 コ ラ ー ゲ 冫 か ら 成る 膜 ( 厚 さ35岬 、 高 研 製) に 、1冖 づし 発 生 装置 に よ っ て 、直 径o.1、0.2、0.3、O.5、0.75及び1.Ommの 正円形 の鎗乳 を行 いmBMPえG尚と 共に 、 ラ ット の 背 部 皮 下に 埋 植 し た 。14週 目 に サン プ ル を 取 り出 し 、 組 織 学的 観 察 、 ア ル カリ フ オ スフ ァ夕一 ゼ nuP) 活 性 、 カ ル シウ ム (Cめ 含有 量 な ら 乙 舟こrPCR法 に よ る オ ステ オ カ ル シ ン 耐刊Aの 発 現 を没 陀 し 、 穿 孔径による骨翻却つ差を朋孅討した
鰄埋鱸後2週の孔径0111mLP膜では、組織学的にすでに孔内に骨ができ、場所によ
っ て はLP膜 の 外 側 に お い て も 骨 が 連 続 的 に 形 成 さ れ て ぃ ゝ た 。 膜 表 面 に 対 し 水 平 方 向 の 組 織 切 片 で は 、 穿 孔 バ タ ー ン ど お り に 、 周 囲 か ら 孔 を 埋 め る よ う な 形 で 同 心 円 状 に 、 孔 の 周 囲
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から中心に向かって層状に骨形成が観察された。一方、孔径0.5 mm LP膜2週日では、孔径 0.1 mm LP膜とは異なって、孔の内部からではなく、2重になった膜と膜の聞や、膜の外側 表面上に不規則に形成されていた。4週目になると、膜の吸収も進み、中心部では、すでに りモデリング像が観察された。これらのLP膜に対して、非穿孔膜においては、骨形成はほ とんど観察されなかった。また、軟骨の存在はアルシアンブルー染包でも、LP膜および非 穿孔膜ともに確認出来なかった・
生化学的 には、孔径0.3 mm LP膜のALP活性は2週日でピークが見られ、Ca含有量では3 週日にピ ークが見られた。そこで、孔径の異なるLP膜において、2週のALP活性を比較検 討した結果、0.1―0.5mmまで孔径の大きなものほど高値を示した。3週のCa含有量も、同 様で孔径0.5 mm以上ではさらなる増加は見られなかった。非穿孔膜と比較して孔径0.5、0.75 及び1.0 mmのCa含有量は平均約3倍の高い値を示した。孔径0.3 nun LP膜で、オステオカル シンmRNAは 、2週日 以 後 に発 現 し た。3週 目 には 、オステ オカルシ ンmRNAは非穿孔 膜 を含め、全てのLP膜において発現が見られた。
時察と結 謝コラー ゲン膜に 一定の大 きさの穿孔をすることでBMP担体としての効率が顕 著に増大 した理由は、担体に幾何学的要素を加えることで、 BMPの膜への定着性、なら びに、@細胞の支持性が顕著に増加したためであると考えられる。孔の大きさを変えて検 討した結果、とくに孔径0.5 mm以上のLP膜は、骨形成用の担体として有効であると考えら れる。孔径O.lmm LP膜で観察された特異な同心円層状の骨形成像は、この部分の骨形成が、
孔の周囲縁から開始され次第に、孔の中心部に向かって進んだことを明瞭に物語っている。
この特異な骨形成像は、過去において報告された多孔性ヒドロキシアバタイトに観察され たハバース系様の骨形成バターンと酷似している。今回のような孔内の骨形成の連続性が 0.1 mm程度の孔においても同様に観察されたことは、人工細胞支持体の幾何学的要素によ って組織形成が影響を受ける現象の例証と考えられる。
【将来展望】今回、開発したLP膜はBMP担降として、今後その孔径、厚さ、吸収性などを 調節していくことにより、骨および歯周組織の再建など、歯科領域における組織工学への 応用が期待される。
以上のような学位申請者による説明の途中、ならびに終了後、審査担当者による、詳細 な質問が発せられ、@穿孔が、骨形成に有利であった理由、◎穿孔径をImmより大きくし た 場合の予想 、◎BMP担体 の要件、 @人工マトリックスの機能と性質、◎歯周組織再建 への応用の展望、等を中心に、鋭い追及がなされたが、いずれも申請者によって直ちに明 解なる回答がなされた。さらに、主査による筆記試験でも、申請者は合格点を取得できた。
以 上の所見から申請者は博士(歯学)の学位を授与される資格を有するものと認めた。
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