5. T 細胞 TCR( 抗原受容体 ) を発現 抗原断片と MHC の複合体を認識 機能的に以下の 3 つに分類できる ヘルパー T 細胞免疫の応答の調節 免疫機構の制御 (Th1 細胞,Th2 細胞,Th17 細胞など ) 細胞傷害性 ( キラー )T 細胞標的細胞を傷害制御性 T 細胞 T 細

全文

(1)

問 1.免疫に関する細胞と臓器の種類、役割について説明しなさい。

解答例) <免疫に関わる細胞> 免疫=自然免疫 :好酸球、好中球、肥満細胞、マクロファージ、樹状細胞、NK 細胞 獲得免疫 :B 細胞、T 細胞、樹状細胞 主に血液系の細胞、全て白血球 ・骨髄球系前駆細胞から分化→好酸球、好中球、好塩基球、マクロファージ、樹状細胞 ・リンパ球系前駆細胞から分化→樹状細胞、B 細胞、T 細胞、NK 細胞 1. マクロファージ ■細菌の貪食、消化作用 ■T 細胞への抗原提示 ■サイトカインなどの分泌 2. 樹状細胞 ■末梢で抗原(病原体など)を取り込み、所属リンパ節へ移行 ■主に、TLR(病原体特有の分子と結合する受容体)とオプソニン(補体成分や抗体など、病原体の侵 入により宿主が産生する分子)受容体の 2 つによって活性化。 ■リンパ節に向かって遊走 ■ナイーブ(これまでに抗原に遭遇しなかった)T 細胞への抗原提示 ■サイトカイン分泌 *マクロファージと樹状細胞の違い マクロファージ:末梢で病原体などの異物を認識、貪食して分解 樹状細胞:末梢で病原体などの異物を認識、取り込んで分解 リンパ管を経由して所属リンパ節へ移行。 3. NK 細胞(ナチュラルキラー細胞) ■生体内の異常細胞を傷害 ・正常細胞には NK 細胞を活性化・抑制する 2 つの刺激分子が存在 (それぞれの分子の受容体を KAR;活性化受容体、KIR;抑制性受容体という。) ・異常細胞では抑制性の刺激物質が消失し活性化のみが起こるため、NK 細胞は攻撃を開始 <攻撃の方法>・パーフォリン放出→標的細胞の膜に穴が開く→グランザイムA侵入→アポトーシス ・Fas リガンドを有す→標的細胞の Fas 受容体に結合→アポトーシスを誘起 ■サイトカイン、キモカイン分泌 ・IFNγ などのサイトカインを産生することにより細胞性免疫を増強し、免疫応答の制御も行う。 4. B 細胞 ■10 億種類以上の抗原に対応し得る、特異性の異なる B 細胞のクローンが存在 ■液性免疫に関与する。 ①抗原受容体により抗原を認識 ②抗原刺激により抗体を分泌(形質細胞へ分化) ③取り込んだ抗原を T 細胞に提示 B 細胞は抗原受容体を介して抗原を細胞内に取り込んで分 解し、その抗原断片を MHC 分子に結合させて細胞表面に発 現することで T 細胞に抗原提示する。

(2)

5. T 細胞 ■TCR(抗原受容体)を発現→抗原断片と MHC の複合体を認識 ■機能的に以下の 3 つに分類できる。 ヘルパーT 細胞 免疫の応答の調節、免疫機構の制御(Th1 細胞,Th2 細胞,Th17 細胞など) 細胞傷害性(キラー)T 細胞 標的細胞を傷害 制御性 T 細胞 T 細胞の増殖を抑制 6. 顆粒球(多核白血球) ■好酸球、好中球(約 95%)、好塩基球、肥満細胞に分類される。 ■酵素などを含む顆粒が細胞質内に存在 好酸球 ・強い殺菌作用 ・寄生虫感染防御 好中球 ・炎症反応において貪食や殺菌作用 好塩基球、 肥満細胞 ・炎症反応関連因子(ヒスタミンなど)分泌 ・アレルギー反応に関与 <免疫に関する臓器> 一次(中枢)リンパ器官:胸腺・骨髄 二次(末梢)リンパ器官:リンパ節、脾臓、粘膜付属リンパ組織 1. 胸腺 ■T リンパ球の成熟・分化が行われる 2. 骨髄 ■すべての血球系(赤血球、白血球、マクロファージなど)の細胞を作る。 ■B 細胞も増殖・分化 3. リンパ節 ■局所的な生体防御 皮質 ・濾胞(B細胞依存性領域)が見られる。(B細胞が多く存在) ・一次リンパ濾胞…小型B細胞が存在 ↓抗原刺激 二次リンパ濾胞(胚中心をもつ濾胞)…B細胞が分裂増殖 傍皮質 ・高内皮静脈(血管からリンパ節へリンパ球が潜りぬける内皮構造を持つ静脈)が存在。 ・T細胞が多いのでT細胞依存性領域ともよばれる。 髄質 ・抗体産生細胞(形質細胞)が多く存在。 4. 脾臓 ■静脈内に侵入した抗原を集積、濃縮することで全身的な生体防御に関与。 赤脾髄 赤脾髄 マクロファージが古くなった赤血球を貪食 白脾髄 胚中心 B細胞が多く存在 動脈周囲リンパ鞘 T細胞が多く存在 5. 粘膜付属リンパ組織 ■被膜を持たないリンパ組織で、腸管、気道、泌尿器の粘膜に存在。 腸管付属リンパ節(GALT) (例)パイエル板、虫垂 気管支付属リンパ節(BALT) (例)扁桃

(3)

問2.抗体の構造と機能について説明しなさい。 解答例) 【抗体】 ◇抗原と特異的に結合して免疫応答をするタンパク分子 ・体液(特に血清中)に存在 ・免疫グロブリン(Ig)とも呼ばれる。 【構造】 ・重い H 鎖と軽い L 鎖の 2 種類を 2 本ずつ、計 4 本のポリペプチド鎖 ・L鎖はκ 鎖か λ 鎖のどちらかのタイプである。 ・S-S 結合による Y 字型構造。 ・各々のポリペプチド鎖はドメイン構造をしている。 ・N 末端側の第 1 ドメイン→可変領域(V 領域) ・C 末端側→定常領域、抗体による差があまり無い 可変領域 定常領域 L鎖 VL領域 CL領域 H鎖 VH領域 CH領域 ・H 鎖の C 領域は 3 つの C 領域ドメイン(CH1,CH2,CH3)から成る *超可変領域(CDR) モノマーIgG の模式図 V 領域の中でも特に抗原との結合に関わる部分のアミノ 酸配列。変異が多い 【Fab と Fc】 IgG をパパインで切断→Fab 部分、Fc 部分 Fab 部分;抗原との特異的な結合を担う Fc 部分;結合した抗原や異物を生体内外で安全に処 理するために必要である。 【種類】 ■免疫グロブリンは血清中の量の多い順に IgG、IgA、IgM、IgD、IgE の 5 つのクラスに分かれる。 ■この違いは C 領域の構造と機能の違いによる。 ■V 領域はどの C 領域とともに存在することができ、抗原に対する特異性は V 領域の構造による。 IgG ・2 次免疫応答で最も有効な抗体として機能する。 ・補体結合性をもつ。 ・Fc 受容体を介して細胞に結合し、刺激を与える。 ・胎盤通過性がある。←新生児の免疫反応に関わる。 IgA ・分泌型 IgG は J 鎖と分泌成分と結合して多量体を形成する。 ・粘膜免疫に関わる。 ・食餌性蛋白、血液型物質、常在菌などに対する自然抗体である。

(4)

IgM ・J 鎖と S-S 結合してマクログロブリン(5 量体)を形成する。 ・補体結合性をもつ。 ・細菌凝集、溶血、殺菌を行う。 ・B 細胞表面抗原受容体として機能する。 IgD ・機能は不明 ・血中濃度は非常に低い。 ・B 細胞表面抗原受容体として機能する。 IgE ・アレルギー反応の原因になる。 ・肥満細胞や好塩基球の Fc 受容体に結合し、脱顆粒を起こさせる。

(5)

問3.抗原及び抗原抗体反応について説明しなさい。

解答例) 【抗原】 ◇T 細胞、B 細胞の抗原受容体に結合して活性化、あるいは抑制性の刺激を与える物質。 <性質> ■タンパクや糖などの化学的性質を持つ。 ・蛋白質(特にベンゼン環を有するアミノ酸(チロシンなど)を多く含む蛋白質)は強い抗原性を持つ。 ・多糖類は蛋白質に比べて抗原性が弱い。 ・脂質や核酸は蛋白質と結合することで抗原となる。 ・分子量が大きいほど抗原性が強い ・免疫応答を誘導するのに最適な量がある。 ・構造が複雑であるほど抗原性が強い。 ・非自己である。→自己の構成成分に対して免疫応答は起こらない! <能力> (試験管内)抗原性 試験管の中で抗体と結合する能力 免疫原性 生体に投与した時に免疫反応を起こす能力 <完全抗原と不完全抗原> 完全抗原 試験管内抗原性と免疫原性の両方の性質を持つ抗原 不完全抗原 試験管内抗原性を有するが免疫原性がない抗原 ・不完全抗原の例→ハプテン 抗原性の強い分子(キャリア)が、単独では免疫原性がなく抗原性はある分子(ハプテン)と結合 →生体に投与されると特異抗体が作られる。 <エピトープ(抗原決定基)> ・抗原の構造のうち抗体に認識される部位のこと。(抗原の構造の一部が抗体に認識される!) 連続エピトープ 抗原蛋白の一次配列が連続なアミノ酸から形成される 不連続エピトープ 抗原蛋白の一次配列が不連続なアミノ酸から形成される

(6)

【抗原抗体反応】 ◇抗原と抗体のあいだに起こる結合およびそれにより引き起こされる生体反応 <結合> ・抗原と抗体の結合を支配する要素:物理的相補性や化学結合力(水素結合,イオン結合など) ・結合価:抗体分子の抗原結合部位の数(例)IgG→2価、IgM→10 価 ・共同性:抗原結合部位の数が増えると、結合力がその数の数倍以上に増加する性質。 ・親和力:抗原エピトープと抗体 1 分子の結合の強さ。 ・結合力:抗原と抗体の全体としての結合の強さ。 cf:結合親和力の測定方法→平衡透析法 <交差反応> ◇エピトープの構造がごくわずかに異なっていても、起こることがある抗原抗体反応のこと。 (普通はエピトープの 1 カ所のアミノ酸が違っても結合しなくなるのに) ・よく似た抗原上の類似エピトープの場合や異なった抗原上に同じエピトープがある場合におこる。 (コア講義 p86 図 10-2 参照) <抗原抗体反応の定量解析> 抗原抗体反応には、 ①沈降反応:可溶性抗原と抗体との反応→肉眼で見える沈降物ができる ②凝集反応:粒子状抗原と抗体との反応→肉眼で見える凝集物ができる がある。 抗原抗体反応による沈降物の量は抗原量が増えるにつれて増加するが、一定量以上になると減少する。 (↑一定量以上になると反応物量が一定になる,いわゆるふつうの化学反応とは違う!) これをグラフにした「コア講義 p86 図 10-3」のような曲線を沈降曲線という。 (沈降物量が最も多い領域を等量比域、それ以外をそれぞれ抗体過剰域、抗原過剰域という。) この特性は格子説により説明される。 (下図とコア講義p87 図 10-4 参照) <抗原抗体反応の利用> ■沈降反応を利用 ・オクタロニー法:抗原の特異性を沈降線の形成パターンで解析 ・免疫電気泳動法:多種類の抗原分子を含む液体を解析 ■凝集反応を利用 ・クームス試験:自己免疫疾患などでできる赤血球に対する不完全抗体の検出法。 ■その他の抗原抗体反応の利用 ・蛍光抗体法、フローサイトメトリー、酵素抗体法、ウエスタンブロット法など

(7)

問 4.モノクローナル抗体について説明しなさい。(抗体医薬も含めて)

解答例) *通常の抗体作製 精製した抗原を動物に注射→動物の血清を集める→生化学的方法で抗体を精製 問題点:抗原は多数のエピトープを持つ。 →血清中に異なった抗体が存在。(それぞれ違うエピトープに反応する抗体ができる) →均一な抗体を得るのが困難。 →得られる抗体量に限度がある。 【モノクローナル抗体とは】 ◇抗原特異性(V 領域アミノ酸配列)及び抗体のクラスが完全に同一の抗体のこと。 (簡単に言えば、一つの抗原エピトープだけに反応する抗体) <利点>・利用価値が高い。 ・大量入手可能。 【作成原理】 1)実験室で無限に増殖する骨髄腫細胞と、抗体を産生する B 細胞をポリエチレングリコールで細胞融合。 2)抗体を産生しながら無限に増殖する細胞(ハイブリドーマ)のうち、目的の抗体を作っているものを選択。 *目的のハイブリドーマ以外のものを除去する必要がある。 ・抗体産生細胞(B 細胞)同士が細胞融合したもの →一週間以上も増殖しないので放置してれば問題ない ・骨髄腫細胞同士が細胞融合したもの →死滅しないΣ(゜□゜;) →HAT(ヒポキサンチン,アミノプテリン,チミジン)を加える →融合していない骨髄腫の増殖を抑える *詳しく知りたいなら→http://kusuri-jouhou.com/immunity/monoclonal.html (コア講義 p79 だけじゃ分かりにくいかもしれないので参考程度に) 【治療応用】 ■異種タンパクの欠点を解決。 ・マウス抗体をそのまま使うのではなく、遺伝子操作の技術により、ヒト化抗体が利用可能になった。 ■癌(悪性腫瘍)への臨床応用で有効性がある。 ・癌特異抗体→抗体の Fc に NK 細胞が結合、がん細胞を攻撃。 ・癌特異抗体+毒素→毒素ががん細胞に取り込まれ癌細胞死。 ・癌特異抗体+アイソトープ→アイソトープががん細胞を死滅させる。 ■自己免疫疾患への応用 ・サイトカインとそのレセプターに対する機能阻害。 ・抗 TNF 製剤は関節リウマチに使用される。 【問題点】 高価/抗マウス、抗ヒト抗体産生による作用減弱/薬剤耐性/不応答/免疫抑制/ 刺激型抗体によるサイトカインストーム/癌の発生

(8)

問 5.抗体遺伝子の構造と再構成について説明しなさい。

解答例) 10 億種類以上もの抗体の特異性は V 領域の構造 で決まる。抗体の特異性はB細胞抗原受容体の特異 性と同一であり、B細胞が分化・発達する過程で V 領域を構成する遺伝子の組換え(再構成)によって決 定される。 再構成される前の抗体遺伝子(胎児型遺伝子)には V 遺伝子、D 遺伝子、J 遺伝子というそれぞれ似て はいるが少しずつ異なった塩基配列がある(L 鎖に は D 遺伝子はない)。 再構成は 2 つの染色体のうちのどちらか一つの染 色体でおこる。更に、H鎖とL鎖の再構成は同時に は行われず、最初はH鎖の再構成から開始される。 H鎖では V 遺伝子、D 遺伝子、J 遺伝子の3部分 が再構成する。まず、D と J 遺伝子が再構成し、プ ロB細胞になる。V と DJ 結合が再構成して VDJ と なったプレB細胞になる。 VDJ の再構成に失敗(再構成された塩基配列が乱 れて完全な蛋白合成ができない)したときは、同じ染 色体でもう一度再構成をやり直す。あるいはもう一 つの染色体で再構成を始める。 H鎖遺伝子の再構成が完了すると、L鎖の再構成 が始まる。κ 鎖が先に再構成して、失敗すれば λ 鎖の再構成が始まる。L鎖には D 遺伝子はなく、VL-JL再 構成を完成するとH鎖,L鎖の両方を発現して Ig 分子を細胞表面に発現する。 再構成に失敗しても繰り返し再構成を起こして、最終的に完全なH鎖およびL鎖が作られるまで再構成が 繰り返される。最後まで失敗が続けば、そのB細胞は分化成熟できずに死滅する。 一方の染色体で再構成が成功すると、他方の染色体では再構成はスタートしない。 →1 つのB細胞は、1 種類の(H鎖可変領域と 1 種類のL鎖可変領域から構成される)抗体を作る。 再構成により、抗体遺伝子のエンハンサーとプロモーターが近接した場所に移動し、転写が開始される。 細胞の活性化状態に応じて選択的スプライシ ングにより膜型か分泌型のどちらかの mRNA となる。 ・分泌型は細胞膜を通り抜けることができる →血清中の抗原に結合 ・膜型蛋白はC末端に細胞膜結合領域がある →細胞膜を通りぬけることができない →H鎖とL鎖の両分子が結合して膜型抗体 分子となり、Igα、Igβという蛋白質とと もに細胞膜表面に発現すると BCR(B 細胞 抗原受容体)となる。 にしの

(9)

問 6.B細胞活性化における BCR からの信号伝達、クラススイッチ、産生抗体の親和性増強に

ついて説明しなさい。

解答例)

【BCR からの信号伝達】

BCR(B cell receptor ,B 細胞抗原受容体)は膜型の IgM 分子(抗体)が補助分子(Igα,Igβ)の作用により細胞表 面に発現している。補助分子は抗体を細胞の表面に発現するため,また抗原の結合を細胞内に伝える信号伝 達に必要である。遺伝子再構成によって完成した模型抗体分子は Igαと Igβと呼ばれるタンパクとともに細 胞表面に発現し、抗原刺激の信号伝達の機能を担う。以下にその過程を説明する。

まず、抗原が BCR(B細胞レセプター)に結合するとチロシンリン酸化酵素が Igαと Igβの ITAM をリン酸 化する。するとアダプター分子が集合し複合体を形成する。これによって、 ①Ras/MAPK 経路の活性化 ②IP3(イノシトール三リン酸)によるカルシウム動因、カルシニューリンによる NF-AT 活性化 ③DG(ジアシルグリセロール)による PKC(プロテインキナーゼ C)活性化により転写因子 NF-κB 活性化 が起こる。 転写因子が核内に入りプロモーターに結合すると B 細胞活性化機能分子の遺伝子発現を行う。B 細胞活性 化または抑制には補助刺激が重要で,CD40,CD21,CD45,FcγR などの補助刺激分子,接着分子が細胞表 面に発現している。このうち CD40 は T 細胞と結合して B 細胞を活性化する必須の刺激であり,FcγR は抑 制性の刺激を伝える。 【クラススイッチ】 生体内ではIgMクラスの BCR(B細胞レセプター)を発現しているB細胞がナイーブB細胞として発現し ており、抗原侵入後はじめはIgMクラス抗体が産生されるが、抗原親和性はあまり高くない。 B細胞の成熟分化が進むと、抗原親和性がより高いクラスの抗体を産生するように生まれ変わる。この変 化をクラススイッチという。クラススイッチしたB細胞は二次応答でより親和性の高い抗原特異的なIgGク ラス抗体を産生する。 【産生抗体の親和性増強】 タンパク抗原に対して作られた抗体が,その抗原に対して繰り返し持続的に曝露されることにより親和力 を増強させるという現象である。 初めて抗原刺激を受けた後,抗体の V 領域,特に超可変領域にランダムな点変異が起こる。この変異は高 親和性であることも低親和性または親和性を持たないものもあるので,濾胞樹状細胞により高親和性の B 細 胞が選択されていく。親和性の増強はリンパ濾胞(組織でいうリンパ小節)の胚中心で B 細胞が分裂,増殖す る中でおきている。ヘルパーT 細胞からの刺激が必要である。

(10)

問 7.補体について説明しなさい。

解答例) 【補体とは】 補体とは、「生体に侵入した微生物を排除するために重要なエフェクターとして生体防御に機能している一 群のタンパク質の総称」である。 *もっと易しく言うと、「体液性免疫(IgG 抗体の産生→好中球の貪食)の他に細菌をやっつけてく れる物質」が補体(抗体を補うの意味)であり、この補体はあることをきっかけにさまざまな免疫現 象を引き起こす血中タンパク質である。 補体タンパク質は、主に肝臓で産生分泌される血清タンパク質で、生体内では酵素前駆体「チモーゲン」 として存在する。 補体は主に C1~C9 の 9 つの成分がある。ちなみに C1 は C1q、C1r、C1s の 3 つの複合体であり、C4 など は活性化経路の途中で分解されて 2 つ(C4a、C4b)に分かれる。それぞれの補体が何らかの働きを行うために は、その補体があるきっかけによって連鎖的に活性化されること(補体カスケード)が必要である。 以下にその活性化経路を 3 つ説明する。 【補体の活性化経路】 ポイント:基本的に C1 から番号順に活性化するが、C4 だけは 2 番目にくる! 1.古典的経路…まずはこれを理解しよう! ・抗体が抗原と反応→血清中の C1q が抗体の Fc 部に結合 ・C1q が抗体に結合→C1r が活性→C1s が活性。 ・C1s は C4 と C2 を分解し、C4b2a が形成される。 ・C4b2a は C3 を C3b と C3a に分解。 ・(C3a はアナフィラトキシンとして炎症を起こす。) ・(C3b は微生物膜表面に結合し、オプソニンとして機能。) ・C3b は C5 を C5a と C5b に分解。C5b は C6 や C7 と反応→C5b67 複合体。 ・C8 と反応→C5b678 複合体→C9 と反応→C5b6789 複合体(膜侵害複合体,MAC) ・MAC が微生物を殺傷→免疫 ■それぞれの補体がどのような働きをするのかについては後で説明する。

(11)

2.レクチン経路 この経路は新たに発見された活性化経路で、多くの微生物を認識し、獲得免疫が働くまでの感染初期に 重要な役割を果たす。ただし基本的な流れは古典的経路と同じであるので 1.古典的経路との大きな差は、 C1 の代わりに MBL(マンノース結合レクチン)が菌体の糖鎖を認識することで、活性化が進んでいくと いうことである。 (詳しいことはコア講義 p.95 で) 3.第二経路 この経路の活性化には、認識分子は関与せず、微生物上の特異な構造が関与していると考えられる。大 事なことは、この経路の C3 分解酵素は、細胞膜上に結合した C3b によって形成されるので、古典的経路 とレクチン経路が活性化されても同様の反応が起こり、増幅経路として機能する。 【代表的な補体の働き】 【まとめ(以下のことを書いておけば大丈夫) ・古典的経路を理解し、そのあとレクチン経路、第二経路はどのように違うのかを覚える ・活性化した補体が 1.に示した様々な働きを引き起こし、この働きによって体を細菌から守っている。 C3a マスト細胞を刺激して、アナフィラキシー反応を生じさせる C5b C3b 異物に結合し、好中球やマクロファージの貪食機能を上昇させる(オプソニン化) C5a 好中球を炎症部位に呼び寄せる。ケモカイン(遊走因子) C5b6789 細菌の細胞膜に穴を開け、免疫溶菌反応を引き起こす

(12)

問 8.サイトカインについて説明しなさい。

解答例) 【サイトカインとは】 ◇きわめて微量で機能を発揮する細胞外情報伝達物質のこと。 ■細胞間に作用する因子を総称してサイトカインという。以前は用いられていたモノカイン、リフォカイ ンなどが、現在ではサイトカインで統一されている。またサイトカインのなかで、主に免疫系細胞の間 で作用する因子をインターロイキンという。 ■抗原あるいは MHC の拘束を受けずに直接標的細胞に作用して情報を伝達する。 ■局所的に働くペプチドホルモンである。 (ホルモンが生体の恒常維持に働くのに対し、サイトカインは生体の緊急時に対応する。) 【サイトカインの特徴】 1)極微量で生理活性を発揮する。 2)刺激後、短時間で新たに生成、分泌される。 3)産生は一過性で微量。生体内では短命。←サイトカインの不必要(危険)な持続刺激を避けるのに必要。 4)刺激を受けた細胞は、複数のサイトカインを同時に産生する。 5)受容体への結合親和性が非常に高い。 6)作用様式はオートクラインかパラクラインが主である。(稀にエンドクリン) 7)多様な生物活性を発揮する。←さまざまな標的細胞に作用するため 8)異なるサイトカイン間に機能の重複性(redundancy)がある。←シグナル伝達経路が共有されるから。 【サイトカインの構造】 ■①α ヘリックス型(例)L-2、IL-4、IL-7 ②β シート型(例)IL-1、IL-18、GM-CSF ③混合型(例)IL-8、ケモカイン に大別される。 【サイトカイン受容体の構造】 ■サイトカインの受容体は特徴的な構造を基準にいくつかのファミリーに分類される。 I 型サイトカイン受容体/II 型サイトカイン受容体/腫瘍壊死因子(TNF)受容体/IL-1 受容体/TGFβ受 容体/チロシンキナーゼ型受容体などである。 【サイトカインの機能】(コア講義 p104 図 12-2) ■主な機能として、造血、免疫応答、細胞死に関与している。 <造血とサイトカイン> ・SCF は幹細胞の増殖誘導に必要で、IL-3、IL-6 と共同して造血幹細胞を増殖する。 ・IL-7 はリンパ球系幹細胞を B 細胞や T 細胞に分化する。 ・IL-15 はリンパ球系幹細胞を NK 細胞に分化する。 ・SCF,IL-3,GM-CSF は血球系幹細胞を巨核球、肥満細胞、好塩基球、好酸球、好中球、単球に分化する。

(13)

<免疫応答とサイトカイン> ①病原体による刺激を受けた、樹状細胞、(マクロファージ)が IL-12、IL-18 を産生する。 ②ナイーブ T 細胞は IL-12(と抗原)の刺激を受け Th1 細胞に分化する。 ③ナイーブ T 細胞は IL-4(と抗原)の刺激を受け Th2 細胞に分化する。 ④ナイーブ T 細胞は IL-23 の刺激を受け Th17 細胞に分化する。 ⑤IL-4、5、6 は B 細胞を抗体産生細胞へ分化・クラススイッチする。 <細胞死とサイトカイン> ・細胞死の生理的意義として、生体の恒常性維持、免疫応答の終息、自己反応性細胞の除去がある。 これらに関与するサイトカインとして、TNFα、TNFβ、Fas リガンド(FasL)がある。いずれも三量体 となって細胞傷害活性を発揮し、受容体を持つ細胞に作用するとアポトーシスが起こる。 ■これらの機能の特徴は単一のサイトカインが多様な標的細胞に作用すること、同じ標的細胞であっても その活性化状態によって多様な応答を示したりすること、複数の異なるサイトカインが同じ作用を発揮 することなどである。 【サイトカインネットワーク】 ◇サイトカインの作用が増強されながら拡大する現象のこと。 ■細胞が刺激を受ける→サイトカインを産生→他のサイトカイン(の受容体)の産生(発現)を誘導 【サイトカイン信号伝達と負の制御】 ■微量でも活性を持つサイトカインは危険な反応を起こし得る分子ともいえる。サイトカイン信号電達を 適度に打ち切るフィードバック因子として、SOCS(ファミリー)が知られている。

■サイトカインのシグナルは JAK と STAT の活性化で起こる。したがって JAK の活性化の阻止、STAT の 活性化の阻止でサイトカインシグナル伝達は阻止される。

■SOCS1 は JAK に直接結合、SOCS2/CIS1 は受容体に直接結合、SOCS3 は受容体と JAK 両者に結合する ことでシグナル伝達を阻止する。 ■このように SOCSはサイトカインのシグナルを阻止するのみか、サイトカイン間のクロストーク(対話?) も負に制御する。 【サイトカインと疾病】 ■関節リウマチ ①滑膜に炎症がおこり T 細胞が組織内に浸潤する。 ②炎症性サイトカインが産生される。 ③線維芽細胞から MMP、RANKL の産生。(TNFα、IL-6 などが関与。) ④MMP などにより破骨細胞活性化、関節破壊。 ■免疫不全症 ・免疫系の遺伝的あるいは 2 次的欠陥により発症する疾患群。 ・反復・重症化、遷延する感染、日和見感染、感染による合併症の発生などがみられる。 ■血球貪食症候群 ・マクロファージが血球を貪食する病態。

(14)

問 9.MHCの構造と機能について説明しなさい。

解答例)

【MHCの概要】

・MHC(Major Histocompatibility Complex)とは、主要組織適合遺伝子複合体のことである。 ・ヒトのMHCはHLA(Human Leukocyte Antigen)と呼ばれる。

・MHCは抗原提示細胞がT細胞に抗原を提示するときに必要不可欠な分子で、MHC分子と抗原のペプ チドが結合したものをT細胞が認識することにより、抗原提示が成立する。これを、T細胞抗原認識の MHC拘束と言い、この機構により細胞内に入り込んでしまったウイルスなども認識することができる ようになる。 ・MHC分子は多くの場合、個人個人の間で異なっているので、臓器移植などの際には、ドナーのHLA 分子がレシピエントに異物と認識され、拒絶抗原となる。 【構造と特徴】 ・MHC分子にはクラスⅠ分子とクラスⅡ分子があり、それぞれα鎖とβ鎖を持っている。各ドメインの アミノ酸配列、立体構造は免疫グロブリンと類似しており、免疫グロブリン超遺伝子族(スーパーファ ミリー)と呼ばれる。 ・クラスⅠ分子とクラスⅡ分子の違いは、どこからやってきた抗原のペプチドを提示するかということで ある。クラスⅠ分子は、細胞内由来の抗原ペプチド(内因性抗原)を結合させ、クラスⅡ分子は、細胞 外抗原のペプチド(外来性抗原)を結合させている。 (例)クラスⅠ分子:細胞内寄生病原体・癌抗原など クラスⅡ分子:血中のバクテリアなど ・(上に挙げたそれぞれの分子の働きを考えて)クラスⅠ分子はほとんどすべての細胞に発現している。 例えば、白血球、上皮細胞、間葉細胞である。クラスⅡ分子は樹状細胞、マクロファージ、B細胞など 限られた細胞に発現している。 ・クラスⅠ分子もクラスⅡ分子もそれぞれ 1 つの個体で 3 種類ずつ存在しているという特徴があり、これ はつまり、同じような機能を有する遺伝子がゲノム内に複数存在する多重遺伝子であるということであ る。また、ひとつの遺伝子座に多くの対立遺伝子が存在するという対立遺伝子多型という特徴も持ち合 わせており、この2つの特徴ゆえに、細胞上に発現する MHC 分子の構造を少しずつ変化させることで、 様々な病原体由来の抗原ペプチドを提示することができる。さらに、父親、母親の両方から受け継いだ 遺伝子のうち、そのどちらともが蛋白を作って細胞表面に MHC 分子を発現させるという共優勢という 発現様式であるため、さらに細胞表面に発現する可能性のある MHC 分子の種類が増える。 ※おまけ 上で述べた対立遺伝子多型が存在する領域は、クラスⅠ分子だとα1、α2ドメイン、クラスⅡ分子だとα 1、β1ドメインである。これらのドメインのことを、MHC超可変領域と言い、ここは特に高度の多型性 を示す。これらは分子の立体構造の中で、膠原ペプチドが結合する溝に集中して存在するので、この部分の 構造を少し変化させるだけで多種の抗原ペプチドを結合させることができている。また、このペプチド結合 溝が個人によって異なることで、同じ病原体でも提示されるペプチドは個人によって異なってくる。そのた め、同じ病原体に対して、ヒトは異なったT細胞免疫応答をすることになる。

(15)

【MHCの働きとそれに関連する免疫応答】 ・T細胞がMHC分子と抗原を認識するときに、クラスⅠ分子は CD8T細胞によって認識され、クラス Ⅱ分子は CD4T細胞によって認識される。これにより、それぞれヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞が 活性化される。ヘルパーT細胞はB細胞の抗体産生を補助するので、この結合は血液中の病原体を排 除するのに働き、細胞傷害性 T 細胞は細胞感染細胞を傷害することで細胞内病原体を排除する。 ・抗原提示細胞以外に感染したウイルスはクロスプレゼンテーションによって認識、排除される。ウイ ルスによって死滅した細胞は抗原提示細胞に取り込まれ、エンドソームで分解される経路で細胞質内 に移動する。ここで抗原はプロテアソームによってペプチドに分解され、ERに移動し、クラスⅠ分 子に結合する。そして CD8T細胞に提示される。 ※おまけ:スーパー抗原について スーパー抗原とは、TCR の抗原特異性に関係なく、MHC と TCR を強制的に結合させ、多くの T-cell を刺 激し、強い非特異的免疫応答を誘導するものである。炎症性サイトカイン過剰産生によりショック状態 を引き起こす。活性化 T-cell は増殖後アポトーシスするため、末梢の T-cell 数が減少し、免疫抑制状 態になる。病原としては黄色ブドウ球菌がある。 ※書いても書かなくてもいいかと思われる内容→クラスⅠ分子・クラスⅡ分子の生合成と細胞内移動 ・クラスⅠ分子の生合成と細胞内移動では、まず MHC クラスⅠ分子とカルネキシンが結合する。その後 3 つの蛋白質を介して TAP と結合する。プロテアソームにより分解された細胞内由来抗原であるペプチ ドが TAP を通過して ER へ移動する。このペプチドがクラスⅠ分子と結合し、細胞膜表面へ移動する。 ・クラスⅡ分子の生合成と細胞内移動では、最初 Ii 鎖がクラスⅡ分子に結合し、ER 内でのペプチド結 合をブロックしている。その後、エンドソームへ移行し、Ii 鎖は分解されて CLIP が結合する。そして、 HLA-DM 分子の触媒作用により細胞外(外来性)抗原のペプチドがクラスⅡ分子に結合し、細胞表面へ 移動する。

(16)

問 10.移植拒絶反応およびGVHについて説明しなさい。

解答例) ◇移植は供与者(ドナー)と受領者(レシピエント)の関係から、次の 4 つに分類される。 1. 自己移植(自分の細胞を自分へ) 2. 同種同系移植(一卵性双生児のように個体は異なるが二者間の遺伝子組成が全く同じもの同士間で行う 移植)、 3. 同種異形移植(遺伝的に全く異なるヒト同士、あるいは純系動物間での移植) 4. 異種移植(動物種を越えて行われる移植) このうち、移植拒否反応が現れるのは3と4である。 ◇移植免疫反応において、リンパ球により認識され、反応を引き起こす抗原のことを組織適合抗原という。 これは複数の抗原系から成り立っており、各動物種にそれぞれ特有の強い免疫反応を引き起こすもの(また それをコードする遺伝子)が存在する。これは主要組織適合抗原(MHC)と呼ばれ、ヒトでは白血球が検査に 用いられる(ヒト白血球抗原(HLA))。 ◇MHC 以外の抗原系は非主要組織適合抗原と呼ばれ、臓器特異抗原や雄特異抗原(H-Y 抗原)がそれに当る。 ◇移植の拒絶は免疫反応といえる。すなわち特異性と記憶がある。 ・例えば、あるマウスに別のマウスの皮膚を移植したとする。このとき、移植されたマウスの体内では拒 絶が起こり、皮膚は 2 週間ほどで脱落する(1次反応) ・このマウスの背中に、再び同じマウスの皮膚を移植すると、今度は一次反応の時よりも早く脱落が起こ る。(二次反応)この時、初めとは異なるマウスの皮膚だと、脱落するのに2週間かかる。 ・これは、T 細胞が移植片を抗原として認識し、記憶するため起こる。 ◇移植免疫反応に関与する免疫細胞には CD4T 細胞や CD8T 細胞、B 細胞、マクロファージ、K 細胞が あり、T 細胞系のものが中心となっている。 ◇拒絶反応には①超急性拒絶、②促進急性拒絶、③急性拒絶、④慢性拒絶の 4 種類が存在する。 ①超急性拒絶: レシピエントが以前に移植や頻回の輸血などを経験しており、既に抗体が存在しているために起こるも のである。この場合は数時間程度で臓器の機能不全が起こる。 ②促進急性拒絶: ドナーに対する感作細胞をレシピエントが持っている場合に起こるもので、数日で拒絶が起こる。 ③急性拒絶: 臓器が一週間程は正常に動いているものの、二週間ぐらいになると障害・拒絶されるものであり、初め て移植を受ける人に見られる。 ④慢性拒絶: 一か月以上経ってから徐々に拒絶が起こるものである。

(17)

■移植を成功させるには以下のことを考える必要がある。 ①ドナーとレシピエントの組織適合性をできるだけ合わせる。(不適合性を少しでも減らす) これはドナーとレシピエントの遺伝子診断などから判断する。 ②免疫抑制剤の投与 これにより、免疫反応が最小限に食い止められる。 今日使われている免疫抑制剤には以下のようなものがある。 a)DNA 合成阻害剤 b)放線菌由来マクロライド系薬剤 ※これらはすべて、リンパ球機能を非特異的に阻害するもので、長時間使用すると感染症を誘起したり、発 がん頻度が上がるなどの副作用に気を付けなければならない。 【GVH反応】 <GVH反応とは> ・GVH 反応とは、移植片対宿主反応のことであり、移植あるいは移入された免疫系細胞が宿主の組織適合 抗原に反応して、免疫学的に宿主を攻撃する反応のことである。 ・一般に、拒絶反応とはドナーの臓器がレシピエントのリンパ球により攻撃される(HVG 反応)が、GVH 反 応はその逆で、ドナーのリンパ球がレシピエントを攻撃する。 <GVH病とは> ◇GVH 病は GVH 反応が見られる病的状態のことであり、骨髄移植において重要な課題となっている。また、 免疫能が落ちている際の大量の輸血によっても生じ、この対策としては輸血用血液に放射線照射をすること でリンパ球の機能を低下させる方法がある。

(18)

問 11.T細胞の分化成熟について説明しなさい。

解答例) 【T細胞とは】 ・T細胞とは、細胞性免疫や免疫応答調節で中心的役割を果たす小型のリンパ球である。 ・大人では主に骨髄中の造血幹細胞に由来。(他のリンパ球と同様) ・他のリンパ球と異なり、分化成熟は胸腺内で行われる。 ⇒T 細胞の前駆細胞の段階で骨髄から胸腺に移動し分化。 【概要】 ◇胸腺に移動してきた前駆細胞は、γδTCR を発現する T 細胞か、pTα、βTCR を発現するプレ T 細胞のどち らかに分化する。プレ T 細胞はこのあと、α鎖の遺伝子再構成が起こり、分化が進む。次に、CD8と CD 4を発現する DP 細胞となる。ここで、正の選択や負の選択を受け、CD4か CD8のどちらかを発現する ようになる。 ☆素晴らしい!満点編♪ <胸腺の皮質において> ■プレ T 細胞 ・はじめ胚細胞(germ-line)型であった前駆細胞の TCR 遺伝子は、はじめに TCRγ 鎖と β 鎖の遺伝子の再構成 がランダムに始まる。 ・γ鎖遺伝子の再構成が成功⇒δ鎖遺伝子の再構成開始⇒γδ 型 TCR を発現する T 細胞に分化が進行してゆ く ・γ鎖やδ鎖の遺伝子再構成に失敗⇒β鎖の再構成が進行⇒β鎖はpTα 鎖や CD3 と会合してプレ TCR 複合 体として細胞表面に発現⇒α鎖遺伝子が再構成⇒プレ TCR 複合体の代わりに αβ 型 TCR を発現する T 細胞 へ分化が進行してゆく ・分化途中の T 細胞をプレ T 細胞と呼ぶ。 ■DP(double positive)細胞 ・αβ 型 TCR と CD3 複合体を発現した胸腺細胞は、補助受容体分子 CD4 と CD8 を細胞表面に発現。この状 態を DP 細胞と呼ぶ。 ・正の選択:DP 細胞は胸腺皮質の上皮細胞上に発現している MHC・ペプチド複合体に結合すると、MHC 分子と十分反応できないとアポトーシスをおこす。つまり、MHC 分子と複合体をなした抗原ペ プチドをもつ T 細胞のみ生き残る(正の選択)。T 細胞の抗原特異的免疫応答に MHC 拘束性が生 じ、重篤な免疫不全症を防ぐ。 ・負の選択:DP 細胞は胸腺皮質と髄質の境界域で、樹状細胞および髄質上皮細胞上の MHC・ペプチド複合 体に TCR と介して反応。高親和性を示す、自己反応性 TCR を有する T 細胞は、除去される(負 の選択)。うまく行われないと自己免疫不全症を引き起こす。

(19)

<胸腺の髄質において> ■SP(single positive)細胞 ・正の選択、負の選択により、MHC・ペプチド複合体と低親和性を示す T 細胞は生き残る。 ・CD4 あるいは CD8 のいずれかを発現しなくなり、SP 細胞へと分化誘導。 ・SP 細胞は増殖し、ヘルパーT 細胞や細胞傷害性 T 細胞として抹消へ。 ・γδT 細胞は CD4 や CD8 分子を発現せず再構成が成功すれば、腸管粘膜や皮膚上皮で胸腺外分化 T 細胞と なる。MHC 拘束は受けず、自然免疫系として、自己個体成分の分解物などを認識し内部異常を監視する免 疫システムとしてはたらく。 ☆まずはここから!基礎編♪ ・未熟T細胞はまず被膜直下の皮質浅層に集合し胸腺上皮細胞(ナース細胞)、マクロファージおよび樹状細 胞などのストローマ細胞と接触し、またそれらから産生される胸腺ホルモン(サイモシン、サイモポエチ ン)によって成熟、分化が調整される ・T細胞もB細胞と同様に原則として一つの細胞に一種類のT細胞抗原受容体 TCR(T cell receptor)を発現 しており、生体内には 10 億種類もの異なった抗原に対応できるT細胞クローンが存在する ・成熟したT細胞は髄質に移動し、胸腺外に出ていき末梢リンパ器官へ行く ・成熟T細胞はヘルパーT細胞と細胞傷害性T細胞という二つのタイプに分類される。ヘルパーT細胞は細 胞表面にCD4 分子を、細胞傷害性T細胞はCD8 分子を発現している。さらに活性化ヘルパーT細胞を抑 制する細胞としてCD4、CD25 の両分子を発現している制御性T細胞が同定されている

(20)

問 12.TCRの抗原認識と信号伝達について説明しなさい。

解答例) 【抗原認識】

TCR が抗原を認識すると、TCR の近傍にある CD45 によってチロシンリン酸化酵素の Fyn、Lck が活性化 される。Fyn は CD3 複合体の ITAM のチロシン残基をリン酸化し、ITAM を活性化する。Lck は別のリン酸 化酵素 ZAP‐70 を活性化する。活性化した ZAP-70 は LAT などの分子を介して Ras-MAPK 経路、Ca2+カ ルシニューリン・カルモジュリン経路、プロテインキナーゼ C 経路を活性化し、T 細胞の増殖分化関連遺伝 子の発現へとつながる。T 細胞活性化に関与する主な MAP キナーゼは、転写因子を活性化し、たり、細胞 骨格の再構成を誘導することで TCR 複合体など免疫シナプスに局在する多くの機能性分子のクラスタリン グに関与していると考えられる。Ca2+‐カルシニューリン・カルモジュリン経路では、転写因子 NF-AT を活 性化して免疫細胞の気脳を担う遺伝子の発現を促進する。プロテインキナーゼ C 経路によって T 細胞の活性 化、サイトカイン産生・細胞増殖につながる。 【信号伝達】 TCR 刺激伝達を調節するものに、免疫シナプス、接着分子、補助刺激分子(B7)と受容体(CD28)、刺激 抑制(CTLA-4)の 4 つがある。免疫シナプスとはシグナル伝達分子が T 細胞の細胞膜にリング状に集まっ て構成される(ラフト)、安定した接着状態のことである。これは抗原提示細胞から T 細胞への安定的かつ 効率的な活性化刺激伝達のためである。接着面の形成として、まず接着面の中央で ICAM-1(APC 側)や LFA-1 (T 細胞側)などの接着分子が結合し、その周囲で TCR 複合体と抗原ペプチド/MHC 複合体が結合する。 その後、接着分子は周辺部に移動し、CD4、CD8、補助刺激分子 B7 などが集まる。接着分子による調節では、 T 細胞に特異的に発現している CD2 が CD58 と結合し、T 細胞の接着性を高める。T 細胞活性化のためには、 TCR 刺激だけでなく抗原提示細胞の B7 分子が T 細胞の CD28 分子に結合する、第 2 シグナルが必要となる。 この過程も TCR 刺激伝達を調節するひとつである。最後に、活性化した T 細胞に CTLA-4 分子が発現する と、B7 分子(APC 側)に結合する。T 細胞と CD28 の結合を競合的に阻害することで、T 細胞の活性化を抑 制する。(免役応答の終息) <ポイント>

・TCR が抗原認識→CD45→Fyn→CD3 複合体 ITAM 活性化→ZAP-70 刺激 →Lck→ZAP-70 活性化 ・ZAP-70→1)Ras-MAPK 経路 2)Ca2+、カルシニューリン・カルモジュリン経路 3)プロテインキナーゼ C 経路 →T 細胞の増殖分化に関与する遺伝子の発現 ・TCR の刺激伝達 免疫シナプス →TCR と MHC 複合体の安定的な結合(接着分子) →十分なシグナル伝達(補助刺激分子と第二シグナル) →CD28 の CTLA-4 での競合阻害による T 細胞の抑制

(21)

問 13:T 細胞サブセットとその機能について説明しなさい。

解答例) 【T 細胞のサブセットとは】 T 細胞のサブセットにはヘルパー(CD4)T 細胞と細胞傷害性(CD8)T 細胞(キラーT 細胞)の2つがあ る。前者は主に抗体産生補助、マクロファージ活性化、CD8T 細胞の活性化という役割を担っており、Th1 細胞、Th2 細胞、Th17 細胞のようなエフェクターT 細胞はナイーブ CD4T 細胞からそれぞれサイトカインの 影響を受けて分化する。また、後者はウイルス感染細胞破壊という役割を担っている。 【機能】 <Th1 細胞> 樹状細胞の抗原提示や NK 細胞から放出される IL-12 や IFN-γ によってナイーブ CD4T 細胞から分化する。 Th1 細胞は IL-2、IFN-γ といったサイトカインを産生する。これらのサイトカインによってマクロファージ、 NK 細胞、細胞傷害性 T 細胞の活性化による細胞内細菌やウイルス感染細胞の破壊、IgG2a クラススイッチ の誘導による細菌やウイルスに対する中和抗体の産生を行う。中でも IFN-γ はマクロファージに IL-12 の産 生を誘導することで Th1 細胞の分化を促進したり、Th2 細胞の増殖、活性を抑制したりする。 <Th2 細胞> 樹状細胞の抗原提示、肥満細胞から放出される IL-4 によってナイーブ CD4T 細胞から分化する。Th2 細胞 は IL-4、IL-5、IL-6、IL-10、IL-13 といったサイトカインを産生する。これらのサイトカインによって IgG1、 IgE クラススイッチの誘導、肥満細胞活性化、好酸球分化、活性による細胞外細菌や寄生虫排除を行う。ほ かにも Th1 細胞の分化、活性の抑制、Th2 細胞の抑制、好酸球活性化の抑制、IgE 産生の抑制などさまざま な抑制作用も発揮する。 <Th17 細胞> 抗原刺激、TGF-β、IL-6 といったサイトカインの影響を受けて、ナイーブ CD4T 細胞から分化する。Th17 細胞は IL-17 や IL-22 といったサイトカインを産生する。これらのサイトカインは炎症反応が誘導したり、 自己免疫の病態に関与したり、Th1 細胞や Th2 細胞では間に合わない細胞外細菌の防御に関与する。 <細胞傷害性 T 細胞(キラーT 細胞、CTL)> 細胞傷害性 T 細胞は標的細胞上の抗原を認識することで活性化し、破壊能力を持つようになる。細胞傷害 性 T 細胞が破壊能力を持ち、発揮するまでには①誘導相、②効果相といった段階を踏む。 ①誘導相:抗原提示、CTL 活性化 ・細胞傷害性 T 細胞は MHC クラスⅠ分子を認識するので、MHC クラスⅠ分子によって抗原提示される。 このとき、貪食によって取り込まれた微生物も MHC クラスⅠ分子と結合するため、抗原提示の際にク ロスプレゼンテーションが行われることもある。 ・CD4T 細胞による補助(→樹状細胞の CD80、CD86 の発現の増強 IL-12 の産生) ・B7(CD80/CD86)による細胞傷害性 T 細胞上の CD28 刺激 ②効果相:標的細胞の破壊 ・方法1:CTL 細胞内顆粒内のパーフォリン、グランザイムの放出 パーフォリン…カルシウムイオン存在下で重合体となり、標的細胞の表面に孔を開ける。 グランザイム…セリンプロテアーゼである。パーフォリンによって開けられた孔から細胞内に侵入し、 カスパーゼを活性化し、アポトーシスを誘導する。 ・方法2:CTL の表面上の Fas リガンドと標的細胞上の Fas の結合によるアポトーシス ・方法3 TNF(腫瘍壊死因子)などの放出によるアポトーシス

(22)

問 14:各種感染症に対する免疫防御機構について説明しなさい。

(試験範囲外?)

解答例) 【細胞外寄生細菌、真菌に対する免疫応答】 主に抗体を介して、病原体および毒素の中和、抗体によるオプソニン化、補体古典経路の活性化、抗体依 存性細胞傷害作用(ADCC)といった4つの機構によって感染を防御する。 抗体によるオプソニン化では、感染局所で病原体抗原に IgG 抗体が結合すると、貪食細胞は Fc 受容体を 介して IgG の Fc 部位に結合することで貪食する。このマクロファージは病原体抗原を Th1 細胞に提示し、 Th1 細胞は活性化する。Th1 細胞は活性化されたことによって IFN-γ の産生と CD40 リガンドの発現を行う。 これはマクロファージ上の IFN-γ と CD40 を介してマクロファージを活性化し、食胞内の病原体に対してよ り強力な殺菌能力を発揮する。 また、補体古典経路の活性化によって補体成分を介した病原体のオプソニン化、炎症、MAC による病原 体融解を引き起こす。

そして、ADCC では病原体抗原に IgG 抗体が結合し、NK 細胞は Fc 受容体を介して IgG の Fc 部位に結合 する。これによって NK 細胞は活性化され、病原体感染細胞を傷害する。 【細胞内寄生細菌、真菌に対する免疫応答】 主に細胞性免疫によって排除される。Th1 細胞が抗原提示を受けて、IFN-γの産生、CD40 リガンドの発現 が起こる。これによってマクロファージが活性化され、ROI や NO などを産生することで食胞内の病原体を強 力に殺菌する。 【ウイルスに対する免疫応答】 ①MHC クラスⅡ分子によってウイルス抗原を提示されたナイーブ CD4T 細胞はウイルス抗原特異的に Th1 細 胞に分化する。Th1 細胞はウイルス中和抗体を産生し、感染細胞から放出されたウイルスが新たな宿主 細胞上のウイルス受容体と結合するのを阻止し、ウイルスの感染拡大を阻害する。 ②クロスプレゼンテーションによってウイルス抗原を提示されたナイーブ CD8 細胞は、ウイルス特異的に CTL に分化する。その後は(問題13で述べた)CTL の機能によって感染細胞を殺滅する。そのほかにも 感染局所ではウイルス複製の阻止、未感染細胞のウイルス抵抗性の増強を行い、炎症応答も引き起こす。 【寄生虫感染に対する免疫応答】 まず、単細胞性の寄生虫である原虫(リーシュマニア、マラリアなど)の感染に対して述べる。原虫のう ち細胞外寄生原虫に対しては抗体を介した液性免疫、細胞内寄生原虫に対しては Th1 細胞や CTL を介した細 胞性免疫を行う。 次に、多細胞性の寄生虫である蠕虫の感染に対して述べる。蠕虫はほとんどが細胞外寄生であるため Th2 細胞優位の免疫応答で傷害する。IL-4 によって IgE 抗体の産生が行われ、IL-5 によって好酸球の増加、IL-3 によって肥満細胞増殖(→脱顆粒で放出されたコンドロイチン硫酸による線虫の腸管粘膜への接着侵入の阻 止)、IL-13 によって小腸の胚細胞の増加(→粘液産生亢進による腸管からの排虫の促進)される。

(23)

問 16:免疫寛容について説明しなさい。

解答例) 免疫寛容とは、生物個体が多様な病原体に免疫応答をする能力を持っているにもかかわらず、自己組織の 構成成分には応答しない現象のことである。生体ではランダムな遺伝子再構成によってあらゆる抗原に反応 可能なリンパ球レセプターを発現しており、自己反応性リンパ球も産生されている。しかし、生体には自己 反応性リンパ球を除去あるいは活動を阻止する機序、すなわち自己免疫寛容(トレランス)が存在する。免 疫寛容は、成立機序によって T 細胞の中枢性(胸髄、骨髄)トレランスと末梢性(リンパ節など)トレラン ス、B 細胞の中枢性トレランスと末梢性トレランスに分類される。 <T 細胞> ◇中枢性トレランス ・負の選択 胸 腺 に お い て 自 己 MHC + 自 己 ペ プ チ ド に 対 し て 一 定 レ ベ ル 以 上 の 強 い 結 合 能 を も つ TCR を発現する DP 胸腺細胞はアポトーシス死する。死んだ T 細胞はマクロファージに貪食される。 このとき胸腺上皮細胞には胸腺以外の組織の蛋白質も発現しており、負の選択を受けて消失する。胸 腺以外の自己蛋白の発現は AIRE と呼ばれる転写因子の機能が関与する。この AIRE 遺伝子の変異は 自己免疫性多腺性内分泌不全症(APECED)を引き起こす。 ◇末梢性トレランス ・補助刺激が起こらないことによる不応答 補助刺激が起こらないことによる不応答の原因のひとつは、補助刺激分子の欠如である。 もうひとつは、自己抗原には TLR を刺激して補助刺激分子発現を増強させる PAMPs が存在しない ことである。PAMPs が存在しないと TLR を刺激しないので、補助刺激が起こらず自己免疫寛容が 成立する。 ・Treg(制御性 T 細胞)による細胞接触とサイトカイン分泌によるもの Treg:CD25 分子を発現する CD4T 細胞のサブセットで、転写因子 Fox3 によって分化する。 自己抗原に反応する T 細胞の一部は Treg になる。 ↑本来自己抗原に反応する T 細胞は胸腺で排除されるはずだが、回避したもの(?) Treg は自己反応性 T 細胞が末梢において自己組織に反応するとき、同じ自己組織を認識して、 IL-10 や TGF-β といったサイトカインを分泌することで自己反応性 T 細胞を抑制する。 Treg の異常は IPEX という疾患を引き起こす。(コア講義 p125) <B 細胞> ◇中枢性トレランス ・陰性選択…骨髄中で未熟 B リンパ球が自己抗原と反応すると、B 細胞はアポトーシス死する。 ・受容体エディティング(Receptor Editing)…骨髄中で未熟 B リンパ球が自己抗原と反応すると、軽 鎖の遺伝子再構成がおこなわれ、レセプターの特異性が変化する。これによって、自己抗原以外の 抗原反応を獲得する。 ◇末梢性トレランス ・B 細胞が活性化する場合にも補助刺激分子による補助刺激が必要であるが、自己抗原では T 細胞の 補助がないため、不応答状態となり、トレランスが成立する。

(24)

問 17:免疫寛容の破綻による自己免疫、自己免疫疾患について説明しなさい。

解答例)(疾患よりも破綻の機序の方を詳しく!以下の解答例の訂正はまだしていない) 【自己免疫の機序】 普通免疫は自己抗原に対しては反応しないように不活化されている。これが崩れて自己抗原に対して免疫 系が活性化することを自己免疫という。これは、自己抗原に似た病原体の侵入や、ウイルスや薬剤による自 己抗原の変性、もしくは隔離抗原や隔絶抗原などの普段免疫系が及ばない場所にいる自己抗原の遊走などに よって、活性化されることがある。また、遺伝的に自己抗原に似た病原体に適用性の高い HLA タイプを持つ 人などはこの活性化が起こりやすい。 【自己免疫疾患】 免疫寛容が破綻することで自己の組織あるいは抗原に対して獲得免疫応答が作動した結果、自己免疫疾患 は生じる。抗原暴露が終生続くため病態は長期間持続する。自己免疫疾患の分類は自己抗体が原因となって 起こる病態(Ⅱ型とⅢ型)と自己反応性 T 細胞がエフェクター細胞となって起こる病態(Ⅳ型)とに大別で きる。 自己抗体によっておこる病態 <Ⅱ型> 細胞膜抗原あるいは組織マトリックスにたいする自己抗体が原因となる場合と、ホルモンなどの生理活 性物質あるいはその受容体に対する自己抗体が原因となる場合がある。 ①細胞膜抗原あるいは組織マトリックスに対する自己抗体が原因となる場合 自己抗体と自己抗原の反応により引き起こされる免疫応答が病因となる。 (例)自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性血小板減少性紫斑病 ②ホルモンなどの整理性物質あるいはその受容体に対する自己抗体が原因となる場合 自己抗体が直接標的細胞の機能不全を誘発する。 (例)重症筋無力症、グレーブス病(バセドー病) <Ⅲ型> 血液中の抗原とそれに対する自己抗体によって形成される免疫複合体が血管壁に沈着してその部位で補 体が活性化されて白血球の遊走や活性化を誘導し、炎症を引き起こす。 (例)全身性エリテマトーデス(SLE) 自己反応性 T 細胞がエフェクター細胞となって起こる病態 <Ⅳ型> T 細胞異常によって T 細胞が遅延型過敏性反応(DTH)や細胞傷害活性を発揮して臓器・組織障害をもた らしおこる病態。DTH 反応とは自己抗原に特異的な T 細胞が自己抗原の刺激に応答して種々のサイトカイ ンを産生、マクロファージを活性化し炎症を誘導する反応である。また、一部の CD8+T 細胞はパーフォリ ンやグランザイムなどを用いて、標的細胞を破壊する。 (例)インスリン依存性糖尿病、関節リウマチ

(25)

問 18:アレルギーとアレルギー疾患について説明しなさい

解答例) 【アレルギーとは】(コア講義 P130) 免疫応答による生体にとって有害な過敏反応。狭義では、Ⅰ型アレルギー反応のことを指す。 【アレルゲンとは】 IgE 抗体の産生を促す抗原。アレルゲンは蛋白質由来のペプチドである。また、酵素活性を持っているも のが多く、微量で作用する。分子量が小さく、可溶性なので粘膜などに浸透しやすいという性質を持つ。 (例)ハウスダスト、ダニ、花粉、卵など 【アレルギーの分類】 ・Ⅰ型アレルギー:アナフィラキシー型ともいう。IgE 抗体が関与する。 ・Ⅱ型アレルギー:細胞傷害型。IgG, IgM 抗体が関与する。 ・Ⅲ型アレルギー:免疫複合体型。IgG, IgM 抗体が関与する。 ・Ⅳ型アレルギー:遅延性アレルギーである。T 細胞依存型。抗体は関与しない。 【Ⅰ型アレルギーの発生機序】 (1)アレルゲンに晒されると Th2 細胞が誘導される。 (2)Th2 細胞が IL-5 と IL-13 を産生して好酸球を増やし、炎症部位へ集める。 (3)IgE 抗体が好塩基球や肥満細胞の FcεRI(高親和性 IgE 抗体受容体)に結合する。

(4)アレルゲンにもう一度晒されると好塩基球や肥満細胞上の IgE がアレルゲンによって架橋される。 (5)好塩基球や肥満細胞が活性化し、ヒスタミンやセロトニンを即時性に、少し遅れてロイコトリエンなど を産生する。結果として、気管支平滑筋収縮や血管拡張、血管透過性の亢進、白血球の遊走などの反応 を引き起こす。 (例) 全身性アナフィラキシー、蕁麻疹、季節性鼻炎、結膜炎、気管支喘息、食物アレルギー 【Ⅳ型アレルギーの発生機序】 <サイトカインを媒介とする反応> (1)T 細胞が活性化する。 (2)感作 T 細胞が抗原侵入部位へ浸潤する。抗原により再び刺激されるとサイトカイン産生。炎症細胞集積。 (3)マクロファージが活性化し、炎症性サイトカインによる炎症が起こる。 <T 細胞による直接細胞傷害> 細胞傷害性 T 細胞が直接炎症を起こす。 (例)肺結核、らい、接触性皮膚炎

(26)

問 19:ワクチンについて説明しなさい。

解答例) 【目的】(コア講義 P259) ◇ワクチンは疾病の流行防止、疾病の発症阻止及び軽症化を目的としている。 ◇ワクチンを予防に用いるべき感染症は、伝染力が強いことに加えて、 ・高確率で死に至ったり重度の後遺症を残したりするもの(例)ポリオ、日本脳炎、破傷風など ・重症化傾向が強くまれに致死的となるもの(例)百日咳、結核、麻疹、インフルエンザなど ・一般に軽症であるがまれに重度の合併症を伴うもの(例)風疹、ムンプス、水痘など といった特徴を持つ。 【種類】 現在用いられているワクチンは生ワクチンと不活化ワクチンとサブユニットワクチンに分けられる。以下 でそれぞれの特徴について述べる。(サブユニットワクチンは、新しいタイプのワクチンの一つである。) <生ワクチン> 病原体の病原性を弱める処理を行ったもので、液性免疫と細胞性免疫を同時に誘導することができ、有 効性が大きい。一方、病原体による過剰免疫反応や感染といった副作用、弱毒株が野生型に復帰 (revertant)、免疫不全者と家族への接種の禁忌、アナフィラキシーショックといった問題点もある。 (例)ポリオ、麻疹、風疹、MR(麻疹・風疹混合)、BCG、水痘、ムンプス、黄熱 <不活化ワクチン> 不活化ワクチンは加熱やホルマリンなどで病原性を欠如させる処理を行ったもので、免疫不全患者の家 族にも使用可能である。問題点としては、効果発揮には複数回の接種が必要であることや、製造コストの 大きさ、まれにアナフィキシーショックを起こすことなどがあげられる。 (例)DPT/DT、日本脳炎、インフルエンザ、B 型肝炎、A 型肝炎、コレラ、腸チフス、ワイル熱、狂犬病、 肺炎球菌 <サブユニットワクチン> ウイルス遺伝子の一部をプラスミドベクターに結合して、細菌や酵母に導入して蛋白質を産生させ、精 製してワクチンとして用いる。利点としては、培養不可能、危険度の高い病原体ワクチンが可能なほか、 ワクチンの生産時間・経費の節約、高純度ワクチンが得られることがあげられる。一方、防御抗原遺伝子 のクローニングが必要であることや、目的遺伝子の発現が困難であること、生産された抗原は可溶性で免 疫原性(抗原を投与すると抗体産生を誘導すること)が弱いという問題点もある。B 型肝炎ワクチンで実 用化されている。 ◇現在開発中のワクチンには、ペプチドワクチン、組換え生ワクチン、DNA ワクチン、食用ワクチンなどが ある。

Updating...

参照

Updating...

Scan and read on 1LIB APP