(mS)
O
■ 1丁 制第2打
非25
同
期20
量 の15 標
準10
偏
(mS)
差5
O
図19タッピング応答の変動性(音楽経験なし) 図20タッピング応答の変動性(音楽経験あり)
縦軸は非同期量の標準偏差であり,個人内の変動性を表す.エラーバーは標準誤差である.音楽経 験の有無による差はみられなかった. *.
・ρく.05
6.考察
実験1では,同期タッピング課題を複数人で協調して行った際に,個々人がどのよ うな応答をするか明らかにするため,同一の課題を単独あるいは4名一組の集団で行 わせ,それぞれの応答を比較した.
その結果,他者と」緒に課題を行うことで,タッピング応答の正確性が低下し,単 独で課題を行った時に比べて先押しの傾向が強まることが示された(図10).同期タッ
ピング課題における先押し現象は,外的刺激に対する予測的挙動の現れであると言わ れている(三宅ら,2002).このことに鑑みると,他者と協調して課題を行った場合に は,より予測的に応答していたと考えられる.さらに,これを主観的評価の結果(図 14・16)と併せると,参加者は集団課題の方が単独課題よりも簡単だと感じており,達 成度は単独課題と集団課題で同等だと自己評価していたにも関わらず,集団課題時に は単独課題時より早いタイミングでタップしていたといえる.したがって,集団課題 において先押し傾向が強まる現象は参加者には意識されないレベルで生じていたと 考えられる.また,単独課題時の応答においては,個人内の第1行よりも第2打で先 押しの傾向が強かった.先行研究(Repp,2007)によれば,呈示される音刺激に対して 何回かの間隔をあけて同期タッピングを行う場合,奇数回日の刺激に対して応答する よりも偶数回目の刺激に対して応答する方が難易度が低いと言われている.しかし木 研究においては個人内の第1打,つまり奇数回日のタップで正確性が高く,先行研究 とは一致しない結果であった.この第1打と第2打の差は 6タップ分のインターバ ルの後に2回連続で応答する という特性によって,第1打目でより慎重に応答して いた,あるいは第2打目は第1打を手がかりにしてより予測的に応答していたもので あると考えられる.
タッピング応答の変動性(図11)については,他者と一緒に課題を行うことによる影 響はみられなかった.しかし,個人内の第1打と第2打の間に差がみられ,第1打の 方が第2行よりも変動が大きかった.先行研究(Ke11er&Repp,2004)では,両手を交 互に使った同期タッピング課題においては,非利き手よりも利き手の方が変動性が小
さいと言われている.しかし木研究ではタッピングを左周り・右周りで実施しており,
第1打・第2打の両者に右手・左手が含まれているため,ここでみられた差は利き手 の影響ではなく,時間的な前後の影響であるといえる.特に,第1打には,タッピン グの順番が回ってくるまで3秒間のインターバルがあるために,第2打と比較して応 答の変動性が大きかったと考えられる.
自己相関による時系列分析の結果から,他者と一緒に課題を行なっている場合,非 意識的に他者の応答を参照しながら自身の応答を調節している可能性が示唆された.
特に,実験課題においてテーブルの向い側に位置している参加者との間で,先行する 応答の尚早や遅延に同調する,あるいは尚早や遅延を修正するような連動がみられた.
この関係は視覚的な要因,つまり相手が正面に見えていることや,4タップ(2秒)前
という時間的な隔たりがあることによって生じていた可能性が考えられる.一方,集 団によっては自己相関係数がどのラグにおいても0付近で推移し,他者の応答と連動 することなく個々人が独立して応答していることも確認された.このことから,自己 相関分析によって得られたラグと相関係数の関係,例えば曲線のパターンや相関係数
の正負・大きさなどを集団全体の応答の特徴として,集団間の比較と分類ができるの ではないかと推察された.
第五章 実験2:同期タッピング課題における集団成員操作の影響
1.目的
対人協調運動のパフォーマンス特性と他者との結びつきの強さ(友好度・信頼感・
集団への貢献等)に関連があるとすると,成員同士の結びつきが強い集団とそうでな い集団ではタイミング制御課題の応答に差異が見られると考えられる.そこで,実験 2では,集団凝集性という視点から実験集団に操作を加え,成員同士の相互作用が経 験されており凝集性が高いと考えられる既成集団から抽出した実験集団(既成集団)と、
互いに見知らぬ者同士(非既成集団)の実験集団を設定した.もし,既成集団と非既成 集団でタイミング制御応答に差異がみられれぱ,それは集団の成員構成,つまり集団 凝集性の程度の違いを反映したものであると考えられる.
2.実験方法
(1)参加者
(i)既成集団
同一の運動部・サークルから抽出した同性4名×6組[男12名(バレーボール部,硬 式野球部,バドミントン部,バレーボールサークル),女8名(バドミントン部,バレ ーボールサークル),18.9±0.49歳1であった.そのうち2名が左利きであった.実験 集団の抽出に際しては,部内で自主的に4人組を作って参加してもらった.
(ii)非既成集団
大学生・大学院生からランダムに抽出した同性4名×5組(男4名,女16名,19.25
±1.09歳)であった.実験集団の形成に際しては,事前に集団内に知り合いがいない かどうか確認した上で決定した.
(2)実験装置と課題
実験1と同じものを用いた 3.実験手続き
実験1と同様の手続きで行った.ただし,全ての参加者が1目目に集団課題,2日 日に単独課題を行った.
4.分析方法
実験1と同様の手法で分析を行った.ただし,個々人の応答を条件間で比較する際 には,分散分析の要因として集団の違い(既成集団/非既成集団)を加え,3要因とし た.分析にはANO 4ontheWebを用いた.また,集団間の比較と分類を行うため,
実験1と同様の手法でラグ1からラグ8までの自己相関係数を算出し,各グループの 曲線パターンをもとにして階層的クラスター分析(Ward法)を行った.分析には
JMP9(SAS杜)を用いた.
質問紙調査については,集団の違い(既成集団/非既成集団)と他者の存在(単独課題
/集団課題)を要因とする2要因分散分析を行った.
5.結果
(1)個々人のタッピング応答
非同期量のデータ分布を見ると,既成集団(図21)と非既成集団(図22)の両者におい て,単独課題よりも集団課題のデータが負の方向に分布しており,先押し傾向が強ま ることが示唆された.
非同期量を指標とするタッピング応答の正確性(図23,24)を3要因分散分析によっ て分析したところ, 他者の存在 要因の主効果が有意[F(1,42)=6,425,ρく.051であ
り,単独課題に比べて集団課題では負の非同期量が大きく,先押し傾向が強かった.
また, 他者の存在 × 手 の交互作用が有意でありlF(1.42)=7,766,ρく.011,第 1打において単独課題に比べて集団課題で先押し傾向が強いことがわかった[F
(1,84)=12,310,ρく.0011.集団の違いによる主効果[ア(1,42)=1,473,ρ:0.2321及び交 互作用[全てア(1,42)<1.0]はみられなかった.
タッピング応答の変動性(図25,26)については, 他者の存在 要因の主効果が有 意[ア(1,42)=5,714,ρ<、051であり,単独課題に比べて集団課題で変動性が大きかった.
交互作用は有意ではなかった[ 集団の種類 × 他者の存在 X 手 :F(1,42)=0,393,
ρ=.5340】が,既成集団と非既成集団を別々に分析したところ,既成集団では単独課 題に比べて集団課題において変動性が大きかった[F(1,23)=10,672,ρ<.0051のに対
し,非既成集団では有意な主効果は認められなかった[F(1,19);2.116,ρ=0.16211.
そのため,3要因分散分析で得られた 他者の存在 要因の主効果は,既成集団で特 異的にみられた差が反映されたものと考えられる.
一単独
一■P独
■集団 ■集団
4000
@ 3500
@ 3000
f2500
@1タ2000
p 1500度 1000 500 0
4000
@ 3500
@ 3000
黹A2500
@1タ2000 p度1500
@ 1000
@ 500
@ 0 一150 −100 i50 0 50 100 150
150 100 50050100150
図21非同期量のデータ分布(既成集団) 図22 非同期量のデータ分布(非既成集団)
横軸は非同期量であり,Oはタッピングターゲットとなる刺激が呈示された時点を示す.マイナス方向はターゲ ット呈示に先行してタッピング応答が行われたことを示す1どちらの集団においても,単独課題に比べて集団課 題で先押し傾向が強いことがわかる.
・30
・25
・20 非 同 15 期 量・1O
(mS)
・5
0
一30
・25
・20
非
・15同 期 量(謁
・5
0
■第1打 騒第2打
;J=
単独 集団 単独 集団
図23 タッピング応答の正確性(既成集団) 図24 タッピング応答の正確性(非既成集団)
縦軸は負の非同期量であり,先押し傾向の強さを表す.エラーバーは標準誤差である.3要因分散分析において,
他者の存在 要因の主効果が有意であり,単独課題に比べて集団課題で先押し傾向が強かった.