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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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全文

(1)

博 士 ( 歯 学 ) 磯 村 治 男

    学 位論 文 題名

゛ Bone metabolism and oxidative stress

1npOStmenopauSalratSWithironOVerload

  ( 閉 経 ラッ ト の鉄 負 荷 によ る 骨代 謝 と 酸化 的ストレ ス)

学位論文内容の要旨

緒諭

  骨粗鬆 症は、多 元的要因 により発 症する疾 患である が、最近、 酸化的ストレ ス との 関 連 性が 指 摘され ている。ROSは内因性 の酸素代 謝同様、 種カの環 境因 子によ り産生さ れる。そ して、加 齢変化や アテロー ム性動脈硬 化症、発癌、骨 粗鬆症 のような 多くの疾 病の原因 であると 考えられ ている。特 に、骨粗鬆症は 閉経後 の女性に とっても っとも重 大な加齢 に関係し た疾患のー っである。興味 深いこ とに、Polidonら は酸化的 ストレスの蓄積を原因とする骨粗鬆症が、比較 的若い 男性に発 症したこ とを報告 している 。また、 破骨細胞に より産生された ROSが 直 接骨 吸 収 に関 与 して い る こと も 立証 さ れ てい る 。更 に 、 骨芽 細 胞 が ROSに対 し 防 御す るGPxの よ う な抗 酸 化 因子 を 産生 すること 、また、 骨吸収に 関連す るTGF‑ロも産 生する事 が報告さ れている 。しかし ながら、ど のような機 構 でROSが 骨 組織 の 破壊を促 進し、骨 吸収を惹 起さ世る のか明ら かでない 。従 って、 著者らは 鉄添加食 により骨 に蓄積さ れた鉄イ オンが過酸 化水素存在下で OHラジカ ルを産生 するフェ ントン反 応に注目 して、乳 酸鉄投与に よる閉経ラッ トの酸 化的スト レスと骨 代謝の関 係を骨代 謝マーカ ー、酸化的 ストレスマーカ ー、サ イトカイ ンなどの 指標を用 いて研究 した。

実験方法

  実 験 動 物 と し て57週 令 のWisbr系閉 経 ラッ ト と7週 令Wisねr系 若年 メ ス ラ ット を 使用 し た 。2週間 普 通食 を 与 えた 後 、5%乳 酸鉄添加 飼料で28日 間飼育 し、尿、血液を採取し、gIutamioneperoxida蘭(GPx)活性、AIkalinephOSphaねSe 活性、TGF‐ロ、オステオカルシン、オステオポンチン、デオキシピリジノリン、

カルシウム、リン、ッ‐Carbox閃lu切miCaCid(GIa)、8・OHdGについて定量分析 した。

結果

(2)

  閉経ラッ トは血清ア ルカリフ オスファ ターゼ、 オステオポンチン共に若年メス ラットに 比べ有意に 減少した(Pく0.01)。対 照的に、 血清カルシウム、リン濃度 は若 年 メスラッ ト、閉経 ラット共 に同じ値 を示した 。一方、4週 間乳酸鉄 添加食 グル ー プの 血 清 アル カ リフ オ ス ファ ターゼ 活性は変 化しなかっ たが、オ ステオ ポンチン は、コント ロール食 グループに比べ、有意に増加した(Pく0.01)。尿中 デオ キ シピリジ ノリン、 カルシウ ム、リン 量は同じ 値であった が、Glaの排 泄は 閉経 ラ ット に 比 べ若 年 メス ラ ッ トの 方が有 意に高か った。乳酸 鉄添加食 グルー プ は コ ン ト ロ ー ル 食 に比 べ 、 デオ キ シピ リ ジ ノリ ン で2.7倍 、 カル シ ウム で2 倍と 有 意に 増 加 した 。 対照 的 に りン 排泄量 はコント ロール食に 比べ有意 に減少 した 。 しかし、Glaは変化し なかった 。重要な ことに、 血清鉄量と 尿中デオ キシ ピジ リ ノリ ン 排 泄量 は 尿中 カ ル シウ ム量同 様に、有 意な正の相 関が見ら れた。

一 方 、 尿 中8‑OHdG及 び 、 血 清GPxの よ う な 酸 化 的 ス トレ ス に 対す る 生 物学 的 マー カ ーは 、 乳 酸鉄 添 加食 は コ ント ロ ー ル食 に 比べ て 、 血清GPx活性を有 意に 減少 さ せた が 、8‑OHdGは 増加 さ せ た(Pく0.01) 。興味深 いことに 、若年メス ラ ッ ト は 閉 経 ラ ッ ト に 比べ てGPx活性 が 有意 に 高 かっ た(P<O.01) 。 尚 、8‑OHdG は 若 年 メ ス ラ ッ ト 、 閉経 ラ ッ トと も 同じ 値 で あっ た 。酸 化 的 スト レ スと 血 清 TGF‑ロ量 と の関 係 に つい て は、 乳 酸鉄 添加食は コントロ ール食に比 べて、閉 経 ラッ ト の血 清TGF‑ロ の濃 度 を増 加 させ た。そし て、乳酸 鉄添加食は 、コント ロ ール 食 に比 べ 血 清鉄 濃 度で1.8倍 、尿 中 鉄 濃度 で30倍 に 増加 さ せた 。興味あ る こ と に 、 血 清TGF‑ロ と 血 清 及 び 尿 中 鉄 濃 度 の 間 に 正 の 相 関 が 認 め ら れ た   (r=0.836,Pく0.001 in serum; r=0.777,Pく0.002 in urine)。また、TGF‑ロは血清,

GPx活性と負の相関を示した(r=0.674,Pく0.003)。

考 察

  著 者ら は この 研 究 でROS、 酸化 的ス トレス、 骨吸収マ ーカーが それぞれ 骨粗 鬆 症 に関連す ることを明 らかにし た。すな わち、閉 経ラット における 乳酸鉄添 加 食 は、コン トロール食 に比べ、 骨吸収マ ーカーで ある尿中 デオキシ ピリジノ リ ン 量、カル シウム量を 有意に増 加させた 。また、 血清、尿 中鉄濃度 の増加を 反 映 し て、 血 清GPx活 性 を有 意 に減 少させ、 尿中8‑OHdGを増 加させた 。事実、

Dreherら は 骨 を と り ま く 微 小 環 境 や 破 骨 細 胞 で産 生 さ れるROSに対 し 、GPx を 介 す る抗 酸 化防 御 の 重要 性 を指 摘して いる。彼 らは、GPxの 欠損、も しくは 減 少 が骨芽細 胞の機能を 低下させ 、その結 果、骨粗 鬆症のよ うな骨疾 患の発症 を 起 こ すと 主 張し た 。 興味 あ るこ とに、 最近、血 漿GPx活性が 閉経後骨 粗鬆症 の 女性で有 意に低下 していることも報告されている。従って、著者らの結果は、

細 胞、特に 骨をとり まく微小環 境に取り 込まれた 鉄が、フェントン反応系でROS を 発 生 させ 、 その 結 果 、NF‑kB転 写 因 子を 介 し てGPx活 性を 低 下させ ることを 示 唆 している 。一方、乳 酸鉄添加 食は、有 意にTGF‑ロの 増加を誘 導した。 その 結 果 、RANKLを介 し た 破骨 細 胞形 成を 増加させ たものと 考えられ る。さら に、

    ー707―

(3)

著者らは、鉄添加食がオステオポンチンを有意に増加させることを示すことが できた。オステオポンチンに関しては、最近、RANK/RANKL 経路を介して破骨 細胞による骨吸収に関連することが示唆されている。従って、鉄負荷によるオ ステオポンチン量の増加は骨吸収の亢進を反映しているものと思われる。一般 に、ROS は老化や骨粗鬆症の原因であり、また、老化にともなうエストロゲン の機能低下は、骨吸収に関連していることが明らかにされている。それゆえ、

著者らは、酸化的ストレスと骨吸収の関連性を若年メスラットと閉経ラットで 比較した。予測したように、閉経ラットは、乳酸鉄添加ラットで見られたよう に、若年メスラットに比べてGPx 活性の低下が認められた。しかしながら、

8‑OHdG を除いて、デオキシピリジノリン、カルシウムの尿排泄量にっいては 若年メスラット、閉経ラット間において違いを観察することはできなかった。

一方、閉経ラットは骨芽細胞活性を反映してアルカリフオスファターゼ活性同 様、オステオポンチン、オステオカルシン量が一貫して低い値を示した。これ は、骨代謝、特に骨形成の違いによるものと考えられる。尿中8‑OHdG の増加 に関しては、食餌由来、細胞死、骨代謝によるDNA 修復、何れによるものかは 不明である。最近、Basu らは食事により影響を受けない酸化的ストレスのマー カーのーっである尿中イソプロスタンの排泄が、女性の骨密度と負の相関があ ると報告している。それ故に、骨吸収における鉄の影響の特異性と共に、これ らの点について更に研究する必要がある。

結語

   骨代謝マーカーをめぐってWisbr 系閉経ラットに乳酸鉄を負荷し、酸化的ス

トレスと骨代謝の関係にっいて解析した。その結果、乳酸鉄負荷によるFenton

反応を介したROS は骨吸収を誘導し、骨粗鬆症の発症、進展に関連することが

明らかになった。

(4)

学位論文審査の要旨

     学位論文題名

  Bone metabolism and oxidative stress in postmenopausal rats with iron overload    (閉経ラットの鉄負荷による骨代謝と酸化的ストレス)

  活性酸素ラジカ ル(reactive oxygen species: ROS)には,スーパーオキシド(02.),

過 酸 化 水 素(H202), ヒ ド ロ キ シ ラ ジ カ ル(OH)な ど が あ り , 生 理 活 性 物 質 とし て 生 体 の 機 能 に さ ま ざ ま な 影 響 を 与 え る こ と が 知 ら れ て い る . ま た ,ROSは 種 々 の 疾 患 の 病 態 に 関 与 す る と の 報 告 も あ る . 骨 に お い て も , 酸 化 的 ス ト レ ス が 骨 粗 鬆 症 様 の 症 状 を 呈 し た と の 報 告 も あ る が ,ROSと 骨 代 謝 の 関 係 に つ い て そ の 詳 細 は 明 ら か で は な い . そ こ で 本 研 究 で は , ラ ッ ト を 用 い 乳 酸 鉄 投 与 で 生 じ た フ ェ ン ト イ ン 反 応 に よ るROS産 生 が , 骨 代 謝 に ど の よ う な 影 響 を 及 ば す か を 調 べ , 活性酸素と骨代謝の関係を明らかにすることを目的とした,

  本 研 究 で は ,57週 齢 な ら び に7週 齢 のWistar系 ラ ッ ト を 使 用 し た .57週 齢 の ラ ッ ト に2週 間 普 通 食 を 与 え た 後 ,5% 乳 酸 鉄 添 加 飼 料 を 用 い28日 間 飼 育 し た ・ そ れ ら ラ ッ ト よ り 尿 な ら ぴ に 血 液 を 採 取 し 試 料 と し て 用 い た . 測 定 は , 尿 中 の デ オ キ シ ピ リ ジ ノ リ ン , オ ス テ オ カ ル シ ン , カ ル シ ウ ム , リ ン , 鉄 , Y_carboxyglutamicacid(Gla)ならびに8‐hydroXy‐2 ‐deoxyguanosine(8 ̄OHdG)につ、

い て 行 っ た . ま た , 血 清 中 の ア ル カ リ フ オ ス ファ タ ーゼ (ALP) 活性 ,オ ステ オ カ ル シ ン , オ ス テ オ ポ ン チ ン , カ ル シ ウ ム , リ ン ,TGF‐p1量 な ら び にglutatione peroxidase(Gpx)活性にっいて定量した.

  57週 齢 と7週 齢 の ラ ッ ト を 比 較 し た と こ ろ , 血 清 中 のALP, オ ス テ オ ポ ン チ ン , オ ス テ オ カ ル シ ン な ら び に 尿 中 のGlaは57週 齢 の ラ ッ ト で は 低 い 値 を 示 し た が , 血 中 の カ ル シ ウ ム , リ ン の 量 な ら び に 尿 中 の デ オ キ シ ピ リ ジ ノ リ ン , カ ル シ ウ ム , リ ン ,8.OHdGの 量 に 有 意 な 差 は 認 め ら れ な か っ た .57週 齢 の ラ ッ ト に5% 乳 酸 鉄 を 負 荷 し た と こ ろ , コ ン ト ロ ー ル 食 の 場 合 と 比 べ て 体 重 が 有 意 に 減 少 し た . 血 清 中 の オ ス テ オ カ ル シ ン , オ ス テ オ ポ ン チ ン ,TGF・p1量 な ら ぴ に 尿 中 の デ オ キ シ ピ リ ジ ノ リ ン , カ ル シ ウ ム ,8−OHdG量 は ,5% 乳 酸 鉄 の 負 荷 に よ り 増 加 し た , 他 方 , 血 清 中 な ら び に 尿 中 の り ン 量 , 血 清 中 の ( ゆx活 性 に つ い て は ,5% 乳 酸 鉄 の 負 荷 に よ り 減 少 し た . 血 清 中 のALP活 性 , カ ル シ ウ ム 量 な ら び に 尿 中 のGlaの 量 は , 乳 酸 鉄 添 加 飼 料 に よ る 変 化 は 認 め ら れ な か っ た .

709 ‑

人 明

正 邦

村 木

田 鈴

授 授

   

   

教 教

査 査

主 副

(5)

   乳酸鉄負荷により,変化の認められた尿中のデオキシピリジノリンならびに カルシウム量にっいては,それらの量と血清中の鉄濃度とのあいだに有意な正 の相関が認められた.また,血清中のTGF‑pl 量と血清もしくは尿中の鉄濃度と のあいだに,有意な正の相関を認めた.一方,血清中のTGF‑pi 量と血清中の Gpx 活性のあいだには負の相関を認めた.

   以上の結果より,以下のことが考えられた.まず,57 週齢のラットと7 週齢 のラットにおいて違いの認められた血清中のALP ,オステオポンチン,オステ オカルシンならびに尿中のGla にっいては,加齢もしくは閉経による骨代謝の 全体的なターンオーバーの低下を意味するものと考えられた.次に,乳酸鉄を 添加した飼料によって,尿中のデオキシピリジノリンならびにカルシウム量が 増加したことは,血中の鉄濃度が増加したことによっておそらく骨組織におい てフェントイン反応がさかんに行われるようになり,局所にROS が産生され骨 吸収が増大し,これら尿中の骨代謝の指標となる値が変化したものと考えられ た.また,血清中のオステオカルシンならびにオステオポンチン量の変化はROS によって骨組織に生じた変化により,もたらされたものと推測された.血清中 のTGF‑pi 量と血清もしくは尿中の鉄濃度とのあいだの正の相関から,TGF‑pi を産生する細胞におけるTGF‑pi の産生がROS によって増大したことが考えら れたが,いかなる細胞に由来するのか等は明らかではない.このTGF‑pi の増加 が骨代謝に影響を及ばした可能性も推測された.乳酸鉄負荷による抗酸化防御 に機能 する Gpx の血 清中 の減 少は, おそ らく Gpx 産生細胞においてROS もし くはROS による2 次的な原因によって, Gpx 産生が低下したものと考えられた.

尿中の8‑OHdG の増加が細胞死もしくは DNA 修復等いかなる機構によっておこ ったのかは,不明であった.

   以上の論述に引き続き,各審査委員より提出論文の内容にっいて口頭により 質疑が行われた.主な質疑項目は,それぞれの測定項目に関する測定の意義,

乳酸鉄の他の臓器への影響,血清採集の方法,血中TGF‑pl の由来,Gpx による 抗酸化防御の意義,ラットの閉経の時期等であった。また,本研究の背景とな る活性酸素についてなど多岐にわたる関連事項の試問も行った.学位申請者か らは,いずれの質問に対しても適切かつ明快な回答が得られた.更に,今後の 研究の方向性についても明確な将来の展望が示された.

   本論文は,57 週齢の閉経後ラットにおける乳酸鉄負荷による骨代謝マーカー

の変動を明らかにした点が評価され,この業績は,今後の研究の発展に大きく

寄与するものと考えられた.加えて,試問の結果より学位申請者は十分な学識

を有していることが認められた.従って,学位申請者は,博士(歯学)の学位

を授与されるにふさわしいと認められた.

参照

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