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博士論文審査報告書

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Academic year: 2022

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早稲田大学大学院 理工学研究科

博士論文審査報告書

論 文 題 目

Positive solutions of nonlinear elliptic equations with G -symmetry

G - 対称性をもつ非線型楕円型方程式の正値解の存在

申 請 者

平田 潤 Jun Hirata

数理科学専攻

変分問題研究

2009 年 2 月

(2)

本論文では RN における非線型楕円型方程式の正値解の存在問題を研究している. すなわ ち N N とし,f(x, ξ) : RN×R R を与えられた連続関数とするとき,次の方程式の 解の存在問題がテーマである.

−∆u+u=f(x, u(x)) in RN, u(x)>0 in RN, u(x)∈H1(RN). (1) この問題において非線型項 f(x, ξ) が空間変数 x に依存しないときは, 球対称 (radially symmetric) な解 u(x) = u(|x|) の存在を常微分方程式を用いて解析ができ, よく研究され ている. 特にBerestycki-Lions (1983), Berestycki-Gallou¨et-Kavian (1983) により正値解の 存在のための非常によい条件が得られている. しかし f(x, ξ) が空間変数x に依存すると状 況はかなり異なってくる. 例えば f(ξ) がBerestyckiらの条件をみたせば

∆u+u=K(x)f(u) in RN (2)

K(x)≡1 のとき正値解をもつが, ∂x∂K

1 0, ∂x∂K

1 6≡0 のときK(x) が 1 にいかに近くと も(supx∈RN|K(x)−1|がいかに小さくとも), (2)は解をもたず, 解の存在問題はデリケー トなものとなる. (1)は群G⊂O(RN) の作用に関する次の対称性の仮定の下で考えられる ことが多い.

f(gx, ξ) =f(x, ξ) (xRN, ξ R, g∈G)

例えば Bartsch-Wang (1995)においては#{gx|g∈G}=(xRN \{0})をみたす無限 群 G⊂O(RN) の作用について (1) が不変なときを扱い, 非常に一般的な条件の下で解の 存在定理を得ている. この研究においてはG-不変な関数空間

HG1(RN) ={u∈H1(RN)|u(gx) =u(x) (x∈RN)}

Lr(RN) (2< r < N2N2) への埋め込みがコンパクトであることが本質的な役割を果たし ている.

対称性の条件をおかずに (1) の解の存在を議論する方法としては Lions (1984) らに よるconcentration-compactness method がある. この方法により対応する汎関数に対する

Palais-Smale 条件の崩れ方を詳しく調べることができる. しかしその情報を用いて解の存

在を示すには,

f(x, ξ) lim

|y|→∞f(y, ξ) (xRN, ξ >0) (3) 等の比較的強い条件が要求されることとなる.

本論文では有限群 G O(N) の作用の下で不変な非線型楕円型方程式 (1) の正値 解の存在が主要な研究テーマである. ここで G が有限群のとき HG1(RN) の Lr(RN) (2< r < N2N2) への埋め込みはコンパクトでなく, 無限群の場合と同様には議論ができな いことに注意されたい. また申請者は G が無限群の場合も扱い, 特別な場合ではあるが Bartsch-Wang (1995)の結果も拡張している.

以下,第1 章から順に各章の概要とその評価を述べる.

第 1 章では非線型楕円型方程式および関数空間 HG1(RN) に関する既存の結果をまと めると共に本論文で得られた結果の概要が述べられている.

第 2 章では有限群 G⊂O(N) の作用の下で不変な場合の非線型楕円型方程式 (1) の 正値解の存在を次の仮定の下で議論している.

(f1) (i)f(gx, ξ) =f(x, ξ) (xRN,ξ R,g∈G).

(ii) #{gx|g∈G} ≥2 (xRN\{0}). (4)

1

(3)

(f2) ξ に関して局所一様な極限 f(ξ) = lim|x|→∞f(x, ξ) が存在して次をみたす. (i) あるα > αG,C >0に対して

f(x, ξ)−f(ξ)≥ −Ceα|x|(ξ+ξp) (xRN, ξ >0).

ここで αG (0,2]は Gのみから定まる定数.

(ii) fξ(ξ)ξ = 0の近傍で非減少,さらにあるη >0に対して ξ 0のとき f(ξ) =o(ξ1+η).

(f3) 定数a1,a2>0,p∈(1,NN+22) が存在して

0< f(x, ξ)≤a1ξ+a2ξp (xRN, ξ >0).

条件(f1) は群の作用に関するものであり,例えば G=Z2 の場合 (f(x, ξ) =f(−x, ξ) をみ たす場合) をはじめとして多くの場合に適用できる. 条件(f2), (f3)も自然な条件である.

第2 章で得られた結果の代表的なものは次の定理である.

定理 1. (Theorem 2.4, 2.5)N 3 とし (f1)–(f3) に加えて次の2 条件のいずれかを仮定 する.

(A) あるµ >2 が存在して

0< µ

ξ 0

f(x, τ) ≤f(x, ξ)ξ (xRN, ξ >0).

(B) すべてのx∈RN に対してξ7→ f(x,ξ)ξ ; (0,)R は非減少. さらにx について一様 な極限 a(x) = limξ→∞ f(x,ξ)

ξ が存在し, a(x) ≡ ∞ あるいはa(x) (1,∞) をみたし, 後者の場合は極限lim|x|→∞a(x)>1が存在する.

以上の仮定の下で(1)は G-不変な正値解 u(x) をもつ.

この定理は先行結果である Adachi (2002)の結果を大幅に改良しており,u→ ∞ のと

f(x, u)が線型に近づく非線型方程式,例えば

∆u+u=K(x) u2

u+ 1 in RN

のような飽和効果をもつモデルへも応用可能であり高く評価できる結果である.

定理 1 の証明は変分的方法により行われる. より詳しくは (1) に対応する汎関数 I(u) : HG1(RN) R に峠の定理 (mountain pass theorem) を適用する. concentration- compactness method からI(u)に対する Palais-Smale条件が成立する範囲がわかり,I(u) の臨界点の存在を示すためにはミニマックス値 b= infγΓmaxt[0,1]I(γ(t)) の精密な評価 が必要とされる. 申請者は新しいinteraction estimate を開発し,極限汎関数のスケール不 変性を考慮した次の形のsample path

γ(t) =

m

`=1

ω(x

t −se`) (sÀ 1) (5)

を用いることによりb の評価を得ている. ここで,ω(x) は極限問題 ∆u+u =f(u) の 最小エネルギー解,またm= minxSN1#{gx|g∈G}であり, min を実現するx0∈SN1 に対して {e1,· · ·, em}={gx0|g∈G} である.

2

(4)

ここで新たに見いだされた評価から申請者の力量が見て取れる. また(5) の形の path を用いることにより,従来本質的にNehari 多様体N ={u|u6= 0, I0(u)u= 0}上において 行われた解析をより緩い条件の下で, Nehari多様体を用いることなく行う方法を与えてい る. この点でも興味深く,他の問題への応用も期待される.

第3 章では非線型 Schr¨odinger 方程式の定在波(standing wave) の存在を研究してい る. すなわち次の楕円型方程式の解の存在問題がテーマである.

∆u+V(x)u=f(u) in RN, u >0 in RN, u∈H1(RN). (6) (6)は (1)の特別な場合と見なすことができる. この章では(6) が無限群の作用および有限 群の作用で不変な場合の両者を研究している. ここでは有限群の場合 (Theorem 3.3) の特 別な場合を紹介するにとどめる.

定理 2. N 3 とし,V(x)∈C(RN,R), f(ξ)∈C2(R,R) は次の条件をみたすとする. (v1) 条件(4)をみたす有限群 G⊂O(N) の作用に関してV(x) は不変.

(v2) infx∈RNV(x)>0であり,極限V = lim|x|→∞V(x)(0,) が存在.

(v3) ある関数ϕ(x)∈L2(RN)∩W1,(RN)が存在して|x· ∇V(x)| ≤ϕ(x)2(xRN).

さらにあるα > αG,C0>0 が存在してV−V(x)≥ −C0eα|x| (xRN).

(f1) f(0) =f0(0) = 0, lim

ξ→∞

f(ξ) ξNN+22

= 0.

(f2) (v3) にあらわれる ϕ(x)kVkL より定まる定数a > kVkL が存在して lim inf

ξ→∞

f(ξ)

ξ [a,].

このとき (6)は G-不変な正値解u(x)をもつ.

条件(v3)は|x| → ∞のときの収束V(x)→Vの速さに関する条件である. またf(ξ) に関する条件(f1)–(f2) はf(ξ) の ξ∼0 および ξ ∼ ∞での挙動に関する条件であり,第 2

章(A), (B)のような大域的な条件は課されておらず,定理2 は非常に一般的な存在結果で

ある. このような一般的な設定の下では対応する汎関数が Palais-Smale 条件をみたすこと は期待できず,定理1の議論を直接用いることはできない. 申請者はStruwe, Jeanjeanらに より開発された monotonicity method等を駆使し,より精密化された interaction estimate を用いることにより解の存在を示すことに成功している. ここで用いられている方法は結果 と共に高く評価できる.

以上述べてきたように, 申請者は有限群G の作用の下で不変な非線型楕円型方程式の 正値解の存在問題において極めて精緻な研究を行い,価値ある成果を得ている. 作用する群 G が有限群の場合 HG1(RN) からLr(RN) への埋め込みはコンパクトとならず, 申請者の 研究以前は方程式が対称性を有していても解の存在問題に関して大きな寄与はないと思わ れていた. しかし申請者の研究により対称性の仮定の下では条件 (3) 等を仮定せずとも極 めて広いクラスの非線型方程式に対して解の存在結果が得られることがわかり, 解の存在 問題に対する群作用の有効性が再認識された. また証明中に用いられている sample path,

interaction estimateはオリジナリティーの極めて高いものであり,他の問題への適用,拡張

が期待されている. よって本論文を博士 (理学) の学位論文として価値あるものと認める. 2009年 2月

審査員

(主査) 早稲田大学教授 理学博士 (早稲田大学) 田中 和永 早稲田大学教授 理学博士 (東京大学) 大谷 光春 早稲田大学教授 理学博士 (名古屋大学) 山田 義雄

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