博 士 ( 工 学 ) 高 田 昌 二
学 位 論 文 題 名
高温ガス炉の事故時崩壊熱除去用受動的 冷却システムの設計・評価手法の研究
学位論文内容の要旨
高 出 力 密 度 化 を 達 成 し つ つ 、 固 有 の 安 全 性 を 高 め た 高 温 ガ ス 炉 (HTGR) の 開 発 に は 、 崩 壊 熱 除 去 の た め に 高 性 能 な 受 動 的 冷 却 シ ス テ ム の 開 発 が 必 要 不 可 欠 で あ る 。HTGR用 受 動 的 冷 却 シ ス テ ム に は 、 原 子 炉 圧 力 容 器 ( 以 下 、 圧 力 容 器 と 略 す ) を あ る 距 離 を お い て バ ネ ル 状 に 取 り 囲 む よ う に 配 置 し た 冷 却 管 に 冷 却 水 を 強 制 的 に 流 し て 圧 力 容 器 を 間 接 的 に 冷 却 し 崩 壊 熱 を 除 去 す る 水 冷 形 、 或 い は 、 空 気 を 自 然 循 環 さ せ 除 熱 す る 空 冷 形 冷 却 パ ネ ル シ ス テ ム が 提 案 さ れ て い る 。 冷 却/` ネ ル シ ス テ ム の 設 計 に あ た っ て は 、 事 故 時に 過熱 した ガ ス の 自 然 対 流 に よ り 圧 力 容 器 等 の 重 要 な 構 造 物 に そ れ ら の 健 全 性 を 損 な う ホ ッ ト ス ポ ッ ト の 発 生 が 予 想 さ れ る た め 、 最 適 の 受 動 的 冷 却 シ ス テ ム の 設 計 ・ 評 価 手 法 を 構 築 し 、 過 熱 し た ガ ス の 自 然 対 流 の 影 響 を 受 け る 構 造 物 の 温 度 分 布 を 適 切 に 評 価 す る こ と が 重 要 で あ る 。 本 研 究 で は 、HTGR用 冷 却 バ ネ ル シ ス テ ム の 除 熱 特 性 と 構 造 物 の 温 度 分 布 を 評 価 す る た め に 、 炉 心 の 崩 壊 熱 を 模 擬 す るlOOkWの ヒ ー タ を 内 蔵 す る 高 さ3mの 圧 力 容 器 と 圧 力 容 器 を 囲 む よ う 配 置 し た 冷 却 パ ネ ル を 有 す る 冷 却 パ ネ ル 特 性 試 験 装 置 に よ り 実 験 を 行 っ た 。 実 験 は 水 冷 形 と 空 冷 形 冷 却 パ ネ ル の2形 式 を 模 擬 し て 行 っ た 。 一 方 、HTGR用 受 動 的 冷 却 シ ス テ ム の 設 計 ・ 評 価 を 行 う た め 、 新 た に 放 射 伝 熱 機 能 を 付 加 し て 、 放 射 伝 熱 、 熱 伝 導 お よ ぴ 自 然 対 流 熱 伝 達 を 考 慮 し 、 流 れ と 各 構 造 物 の 温 度 分 布 を 同 時 に 解 く 数 値 解 析 コ ー ド THANPACST2を 開 発 し た 。 THANPACST2は 自 然 対 流 の 流 れ を 考 慮 し な い 従 来 のHTGR 設 計 ・ 評 価 コ ー ド に 比 較 し て 、 過 熱 し た ガ ス の 自 然 対 流 に よ る 構 造 物 温 度 や 除 熱 特 性 へ の 影 響 が 評 価 で き る 。THANPACST2を 本 実 験 に 適 用 し 各 構 造 物 の ホ ッ ト ス ポ ッ ト 評 価 に 関 す る 信 頼 性 を 検 証 す る と と も に 、 冷 却 バ ネ ル シ ス テ ム の 除 熱 特 性 を 明 ら か に し た 。 な お 、 解 析 は 、 過 熱 し た ガ ス の 自 然 対 流 に よ る 構 造 物 温 度 分 布 や 除 熱 特 性 へ の 影 響 が 評 価 で き る よ う 冷 却 バ ネ ル 全 除 熱 量 に 占 め る 放 射 伝 熱 割 合 が 約75% と 高 く 、 か つ 、 炉 室 内 空 気 の 自 然 対 流 に よ る 割 合 が 高 く な る 圧 力 容 器 最 高 温 度 が 約210℃ と な る 条 件 か ら 、 圧 力 容 器 最 高 温 度 が 約510℃ で 放 射 伝 熱 割 合 が 約98% と 高 く な る 事 故 時 温 度 条 件 の 範 囲 で 検 討し た。 また 、 黒 鉛 及 び 炭 素 ブ ロ ッ ク に よ り 構 成 さ れ 、 複 雑 な 構 造 を 有 す る 高 温 の 炉 内 構 造 物 の 保 有 熱 が 低 温 の 圧 力 容 器 等 の 金 属 構 造 材 を 加 熱 す る 熱 過 渡 挙 動 を 評 価 す る た め に 、 炉 心 を 支 持 す る HTGR炉 床 部 の 実 寸 大 モ デ ル で あ るHENDEL‑T2試 験 部 に お け る 強 制 循 環 喪 失 時 の 熱 過 渡 試 験 を 行 っ た 。 ま た 、THANPACST2を 本 試 験 に 適 用 し 各 構 造 物 の ホ ッ ト ス ボ ッ ト 評 価 に 関 す る 信 頼 性 を 検 証 す る と と も に 、 炉 床 部 構 造 物 の 熱 過 渡 挙 動 を 明 ら か に し た 。 こ の 結 果 、HTGR用 受 動 的 冷 却 シ ス テ ム の 設 計 ・ 評 価 の 基 盤 と な る 重 要 な 知 見 を 得 る こ と が で き ‑ 19―
た。また、冷却パネル特性試験により得られた実験結果はHTGR 事故時崩壊熱除去システ ムの高度化のための IAEA 主催の国際協力研究でべンチマーク問題として採用されるなど 本研究の学術的価値及び波及効果は大きい。本論文は6 章から構成されており、各章の概 要は以下のとおりである。
第1 章の「序論」では、高温ガス炉の受動的冷却システムの概要と、システムに要求さ れる条件等を述べている。次に、高温ガス炉の受動的冷却システムの設計に関する研究の 歴史を振り返り、本研究の目的と意義を述べる。
第2 章の「高温ガス炉の崩壊熱除去用水冷形冷却パネルシステムの設計・評価手法の研 究」では、水冷形冷却バネルシステムを模擬した冷却パネル特性試験装置により得られた 実験結果に 、新たに開発した解析コード THANPACST2 を適用し、コードの解析手法、モ デル及び使用した物性値の妥当性を検証した。これより、事故時の機器の健全性を評価す る上で重要となるホットスポット評価の信頼性に関し、数値解析は高温となる圧力容器上 鏡部が圧力容器内のガスの自然対流により加熱される様子を適切に評価することができた。
第3 章の「水冷形冷却パネルシステムにおけるスタンドバイプによる除熱抑制効果の解 析」では、圧力容器内の高温のガスの自然対流により過熱された圧力容器上鏡部から冷却 バネルへの除熱が、制御棒駆動装置等を収納するスタンドバイプにより抑制されることに よる影響を評価するため、冷却パネル特性試験装置の圧力容器上鏡部に模擬スタンドパイ プを付けて実験を行った。圧力容器上鏡部に三次元形状で林立する複数のスタンドバイプ をボーラスボディセルにより模擬した軸対称モデルを提案しその妥当性を検証した。ホッ トスポットの評価の信頼性に関し、数値解析は、圧力容器内のガスの自然対流が高温の圧 力容器上鏡部を過熱するとともに、スタンドバイプの設置により上鏡部から冷却パネルへ の放射伝熱が抑制され、かつ、上鏡部の放熱面積が減少し、上鏡部温度が急峻に上昇する 様子を適切に評価できることがわかった。
第4 章の「高温ガス炉の空冷/ `ネルによる受動的熱除去特性の解析」では、冷却バネル 特性試験装置の冷却バネルに空気を流すことができるよう改造し、空冷形冷却パネルシス テムの除熱 特性を評価するとともに、THANPACST2 の解析手法とモデルを検証した。空 冷/ `ネルの冷却管内では空気が加熱されながら上昇するために軸方向に大きな温度分布が 生じ上部で高温となるが、数値解析は、圧力容器温度が冷却バネルとほぼ平行に上部で高 温となり、スタンドバイプにより上部冷却バネルへの放射伝熱が抑制され、かっ、放熱面 積が減少した圧力容器上鏡部は、模擬炉心で加熱され上昇するへりウムガスにより加熱さ れ 、 上 鏡 頂 部 で 最 高 温 度 が 現 れ る 様 子 を 適 切 に 評 価 で き る こ と カ s わ か った 。 第5 章の「高温ガス炉炉床部の実寸大モデルによる強制循環喪失時熱過渡挙動の解析」
で は 、 HENDEL‑T2 試 験 部 で の 強 制 循 環 喪 失 時 の 熱 過 渡 試 験 結 果 に 解 析 コ ー ド THANPACST2 を 適用し、 HTGR 炉 床部の熱過 渡特性を明 らかにする とともに、 構造物の ホットスポットの解析手法及びモデルの妥当性を検証した。構造物温度が最高値に到達す るまで数十時間かかる緩慢な熱過渡挙動を有したが、解析では、長時間の伝熱流動計算を 実時間程度の計算時間で行うことができ、かつ、ホットスボットの評価の信頼性に関し、
各構造物温度の過渡変化を適切に評価できることがわかった。
第6 章の「結論」では、各章において得られた結論を要約し、本研究の結論と今後の展 望を述ぺている。
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学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
高温ガス炉の事故時崩壊熱除去用受動的 冷却システムの設計・評価手法の研究
高 温 ガ ス 炉 の 固 有 の 安 全 性 を 高 め る た め に は 、 事 故 時 の 崩 壊 熱 除 去 の ため に高 性能 な 受動 的 冷 却 シ ス テ ム の 開 発 が 必 要 で あ る 。 高 温 ガ ス 炉 用 受 動 的 冷 却 シ ス テ ム に は 、 原 子 炉 圧 力 容 器
( 以 下 、 圧 力 容 器 と 略 す ) か ら あ る 距 離 を お い て パ ネ ル 状 に 取 り 囲 む よ うに 配置 した 冷 却管 に 冷 却 水 を 強 制 的 に 流 し て 間 接 的 に 冷 却 す る 水 冷 形 、 あ る い は 空 気 を 自 然 循環 させ 除熱 す る空 冷 形 冷 却 パ ネ ル シ ス テ ム が 提 案 さ れ て い る 。 高 温 ガ ス 炉 の 事 故 時 に は 、 過 熱し たガ スの 自 然対 流 に よ り 圧 力 容 器 等 の 重 要 な 構 造 物 の 健 全 性 を 損 な う ホ ッ 卜 ス ポ ッ ト の 発 生が 予想 され る 。こ の た め 、 冷 却 パ ネ ル シ ス テ ム の 設 計 に あ た っ て は 、 最 適 の 受 動 的 冷 却 シ ス テム の設 計・ 評 価手 法 を 確 立 す る 必 要 が あ る 。
本 研 究 で は 、 高 温 ガ ス 炉 の 事 故 時 の 冷 却 パ ネ ル シ ス テ ム の 除 熱 特 性 と 原子 炉構 造物 の 健全 性 を 評 価 す る た め に 、 模 擬 試 験 お よ び そ の 数 値 解 析 コ ー ド の 開 発 と 計 算 を 行っ た。 これ に よっ て 1998年lo月 に 臨 界 に 達 し た 日 本 初 の 高 温 ガ ス 炉 ( 高 温 工 学 試 験 研 究 炉 ) の 冷 却 パ ネ ル シ ス テ ム 設 計 の 基 礎 デ ー タ を 与 え 、 高 温 ガ ス 炉 の 受 動 的 冷 却 シ ス テ ム の 精 度 よ い設 計計 算が 可 能と な っ た 。 本 研 究 の 重 要 な 成 果 は 以 下 の よ う に 要 約 さ れ る 。
1. 炉 心 の 崩 壊 熱 を 模 擬 す るlOOkWの ヒ ー タ を 内 蔵 す る 高 さ3mの 圧 力 容 器 と そ れ を 囲 む よ う 配 置 し た 水 冷 形 と 空 冷 形 の2形 式 の 冷 却 パ ネ ル の 特 性 試 験 装 置 に よ り 実 験 を 行 い 、 冷 却 パ ネ ル の 基 礎 デ ー タ を 得 た 。
2.高 温 ガ ス 炉 用 受 動 的 冷 却 シ ス テ ム の 設 計 ・ 評 価 を 行 う た め 、 放 射 伝 熱 、 熱 伝 導 お よ び 自 然 対 流 熱 伝 達 を 考 慮 し 、 流 れ と 各 構 造 物 の 温 度 分 布 を 同 時 に 解 く 数 値 解 析 コ ー ドTHANPACS T2を 開 発 し た 。 こ の コ ー ド は 、 従 来 の 自 然 対 流 を 考 慮 し な い 設 計 ・ 評 価 コ ー ド に 比 較 し て 、 過 熱 ガ ス の 自 然 対 流に よる 構造 物 温度 や除 熱特 性へ の影 響を 精度 よく 評価 でき るよ うに な った 。 3. THANPACST2を 種 々 の 条 件 で 行 わ れ た 本 実 験 の 解 析 に 応 用 し 、 通 常 運 転 お よ び 事 故 時 の 過 熱 ガ ス の 自 然 対 流 に よ る 構 造 物 の 温 度 分 布 や 除 熱 特 性 を 計 算 し た 。 これ によ って 各 構造 物 ―21一 ―