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集団における成員構成の違いが タイミング制御に及ぼす影響

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別紙様式1

修士学位論文

集団における成員構成の違いが タイミング制御に及ぼす影響

平成 25年  1月 11日 提出

首都大学東京大学院

人間健康科学研究科博士前期課程人間健康科学専攻        ヘルスプロモーションサイエンス学域  学修番号:11899603

 氏 名:金澤愛実

(2)

修士学位論文

集団における成員構成の違いが タイミング制御に及ぼす影響

金澤愛実

    首都大学東京大学院

人間健康科学研究科 人間健康科学専攻

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別紙様式3

平成 24年度 博士前期課程学位論文要旨

学位論文題名(注:学位論文題名が欧文の場合は和訳をつけること)

  集団における成員構成の違いがタイミング制御に及ぼす影響 学位の種類: 修士(健康科学)

   人問健康科学研究科 博士前期課程人間健康科学専攻    ヘルスプロモーションサイエンス学域

     学修番号:11899603      氏 名:金澤愛実

         (指導教員名:今中國泰教授)

 集団で調和のとれた行動,たとえば複数人で楽器を演奏する,歩調を合わせて行進する,

合唱をするなどを実施するときには,互いのタイミングを合わせるスキルが不可欠である.

こうした他者との協調運動を達成する基盤となっているものは,外的刺激に対するタイミ ング制御の能力である.また,他者との協調運動の波及効果として,タイミングを合わせ たリズミカルな動作を一緒に行うことで,課題後の友好度や集団の一体感が高まると報告 されている.このような対人協調運動と対人認知との関連から,好意・親密さといった集 団成員間の結びつきが強い集団とそうでない集団とでは,協調課題におけるタイミング制 御応答に差異が見られると考えられる.

そこで本研究では,集団での同期タッピング課題を用いて,集団成員問の結びつきの強さ

(集団凝集性)がタイミング制御応答に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.実験 1では同期タッピング課題を単独・集団で行わせ,他者と一緒に課題を行うことで個々人 の応答に差異が見られるかどうか検討した.その結果,他者と一緒に課題を行った場合に,

タッピングの先押し現象が強まることが明らかになった.また,一部の集団では個々人が 他者の応答と連動しながら応答していることが示された.さらに,実験2では,集団凝集 性の影響を検討するため,実験集団の成員構成を実験的に操作して課題を行わせた.実験 集団として同一の運動部・サークルから抽出した既成集団(高凝集性を想定)と,見知らぬ 者同士の非既成集団(低凝集性を想定)を用いた.その結果,既成集団・非既成集団ともに 実験1の結果と同様,集団課題では先押し傾向が強まった.さらに注目すべき点として,

既成集団は非既成集団に比べて他の成員の応答を参照しながら柔軟に自分の応答を調節 する傾向があることが示唆された.

 2つの実験から,個々人のタイミング制御応答は他者の存在および集団の成貝構成の質 的な違いによって影響を受けることがわかった.特に,凝集性が高いと考えられる既成集 団では,他者の応答を参照しながら柔軟に応答していることが明らかになった.他者の応 答に対するミリ秒単位での適応や調節は,対人協調運動の円滑化に寄与する重要な要因で あると考えられていることから,凝集性の高い集団では時間的協調の巧みさによって円滑 な協調運動が達成されていると考えられる.集団凝集性については,特にスポーツ集団の 研究において,パフォーマンス(競技成績)との関連が多数報告されている.本研究で得ら れた結果から,先行研究における「集団凝集性の高い集団はパフォーマンスが高い」とい

う一般的認識は,成員問の時間的協調という要因が媒介していることが推察される.また,

成員間の協調を要するタイミング制御課題には,成貝構成の違いだけではなく,スポーツ における競技特性が反映される可能性があると考えられる.

(4)

      要約

 集団で調和のとれた行動,たとえば複数人で楽器を演奏する,歩調を合わせて行進 する,合唱をするなどを実施するときには,互いのタイミングを合わせるスキルが不 可欠である.こうした他者との協調運動を達成する基盤となっているものは,外的刺 激に対するタイミング制御の能力である.また,他者との協調運動の波及効果として,

タイミングを合わせたリズミカルな動作を一緒に行うことで,課題後の友好度や集団 の一体感が高まると報告されている.このような対人協調運動と対人認知との関連か ら,好意・親密さといった集団成員間の結びつきが強い集団とそうでない集団とでは,

協調課題におけるタイミング制御応答に差異が見られると考えられる.

 そこで本研究では,集団での同期タッピング課題を用いて,集団成員間の結びつき の強さ(集団凝集性)がタイミング制御応答に及ぼす影響を明らかにすることを目的と

した.実験1では同期タッピング課題を単独・集団で行わせ,他者と一緒に課題を行 うことで個々人の応答に差異が見られるかどうか検討した.その結果,他者と一緒に 課題を行った場合に,タッピングの先押し現象が強まることが明らかになった.また,

一部の集団では個々人が他者の応答と連動しながら応答していることが示された.さ らに,実験2では,集団凝集性の影響を検討するため,実験集団の成員構成を実験的 に操作して課題を行わせた.実験集団として同一の運動部・サークルから抽出した既 成集団(高凝集性を想定)と,見知らぬ者同士の非既成集団(低凝集性を想定)を用いた.

その結果,既成集団・非既成集団ともに実験1の結果と同様,集団課題では先押し傾 向が強まった.さらに注目すべき点として,既成集団は非既成集団に比べて他の成員 の応答を参照しながら柔軟に自分の応答を調節する傾向があることが示唆された.

 2つの実験から,個々人のタイミング制御応答は他者の存在および集団の成員構成 の質的な違いによって影響を受けることがわかった.特に,凝集性が高いと考えられ る既成集団では,他者の応答を参照しながら柔軟に応答していることが明らかになっ た.他者の応答に対するミリ秒単位での適応や調節は,対人協調運動の円滑化に寄与 する重要な要因であると考えられていることから,凝集性の高い集団では時間的協調 の巧みさによって円滑な協調運動が達成されていると考えられる.集団凝集性につい ては,特にスポーツ集団の研究において,パフォーマンス(競技成績)との関連が多数 報告されている.本研究で得られた結果から,先行研究における「集団凝集性の高い 集団はパフォーマンスが高い」という一般的認識は,成員間の時間的協調という要因 が媒介していることが推察される.また,成員間の協調を要するタイミング制御課題 には,成員構成の違いだけではなく,スポーツにおける競技特性が反映される可能性 があり,今後さらなる検討が必要であると考えられる.

(5)

目次

第一章 緒言...................

第二章 木研究の背景............

 第一節 対人協調運動と対人認知.........

     1.感覚運動同期(Sensorimotor synchronization)における応答特性     2.二者協調課題におけるSMS応答特性

     3.協調運動と他者への友好度・集団の一体感  第二節 集団凝集性とタイミング制御応答...

     1.集団凝集性の測定     2.集団凝集性と協調運動

第三章 木研究の目的....

第四章 実験1:同期タッピング課題における他者存在の影響..........

     1.目的     2.実験方法      3.実験手続き     4.分析方法      5.結果     6.考察

第五章 実験2:同期タッピング課題における集団成員操作の影響.....

     1.目的     2.実験方法      3.実験手続き     4.分析方法      5.結果     6.考察

弔ハ早 総合考察................

     1.単独課題と集団課題の比較     2.集団間の比較

     3.今後の展望

第七章 結論.........

謁寸舌辛.........

引用文献..、

補足資料...

.1

...3

..3

....1O

....13

....15

...28

..42

..45

..46

..47

...51

1.予備実験1 2.予備実験2

(6)

3.状態不安尺度回答用紙

4.課題に関する主観的評価回答用紙

(7)

第一章 緒言

 近年,コミュニケーション研究の領域において,対人協調運動に関する実験的研究 が多数報告されている.たとえばそのひとつとして,外的イベント(視覚刺激や音刺 激)に合わせた手指タッピング課題を用いて,コミュニケーションや協調運動に関わ

るタイミング制御についての研究が行われている仏schers1eben,2002;Ke11er&

Repp,2004;小松&三宅,2003.2005;Merker,1999;三宅,大西,&ペッペル,

2002;Prinz,1992;Repp,2003.2005).外的イベントに対する同期タッピング課題に おいては,その応答の特徴として尚早反応(負の非同期:Negative mean asynchrony)

が観察される.この尚早反応は外的イベントに対する予測的な応答であり,対人コミ ュニケーションや協調運動を円滑に行うための基盤であると考えられている(Repp,

2005).同期タッピングは,実験参加者が単独で刺激に応答する場合の特性だけでな く二者間での協調を要する課題にも用いられており,他者の応答に対する予測や調節 の能力と協調運動の円滑さの関連が検討されている(Ke11er&Repp,2008;Knob1ich

&Jord−an,2003;Konva1inka,Vuust,Roepstor町&Frith,2010;Pecenka&Ke11er,

2011).

 さらに,同期タッピング課題を他者と協調して遂行すると,その相手に対して友好 的な感情を抱きやすい傾向があるということが報告されている.Hove&Risen

(2009)は,視覚刺激をタッピングターゲットとして用い,他者が自分と同じタイミン グでタッピング動作を行うと,そうでない場合と比べて友好度を高く評価することを 示した.また,タッピング課題に限らず,他者とタイミングを合わせた運動をするこ とで,」緒に運動を行った他者との友好度や信頼感がより高く認識され,集団凝集性 も高まるという報告もある(Wi1termuth&Heath,2009).これらの研究では,いずれ も協調運動を実施することにより他者への好意が高まると結論づけている.実践的な 研究においても,学級集団で打楽器を用いたリズム・アンサンブルを継続的に行うこ

とによって,集団凝集性が高まることが示唆されている(吉積,2008).

 先行研究(Hove&Risen,2009;Wi1termuth&Heath,2009;吉積,2008)で報告さ れているように,行動を同期させることに他者との結びつきを強める効果があるとす ると,成員同士の結びつきすなわち集団凝集性が高い集団とそうでない集団では,タ イミング制御課題における応答に差異がみられると考えられる.集団凝集性という概 念は集団成員間の友好度や一体感を示しており,スポーツ集団,軍隊,セラピーグル ープ等の社会集団において凝集性とその集団の成功を関連付けた研究が行われてき た(Levine&More1and,1990).凝集性の測定には主に質問票が用いられており

(Carron,1982;Carron,Bray&Eys,2002;Evans&Jarvis,1980;lMartens&

Peterson,1971;Sa1minen&Luhtanen,1998;Widmeyer,Braw1ey&Carron,1985;

Yuke1s㎝,Weinberg,&Jackson,1984;阿江,1986.1987;樫塚,五藤,伊達,&田嶋,

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2008;丹羽,1972),非言語的行動を指標とした研究は極めて少ない.集団凝集性を非 言語的行動(たとえばディスカッション中の行動観察など)から検討した研究では,凝 集性の高い集団ではメンバー同士が物理的に近接する傾向があること(Pipe4

Marrache,Lacroix,Richardsen,&Jones,1983),相手に注意を向けること(Hung&

Gatica.Perez,2010;Tick1e−Degnen&Rosentha1.1987)などが報告されている.また,

集団凝集性と関連があると考えられる疎通性(rapport)や自己開示の程度と非言語行 動の同期に対応関係がみられることも報告されている(Mi1es,Nind,&Macrae,2009;

Vacharku1ksemsuk&Fred−rickson,2012).

 集団凝集性と対人協調運動が関連することを示唆する知見(Hove&Risen,2009;

Ke11er&Repp,2008;Knob1ich&Jordan,2003;Konva1inka,et a1.,2010;Pecenka

&Ke11er,2011;Wi1termuth&Heath,2009;吉積,2008)を踏まえて,木研究では集 団凝集性が対人協調課題におけるタイミング制御応答に及ぼす影響を同期タッピン グ課題を用いた2つの実験により検討することとした.同期タッピング課題は,手指 による部分動作で大きな力を必要としないことからタイミング制御の検討に適した 課題であり,音楽や対人コミュニケーション研究の領域で多くの知見がもたらされて いる.同期タッピングを用いた従来の研究(Ke11er&Repp,2008;Ke11er&Repp,

2004;小松&三宅,2003.2005;Konva1inka,eta1.,2010;三宅ら,2002;Pecenka&

Ke11er,2011;Prinz,1992;Repp,2003)では,いずれの研究も単独あるいは二者間の 課題を用いており,3名以上の協調運動を課題とした例はない.しかし3名以上の集 団では,2名での協調運動よりも多くの相互作用が生じ,個々人の応答に影響を及ぼ すと考えられる.そこで実験1では,複数の他者と」緒に同期タッピング課題を行う ことで本来の個々人の応答が変化するかどうか明らかにすることを目的とした.その ため,同性による4名の実験集団を作り,同一のタッピング課題を単独および集団で 行わせ,タッピング応答の正確性(非同期量)と変動性(非同期量の標準偏差)を比較し た.また,集団課題における個々の成員間の応答の関連性を捉えるため,自己相関に よる時系列分析を行った.実験2では,集団凝集性の程度の差異が成員のタイミング 制御応答に及ぼす影響を検討した.そのため,実験集団の成員構成に実験的な操作を 加え,凝集性が高いと考えられる集団として同一の運動部から抽出した集団(既成集 団)を,凝集性が低いと考えられる集団としては互いに面識のない集団(非既成集団)

を用いた.これら2種類の実験集団について,実験1と同様に単独・集団の比較と集 団間の比較を行い,成員構成によって他者の存在の影響がどのように異なるかを検討

した.2種類の実験集団の応答特性に差異がみられれば,それは成員構成の違いを反 映したものであり,集団凝集性の程度の違いがどのように協調運動特性に反映される のかが明らかとなると考えた.

(9)

第二章 本研究の背景

第二章では,まずタイミング制御課題を用いた対人協調運動の研究について概観し,

さらに協調運動の円滑さと関連する可能性のある研究として集団凝集性研究に着目 し,本研究の日的と方法に関連する知見に言及する.

第一節 対人協調運動と対人認知

 近年,コミュニケーション研究の領域で,対人協調運動に関する研究(Aschers1eben,

2002;Ke11er&Repp,2004.2008;Knob1ich&Jordan,2003;小松&三宅,2003.

2005;Konva1inka,et a1.,2010;lMerker,1999;三宅ら,2002;Pecenka&Ke11er,

2011;Prinz,1992;Repp,2003.2005)が多数報告されている.それらの先行研究では,

外的刺激にタイミングを合わせて運動する際の応答特性とともに,他者とタイミング を合わせた動作を行うことで,課題後の友好度や一体感が高まると報告されている.

ここでは,協調運動に関する実験研究を概観し,対人協調運動の基盤となるタイミン グ制御について,同期タッピング課題の応答特性を取り上げ,他者との結びつきの強 さがタイミング制御応答と関連している可能性について言及する.

1.感覚運動同期(Sensorimotor synchronization)における応答粋性

 対人協調運動を達成するには,他者と動作のタイミングを合わせなくてはならない.

オーケストラのように複数人で楽器を演奏する,歩調を合わせて行進する,合唱をす るなど,集団で調和のとれた行動をするときには,互いのタイミングを合わせるスキ ルが不可欠である.様々なリズムに合わせて運動をするときの同期性,同調性を示す 感覚運動同期(Sensorimotor synchronization:SMS)は,人間に特有の能力であり,

音楽の演奏だけでなく言語の発展やコミュニケーションにとって重要な役割を果た している(Merker,1999).SMSの特性を実験的に検証する研究では,断続的に提示さ れる聴覚刺激や視覚刺激に対してタイミングを合わせて運動反応を行う課題がよく 用いられるが,その典型例として同期タッピングが分析の対象となってきた.Repp

(2005)によると,等間隔で与えられる聴覚刺激に対する運動反応の感覚運動同期は,

特定の頻度あるいは刺激の間隔(interonset interva1s:IOI)においてのみ生起可能と されている.手指タッピング実験では,1つの刺激に対して1回タップする課題でIOI の下限が150〜200ミリ秒間隔,上限がおよそ1.8秒間隔であり,この限界を超える と同期タッピングを維持するのが困難になりタッピング間隔の変動性が増大する.ま た,同期タッピング時にみられる応答のタイミングバイアス(遅延や尚早反応)の特徴

として,尚早反応化つまり負の非同期(Negative mean asynchrony:NMA,図1,図 2)を挙げている.NMAは,同期タッピング課題のターゲット刺激に対してタッピン グが数十ミリ秒先行する現象であり,多くの研究で取り上げられてきた.一般的に

(10)

NMAは非意識的に生じていること仏schers1eben,2003),刺激呈示とタッピング応 答のタイミングを物理的に一致させると,被験者白身はタッピング応答が 遅れてい

と感じること(Vos,Mates,&vanKruysbergen,1995),IOIを短くするとNMA が小さくなること(Repp,2003),NMAには個人差が大きいこと(Aschers1eben&

Prinz,1995),そして音楽の訓練を受けていない人に特有の現象であり音楽に携わっ ている人のNMAは極めて小さいということ(Repp,2004)などが明らかにされている.

また,非同期量の大きさは実験条件によって大きく変動するものではあるが,タッピ ングターゲットに対して完全に同期してタップできる者や,タップが遅れて生じる者 はいないとされている仏schers1eben,2002).

 NMAが生じる原因としては,脳内表象モデル(the representationa1mode1s,図 3)が考えられている.クリック音(聴覚刺激)よりも指先の接触(体性感覚)の情報処理に 時間を要するため,クリック音とタップを同期させようとすると,実際にはタップが クリック音に先行して行われる(Prinz,1992).また,NMAという現象の機能的な意 味は,人が外部イベントに対してタイミングを合わせて応答するときの感覚運動特性 を示しているだけでなく,円滑な運動反応遂行のための予測的な運動制御が行われて いることをも示唆している(小松&三宅,2003.2005;三宅ら,2002).したがって,

同期タッピング課題は単なる感覚運動協調課題としてのみならず,対人コミュニケー ションを含む自己と他者間の共同作業や協調運動を達成する基盤としてのタイミン グ制御研究にも用いられている(小松&三宅,2003.2005;三宅ら,2002).

(11)

StimulusOnset

    ▼

Stimu1usOnset

    ▼

周期的な 音刺激

タッピング応答

    ■

伯pOnset   ▼I

    1     1     ■

   1

花pOnset

  ▼

I  11

・■

I1 I1

       図1負の非同期現象(三宅ら,2002 を改変)

周期的な刺激にタイミングを合わせてタッピングを行わせると,その応答は刺激呈示に先行 して生起することが知られている.

25 20 115

頻10

  5 O

・450・400・350・300・250・200・150・100 ・50        非同期量(mS)

0   50  100 150 200 250

      図2 同期タッピング課題における非同期量の分布(三宅ら,2002 を改変)

600ms間隔で刺激呈示をした場合の例である.横軸のOはタッピングターゲットとなる刺激が呈示さ れた時点を表し,マイナス方向はターゲット呈示に先行してタッピング応答が行われたことを示す.

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クリック音

運動指令 11 脳内表象

聴覚

]手指

ダツ l     l

撃h負の非同期!

時間

       図3脳内表象モデル(Prinz,1992 を改変)

負の非同期現象は聴覚刺激と手指の体性感覚情報が脳に伝達されるまでの時間差によって生じ るという説

(13)

2.二者協調課題におけるSMS応答特性

 同期タッピングに代表されるSMS実験では,個々の被験者を対象にその応答特性 が検討されてきた.しかし,近年ではSMSの能力が対人コミュニケーションや協調 運動の基盤となっている可能性が注目され,二者による同期タッピング課題を用いた 実験研究が行われるようになっている.

 Konva1inka,eta1.(2010)は,タッピングの聴覚フィードバック条件を操作して実 験を行った.参加者は(a)メトロノーム音を聞く条件(メトロノーム群),(b)二者それぞ れが自分のタッピングによって生成された拍を聞く条件(セルフ群),(C)二者いずれか の拍を聞く条件(一方向群),(d)二者それぞれが相手の拍を聞く条件(双方向群)の4群 に振り分けられ,聞こえてくる音に同期してタップすることを求められた.二者のタ ッピング間隔を相互相関を用いて分析した結果,セルフ群においては(相手の拍を聞 いていないため)相関関係がみられなかったのに対し,双方向群ではラグ 1(直前の相 手のタップ)とラグ十1(直後の相手のタップ)で有意な正の相関,ラグ0(同時点)で有意 な負の相関という フォロワーパターン がみられた.また,二者のタッピングの同 期性については,双方向群より一方向群で低い値を示し,メトロノーム群と双方向群

には有意差がみられなかった.これらのことから,リーダーとフォロワーの関係(一 方向群)よりも,相互に応答性のある関係の方が同期しやすいこと,協調運動を達成 するためには相手の挙動を予測することに加えて双方が相手の動作にミリ秒単位で 適応することが重要であると示唆された.また,Pecenka&Ke11er(2011)も二者で相 互にタッピングを同期させる課題を用いて実験を行い,相手の挙動に対する予測能力 が高いペアにおいて協調タッピングがうまくいくことを示した.さらに彼女らは,相 手に注意を向けることや相手に合わせることが重要だと考えている人ほど予測能力 が高いことも報告している.

 このように,二者間でのSMS課題を用いて,円滑な協調運動達成を可能にする要 因が実験的に検討されている.また,二者間においてのみではなく,スポーツやダン スなど多くの成員間で適切なタイミングでの対人協調が要求される場面においても,

これらの知見が応用できると考えられる(Pecenka&Ke11er,2011).

3.協調運動と他者への友好度・集団の一体感

 他者との協調運動の波及効果として,Hove&Risen(2009)は,他者と運動のタイ ミングが一致すると,相手に対して感じる友好度が増加すると報告している.彼らは 一っ目の実験で二者のタッピング同期性が友好度に影響を与えるかどうか調べるた め,被験者と被験者になりすました実験者の2名に,ついたてを挟んで左右に並んだ 状態で同期タッピング課題を行わせた.視覚刺激としてはモニター上の高さ2cmの 枠内で上下に動く1Cmのバーを用い,バーが枠の下端にきたときに右手人差し指で ドラムパッドをタップするよう教示した.二者はついたてを挟んでいるので互いのタ

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ッピングターゲットを見ることはできないが,ドラムパッドから発せられる音によっ て,タップしたタイミングを聞くことができた.実験者のタッピング頻度は,被験者

と同」もしくは1.5倍に設定された.24タップ12試行の後,実験者に対してどの程 度好感を持ったかを とても嫌い から とても好ましい の9段階で回答させた.

その結果,二者間のタッピング非同期量の大きさが課題後の友好度と負の相関を示し,

二者が100ms以内にタップする頻度が友好度と正の相関を示すことがわかった.し かしながら,実験課題実施前の友好度を測定していなかったため,タッピングの同期 性が友好度を高めるという因果関係の有無まで示すには至らなかった.そこで実験2 では,実験1と同様に二者間のタッピング同期性を操作することに加え,課題の前後 に実験者に対する友好度を問い,二者間のタッピング同期性が課題実施後の友好度に 影響を与えるかどうか検討した.被験者は,実験者と同期してタップする群(同期群),

非同期してタップする群(非同期群),実験者は課題を行わず被験者が単独でタップす る群(単独群),の3群にランダムに振り分けられた.その結果,二者間の同期性と友 好度について実験1と同様の関連が得られ,友好皮の得点を課題前の得点で調整した 偏相関でも,0.1%水準で有意な相関関係がみられた.また,課題前の友好皮得点は 同期群と非同期群で差がみられなかったが,課題後の得点は同期群が高値を示した.

非同期群と単独群の間には有意な差はみられなかった.これらの結果から,タッピン グの同期性が二者間の友好度を高めることが示唆された.さらに,実験2の結果が 人的な 同期によってもたらされたものかどうか調べるために,実験3ではメトロノ ームによって生成された音を用い,被験者はそれに合わせたタッピングを行った.被 験者は,課題中に同期的にメトロノーム音が流される群,非同期的に流される群,メ トロノーム音なしの群,の3群に振り分けられた.友好度の測定は,実験2と同様に 行った.その結果,3群間で課題後の友好度に差はみられなかった.したがって,実 験1と実験2でみられたタッピング同期による友好皮の上昇は,対人的な同期によっ てもたらされたものであることが示唆された.彼らはこれら3つの実験によって,対 人的な運動の同期によって二者間の友好皮が高まることを示した.

 行動の同期が他者に対する友好度を高めるという現象は,タッピング以外の課題で も報告されている.合唱のような音楽による同期や,歩行のようなダイナミックな運 動においても,リズムを合わせて行うことによって個々人が集団へ貢献する程度や集 団の一体感(集団凝集性)が高まったという報告がある(Wi1termuth&Heath,2009).

また,中学生の音楽の授業でリズムアンサンブルを用いて,クラスの凝集性を高めよ うという実践的な試みにおいても,協調運動と凝集性との関連が検討されている(吉 積,2008).これらの知見は,複数人での運動の同期性とその集団における互いの友好 性,さらには集団凝集性の間に関連があることを示唆している.さらに,協調運動が 他者との結びつきを強めるだけでなく,タイミング課題に代表される協調運動のパフ ォーマンス特性には,対人友好度や対人コミュニケーション,さらには集団における

(15)

まとまり,凝集忙の形成に関与する要素や特性に関する内容が内包されている可能性 も示唆されている.

(16)

第二節 集団凝集性とタイミング制御応答

  先行研究(Hove&Risen,2009;Wi1termuth&Heath,2009;吉積,2008)で報告 されているように,行動を同期させることに他者との結びつきを強める効果があると すると,成員同士の結びつきが強い集団とそうでない集団では,タイミング制御課題 における応答に差異が見られると考えられる.そこで,成員同士の結びつきの強さや 一体感を表す概念として集団凝集性を取り上げ,集団凝集性がタイミング制御応答に 影響を及ぼす可能性について言及する.

1.集団凝集性の測定

 集団凝集性とは,「集団に留まるよう集団メンバーに働きかける力の集合体」

(Festinger,Schachter,&Back,1963)のことである.その測定においては凝集性はメ ンバーを集団へ留めるように働くr集団への魅力」として操作され(Carron,1982;

Cartwright,1968;Martens&Peterson,1971),現在では集団凝集性は集団のもつ課 題に関する凝集性と,魅力に基づく祉会的な凝集性の2種類に大別されると理解され

てし、る.

 凝集性の測定は,質問紙調査によるものが大部分であり,非言語的測定を試みた例 は少ない(Levine&More1amd,1990;Hung&Gatica・Perez,2010).非言語的行動を 指標とした測定では,凝集性の高い集団ではメンバー同士が物理的に近接する傾向が あること(Piper,eta1.,1983),相手に注意を向けること,(Tick1e・Degnen&Rosentha1.

1987;Hung&Gatica−Perez,2010)などが報告されている.また,凝集性と関連があ ると考えられる疎通性(rapport)や自己開示の程度と非言語行動の同期に対応関係が みられることも報告されている(Mi1es,eta1.,2009;Vacharku1ksemsuk&

Fredrickson,2012).

 集団凝集性を非言語的行動から検討した研究のひとつに,Piper,eta1.(1983)の研究 がある.彼らは集団の結束に関する3つの側面,すなわち①ある成員と他の成員との 結束,②ある成員と集団のリーダーとの結束,③ある成員と集団全体のあり方との結 束,の3種の結束要因が成貝個々人の行動とどのような関連を持つか検討した.45 名の参加者に,心理学者あるいは精神科医をリーダーとする計6名の小集団でディス カッションを行わせた.ディスカッションは1回90分で週2回,4週間にわたって 継続され,毎回のディスカッションの後に質問紙調査による集団の結束の程度が聴取 された.その結果,ディスカッション中の成員の行動と結束の程度の間に相関関係が みられ,集団への貢献皮が高いと感じているとディスカッション中のリーダーあるい は他の参加者との物理的距離が近い1r=.32,ρく.041,メンバーとして自分は重要な 存在であると感じていると集合時間に遅刻しないレ=.30,ρ<.051,リーダーの好ま しさが高いと他の参加者との物理的距離が近いレ=.34,ρく.051ことが報告されてい る.Piperらはこれらの結果から,集団凝集性が高まることで縦断的に個々の成員の

(17)

行動に変化が生じることを示唆した.

 他方,集団凝集性測定の圧倒的多数となっているのは,集団の性質に特化した質問 票やソシオメトリックテストなどの自己報告によるものである(Drescher,

Bur1ingame,&Fuhriman,1985).凝集性の測定は,セラピー,精神療法,カウンセ リング,個人の能力開発の分野で多く行われてきたが,最も体系的に行われたのは,

スポーツと運動の心理学分野においてである.1971年にMartens&Petersonがス ポーツ集団に特化した凝集性の質問票(Sport Cohesiveness Questiomaire)を発表し,

1980年代の半ばまで使用された.彼らの質問票は3群(個人対個人の関係,個人対集 団の関係,単位としての集団)8項目からなるものであった. ke1son,eta1.(1984)

は,大学のバスケットボールチームの凝集性を測定するために,多次元的集団凝集性 測定法を開発した.最初は41項目からなる質問紙が作成されたが,因子分析によっ て,最終的に4つの下位尺度(チームワークの質,集団の魅力,目的の統合,価値づ けられた役割)からなる22項目の質問票となった.Widmeyer,Braw1eX&Carron

(1985)は,Yuke1soneta1.(1984)の多次元的凝集性質問票が,バスケットボールとい うスポーツに特化されたものであるという問題点を指摘した.これらを克服するため に彼らはスポ』ツ種目に依存しない4尺度18項目の集団環境質問票(Group Environment Questiomaire:GEQ)を開発した(Braw1ey Carron,&widmeyer,

1987;Carron,Widmeyer,&Braw1eX1985;Widmeyer,et a1.,1985).この質問票で は,課題志向と社会志向の次元,集団的側面と個人的側面の次元の2次元から,「集 団の統合一課題」r集団の統合一祉会」r集団の魅力一課題」r集団の魅力一社会」と いう4つの尺度によって凝集性を測定している.また,スポーツ集団に限らず,より 広範囲の異なる集団で使用することのできる凝集性の測定尺度を作成しようという 意図のもとに,Evans&Jarvis(1986)は20項目からなる「集団への態度」尺度を開発

した.この尺度は高い内的整合性をもっており,他の尺度や凝集性の指標との相関が 高く,外的妥当性をもっていることが報告されている.

 日本国内でも多くの凝集性測定尺度が開発されている.丹羽(1972)は,運動部員 が自分の所属する部に対して実際に感じている魅力の内容と程度を明らかにして,集 団魅力からみた運動部の凝集性尺度を開発した.これは運動部員による部の魅力につ いての自由記述をもとに作成されたもので,31項目から成っている.この質問票は,

「集団における他の成員や人間関係の魅力」「集団が行う活動の魅力」「成員の個人的 日標達成の媒介としての魅力」「集団のもつ威信の魅力」「集団の目標や課題の魅力」

という5種類の魅力の源泉を想定している.後に作成された運動部の集団魅力調査票

(丹羽,1972)も同様の5源泉から集団凝集性の測定を試みている.また,阿江(1986)

は,「メンバーの親密さ」「チームワーク」「価値の認められた役割」「魅力」「目標へ の準備」という5因子19項目からなる集団凝集性尺度を作成した.

(18)

2.集団凝集性と協調運動

 Sebanz,Bekkering,&Knob1ich(2006)は協調運動に関する研究を概観し,協調運 動を円滑に行うためには,表象を共有すること,相手の行動を予測すること,相手と

自分の行動によって生じる結果を統合的に予測する能力が必要であり,それを可能に するものとして,相手が注意を向けている場所へ自分の注意を向けること,行為の目 的を知るために相手の行動を観察すること,課題についての表象を共有することが必 要であると述べている.ここで行動の同期,つまりタイミング制御を基盤とした対人 協調運動と集団凝集性の高い関連性に鑑みると,集団凝集性の程度の差異は成貝の協 調運動の円滑さに影響を及ぼすと考えられる.すなわち,集団凝集性の高い集団では 成員同士が相互に他者に注意を向け(Tick1e・Degnen&Rosentha1.1987),他者に注意 を向けることで他者の行動の予測ができる(Pecenka&Ke11er,2011)ことによって,

円滑な協調運動が達成されると考えられる.

 また,競技スポーツの分野では「集団凝集性が高いチームはパフォーマンス(競技 成績)が高い」という関係が報告されている(阿江,1987;Carron,eta1.,2002;樫塚ら,

2008; Le免bvre & Cunningham, 1977;Sa1minen & Luhtanen, 1998;

Van丘aechem・RawaX1976).しかしながら,これらの研究では質問票の得点と勝敗・

勝率の相関関係を報告するのみで,集団凝集性が高いとなぜ競技成績が高いのか,そ の機序についての示唆は得られていない.そこで,これまで単独あるいは二者間で得 られてきたSMS応答特性の知見を集団の協調運動へ応用し,成員個々人の行動や集 団での協調行動をタイミング制御の観点から検討することで,集団凝集性が成員間の 時間的協調を介してスポーツパフォーマンスに影響を及ぼすか否かに言及すること が可能であると考えられる.

 さらに,集団凝集性と協調運動の関連を明らかにすることで,集団でのSMS応答 特性が新たな凝集性の指標となる可能性がある.これまで集団凝集性の測定は主に質 問票によって行われてきたが,質問票による測定では,対象者が意識化している内面 をとらえることはできても,非意識的な背景を探ることはできず,さらに対象者が意 図的に回答を歪めることも可能であるという欠点がある(鎌原・宮下・大野木・中澤,

1998).このような短所に鑑みると,凝集性をとらえるには,質問票による測定だけ でなく,集団における個々人の行動と,それを支える認知的特性を考慮する必要があ ると考えられる.集団構成員間の行動特性,特に相互の協調行動の面からの凝集性の 検討は,従来行われてきた凝集性測定の方法とは大きく異なる視点からの検討方法と 考えることができる.

(19)

第三章 本研究の目的

 同期タッピング課題を用いた先行研究(Aschers1eben,2002;Ke11er&Repp,2004;

小松&三宅,2003.2005;Merker,1999;三宅ら,2002;Prinz,1992;Repp,2003.

2005)において,人間のコミュニケーションや協調運動の基盤となるタイミング制御 の特性が明らかにされてきた.特に,他者との協調が要求される課題では,互いの挙 動を予測し,相手の挙動に適応して柔軟に応答する能力が円滑な協調運動を支えてい ることが示唆されている(Ke11er&Repp,2008;Knob1ich&Jordan,2003;

Konva1inka,eta1.,2010;Pecenka&Ke11er,2011;Sebanz,eta1.,2006).さらに,他 者とタイミングを合わせた協調運動を行うことによって,その後の友好皮や信頼感,

集団の一体感が高まることも報告されている(Hove&Risen,2009;Wi1termuth&

Heath,2009;吉積,2008).協調運動の研究でもたらされてきた「タイミング制御と 協調運動」およびr協調運動と集団の一体感」の関連を踏まえると,集団の一体感,

すなわち集団凝集性と複数人での協調課題におけるタイミング制御応答には関連が あると考えられる.集団凝集性についてはスポ]ツ研究の分野でチームのパフォーマ ンスや競技成績との関連が多数報告されていることから(阿江,1987;Carron,et a1.,

2002;樫塚ら,2008;Le鮎vre&Cunningham,1977;Sa1minen&Luhtanen,1998;

Van血aechem−Raw町1976),集団競技におけるチームプレーのよさ,つまり対人協 調運動の円滑さに影響を与えていると考えられる.集団凝集性とタイミング制御の関 連が明らかになると,これまで主に調査研究で報告されてきた「集団凝集性が高い集 団はパフォーマンス(競技成績)が高い」という関係について,成員同士の時間的協調

という観点から示唆を与えることができると考えられる.

 これらの知見を踏まえて,本研究では集団凝集性がタイミング制御応答に及ぼす影 響を明らかにすることを目的とした.同期タッピングを用いた従来の研究(Ke11er&

Repp,2008;Ke11er&Repp,2004.2008;小松&三宅,2003.2005;Knob1ich&

Jordan,2003;Konva1inka,et a1.,2010;三宅ら,2002;Pecenka&Ke11er,2011;

Prinz,1992;Repp,2003)では,単独あるいは二者で課題を行なっており,3名以上の 協調課題を用いた例はない.3名以上の集団では,自他の1対1の関係だけでなく集 団成員である他者同士の関係も存在することから,2名での協調運動よりも多くの相 互作用が生じ,個々人の応答に影響を及ぼすと考えられる.そこで実験1では,複数 の他者と一緒に同期タッピング課題を行うことで個々人の応答が変化するかどうか 明らかにすることを目的とした.そのため,同一のタッピング課題を単独および4名

」組の集団で行わせ,タッピング応答の正確性(非同期量)と変動性(非同期量の標準偏 差)から他者の存在の影響を検討した.また,集団課題における成員問の応答の関連 性を捉えるため,自己相関による時系列分析を行った.実験2では,集団凝集性の程 度の差異が成員のタイミング制御応答に及ぼす影響を明らかにするため,実験集団の

(20)

成員構成に実験的な操作を加え,凝集性が高いと考えられる集団として同」の運動部 から抽出した集団(既成集団)を,凝集性が低いと考えられる集団として互いに面識の ない集団(非既成集団)を用いた.これら2種類の実験集団について,実験1と同様に 単独・集団の比較と集団間の比較を行い,成員構成によって他者の影響が異なるかど うか検討した.2種類の実験集団の応答特性に差異がみられれぱ,それは成員構成の 違いを反映したものであり,集団凝集性の程度の違いが協調運動特性に反映されるの か否か,反映されるならばどのような特徴がみられるのがが明らかとなる.

(21)

第四章 実験1:同期タッピング課題における他者存在の影響

1.日的

 これまでの研究(Hove&Risen,2009;Wi1termuth&Heath,2009;吉積,2008)か ら,対人協調運動と友好性の認識の間に関連があることが示唆されてきた.協調運動 の課題には,同期タッピングや歌唱,楽器の演奏等のリズミカルな動作を伴うものが 用いられているが,タイミング制御課題を他者と一緒に遂行することが個々人の応答 にどのような影響を及ぼすのかは明らかにされていない.そこで,実験1では,同性 による4名の実験集団を作り,他者と一緒に同期タッピング課題を行うことで個々人 の応答が変化するかどうか明らかにすることを目的とした.個々の成員が各々に与え られた個別の刺激に対して単独で応答する場合と,4名の集団で,」連の系列刺激に 順番に正確に応答していくという課題を行わせ,単独課題・集団課題におけるタッピ

ング応答の正確性(非同期量)と変動性(非同期量の標準偏差)を比較することで,同期 タッピング課題における他者存在の影響を検討した.

2.実験方法

(1)参加者

本学所属の大学生・院生24名(男女各12名,22.5±4.06歳)であった.そのうち1 名が左利きであった.同性4名による実験集団を6組作って課題を行わせた.実験集 団の形成に際しては,性別を統」するのみで,他の要因(年齢,集団内に知り合いが いるかどうか等)については統制しなかった.木研究は首都大学東京研究安全倫理委 員会で承認されており(承認番号24−1),各参加者は実験参加同意書に署名したうえで 実験に参加した.

(2)実験装置

直径115cmの円テーブル上に5cmX4cmの銅板を8枚設置し,4名両手分のタッピ ング面とした(図4).他の参加者との空間的配置を統」するため,参加者をサークル 状に座らせた.参加者の両手人差し指に金属製の小型ボタンを取り付けた(図5).テ ーブル上の銅板と指先のボタンにはそれぞれリード線が接続してあり,接触による電 気的信号が,テーブル下に取り付けたELECOM社製のUSBマウスを介してパーソ ナルコンピュータ(PC)に言己録されるようにした.すべてのマウスはELECOM社製の USBハブ(10ポート)と5mのUSBケーブルを用いてPCに接続した.刺激呈示には Neurobehaviora1System杜の実験プログラム言語Presentationを用い,SANWA SUPPLY社製のオーディオ延長ケーブル(5m)を介して,テーブル中央の4つのマル チメディアスピーカーから出力した.

(22)

     盈

銅板     スピーカー     ■ 8

。 =ユ

0書■

    図4 実験装置と参加者の配置

円テーブル中央にスピーカーを設置し音刺激を呈示し た.テーブルの円周に沿うように8枚の銅板を設置し,

4名両手分のタッピング面とした.

     図5実験装置

指先には金属製の小型ボタンを取り付け,テ ーブル上の銅板をタップさせた.リード線は テーブル下のマウスに接続されている.

(3)実験課題

(i)集団課題

500ms間隔で断続的に呈示されるクリック音刺激(1000Hz,持続時間20ms)に合わ せて,4名の参加者に順番に両手人差し指で1回すっ銅板をタップさせた.各参加者 は,1周8タップのうち連続する2タップを担当した(図6).500msという間隔は,

自律タッピング時にみられる最も自然な間隔であると言われている(Repp,2005).音 刺激が呈示された最初の8クリック(1周分)はリズムを聴かせ,2周目からクリック 音に合わせて銅板をタップさせた.銅板をタップした際にはボタンとの接触で「パチ ッ」という音が鳴り,その音は参加者全員に聞こえる状態であった.課題は20周(約 90秒)で1試行とし,時計回り・反時計回りそれぞれ12試行行わせた.また,タッ

ピングの第1打を担当する参加者は試行ごとに変え,実施順序はカウンターバランス

した.

(ii)単独課題

集団課題と同様の課題を単独で行わせた.ただし,1周8クリックのうち2クリッ ク(1番目と2番目,3番目と4番目,5番目と6番目,7番目と8番目の4種類)に対

して両手で順番にタッピングを行わせ,残りの6クリックは音を聴くだけでタッピン グ動作は行わせなかった.したがって,個々人がタッピングを行う頻度と, タッピ ングターゲットとなる音刺激に合わせてタップする という各参加者の課題目的は,

集団課題時と単独課題時で同一であった.

(23)

●● 00 08 0●

:鵠:ユ :鵠:ユ :路:ユ ●  ○ OO

 ∞●  ○

●・口 }一議

箏鰯 輯・辞

H 擁一≡

図6集団課題における参加者4名のタッピング順序 (時計回りの場合)

(4)質問紙調査

(i)状態不安尺度

 他者の有無や実験室環境に対する不安・緊張の程度を測定するため,STAI目本語 版(清水&今栄,1981)の状態不安項目(20項目)に回答させた.選択肢は 全くそうで

ない から 全くそうである の4件法であった.調査は単独課題・集団課題それぞ れ課題の前後に行った.

(ii)実験課題に関する主観的評価

 単独課題・集団課題それぞれρ終了後に,r課題の難易度(6件法: とても簡単だっ から とても難しかった )」「課題の楽しさ(6件法: とても退屈だった から

ニても楽しかった )」「課題の達成度(6件法: 全くうまくできなかった から てもうまくできた )」に回答させた.

3.実験手続き

 状態不安尺度(20項目)に回答させたあと,実験課題を行わせた.参加者には課題の 説明とともに,呈示されるクリック音に対して体を動かしてリズムをとることはしな いように教示した.12試行(回る方向は一定)終了時に10分程度休憩を挟み,後半の 12試行(前半と逆回り)を行わせた.課題終了後には状態不安尺度と,課題に関する質 問(課題の難易度,楽しさ,達成度)に回答させた.集団課題・単独課題で共通の手続 きをとり,所要時間はともに約90分であった.集団課題と単独課題は2日間に分け て実施し,実施順序は参加者間でカウンターバランスした.

4.分析方法

(1)タッピング応答の分析

(i)個々人の応答の分析

タッピングターゲットとなる音刺激と実際のタッピングの誤差(非同期量)の平均値 をタッピング応答の正確性の指標,非同期量の標準偏差をタッピング応答の変動性の 指標とした.これらふたつの指標は,それぞれ 他者の存在 要因2水準(単独/集団),

(24)

要因2水準(個人内第1打/第2打)の分散分析を行った.分析にはAN0 4onthe Web(http:〃wwwhju.acjp/〜kirikソanova4/index」s.htm1)を用いた.

(ii)集団課題における非同期量の時系列分析

 集団課題において,個々人の応答が他者の応答と連動しているのかどうかを検討す るため,非同期量の時系列データについて自己相関分析を行った.自己相関分析は,

時系列上のある時点の数値と先行する数値との相関係数を算出することで,時系列デ ータが全体として過去の履歴とどのような関連をもつか探索する手法である.相関係 数を算出する2点の数値の時系列上での隔たりの大きさを「ラグ」と表現する.つま り,時系列上の全ての数値について,その1っ前(過去)の数値との相関係数を算出し たものをラグ1の自己相関,2っ前との相関をラグ2の自己相関という.また,ラグ

○は同」の数値で相関係数を算出しているため,ラグ0の自己相関係数は常に1.0と

なる.

 まず,自己相関係数を集団課題・単独課題それぞれの時系列データ(160タップ分の 非同期量)から算出した.単独課題の時系列データについては,参加者のタッピング 順序が集団課題のときと同一になるように並べた単独課題時のデータを組み合わせ て,擬似的な時系列データとして作成した(図7).次に,集団課題時の自己相関係数 と単独課題時の自己相関係数をそれぞれz変換し,集団課題時の自己相関係数から単 独課題時の自己相関係数を減じた.これによって,個人の特性(非同期量の大きさの 個人差)を取り除いた集団課題特有の連動を抽出した(図8).本研究の実験課題におい ては,自己相関ラグが8のときにちょうど1周前のタップに相当する.そのため,先 行する1周分の連動として,ラグ1からラグ8までを分析対象とした.分析には JMP9(SAS社)を用いた.

(2)質問票調査の分析

 状態不安得点の分析には,2要因(他者の存在[単独/集団],[課題前/課題後])の分 散分析を用いた.実験課題に関する主観的評価の回答については,集団課題と単独課 題それぞれの得点を対応のある6検定で比較した.

(25)

集団課題での 時系列データ

一53.1

−21.8

−21.8

−6.2

−21.8

−53.2

一68.6;

一53.4

−69.2

単独課題でのデータを合成した      時系列データ

一16,8 14.4

2.5 2.5

8.3

−7.3

一20.5

−52.1

量、一R8.1、、

一16,8 14.4  8.3

−73

一38.一,

 2.5  2.5

      図7 単独課題時系列データの作成方法

4名の参加者が個別に行った単独課題時のデータを,集団課題時のタッピング順序に対応するように組み合わせ て,擬似的な時系列データを作成した.これを集団課題における応答と比較した.

集団課題時の自己相関係数

 O.6 曽O.4

送O・2

題。

rL]・o.2

 ・O.4  ・O.6

8

単独課題時の自己相関係数  0.6

曹O・4 ウ送α2

ヘ O

浮茶香[0・2

ソ一0.4

@−0.6

1「

 0.6 熱α4 峰0.2

鴉0

rローα2

 一0.4

 06

個人特性を差し引いた自己相関係数

       図8 集団課題独自の自己相関係数の算出方法

集団課題時の自己相関係数には,個人特性(非同期量の個人差)が含まれているため,単独課題時の自己相関係数 を差し引いて,個人特性を差し引いた連動を算出した.その際,相関係数はすべてZ変換を行った.

(26)

5.結果

(1)個々人のタッピング応答

 単独課題・集団課題名24試行,24名分のタッピング非同期量をヒストグラムにし たところ(図9),単独課題時のデータ分布に比べて集団課題時のデータ分布が負の方 向に分布していることがわかった.つまり,集団課題では単独課題に比べて先押しの 傾向が強まっていることが示された.この先押し傾向の指標として平均非同期量を求

めた.

 4000  3500  3000 悩2500

へ2000

iト1500

 1000

  500    0

.150 一100    −50     0      50

      非同期量(mS)

100   150

一単独 一集団

      図9 単独・集団課題における非同期量のデータ分布

横軸のOはタッピングターゲットとなる刺激が呈示された時点である、マイナス方向はターゲット呈示に先行し てタッピング応答が行われたことを示す.単独課題に比べて集団課題時に先押し傾向が強いことがわかる.

 非同期量を指標とするタッピングの正確性(図10)については,2要因分散分析の結 果, 他者の存在 要因の主効果が有意[ア(1,23)=22,005,ρく.0011であり,単独課題 に比べて集団課題において負の非同期量が大きく,先押し傾向が強かった.また,交

互作用が有意[ア(1,23)=18,936,ρく.0011であり,第1打【F(1,46)=34,451,ρく.0011 においても第2打[ア(1,46)=8,883,ρく.0051においても単独課題に比べて集団課題で 先押しの傾向が強く,単独課題においては第1行よりも第2打で先押しの傾向が強か った[ア(1,46)=10.119,ρく.0051.このことから,複数人での同期タッピング課題にお いて,他者の存在はタッピング応答の正確性に影響を与え,集団で課題を行うと正確 性が低下し先押し傾向が強まることが示唆された.

 タッピングの変動性(図11)については, 要因の主効果が有意[F(1,23)=4,927,ρ

く.051であり,第1打に比べて第2打において変動性が小さかった.しかし, 他者の 存在 要因の主効果[F(1,23)く1.01及び交互作用【ア(1,23)く1.01は有意ではなかったこ

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【大塚委員長】 ありがとうございます。.

本事象においては、当該制御装置に何らかの不具合が発生したことにより、集中監視室