著者 太田 俊一, 太田 和樹
雑誌名 北翔大学短期大学部研究紀要
号 58
ページ 23‑31
発行年 2020
URL http://doi.org/10.24794/00002987
Ⅰ.研 究 の 概 要
●調査方法
●指導要領や生徒指導提要では
●不適切な生徒理解3つのタイプ
●提言
Ⅱ.調 査 方 法
1 調査の目的
今日,高校では,進路多様校と呼ばれる大学または短大への進学を希望する生徒だけではな く,専門学校への進学や,就職を希望する生徒など,多様化した進路を希望している生徒が在 籍する学校が多くなってきている。そのような学校現場では,学級崩壊や授業不成立といった 指導困難な実態が多く,その解決が学校教育の大きな課題となっている。進路多様校はいわゆ る困難校といっても差し支えない場合が非常に多い。
したがって,そのような学校現場では,生徒へのかかわり方に困難さを感じている教員が少 なくない。特に,授業や生徒指導,クラス経営において生徒への対応に戸惑ったり,悩んでい る教員が多い。これは,若年層の教員だけではなく,経験が10年20年に及ぶ教員でもこれまで の勤務校や学校規模の違いによって,感じることがある。そして同様に,生徒間でも互いに自 己中心的な言動や,耐性が乏しく衝動的な行動に走る傾向がみられ,人間関係のトラブルから 不登校になるケースや,特別指導を受けることでストレスを抱えてしまうケースが見られる。
こういった学校課題の原因には,教員によって生徒理解に差があるために,生徒との信頼関 係の構築がなされていないということが考えられる。構築がなされていない原因となる教師の 生徒対応には主に3つのタイプが見受けられる。生徒へのかかわり方が非常に高圧的である
<タイプA>,生徒とのかかわりが不十分で,問題を見過ごし,問題を問題と気づけない<タ イプB>,生徒への指導が一貫しておらず生徒の管理ができない<タイプC>である。
ここでは,教員が生徒との信頼関係を構築し,学級経営や授業の中でのトラブルを未然に防
北翔大学短期大学部研究紀要 第58号 令和2年3月
BulletinofHokushoCollegeNo.58 March,2020
生徒との信頼関係を築く生徒理解の在り方
HowTeachersShouldUnderstandStudentstoBuildRapport
太 田 俊 一* 太 田 和 樹**
Shunichi OHTA Kazuki OHTA
*北翔大学短期大学部こども学科 **北海道更別農業高校
ぐ,または頻発する防止不能なトラブルに対応するために必要な,生徒理解の在り方を研究す る。
2 研究方法
○生徒の教員に対する意識・実態調査
勤務校1学年2クラス(38名)でアンケートを実施した。生徒理解の有用性について,実施 したアンケート結果を検証することで,3つのタイプの課題や改善点を明らかにする。
Ⅲ.指導要領や生徒指導提要では
1 高等学校学習指導要領総則より 第5章 生徒の発達を支える指導の充実 第1 生徒の発達を支える指導の充実
(1)学習や生活の基盤として,教師と生徒との信頼関係及び生徒相互のよりよい人間関係を 育てるため,日頃からホームルーム経営の充実を図ること。また,主に集団の場面で必要な指 導や援助を行うガイダンスと,個々の生徒の多様な実態を踏まえ,一人一人が抱える課題に個 別に対応した指導を行うカウンセリングの双方により,生徒の発達を支援すること。
(2)生徒が,自己の存在感を実感しながら,よりよい人間関係を形成し,有意義で充実した 学校生活を送る中で,現在及び将来における自己実現を図っていくことができるよう,生徒理 解を深め,学習指導と関連付けながら,生徒指導の充実を図ること。
2 生徒指導提要より
第3章 児童生徒の心理と児童生徒理解 第1 生徒指導における児童生徒理解の重要性
(1)生徒指導の目的と児童生徒理解
生徒指導は,既に明らかにしてきたように,一人一人の児童生徒の成長を促し,児童生徒自 ら現在および将来における自己実現を図っていくための自己指導能力の育成を目指すものです。
これは児童生徒の人格を尊重し,個性の伸長を図りながら,社会的資質や行動力を高めるよう に指導,援助するものでなければなりません。
実際の指導においては複数の児童生徒や集団を対象にすることも多いのですが,最終のねら いはそこに含まれる個人の育成にあります。また実際の指導では問題行動などに直接対応する 指導が多いのですが,最終のねらいは人格の発達的形成にあります。
このことから,指導者に求められる二つのことが浮き上がってきます。一つは,一人一人の 児童生徒をどのように理解し,指導に当たるかということであり,もう一つは一人一人を理解 するうえで,特に欠かすことのできない人格の発達についての一般的な傾向とその特徴につい ての客観的・専門的な知識を持つことです。
(2)児童生徒理解に求められる姿勢
教科指導においても生徒指導においてもその他どのような教育活動においても,教育実践が 成果を上げるための大前提の一つは児童生徒理解です。なかでも生徒指導においては児童生徒 理解そのものが教育的関係の成立を左右するといっても過言ではありません。人は理解してく れている人には安心して心を開きますが,理解してくれていない人に対しては拒否的になり,
心を閉ざしたまま対応するものだからです。しかも生徒指導においては愛と信頼に基づく教育 的関係が成立してなければその成果を上げることはできません。
そのため生徒指導においては共感的理解が求められるのです。児童生徒を共感的に理解する ためには児童生徒について,また児童生徒の成育歴や環境などについて客観的事実を知る必要 があります。生徒指導はまず児童生徒理解から始まると言えるでしょう。
第2 児童生徒理解の対象
(1) 多角的・多面的な理解
個性や人格と言われるものは,極めて複雑な構成を持ち,その表れ方も多様です。実際の生 徒指導では一人一人の行動傾向,すなわち行動に際してどのような判断力のレベルにあるのか,
感情の動きはどうか,意志の強さや弱さはどのようであるかをとらえて指導に当たることが多 いのですが,そうした知・情・意の働きの事実を知るだけではなく,その背景となる様々な事 実をできるだけ多角的・多面的かつ正確に知ることが必要です。
そのため,児童生徒を理解するため特に重要と思われるものは,能力の問題,性格的な特徴,
興味,要求,悩み,交友関係,成育歴,環境条件などです。
第5章 教育相談体制の構築 第1節 教育相談の意義 第1 生徒指導と教育相談
教育相談は,児童生徒それぞれの発達に即して,好ましい人間関係を育て,生活によく適応 させ,自己理解を深めさせ,人格の成長への援助を図るものであり,決して特定の教員だけが 行う性質のものではなく,相談室だけで行われるものでもありません。
第2 学校における教育相談の特質
(1)略
(2)学校における教育相談の課題
①略
②学級担任・ホームルーム担任が教育相談を行う場合の葛藤
学級担任・ホームルーム担任が教育相談を行う場合には,特に問題行動などに対応する場面 では,児童生徒に対する指導的かかわりを担わなければならない立場と,教育相談の実施者と しての役割という,一見矛盾した役割を同時に担うことが求められることがあります。
このような場面では,一方で児童生徒がそのような問題を起こさざるを得なかった背景への 25
理解を深め,その気持ちを受け止めるとともに,問題の指導も行わなければなりません。これ は必ずしも二律背反の関係にあるわけではありませんが,実際に同一人が同時に行うことは容 易ではないかもしれません。やはり学級担任・ホームルーム担任が一人で抱え込まずに,学校 の利点を生かした対処を図ることが必要となります。
Ⅳ.不適切な生徒理解 3つのタイプ
1 タイプ A:生徒へのかかわり方が非常に高圧的な教員
生徒に正しいものは正しいと,高圧的に指導する教員がいる。生徒は指導に従い,学級崩壊 も起こらないため,その先生には一見指導力があるように見える。しかし,実のところ副担任 や学年団の他教員,支援員などの影のサポートによって,生徒の反発を抑えることができてい るだけにすぎない。一方で,そのサポート体制を意図的に構築できているケースも少なくない。
事前に教員各自の指導方針について共有がされており,指導を始める前に,生徒やクラスへ のフォローや注意深い観察などのお願いをしているケースがある。こういった場合には,職員 室では非常に多くの生徒情報が共有され,多面的に生徒指導を行うことができる。
しかしながら,意図的に仕組まれた指導体制ではない場合,高圧的な指導は,生徒の不満が 表 1.教育相談で用いるカウンセリング技法
つながる言葉かけ いきなり本題から始めるのではなく,始めは相談に来た労をいたわったり,相談 に来たことを歓迎する言葉かけ,心をほぐすような言葉かけを行います。
例:「部活のあと,ご苦労さま」「待ってたよ」「緊張したかな」など
傾聴 丁寧かつ積極的に相手の話に耳を傾けます。よくうなずき,受け止めの言葉を発 し,時にこちらから質問します。
例:「そう」「大変だったね」「そんなことがあったの」など
受容 反論したくなったり,批判したくなったりしても,そうした気持ちを脇において,
児童生徒のそうならざるを得ない気持ちを推し量りながら聞きます。
繰り返し 児童生徒がかすかに言ったことでも,こちらが同じことを繰り返すと,自分の言 葉が届いているという実感を得て児童生徒は自信を持って話すようになります。
例:児童生徒「もう少し強くなりたい」
教員「うん,強くなりたいね」など
感情の伝え返し 不適応に陥る場合には,自分の感情をうまく表現できない場合が少なくありませ ん。少しでも感情の表現が出てきたときには,同じ言葉を児童生徒に返し,感情 表現を応援します。
例:児童生徒「一人ぼっちで寂しかった」
教員「寂しかったんだね」など
明確化 うまく表現できないものを言語化して心の整理を手伝います。
例:「君としては,こんなふうに思ってきたんだね」など
質問 話を明確化する時,意味が定かでない時に確認する場合,より積極的に聞いてい るよということを伝える場合などに質問を行います。
自己解決を促す 本人の自己解決力を引き出します。
例:「君としては,これからどうしようと考えている?」「今度,同じことが生 じたとき,どうしようと思う?」など
爆発する危険性を常に抱えている。怒られるからその教員の前では気を付ける生徒をつくるこ ととなり,本来生徒指導の目的である,自己指導能力の育成にはつながっていない。
以上の結果からも,生徒理解に基づかない高圧的な生徒指導は,効果的とは言えず,かえっ て生徒の教師嫌いや,相談したくはないといったネガティブな面を生むおそれがある。そして,
生徒の話をよく聞いている教師は決して甘やかしているわけではないということを多くの生徒 は理解していることがうかがえる。いくら教員が正しいことを伝えていたとしても,目的は伝 えることではない。教育相談で用いるべきカウンセリング技法を駆使しながら,生徒に対して 共感的に理解を示すことで,生徒にこの先生の話は聞いてみようと思わせ,その上で初めて生 徒指導を効果的に行うスタートラインに立つことができる。
穴田他(2001)が「担任は日ごろの生徒の行動が目に付くので『あれはダメ。これもダメ』
となりがちである。日常的な生徒指導の先頭に立っているのは分かるが,『ダメ』ばかりを強 調しないよう心掛けたい。あくまでも,生徒サイドに立った指導が担任には求められる。それ だけでなく,事例に対して,どこに原因があるかを生徒と共に考え,解決に向かって努力をす るのが担任の仕事である」と述べているように,すぐに指導をしたくなる気持ちをぐっとこら え,第一に生徒理解を置くことが求められる。
2 タイプ B:生徒とのかかわりが不十分で,問題を見過ごし,気づくことのできない教員 次に,生徒観察が十分ではなく,問題を見過ごしたり,問題を問題として認識する力がなく,
時間が経つにつれて大きな問題となり,取り返しがつかない状態に陥る教員がいる。ハインリッ ヒの法則[図1]によると,1件の重大な事故の下には29件の軽微な事故,さらにその下に 300件の小さなミスや異常が見られるという。これは教育現場でも同様に起こり,ホームルー ムや授業等で,生徒の発する小さな違和感に気が付ける
かどうかは,生徒指導をする上で非常に重要な役割を果 たしている。関根(2005)は「叱れないとは,叱り方の うまいへたとかいう技術のことではなく,自分自身が,
人間というものをどう見るか,生徒の立場や面子をどう 感じ考えるか,相手の感情をどれだけ共感できるかとい う,共感の能力とも言うべき問題でもある。」と述べて
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表 2.高圧的な指導に関するアンケート結果
質問項目 はい いいえ どちらでもない
上からものを言う先生の話は聞きたくない 23人 7人 8人 先生が正しければ,私の話は関係ない 6人 15人 17人 正しいことを言っていても,話を聞いてくれない先生は嫌いだ 13人 12人 13人 話を聞いてくれる先生は,私のことを甘やかしてくれる先生だ 5人 24人 9人
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図 1.ハインリッヒの法則
いる。すなわち,教師としての感性を働かすことができなければ,観察という生徒理解の前提 でつまずき,生徒指導のできない教員となる。
では,生徒理解のできる教員が多い場合はどういった教育的効果があるだろうか。以下は,
学校や生徒個人についての考え方の相関を見るために行ったアンケート結果である。
この学校が好きだと答えた生徒(14人)の内,話を聞いてくれる先生が多いと答えていたの は12人であった。さらに,学校が好きだと答えた生徒の内,進路について,決まっているまた は選んでいるなどよく考えている生徒は9人であった。つまり,話を聞いてくれる先生がいる と実感できていることと,自分の通っている学校が好きでなることの間には,相関関係が見え るということができる。同様に,学校が好きであることと,進路について考えていることの間 にも相関関係が見て取れる。
以上のことから,生徒理解の備わった教員が多い学校では,生徒が学校を好きになり,進路 についても早い段階から前向きに考える生徒が多くなると言える。しかし,この調査はあくま でも38名を対象にしたアンケートを基にしているため,一般性や妥当性には欠けている部分も あるため,今後さらなる研究が求められる。
3 タイプ C:生徒への指導が一貫しておらず生徒の管理ができない教員
学級崩壊や授業不成立,指導無視などの問題が顕著に表れているのは,春ではなく,少し時 間の経った5月頃などで,秋頃になるとすでに回復不可能な状態まで陥っているケースが多い。
タイプAの教員であれば,まず4月にルールを徹底させ,5月は生徒の不満が出てくる時期 ではあるが,崩壊はしない。しかし,教員としてのスタイルが確立しておらず,場当たり的に 生徒指導を行うタイプCの教員は,生徒が学校生活に慣れてきて問題行動をおこしたために,
突然高圧的に指導をしたり,逆にあるときは問題行動をスルーしたりするため,結果,時間の 経過とともに問題が表出する。
横藤(2014)は,「荒れる学級に共通しているのは,『指示したことが行動として完結してい ない』ことです。『大体できたようだから,少しくらいの私語やだらだらはいいか。』と先生が なし崩しに甘くしてしまうのです。(中略)野中信行先生は,『3・7・30の法則』を提唱され ています。この法則は,年度はじめの三日間,一週間,一か月で示したことを一貫させ,完結 させるというコンセプトです。」と述べている。生徒指導とは時期を逃さずタイムリーに行わ なければならないが,そこを逸したばかりに,手遅れになってから取り戻そうとし,生徒の共 表 3.学校や生徒個人に関するアンケート結果
質問項目 はい いいえ どちらでもない
話を聞いてくれる先生が多い 23人 7人 8人
卒業後の進路について,決まっているまたは選んでいる最中だ 20人 11人 7人
この学校が好きだ 14人 8人 16人
感的理解や,カウンセリング的視点からの指導ではなく,高圧的な指導に終始してしまうケー スが目立ってくるのである。
Ⅴ.提
言以上,3タイプの教員が,生徒の観察をもとに,生徒理解を踏まえた生徒指導ができるよう 育成していくために,以下3つの提言をする。
1 全教員による授業改善アンケートの年 3回( 6月・10月・ 2月)実施
観察・生徒理解・生徒指導の3本柱で教育を行うにあたって,今の自分の立ち位置を知り,
PDCAサイクルに沿って指導改善を図る必要がある教員は,まずアクションリサーチと呼ば れる研究を実施すべきである。アクションリサーチとは,横溝(2001)によると「アクション リサーチ(actionresearch,以下AR)は,ひと言で言うと『現職教師が自己成長を目指して 行う自分サイズの調査研究』である。つまり『教師が自己成長のために自ら行動(action)を 計画して実施し,その行動の結果を観察して,その結果に基づいて内省(reflection)するリ サーチ』ということになる。」と述べている。
横溝はアクションリサーチの実施方法・特徴についても,次のように述べている。
( 1)実施方法
ARは自分の教授活動の中での問題点や関心事をトピックとして,そのトピックの何が気に なっているかをできるだけ具体的に明らかにするところから始まります。ARでリサーチする トピックは,教師が教えること・学習者が学ぶことに関するものであれば,何でも構いません。
例えば,「指名の仕方」「発音指導の仕方」「クラスルーム運営」「成績不良の学生への対処」
「ほめ方」(中略)など,教師が関心・興味を持ったら何でも,ARでリサーチするトピックに なります。(中略)クラス内の調査と先行研究の調査によって得た知識をもとに,問題の改善 策や関心毎の実施方法を考え,それを実行に移す計画を細かく立てて,実際に実施します。実 施した行動の成果を観察・分析し,行動の成果が望ましいものであったかどうかを評価し,望 ましいものでなかった場合は,その原因を考察します。この結果,更なる改善策を考えてそれ にトライすることも可能です。リサーチが一段落ついたら,そのプロセスと結果をほかの教師 と共有します。
( 2)特徴
①状況密着型である(小規模であることが多い)
ARの対象は基本的に,教師が実際に教えている教室そして学習者。
②本人が行うものである。
ARを実際に行うのは,実際に授業を担当している教師本人。
③協働的実施が望ましい。
他の教師と協力して励まし合いながら進める方が実施が容易。
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④起こした変化によってほかの人が影響を受けるものである。
ARは,教える状況の向上を目指して教師が行動するものである。その行動によって影響を 受けるのは行動する教師本人だけにとどまらず,学習者や他の教師や教育機関等に直接的/間 接的に影響を与える。
⑤自分サイズのリサーチでなければならない
自分にとって大きすぎる負担にならないARの計画を立てて,それを実行に移すことが肝要 で,それにより,それぞれの形での自己成長が可能になる。
⑥深い内省が必要不可欠である。
内省の不足・欠落は,ARの後退であり,教師としての成長への貢献度が著しく減少する。
以上のようなアクションリサーチを基にして,教師自らが学びのPDCAサイクルを働かせ るために,全教員に授業改善アンケートを年3回実施したい。その上でそれぞれ学校現場の実 態に応じ,学校設定項目と個人設定項目等に分けたアンケートの実施をすることが望ましいと 考える。
2 教育相談の定期実施( 6月・12月)
カウンセリング技法を用い,全教員が生徒に教育相談を実施することで,カウンセリング技 法を広く教員に浸透させることができるとともに,生徒にも,教員が話を聞いてくれるという 体験をさせることができる。教育相談の際に注意すべき点として,生徒指導提要にはこう書か れている。
特に,1については,事前に教育相談アンケート等を実施して,学校生活についての一般的 な質問をしておくことで,相談内容が焦点化され,教育相談にかかる時間も必要以上に増える ことが抑えられる。6について,話題や悩みが出てこない場合は,「学校生活に点数をつける としたら10点満点で何点になるかな」といった方法も有効である。
1 あらかじめ児童生徒について何に焦点を当てるかを一人一人定めておく。
2 成長が見られた点,よくがんばっている点など,プラスの情報を用意しておく。
3 児童生徒が自発的に話す場合にはまずは傾聴する。
4 児童生徒の話が散漫にならないよう,時々明確化しながら聞く。
5 何を訴えたいのか,本人はどうしたいのか明確にするために質問を挟みながら聞く。
6 自発的な相談や話題が出てこない場合には教員から具体的な出来事やエピソードに基 づいて話題を提供する。
7 その児童生徒なりの問題解決力を引き出すように心がける。
3 校内研修の実施
アクションリサーチや教育相談を行うにあたり,全教員で考え方や大切さ,やり方などを共 有するために,校内研修を実施することが望ましい。教員研修について,生徒指導提要では,
「同じ学校という組織において教育に携わる教員たちが行うという点に特徴と意義があります。
したがって,理念や教育方法,生徒指導の方針・基準などについての共通理解を図り,日常的 な指導のための共通基盤を形成することを目的とします。そのため,生徒指導を担当する教員 や管理職だけではなく,全教員が参加して行うことが必要です。年度や学期などの初めに実施 計画を立て,協議内容についてもあらかじめ決定しておくことが大切です。」と述べられてい る。そこで,実施計画と内容についての案を以下に記した。
●実施計画(案)
4月(春休み期間):生徒理解について(講義+KJ法)
6月(テスト期間):アクションリサーチ・教育相談について(講義)
7月(夏休み初日):授業改善アンケート結果・教育相談結果(ワールド・カフェ方式)
2月(テスト期間):振り返り(ワールド・カフェ方式+講義)
ワールド・カフェ方式の話し合いとは,四国地区大学教職員能力開発ネットワーク(2012) によると,「その名のとおり『カフェ』のようなリラックスした雰囲気の中で,少人数に分か れたテーブルで自由な対話を行い,他のテーブルとメンバーをシャッフルして対話を続けるこ とにより,参加した全員の意見や知識を集めることができる対話手法の一つ」(p.5)とある。
ただ講義を受けるだけでは,他教員が感じたことについて,実施者も把握することができない ため,このようなグループ対話を通して,学校全体に生徒理解・教育相談・アクションリサー チの風を吹かせることが望ましい。
Ⅵ.参 考 文 献
・文部科学省編 高等学校学習指導要領総則編(2018年版)
・文部科学省編 生徒指導提要(2010年版)
・関根正明「<新版>叱り方,うまい先生へたな先生」(2005年 p.138)
・横藤雅人・武藤久慶著「その指導,学級崩壊の原因です!「かくれたカリキュラム」発見・
改善ガイド」(2014年 p.32)
・横溝紳一郎著「アクション・リサーチ―日本語教師の自己成長のために」(2001年 p.5)
・四国地区大学教職員能力開発ネットワーク「ワールド・カフェの手引き」(2012年 p.5) 31