博 士 ( 工 学 ) 黄
仁 姫
学位論文題名
Characterization of Char derived from Solid Waste for Fuel Recovery and Thermal Pretreatment before Landfilling
(燃料化及び埋立前処理のための廃棄物炭化物の特性に関する研究)
学位論文内容の要旨
急 激 な 人 口 増 加 と 大 量 生 産 、 大 量 消 費 、 大 量 廃 棄 の 社 会 構 造 は 、 資 源 枯 渇 と 環 境 汚 染 を 加 速 し た 。 20世 紀 末 に 持 続 可 能 な 開 発 が 人 類 共 通 の パ ラ ダ イ ム と な っ て 以 来 、 廃 棄 物 管 理 政 策 も 大 き な 転 換 が 必 要 と な っ た 。 現 在 、 廃 棄 物 発 生 の 最 小 化 し 、 発 生 し た 廃 棄 物 中 の 資 源 化 可 能 物 を 積 極 的 に 回 収 し て 社 会 シ ス テ ム に 再 循 環 さ せ 、 そ れ に よ っ て 最 終 処 分 量 を 極 小 化 し 、 長 期 の 環 境 負 荷 源 で あ る 埋 立 地 の 早 期 安 定 化 を 図 る た め の 努 カ が 続 い て い る 。 こ う し た 状 況 に お い て 、 リ サ イ ク ル 技 術 と し て さ ま ざ ま な 方 法 が 提 案 さ れ て い る 。 こ の う ち 、 炭 化 プ ロ セ ス は 無 酸 素 条 件 で 有 機 物 を 加 熱 し 、 炭 化 物 を 回 収 す る 方 法 で あ る 。 比 較 的 低 温 で 運 転 さ れ 、 複 雑 な 技 術 を 要 し な い 、 ま た 焼 却 に 比 べ て 有 害 ガ ス の 発 生 量 が 少 な い な ど の 長 所 を 持 っ て い る 。 本 研 究 で は 廃 棄 物 の 炭 化 か ら 得 ら れ た 炭 化 物 を 燃 料 回 収 の 観 点 だ け で は な く 、 廃 棄 物 最 終 処 分 物 の 前 処 理 方 法 と し て 検 討 し た 。 第 1章 は 序 論 で あ り 、 研 究 の 背 景 、 目 的 、 研 究 方 法 及 び 各 章 の 構 成 を 述 べ た 。 第2章 で は 、16種 類 の 様 々 な 都 市 廃 棄 物 と 産 廃 廃 棄 物 を ロ ー タ リ ー キ ル ン を 用 い て500℃ で1 時 間 、 窒 素 雰 囲 気 で 加 熱 処 理 し て 炭 化 物 を 製 造 し 、 廃 棄 物 お よ び そ の 処 理 に よ り 得 ら れ た 炭 化 物 の 物 理 ・ 化 学 的 な 組 成 、 発 熱 量 な ど を 分 析 し た 。 バ イ オ マ ス 系 の 成 分 が 多 い ほ ど よ り 灰 分 の 低 い 炭 化 物 が 得 ら れ 、 質 の 向 上 の た め 簡 易 な 方 法 と し て 粉 砕 ・ ふ る い 分 け 、 水 洗 の 効 果 を 検 討 し た 。 粉 砕 炭 化 物 の1mm以 上 除 去 は 発 熱 量 向 上 に 大 き な 効 果 が 見 ら れ な か っ た が 、1mm以 下 炭 化 物 の 繰 り 返 し 水 洗 に よ っ て 、 プ ラ ス チ ッ ク の 高 炉 燃 料 使 用 基 準 値 で あ る0.5%塩 素 量 を 満 足 し た 。 灰 分 が 高 い 炭 化 物 に つ い て は 、 埋 立 前 処 理 と し て の 効 果 を 検 討 し た 。 炭 化 処 理 は 有 機 物 量 を 減 少 さ せ る ほ か 、 重 金 属 溶 出 濃 度 が 埋 立 基 準 値 を 満 た す こ と が 分 か っ た 。 ま た 、 炭 化 物 の 工 業 分 析 値 か ら 発 熱 量 を 推 定 す る 式 を 導 出 し た 。
第3章 で は 、 炭 化 物 の 燃 料 利 用 の 際 に 装 置 腐 食 な ど の 問 題 を 起 こ す 塩 素 に 注 目 し 、 水 溶 性 の 程 度 に よ っ て 形 態 を 分 類 ・ 定 量 し た 。 都 市 ご み 由 来 の 炭 化 物 を 試 料 と し て 選 ぴ 、4回 繰 り 返 し 水 洗 し 除 去 さ れ る 塩 素 を 易 溶 性 塩 素 と し た 。 次 に 、 難 溶 性 塩 素 を 定 量 ・ 除 去 す る た め 、 水 洗 し た 炭 化 物 を 水 中 で 二 酸 化 炭 素 曝 気 な ど の 処 理 を 行 っ た 。 最 後 に 、 炭 酸 化 処 理 に よ っ て も 残 留 し た 不 溶 性 塩 素 の 溶 解 を 促 進 す る た め 、 粉 砕 を 行 っ た が 效 果 が な か っ た 。 フ ッ 酸 分 解 に よ る 抽 出 割 合 が32ゲ 。 に と ど ま っ た こ と か ら 、 単 に マ ト リ ッ ク ス 中 に 取 り 込 ま れ て い る の で は な く 化 学 的 要 因 が 関 与 し て い る と 思 わ れ る 。 炭 化 物 中 塩 素 の 大 部 分 は 水 溶 性 で あ り 、 水 洗 に よ る 塩 素 除 去 効 果 は 高 い 。 一 方 、 セ メ ン ト キ ル ン 用 燃 料 と し て は 揮 発 性 塩 素0.19toが 目 標 と な っ て お り 、 水 洗 の み で は0.16%が 炭 化 物 中 に 残 る が 、 炭 酸 化 ま で 行 う と 0.11% 程 度 と な り 、 ほ ぼ 満 足 出 来 る こ と が 分 か っ た 。 第4章 で は 、 炭 化 物 中 の 灰 分 除 去 方 法 と し て 重 液 選 別 、 お よ ぴ 石 炭 の 灰 分 除 去 技 術 で あ る 浮 選 、 液 中 造 粒 を 適 用 し 、 合 わ せ て 灰 分 の 存 在 形 態 に つ い て 考 察 し た 。 試 料 と し て 都 市 ご み 炭 化 物 、 自 動 車 シ ュ レ ッ ダ ー ダ ス ト くASR)炭 化 物 を 用 い 、 不 燃 物 を 多 く 含 む5.6 mm以 上 と 粉 砕 試 料 の う ち125 皿m以 上 を 除 い て 実 験 を 行 っ た 。
選 別 条 件 に よ っ て 回 収 物 の 特 性 は 変 化 す る が 、 発 熱 量 が 高 い 良 質 の 炭 化 物 を 得 よ う と す る と 可 燃
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分の回収 率が低くなるとのトレードオフ関係が見られた。都市ごみ炭化物に対しては浮選あるいは 液中造粒 によって発熱量20000 kj}kg及び灰分309to以下の目標値 を満足できたが、可燃分の回収 率 は20%ま で低 下し た 。ASR炭化 物 につ いて は、 基 準値 を満 足さ せる こ とが不可能で あった。
灰分分 離の困難さは、灰分が可燃分と物理・化学的に結合した形態で存在するためと仮定し、以 下の考察 を行った。灰分の元素組成を一定とみなせることがわかったため、重液選別で分離した同 一密度粒 子群の灰分、可燃分、およぴ平均密度から灰分、可燃分の密度を推定した。これを用いて 推 定した粒子密度は実験値とよ く一致し、灰分密度の推定 値はXRD分析をもとにした化 合物形態 分 布に もと づ く推 定値 とほ ば同 じ であ った 。さ らにEDX/SEMによる表面分析結果から 灰分が可 燃分と結 合していることも確認した。試料はすでにボールミルにより破砕しており、灰分と可燃分 の単体分 離は困難である。
第5章では、炭化処理を廃棄 物の埋立前処理として検討す るため、嫌気性埋立、好気 性埋立を 各々模擬 したカラム実験を行った。第2章で有機物と重金属量が多いにも関わらず直接埋立されて いた粗大 ごみ不燃残渣の炭化物を試料とし、比較のため未処理の不燃残渣、焼却残渣にっいても実 験した。
炭化処 理は、焼却には及ぱないものの有機物削減効果は大きい。カラム試験においては、炭化物 からの有 機物溶出は好気性・嫌気性によらず原廃棄物と比べて大幅に減少し、特に好気性カラムで はアンモ ニア濃度が低下した。しかし 、重金属溶出量はバッチ試験(13号溶出試験)では基準値を 満足する が、カラム実験においては溶 出が認められ、好気性条件 ではCd、Cr、Pbなどの溶出が嫌 気性条件 と比べて促進された。従って、炭化物から重金属の溶出抑制効果を得るためには、酸化還 元などに よる環境条件の考慮が必要で ある。
以上の ように、本研究では、燃料化及び埋立前処理のための廃棄物炭化物の特性を検討した。炭 化物の燃 料利用においては、まず処理対象となる廃棄物を選ぶ必要がある。燃料としての質向上の ため、炭 化物に含まれている塩素は水 洗などで大部分除去できる が、さらに向上させる必要があ る。灰分 除去にっいてはまだ課題が残っている。埋立前処理としては、炭化処理は減容化のほかに 有機物量 を大幅に低減し、埋立地の早 期安定化に効果が大きい。 重金属の溶出抑制も確認された が、環境 条件によってその溶出特性が 異なる可能性がある。
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学位論文審査の要旨
学位論文題名
Characterization of Char derived fromSOlidWaStefor FuelReCOVeryandThermalPretreatmentbeforeLand
丘
lling(燃料化及び埋立前処理のための廃棄物炭化物の特性に関する研究)
大量生産・大量消費・大量 廃棄型社会から.循環型社会への転換がはかられている。天然資源消 費 の削減,環境負荷の低減の ために、さまざまな技術が提案されているが、本研究は比較的低温の 熱 処理技術である炭化処理に 注目し、燃料利用、および廃棄物最終処分前処理の観点から、炭化物 の 特性を検討した。
第1章 は 序 論 で あ り 、 研 究 の 背 景 、 目 的 、 研 究 方 法 及 び 各 章 の 構 成 を 述 べ た 。 第2章で は 、16種類 の様 々な 都 市廃 棄物 と産 廃 廃棄 物を ロータリーキルンによ って500℃で1 時 間、窒素雰囲気で加熱処理 して炭化物を製造した。廃棄物および炭化物の物理・化学的な組成、
発 熱量などを分析し、バイオ マス系の成分が多いほどより 灰分の低い炭化物が得られることがわ か った。また以下の章の方向 付けのため、粉砕・ふるい分け、水洗による炭化物の質向上、埋立前 処 理としての有機物量および 重金属溶出濃度削減効果について検討した。さらに、炭化物の工業分 析 値から発熱量を推定する式 を導出した。
第3章では、炭化物の燃料利 用の際に装置腐食などの問 題を起こす塩素に注目し、水溶性の程度 に よって形態を分類・定量し た。都市ごみ由来の炭化物を試料とし、繰り返し水洗により除去され る 塩素を水溶性塩素とし、次 に水洗炭化物から二酸化炭素曝気などの処理により難溶性塩素を定量 し た。最後に、残留する不溶 性塩素の存在形態を検討したが,粉砕処理は効果がなく、フッ酸分解 に よ る抽 出割合が32%にと どまったことから、単にマ トリックス中に取り込まれて いるのではな く 化学的要因が関与している と思われた。炭化物中塩素の大部分は水溶性であり、水洗による塩素 除 去効果は高い。一方、セメ ントキルン用燃料としては揮 発性塩素0.1%が目標となっており、水 洗 のみでは0.16cl0が炭化物中 に残るが、炭酸化まで行うと0.11%程度とたり、ほば満足出来るこ と が分かった。
第4章では、炭化物中の灰分 除去方法として重液選別、 および石炭の灰分除去技術である浮選、
液 中造粒を適用し、あわせて 灰分の存在形態について考察した。試料として都市ごみ炭化物、自動 車 シ ュレ ッダーダストくASR)炭化物を用い、不燃物を 多く含む5.6 mm以上と粉砕 試料のうち125 ロm以上を除いて実験を行った 。
選別条件によって回収物の 特性は変化するが、発熱量が高い良質の炭化物を得ようとすると可燃
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彦 美
春
敏 昌
豊
藤 川
和
松 恒
名
授 授
授
教 教
教
査 査
査
主 副
副
分の回収率が 低くなるとのトレードオフ関係が見られた。都市ごみ炭化物に対しては浮選あるいは 液 中造 粒に よっ て 発熱 量20000 kj/kg及ぴ 灰分30%以下の目標値を満足 できたが、可燃分の回収 率 は200/0まで 低下 した 。ASR炭化物につ いては、基準値を満足させる ことが不可能であった。
灰分分離の 困難さは、灰分が可燃分と物理・化学的に結合した形態で存在するためと考え、重液 選別で分離し た同一密度粒子群の灰分、可燃分、およぴ平均密度から灰分、可燃分の密度を推定し た 。こ れを 用い て 推定 した 粒子 密度 は 実験 値と よく一致し、またEDX/SEMによる表面分析結果 からも灰分と 可燃分が結合しているとの仮 定が正しいことを確認した 。灰分密度の推定値はXRD 分 析 に よ り 得 た 化 合 物 形 態 分 布 に も と づ く 推 定 値 と ほ ぽ 同 じ で あ っ た 。 第5章では、 炭化処理を廃棄物の埋立前 処理として検討するため、嫌 気性埋立、好気性埋立を 各々模擬した カラム実験を行った。第2章 で有機物と重金属量が多いにも関わらず直接埋立されて いた粗大ごみ 不燃残渣の炭化物を試料とし、比較のため未処理の不燃残渣、焼却残渣についても実 験した。
炭化処理は 、焼却には及ぱないものの有機物削減効果は大きい。カラム試験においては、炭化物 からの有機物 溶出は好気性・嫌気性によらず原廃棄物と比べて大幅に減少し、特に好気性カラムで はアンモニア 濃度が低下した。しかし、重金属溶出量は溶出試験では基準値を満足するが、カラム 実験において は溶出が認められ、好気性条 件ではCd、Cr、Pbなどの溶 出が嫌気性条件と比べて促 進された。従 って、炭化物から重金属の溶出抑制効果を得るためには、酸化還元ぬどの環境条件を 考慮すること が必要である。
これを要す るに、筆者は、さまざまな廃棄物を対象として炭化物の特性を燃料利用,埋立前処理 の観点から検 討し、前者においては炭化物質向上の可能性と課題、後者に対しては有機物,重金属 の溶出抑制効 果を明らかにした。本研究の成果は、廃棄物処理における炭化処理を対象に応じて使 い分ける可能 性を示したもので、廃棄物工学、リサイクル工学の発展に寄与するところ大なるもの が ある 。よ って 著 者は 、北海道大学博士 (工学)の学位を授与される 資格あるものと認める。
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