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博士(工学)沈 賢徳 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(工学)沈   賢徳 学位論文題名

セルロースを基盤とした新しい機能性材料の開発 学位論文内容の要旨

  セル口ースはグルコースを繰り返し単位とした直鎖状ポリマーであり、高い親水性 を示すが水やその他の溶媒に難溶性である。そこで、セルロースはそのままで用いら れる他に、適当な溶媒に可溶性な誘導体として用いられている。例えば、硫酸セルロ ースや硝酸セルロースなど無機酸から作られたセル口ース誘導体やヌチルセルロー ス、ヒドロキシエチルセルロース、セル口ースカルバメー卜、およびカルボキシメチ ルセルロース(CMC)など有機セル口ース誘導体などが数多く合成されている。これ らの誘導体はいずれも適当な溶媒に可溶性であり、土木、食品、化粧品、医薬など様々 な分野で広く使われており、さらに、セルロースのフェニルカルバヌー卜誘導体は近 年、高性能な光学分割材料として分析から工業的な分離にも使われている。この様に、

セルロースの構造的な特性や化学的・物理的・生化学的な性質を機能化するためには、

セルロース誘導体の適当な溶媒への溶解性の付与が必要である。そこで、本研究では セルロースの光学活性な構造や生体適合性に着目し、新しいセル口ース機能性材料の 開発を行った。

  そこで、本論文ではL‐アミノ酸から誘導したイソシアナートとセル口ースの反応に より新規なセルロースカーパメート誘導体を合成し、カーバヌートの置換度による 各種溶媒への溶解性の制御やラセミ化合物の光学分割能を明らかにした。また、CMC のスクシンイミドェステル(CMC‑Su)のアミノ基に対する高い反応性を用い、ポリアリ ルアミンやキトサンと架橋させてCMCを基盤とした生体適合性ハイドロゲルの合成 を行った。さらに、CMC‑Suとアリルアミンから調製したアリル化セルロースは紫外 線照射によルゲルが生成し、得られたゲルの架橋率と吸水率などを明らかにした。

本論文は5章から構成されている。

  第1章ではセルロース及びその誘導体の概況について述べるとともに、光学分割材 料やゲルの合成など本研究の目的についてまとめた。

  第2章では、LI口イシン、L‐フェニルアラニン、L一アスパラギン酸などのアミノ酸 由来イソシアナートを合成し、セルロースのカルバメート化を行った。置換基の導入 率(置換度)を制御することにより、セルロースカルバメートの性質が大きく変化 することをねらい、イソシアネートの添加量と生成物の置換度の関係を調べた。セル ロースとL‐ロイシンイソシアネートと反応させたとき、セルロースの繰り返し単位 あたルイソシアネートを1.5当量加えると置換度は0.95であったのに対し、2.5当量

‑ 1010

(2)

加 える と置 換度 は2.1、さ らに 、4当 量を 加え ると 置換 度が3になった。また、アミノ 酸の構造もカルパメート化の置換度に影響し、反応性はL‐口イシン‑L‐フェニルアラ ニ ン>L‑アス バラ ギン 酸の 順で あっ た。 各種 溶媒に 対す る溶解性は、脂肪族カルバメ ー ト体 の方 が芳 香族カ ルパ ヌート体より高かった。以上のことから、イソシアネー卜 の添加量の調整により置換基の導入率が制御可能であることが明らかになった。また、

得 ら れ た セ ル 口 ー ス カ ル バ メ ー ト 誘 導体 をHPLCの キ ラ ル 固 定 相 に用 い、 様々 なラ セ ミ体 の光 学分 割能に つい て検 討を 行っ た。 その 結果 、セルロースL‐口イシンカル バメート誘導体はtr 恥‐スチルベンオキシド、トレーガー塩基、フラバノン、2・フェ ニルシクロヘキサノン、および1,2,2,2‐トリフェニル工夕ノールに対して部分分割能 を示した。

  第3章で は、 セル 口ース 誘導 体を 用い たハ イド ロゲ ルの 合成 を試 みた。まず、CMC を 直接 エチ レンジアミン二塩化物と反応させることでゲル化反応を行った結果、ゲル 化 は 起 こ る も の の流 動性 を持 った ゲル が得 られ た。 そこ で、CMCの カル ボニ ル基 の 反 応 性 を 高 め る た め に 、CMCとN‑ヒ ド 口 キシ ス ク シ ン イ ミ ド か らCMCのス ク シ ン イ ミド エス テル(CMC‑Su)の合 成を 行っ た。 スク シンイ ミド のエ ステ ル化度はN‑ヒド 口 キシ スク シン イミ ドの 添加 量に よっ て制 御可 能であ った 。次 に、CMCSuとプ口バ ン ジア ミン やへキサンジアミンと反応させたが、いずれも流動性の極めて高いゲルし か 得 ら れ な か っ た。 そこ で、CMC‑Suと キト サン 、ポ リア リル アミン(PAA)や ポリ ビ ニ ルア ルコ ール とポ リピ ニル アミ ンの 共重 合体(PVA‑PVAm)など のポ リマー架橋剤と 反 応さ せた 。架橋剤の添加量を変化させることにより、ゲルの形成時間や生成したゲ ル の性 状が 異な った 。CMC‑Suとキ トサ ンと の反 応では 、10分ぐ らい の時間で半透明 な ハ イ ド ロ ゲ ル が 得 ら れ 、CMC‑SuとPAAと の 反 応で は、PAA水 溶液(10wt%) をIml 加 え る と 瞬 時 に 透 明 な ゲ ル が 得 ら れ た 。 ま た、CMC‑SuとPVA‑PVAmとの 反応 でも 透 明 なハ イド 口ゲ ルが 得ら れた 。

  第4章で は、CMC‑Suと アリ ルア ミンを反応させることでアリル基の導入を行った。

得ら れたN‑アリルカルボキシメチルセル口ース(Ally‐CMC)に紫外線を照射すると、

架橋 反応により溶媒に不溶なゲルが得られた。ゲルの生成率やアリル基の反応率、生 成し たゲ ルの 含水 率は 紫外 線の照 射時 間を 増加 させ るに つれ ていずれも上昇する傾 向が 見ら れた 。例 えば 、A11y1‐CMCに紫外線を2時間照射した場合:ゲル化率は55% であ った のに 対し 、72時間 照射し たと きは99% に達 した 。ま た、アリル基の反応率 は3.2%から48%に増加し、ゲルの含水率も240%から365%まで上昇した。これらの ハイ ドロゲルは生体適合性が予想され、セルロースを基盤とした新しい機能性材料と して 期待 され る。

  第5章で は、 セル ロー ス誘導体の合成、光学分割能、ハイド口ゲルの合成について まと めた 。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

セルロースを基盤とした新しい機能性材料の開発

  セルロースはグル コースを繰り返し単位とした直鎖状ポリマーであり、高 い親水性を 示 すが水やその他の 溶媒に難溶性である。そのため、硫酸セルロースや硝酸 セルロース な ど無機酸から作ら れたセルロース誘導体や、あるいは、メチルセルロース 、ヒドロキ シ ェチ ルセ ル口 ース 、セ ルロ ース カ ルパ メー ト、 およ びカルボキシメチル セルロース (CMC)な ど の 有 機 セ ル ロ ー ス 誘 導 体 な ど 、 適 当 な 溶 媒 に 可溶 な誘 導体 がこ れま で数 多 く合成され、土木 、食品、化粧品、医薬など様々な分野で広く応用される に至ってい る 。近年においては 、セル口ースのフェニルカルパメート誘導体の合成と光 学分割材料 へ の応用が行われ、 キラル化合物の分析から工業的な分離において必要不可 欠な役割を 果 たしている。さら に、セル口ースなど再生可能な資源を基盤とする材料合 成は最近ま す ます重要視されて きている。以上より、新規セルロース誘導体を合成し、 場合によっ てはさらなる化学 反応や修飾を行い、セルロース本来の構造的な特性や化学的・物理的・

生 化学的な性質を備 える機能性材料を開発する取り組みは、現在もなお重要 な課題とさ れている。  

  本論文は、アミ ノ酸から誘導した種々のイソシアナートとセル口ースとの反応により、

ア ミノ酸カーパメー ト置換型の新規なセルロース誘導体の合成を行い、置換 度による溶 解 性の制御や、光学 分割材料への応用について検討した。また、アミノ基に 対して非常 に 高 い 反 応 性 を 有 す るCMCの ス ク シ ン イ ミ ド ェ ス テ ル(CMC‑Su)の 合 成 、 お よ び CMC‑Suと ポ リ ア ミ ン 類 と の 水中 で の架 橋反 応に よる 生体 適合 性ハ イド 口ゲ ルの 調整 に つい て詳 細に 調べ た。 さら に、CMC‑Suとア リル アミ ンからアリル化セル ロースを調 整 し 、 紫 外 線 を 照 射 す る こ と で 生 成 す る ハ イ ド 口 ゲ ル の 開 発 を 行 っ た 。     本 論 文 の 評 価 で き る 成 果 な ど に つ い て は 以 下 に 要 約 さ れ る 。

1)L‐ロイシン、L‐フ工二ルアラニン、L_アスパラギン酸などのアミノ酸由来イソシ     ー1012

次 樹

一 毅

豊 恒

知 川

口 熊

覚 市

田 大

授 授

授 授

教 教

教 教

査 査

査 査

主 副

副 副

(4)

アナートを合成し、セルロースのカルバ ヌート化を行った。イソシアネートの添加量の 調整により置換基の導入率が制御可能で あった。また、得られたカルパメートセルロー ス誘 導体 をHPLCの キラ ル 固定 相に 用い 、様 々なラセミ体に対する光学分割能 について 明らかにした。

  2CMCの 反 応 性 を高 める ため のス クシ ンイ ミド 基の 導入 は、N‑ヒ ド ロキ シス クシ ンイミドの添加量により制御することが可能であった 。また、セルロース誘導体と低分 子架橋剤の反応では流動性を持ったゲルしか得られな いのに対し、キトサンやポリアリ ルアミンなどのポリアミンと反応することにより、生 体適合性医療材料への応用が期待 さ れ る ハ イ ド ロ ゲ ル が 生 成 す る こ と を 見 出 し た 。CMC‑SuPAAと の 反 応 では 、PAA 水溶 液(10 wt%) をIml加えると瞬時 に透明なゲルが得られた。また、架橋剤の添加量 に よ ル ゲ ル の 形 成 時 間 や 生 成 し た ゲ ル の 性 状 を 制 御 で き る こ と を 明 ら か にし た。

  3)ア リル 基を 導入したセルロース誘導体を新規に合成し、こ れに紫外線照射を施す ことによルハ イドロゲルを合成した。置換度の異なるセルロース誘導 体を用いて実験を 行い、照射時 間によるゲル化率、アリル基の反応率、ハイドロゲルの 含水率との相関に つ いて 詳細 に調 ぺた 。例 え ば、Allyl‑CMCに 紫外線を2時間照射 した場合、ゲル化率は 55%で あっ たの に対 し、72時間 照射 した ときは99%に達した。 また、アリル基の反応 率 は3.2% か ら48% に 増 加 し 、 ゲ ル の 含 水 率 も240% か ら365% ま で 上 昇 し た 。

  以上を要する に、筆者はアミノ酸部位を有する新規セル口ース誘導体 の合成および光 学 分割材料への 応用について検討し、さらに、スクシンイミド基やアリ ル基を導入した セルロース誘 導体による新しいハイドロゲル材料の調整法を確立した。これらの結果は、

高 分子化学のみ ならず、再生可能な資源を基盤とした材料開発といった 昨今の社会のニ ーズに応える ところ大なるものがある。

  よって筆者は 、北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格ある ものと認める。

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参照

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