博 士 ( 工 学 ) 重 田 洋 佑
学位論文題名
A Study onaCytokine Reaction based Artificial Immune System foraSelector Problem
(選択器問題向きサイトカイン反応ベースド人工免疫系に関する研究)
学位論文内容の要旨
選択器とは,問題解決システムがその環境入力情報に対してシステム内部に有している 問題解決要素集合(ここではこれを項目と呼ぶ)から最適な解集合を選択する装置のこと である,選択器はロボットの行動を選択や,インターネッ卜上の被接続IPアドレスのフイ ルタリングなど様々な場面で使用されている,従来の工学的設計法では,設計者が,対象 としての選択器という問題領域で起こり得るすべての事象を把握し,この事象問で満たさ れるべき原理を当てはめるというような作業を行ってきた.このような設計手法により決 定された選択器は,問題領域の範囲内で,普遍的で制御可能であり,その振る舞いは予測 可能で,頑健で信頼性の高いものとなる.しかし,問題領域が常に変化する可能性がある 動的環境では,設計者が事前にすべての事象の変化を把握することは,フレーム問題を引 き起こすため困難であり,それゆえ,事象聞に成り立っ原理を当てはめることもまた,困 難である,そのため従来は,予測可能な範囲に問題を分割し,別箇の問題としてそれぞれ を解くことなどにより対処してきたが,問題が複雑化・肥大化するにっれ,設計者によっ て複雑に絡み合った事象を分類することが困難となっている,
本論文は,問題が動的に変化し,入力情報に対して最適な項目集合を選択するような「選 択器」を設計する際に生じる課題に対して,サイトカイン反応の原理を導入した人工免疫 系(AIMS)によるアプローチした結果をまとめたものである,
このような動的環境での選択器設計の際には,(1)入力情報集合,(2)入出力写像関数,
(3)出 力項目 集合など を,考慮する必要があり,それぞれが動的に変化することもまた,
考慮す る必要 がある, 本論文において,これら3要素を考慮した動的環境における選択器 設計に関する問題を,選択器問題として定義している,
本論文は,6章から構成されている.以下にその概要を示す.
第1章は序 論であり ,本研究の背景,従来手法,現状の問題点などにっいて述べた後に 問題の定式化および,研究目的にっいて述べている,選択器問題における既存アプローチ の特徴を分類し,比較することで従来法の問題点を明らかにしている,提案するアプロー チの概略を述べ,本手法と従来法との関係性を示している,
第2章では ,生体免 疫系においての抗原入カに対する抗体選択反応の仕組みを概括し,
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そ の特徴をまとめている.これらは,選択器への応用という観点においてモデル化が行わ f
れている.
第3章 では,既 存の人 工免疫モデルの特徴をまとめ,分類することで従来モデルの問題 点 を明らかにしている.前章で提案したモデルに対し,新たに工学分野への適用を考慮し て 機能を追加した,人工免疫モデル(AIMS)を提案し,既存モデルとの関係を示している,
AIMSが,イディオタイプネットワーク部,進化的アルゴリズム部,そして,抽出・評価部 の 大きく3部か ら構成さ れることを示し,各部の背景や性質等にっいて述べている,選択 器 として適用する際に求められる諸条件を,各部にっいて基礎実験を行うことでまとめて い る.強 親和関係 抗体数(nRS)を定義し,抽出部についての実験結果から,これと選択確 率 との関係には,弱い負の相関があることを明らかにしている.また,イディオタイプネ ットワーク部についての実験結果から,ネッ卜ワークの反応性に関係するパラメータ値(環 境 変数)によって,選択される部分抗体集合が様々に変化することを明らかにしている,
こ れ ら の 結 果 を も と に ,AIMSの 選 択 器 と し て の 性質 に つ いて 考 察 を行 っ て いる , 第4章 では,自 律移動 ロボットの行動選択器に関する背景,現状の問題点,および,従 来 手法について述べている.特に,大域的振る舞い(単位時間当たりのアクチュエーター に 対する動作命令の積和)の調整に関する問題点について言及している.提案モデルを,
ケペラ様の,測距センサおよび2車輪からなる自律移動ロボッ卜の,行動選択器に適用し,
壁 伝い行動生成の実験を行っている.抗原としての測距値は既知の範囲であり,被選択項 目 としての各アクチュエーターの動作命令も既知の範囲に収められるが,問題が,左手壁 伝 い行動生成や右手壁伝い行動生成のように変化するため,本問題は,動的環境における 選 択器問題である,本実験では,いくっかの静的な問題環境に対して本モデルの有効性を 検 証し,それぞれの実験で生成されたイディオタイプネッ卜ワークの違いについても検証 し ている.また,環境変数によって,問題の変化に対して,ロボッ卜の大域的振る舞いが 調 節可能であることを明らかにし,AIMSの有効性を検証している.この実験において,本 提 案シス テムが, 環境変 動に対し ,環境変 数を調 節し,行動選択確率を変えることで,
変動への対処が可能であるという知見を得ている.
第5章 では,IPネ ットワ ークにおける被接続IPアドレスの選択器に関する,背景,現状 の 問題点,および,従来手法について述べ,提案モデルを従来手法の関係性の中で位置づ け ている.抗原としての被接続先IPアドレス空間は,非常に大きいため事前に知り得るこ と はできず,そのため,入力情報―項目間の写像関数も未知であること,また,被接続先 の 優先度は,その状況によって動的に変化することから,本問題は選択器問題であること が 述べられている.本実験では,いくっかの静的な問題環境に対して本モデルの有効性を 検 証し,また,それぞれの実験で生成されたIPアドレス群の違いにっいての有効性を検証 し ている.環境変数によって問題の変化に対して,IPアドレス群の移送が変わることを明 ら か に し , ネ ッ 卜 ワ ー ク セ キ ュ リ テ ィ 分 野 ヘAIMSの 有 効 性 を 検 証 し て い る , 第6章において,論文全体のまとめと,総括を行っている,
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学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
A Study onaCytokine Reaction based Artificial Immune System foraSelector Problem
( 選 択 器 問 題 向 き サ イ ト カ イ ン 反 応 ベ ー ス ド 人 工 免 疫 系 に 関 す る 研 究 )
選択器とは,問題 解決システムがその環境入力情報に対してシステム内部に有している問 題解決要素集合(ここでは項目と呼ばれる)から最適な解集合を選択する装置のことである.
選 択器 はロ ボッ ト行 動の 選択 や,インターネット上の被接続IPアドレスのフ イルタリング など様々な場面で使 用されている.従来の工学的設計法では,設計者が,対象としての選択 器決定という問題領 域で起こり得るすべての事象を把握し,この事象間で満たされるべき原 理を当てはめる作業 を行ってきた.このような設計手法により決定された選択器は,問題領 域の範囲内で,普遍 的で制御可能であり,その振る舞いは予測可能で,頑健で信頼性の高い ものとなる.しかし ,問題領域が常に変化する可能性がある動的環境では,設計者が事前に すべての事象の変化 を把握することは,フレーム問題を引き起こすため困難であり,それゆ え,事象問に成り立 っ原理を当てはめることもまた,困難である.そのため従来は,予測可 能な範囲に問題を分割し,別箇の問題としてそれぞれを解くことなどにより対処してきたが,
問題が複雑化・肥大 化するにっれ,設計者によって複雑に絡み合った事象を分類することが 困難となっている, 本論文は,問題が動的に変化し,入力情報に対して最適な項目集合を選 択するような「選択 器」を設計する際に生じる課題に対して,サイトカイン反応の原理を導 入 し た 人 工 免 疫 系(AIMS)に よ る ア プ ロ ー チ し た 結 果 を ま と め た も の で あ る . 本論文は,6章から構成されている.以下にそ の概要を示す,
ま ず、定義から始まる.動的環境での選択器設計 の際には,(1)入力情報集 合,(2)'入出 力 写像 関数 ,(3)出力 項目 集合 など を, 考慮 する 必要 があり,それぞれが動 的に変化する こ ともまた,考慮する必要がある.本論文におい て,これら3要素を考慮した 動的環境にお け る 選 択 器 設 計 に 関 す る 問 題 を , 選 択 器 問 題 と し て 定 義 し て い る . 第1章は序論であり ,本研究つ竜景,従来手法,現状の問題点などについて 述べた後に問 題の定式化およぴ, 研究目的について述べている.選択器問題における既存アプローチの特 徴を分類し,比較す ることで従来法の問題点を明らかにしている.提案するアプローチの概
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昇 東
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助
査
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副
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略を述べ,本手法 と従来法との関係性を示している.
第2章では,生体 免疫系においての抗原入カに対する抗体選択反応の仕組 みを概括し,そ の特徴をまとめて いる.これらは,選択器への応用という観点においてモデル化が行われて いる,
第3章では,既存 の人工免疫モデルの特徴をまとめ,分類することで従来 モデルの問題点 を明らかにしてい る,前章で提案したモデルに対し,新たに工学分野への適用を考慮して機 能 を追 加し た, 人工 免疫 モデ ル(AIMS)を提案し,既存モデルとの関係を示 している.AIMS が,イディオタイ プネットワーク部,進化的アルゴリズム部,そして,抽出・評価部の大き く3部から構成され ることを示し,各部の背景や性質等について述べている ,選択器として 適用する際に求め られる諸条件を,各部について基礎実験を行うことでまとめている.強親 和 関係 抗体 数(nRS)を 定義 し, 抽出 部に つい ての 実験 結果から,これと選 択確率との関係 には,弱い負の相 関があることを明らかにしている,また,イディオタイプネットワーク部 にうぃての実験結 果から,ネットワークの反応性に関係するパラメータ値(環境変数)によ って,選択される 部分抗体集合が様々に変化することを明らかにしている.これらの結果を もとに,AIMSの選 択器としての性質について考察を行っている.
第4章では,自律 移動ロボットの行動選択器に関する背景,現状の問題点 ,およぴ,従来 手法について述べ ている.特に,大域的振る舞い(単位時間当たりのアクチュエーターに対 する動作命令の積 和)の調整に関する問題点について言及している.提案モデルを,ケペラ 様 の,測距センサおよび2車輪からなる自律移動ロボットの,行動選択器に 適用し,壁伝い 行動生成の実験を 行っている.抗原としての測距値は既知の範囲であり,被選択項目として の各アクチュエー ターの動作命令も既知の範囲に収められるが,問題が,左手壁伝い行動生 成や右手壁伝い行 動生成のように変化するため,本問題は,動的環境における選択器問題で ある.本実験では ,いくっかの静的な問題環境に対して本モデルの有効性を検証し,それぞ れの実験で生成さ れたイディオタイプネットワークの違いについても検証している.また,
環境変数によって ,問題の変化に対して,ロポットの大域的振る舞いが調節可能であること を 明ら かに し,AIMSの有 効性 を検証している.この実験において,本提案 システムが,環 境変動に対し,環 境変数を調節し,行動選択確率を変えることで,変動への対処が可能であ るという知見を得 ている.
第5章 では ,IPネッ トワ ーク にお ける 被接 続IPパケ ットの選択器に関す る,背景,現状 の問題点,およぴ ,従来手法について述ベ,提案モデルを従来手法の関係性の中で位置づけ ている.抗原とし てのIPパケット空間は,非常に大きいため事前に知り得ることはできず,
そのため,入力情 報―項目問の写像関数も未知であること,また,被接続先の優先度は,そ の状況によって動 的に変化することから,本問題は選択器問題であることが述べられている.
本実験では,いく っかの静的な問題環境に対して本モデルの有効性を検証し,また,それぞ れ の実 験で 生成 され たIPパケ ット群の違いについての有効性を検証してい る.環境変数に よ って 問題 の変 化に 対し て,IPパケット群の部分集合が変わることを明ら かにし,ネット ワークセキュリテ ィ分野ヘAIMSの有効性を検証している.
第6章において,論文全体のまとめと,総括 を行っている.
これ を要 するに,著者は,サイトカインベースド人工免疫シ ステムの統合モデルAIMSを 提 案し 、AIMSが各種選択器決定問題、特に環境変動を伴う領域 において,選択器の振る舞 いを提案した環境パラメータ を調節することで,環境変化に対してもより高い柔軟性、統合
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性を有するようなメカニズムが創発されることを各種応用問題を通して実証した。これらの 結果は複雑系工学およぴ情報工学の進歩に寄与するところ大なるものがある.よって著者は 北 海 道 大 学 博 士 ( 工 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 が あ る も の と 認 め る .
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