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学 位 論 文 の 要 旨

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Academic year: 2021

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(様式6号) 「課程博士用」

学 位 論 文 の 要 旨

専 攻 名 材料科学 専 攻 氏 名

織田 透 ○

学位論文題目

無機メソ多孔体のバイオ機能化とその応用に関する研究

(英訳 Studies on Bio-functionalization of Inorganic Mesoporous Materials and Their Applications)

固相担体に抗体や酵素等の生体分子を固定しその特異的反応を利用するシステムは、従来から臨 床診断における酵素免疫測定 (ELISA) 法などに利用され、様々な研究開発が行われてきた。しかし、

生体分子の活性が長期間維持された状態での部位特異的な修飾法や固定化については、その方法が 未だ十分に確立されておらず、固定化生体分子の産業応用を加速することを阻んでいる。これらの 理由から、担体に固定化された生体分子が活性を低下させることなく機能を発現し、高選択性や高 感度を示す次世代型の生体分子固定化法の開発が急務とされている。メソポーラスシリカ (MPS) を 始めとする無機メソ多孔材料は、均一で規則的なメソスケール (直径 2~50 nm) の細孔と 1000 m

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/g 以上の高い比表面積を持つユニークな無機材料である。また、シリカ表面にシラノール基 (Si-OH) が 多量に存在するため、表面に有機基を導入し、吸脱着特性を制御することも容易である。これらの 材料特性を積極的に活用することによって、タンパク質等の構造安定化を確立し、その結果として、

タンパク質の反応効率や熱安定性などの大幅な向上が期待できる。そこで本研究では、タンパク質 (IgG 抗体、アビジン、コレステロールエステラーゼ) を未修飾及び有機鎖修飾化 MPS に固定化し、

固定化タンパク質の活性発現率の測定、溶媒及び熱に対する活性安定性の評価など詳細に検討した。

また近年、ある種の細胞は、足場の化学的および物理的性質によって、その接着性だけでなく、

形態や増殖分化活性に関して大きな影響を受けることが明らかとなってきた。このため、生体外の 細胞培養においても足場材料が重要な役割を担うことになる。特に、損傷した体の組織を再生させ るための再生医療の初期過程において、その接着や増殖・分化を制御するための有用な細胞足場材 の開発が求められている。そこで本研究では、足場材料の表面微細形状制御を通したアプローチに 着目した。具体的には、シリカ、ハイドロキシアパタイト (HAp)、アルミナを骨格とするナノ細孔 薄膜 (細孔径 100~1000 nm) をそれぞれ合成し、それらの薄膜上でマウス骨芽細胞様細胞を培養し、

細胞足場材料としての可能性を評価した。

以下にその要点を示す。

MPS に固定化された抗 IgG 抗体の吸着様式、活性発現率、溶媒及び熱安定性の評価を行った。抗 IgG 抗体固定化前後の MPS の細孔径と細孔体積の検討により、抗 IgG 抗体の MPS 細孔内部への吸着 が示唆された。細孔径の異なる MPS (細孔径 3.4~23.1 nm) に抗 IgG 抗体を固定化した場合、MCM-1 (細孔径 3.4 nm) 及び MCM-2 (細孔径 5.8 nm) が高い活性発現率を示した。抗 IgG 抗体のサイズは

Fab 領域が 9~11 nm、Fc 領域が 3~5 nm であることから、Fc 領域と同サイズの細孔径を有する MPS

粒子が固定化に最適なサイズと考えられた。更に、固定化抗 IgG 抗体のアセトニトリル及び熱性安 定性においては、巨大細孔径を有する MPS が高い安定性を示した。以上の結果から、 MPS 固定化抗 体の活性及び安定性は、MPS の細孔サイズ及び形状に大きく依存することが明らかとなった。これ らの知見は、安定した抗体カラムや免疫応答性担体への応用に期待される。

タンパク質や環境ホルモンなどを高感度に検出するバイオセンサーの開発を目的とし、MPS 固定 化アビジンのビオチン結合活性及び安定性の評価を行い、最適な固定化担体を決定した。まず細孔 径の異なる 5 種類の MPS 固定化アビジンのビオチン結合活性の評価を行った。結果、細孔径の小さ な MCM-1 (3.4 nm) 及び MCM-2 (5.8 nm) が高いビオチン結合活性 (~120 ng) を示し、巨大細孔径の SBA-2 (11.0 nm) 及び SBA-5 (45.0 nm) では低い活性 (~40 ng) にとどまった。この結果は、MCM シ

続紙 有■ 無□

おりた とおる

(2)

(様式6号-続紙) 「課程博士用」

氏 名

織田 透 ○

リーズでは、アビジンが細孔表面に固定化され、容易にビオチンと反応できる状態にあったためで あると考えられる。さらに、有機鎖修飾 MPS 固定化アビジンのビオチン結合活性を検討した。グリ シドキシプロピル基 (GP) 修飾 SBA-5 において、未修飾の場合 (40 ng biotin/10 µg avidin) と比較し て著しく結合活性が上昇した (120 ng biotin/10 µg avidin)。これは、 GP 基修飾により生じた MPS 表面 とアビジン間のスペースにより、容易に固定化アビジンがビオチンと反応できたためであると考え られる。これらの結果により、固定化アビジンの結合活性は、MPS の形状及び細孔径のみではなく、

有機鎖修飾の影響を大きく受けることが示された。これらの知見により、MPS-アビジン-ビオチ ン複合体のバイオセンサー応用への新たな可能性が示された。 MPS の細孔径・構造・表面状態が MPS 固定化タンパクの活性及び安定性に大きな影響を与えることが明らかになった。

次に、最適化されたコレステロールエステラーゼ (CE) 固定化担体を導き出し、環境ホルモン活 性を有する可能性があると報告されているフタル酸ジエステルの効率的な加水分解プロセスを構築 する事を試みた。具体的には、未修飾・有機鎖修飾 MPS に CE を固定化し、フタル酸ジエチルエス テルの加水分解活性の評価を行った。 SBA-4 (細孔径 23.1 nm) 固定化 CE のフタル酸ジエチルエステ ル加水分解活性は 73%であった (free CE の加水分解活性を 100%とした)。SBA-4 を n-デシル基で修 飾した場合、固定化 CE の加水分解活性は 83%まで上昇した。熱安定性においても n-デシル基修飾

SBA-4 において最も高い熱安定性が確認された (66%)。再利用性に関しては、 n-デシル基修飾 SBA-4

において 6 回繰り返し反応後に 63%の活性が示された。また、有機溶剤として n-ヘキサンを用いた 場合、加水分解活性が上昇した。CE の固定化においても、前述の結果と同様、最適な MPS に固定 化することにより、その熱及び溶媒安定性が上昇した。以上のような有機鎖修飾メソポーラスマテ リアルへの CE 固定化に関する知見は、フタル酸エステル類の加水分解及び異なる幅広い化学処理に 利用できると期待される。ナノレベルの構造及び表面状態の違いが、固定化タンパクの活性及び安 定性に大きく影響することが分かった。

そこで、シリカ、ハイドロキシアパタイト (HAp)、アルミナを骨格としたナノ細孔薄膜を作製し、

ナノ細孔の構造及び表面状態特性を利用した細胞培養支持体としての機能について評価を行った。

ナノ細孔シリカ薄膜上での細胞形態は、シリカ薄膜 (無細孔) と比較して細胞は細長く伸展してい た。細胞挙動については、 100、 300 及び 500 nm のナノ細孔シリカ薄膜上で細胞増殖が大きく抑制さ れる事が明らかとなった。次に、ナノ細孔 HAp 薄膜での細胞形態は、 HAp 薄膜 (無細孔) と比較し、

細胞の伸展がわずかに抑制されていた。一方、細胞増殖においては、HAp 薄膜とほぼ同等の高い増 殖性を確認した。この結果は、マウス骨芽細胞様細胞と HAp の親和性が高いため、細胞と薄膜の接 着性が増大したためであると考えられる。さらに、ナノ細孔アルミナ薄膜上で細胞培養を行った結 果、アルミナ薄膜 (無細孔) よりも細胞の増殖が抑制されていた。また、ナノ細孔アルミナ薄膜上で は、アクチンフィラメントの骨格の伸展が見られなかった。以上の結果より、細胞足場材料の表面 微細構造及び組成が、細胞の接着形態、細胞増殖及び接着タンパクの機能発現に影響を与えている ことが明らかとなった。

以上述べたように、本研究では、メソポーラスシリカへのタンパク質固定化とその安定性評価及 びナノ細孔薄膜上での細胞培養とその増殖及び形状評価を行った。これらの研究成果をもとに、バ イオ機能化されたメソポーラス材料及びナノ細孔薄膜が、今後、新規なバイオセンサーや環境分析、

生体材料へ適応されることを期待する。

おりた とおる

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