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生徒の理解を深める数学の授業づくり

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Academic year: 2021

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生徒の理解を深める数学の授業づくり -教科書を基盤にした授業実践をとおして-

高度学校教育実践専攻 実習責任教員 金 児 正 史 教員養成特別コース 実習指導教員 葛 上 秀 文 砂 川 若 菜

キーワード: 中学校学習指導要領解説数学編,教科書指導書第Ⅱ部詳説朱註編,朱註編コピー

1.1 年次授業を基にした具体的方策

授業づくりのチーム演習で,基礎インターン シップにむけた模擬授業を行った。筆者は,中 学校学習指導要領解説数学編(以下,学習指導要 領解説),教科書,指導書を参考にして学習指導 案を作成した。その中で,学習指導要領解説は,

小中高の12年間をかけて,算数・数学科教育の 目標を達成するよう作成されていることを知っ た。筆者は,小中高の12年間で児童生徒がどの ように学んでいくのか,学習指導要領解説にど のように記載されているのかを把握したいと考 え,小中高の学習指導要領解説をまとめていき,

自作の資料を作成した。この自作の資料作成を とおして,12年間の児童生徒の学びを知ること ができた。このような経験を通して,学習指導 案を作成する際,学習指導要領解説をしっかり 読み,文言の意味や学年ごとの目標などを把握 することが大切だと考えた。

2.研究のねらい

筆者は,学習指導要領解説の算数・数学科教 育の目標を達成する授業のために,学習指導要 領解説を基に作成された教科書にも,目を向け た。教科書も,小中高の12年間を見通したつ くりになっていることが分かった。教科書を基 盤にした授業は,小中高を見通した授業になる ことを,筆者は小中高の教科書をよむ中で実感 した。このような経験から,教科書を基盤にし て学習指導案作成を行っていくことにした。

また,基礎インターンシップで,筆者は生徒 の様々な学習段階,理解度,反応,気付き,つ まずきなどを十分に考慮せず,学習指導案を作 成しており,生徒を想定した教材研究ができて いなかった。生徒のために教科書の問題を正し く解釈するためには,生徒の実態に合わせた教 材研究が必要であると考えた。以上のことから,

筆者の課題は以下の2つであると考え,この課 題を改善するための方法を考え,実践していく ことにした。

課題① 学習指導要領解説を含む教科書を読 み込んだ授業づくりができていない 課題② 生徒の実態に合わせた教材研究がで

きていない 3.研究の方法

筆者は,教科書を基盤にした授業のために,

朱註編のコピーをとって,そこに学習指導要領 解説の文言や,筆者が大切だと思った事柄に下 線を引いてコメントを書くなどして,朱註編の コピーに筆者が書き込んだもの(以下,朱註編 コピー)を,授業を構成していくための重要な 資料として活用することにした。朱註編コピー を見れば,学習指導要領解説の文言や,筆者の 考えなどが分かるようにし,今後筆者が授業を 行う際,朱註編コピーを基盤にしようとした。

図1は総合インターンシップⅠの授業検討後 に修正した朱註編コピーの作成手順である。作 成手順1~5までが基礎インターンシップ後に

(2)

考えた部分で,総合インターンシップⅠの授業 検討後に作成手順5の[疑問を解決するための 4つの方策]と作成手順6を新たに追加した。

1.学習指導要領解説の「第2章第 2節 内容 2.各領域の内容の外観」,「第 2 章第 3 節 各学年の内容」の文言に下線をひく,自分 の言葉で補足説明を書き込むなどして,領 域の目標と各学年の目標を把握する。

2.指導研究編のコピーに記載されている単 元の目標,「既習事項」「この章の取り扱い」

などを読み,下線をひくなどして,学習指 導要領解説との繋がりや,単元を通しての 目標を把握する。

3.本時の目標を設定する

4.朱註編のコピーに記述されている「章の概 要」,「指導の要点」などを教科書の学習内 容と併せて読み,下線をひくなどして,本 時の学習内容を把握する。

5.教科書の学習活動への疑問を持つ場合は,

その疑問を解決していく。

[疑問を解決するための4つの方策]

・数学の専門的知識をつける

・他社の教科書や書籍から疑問解決の糸口 をみつける

・小学校算数,高等学校数学のどこに繋が る学習なのか把握する

・先輩方,同僚,後輩から,意見を頂く 6.学習指導要領解説の文言,補足説明,疑問

解決の際に新たに得た知識などを,付箋に 書き,朱註編コピーに貼る。

1 朱註編コピーの作成手順

また,生徒の実態を把握する為に,筆者が実 施する授業以外での授業観察を中心に,授業中 の生徒の発言やつまずきをひろって付箋にかき,

朱註編コピーに貼って,授業展開を考える際に

生徒のつまずきを想定し,発問の精選も試みる ことにした。

4.総合インターンシップⅡの学習指導案作成 と授業実践

筆者の課題が表出した授業を取り上げ,その 学習指導案の作成手順や,授業の実際,分析・

考察を明記する。

4.1 学習指導案の作成過程

本時は,学習指導要領解説の p.116からp.124 の範囲,第3学年,領域「B 図形」である。

教科書の範囲は,5章「図形と相似」1節「図形 と相似」の1/8時間目である。

本時の目標を,学習指導要領解説と指導研究 編を基に,「相似の定義を理解するとともに,相 似な図形の性質について考察する活動を通して,

相似な図形の性質を理解し,記号∽を用いて相 似な図形を表すことができる。」とした。本時は,

基準となる図形の2倍,1

2倍の図形を,方眼紙を 利用して作図させ,小学校の既習内容である,

拡大・縮小について振り返り(学習活動1),相 似について定義するとともに,相似な図形の対 応する線分や角の大きさに着目し,相似な図形 の性質を見出す(学習活動 2)授業である。ま

た,相似な図形を表す記号∽についても知り,

記号∽を用いて,対応する頂点を順に並べて正 しく表すことを目指す授業である。

図 2 学習活動1にあたる朱註編コピー

(3)

図2は,学習活動1にあたる教科書の朱註編コ ピーである。方眼がその大きさを2倍,1

2倍に

しているのに対し,図3の学習活動2にあたる 朱註編コピーは,方眼紙の大きさは同じであ る。図2を用いて,生徒に相似な図形の性質を 問いかけても,方眼のマス目の個数ではなく,

方眼の大きさの違いに目がいってしまうのでは ないかと,筆者は危惧した。大きさが違う方眼 に作図させる教科書の記載内容に,筆者は疑問 を持ち,その疑問を解決しようとした。

疑問解決のために,図1の[疑問を解決する ための4つの方策]を実行した。まず,「中学

校数学3(学校図書,2017)」(以下,学校図

書)(図4)と,「数学の世界3(大日本図書,

2017)」(以下,大日本図書)(図5)を参考に した。どちらの教科書も,方眼の大きさは同じ で,他社の教科書も同様の記述であった。図 2 の方眼の大きさが違うことに対する筆者の疑問 は,さらに大きくなった。

筆者は,疑問を解決するために,学習指導要 領解説と指導研究編を改めて読み返すことにし た。学習指導要領解説の記述から,「形が同 じ」であることの意味を生徒が理解すること は,相似な図形の学習で必要不可欠であると読 み取った。また,指導研究編の記述から,図2 で大きさの違う方眼を用いているのは,「形が 違う」ということがどういうことなのか,生徒 が共通認識するために記載されていることが分

かる。以上のような経緯で,筆者は教科書の記 載内容に対する疑問を,解決することができ た。しかし,生徒に図2の大きさの違う方眼を 提示すると,「形が同じ」であることを共通認 識することよりも,相似な図形の性質を捉える 際に混乱する可能性の方が高い。生徒の実態を 考慮すると,授業では取り扱わないほうがいい と判断し,本時の学習に深く関わっている,小 学6年生の拡大・縮小の振り返りを,学習活動

1として取り入れることにした。

4.2 授業の実際

本時の学習活動1において,「小学校6年生 で学習した,図を大きくすること,図を小さく することを,なんと言いましたか」と問いかけ ると,「拡大,縮小」,「拡大図,縮図」といっ 図 3 学習活動2にあたる朱註編コピー

図 4 学習活動1の教材(学校図書)

図 5 学習活動1の教材(大日本図書)

(4)

た答えが返ってきた。さらに,「中学校2年生 で学習した,『形が同じで大きさも同じ』図形 のことをなんと言いましたか」と問いかける と,「合同」と生徒は答えた。

5.分析・考察

朱註編コピーを用いて本時の学習内容を把握 する際,筆者は図2で示した大きさの違う方眼 紙に疑問を持ち,その疑問を的確に解釈するこ とができた。しかし,方眼の大きさが違うこと は,相似な図形の性質を見出す学習活動の場面 で,生徒を混乱させてしまうと判断し,あえて 図2の学習内容を扱わずに授業を計画・実践し た。その結果,学習指導要領解説が目指してい る,「形が同じ」であることの意味を強化できず,

学習指導要領解説の目標を達成することができ なかった。

生徒の実態に合わせて,学習活動1を変更し たつもりが,結果的には生徒の実態を十分にく み取った授業になっていなかった。生徒のつま ずきなどを付箋にかき,朱註編コピーに貼った だけでは,生徒の実態を把握しているとは言え ないことが明らかになった。以上のことを踏ま え,新たに表出した筆者の課題は,以下の2つ であると考えた。

課題㈠ 学習指導要領解説に沿った授業のた めの教材研究ができていない

課題㈡ 生徒の実態を把握するための具体的 な方策が十分でない

なお,課題㈠と課題㈡は,切り離して考える ことはできない。今後は新たに見いだした 2つ の課題を総合して,筆者の課題解決のために,

検討していくことが必要であると考えた。

6.今後の展望

今後は,総合インターンシップⅡを通して見 えた,課題㈠と課題㈡の解決に取り組む。図6

は,図1の朱註編コピーの作成手順に,加筆し た作成手順である。作成手順 7を加えた朱註編 コピーの作成手順に従って,学習指導案の作 成・実践し,課題㈠を解決する予定である。

7.学習指導要領解説の目標,教科書の学習活 動をしっかり把握した上で,実践したい教 材・実践した教材,その時の生徒の反応,

発言,つまずき,気付きなども併せて付箋 にかき,朱註編コピーに貼り,授業で取り 組む教材の精選を図る

図 6 朱註編コピーの新たな作成手順

図 7 生徒の実態に合わせた教材研究のた

めの具体的方策

図7には,これまで筆者が課題②「生徒の実態 に合わせた教材研究ができていない」ことを解 決するために取り組んできたことと,新たに表 出した課題㈡に対する具体的方策を明示した。

図7の具体的方策に随時取り組み,生徒の実態 を把握し,実態にあった教材研究を行うこと で,課題㈡を解決する予定である。

・「教科書を読み込む」ことで,教材の価値 を正しく解釈する。

・生徒の様々な学習段階,理解度,反応,

気付き,つまずきなどを十分に考慮した 授業づくりのために,授業中の生徒の発 言や様子を付箋にまとめ,朱註編コピー に貼る。

・授業での様子だけではなく,普段の生徒 の様子から生徒の性格やクラス内での立 ち位置や交友関係などを観察し(図例),

授業中の発問や指示,学習形態などに活 かす。

・朱註編コピーにある生徒のつぶやきや,生 徒からとったアンケートなどを基に,生徒 のつまずきを想定して指導法をとらえる。

参照

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