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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 理 学 ) 桑 原 慶 太 郎

     学位論文題名

Elastic Response of the Heavy Electron System URu2Si2 Studied by     High Sensitivity Ultrasonic Sound Velocity Measurements

(高感度超音波音速測定による重い電子系URu2Si2 の弾性応答に関する研究)

学位論文内容の要旨

  f電 子を持 つ希土 類化合物 やアク チナイ ド化合 物の中 で、強 い電子 相関に より、低温で大 きな 電子比 熱係数 を持つ ことで 特徴づ けられ る物質 群は「重い電子系」と呼ばれている。一 般に 、f電子は比較的良く局在しているため、f電子と格子との相互作用は小さいっそのため、

結晶 中にお いて、f電子の 軌道自 由度が 低温ま で残る 場合が ある。最 近の重 い電子系の研究 にお いて、 この軌 道自由 度が関 与して いる現 象は、 最も関心が持たれていることのーつであ る。 その中 のトピ ックと して、Uイオン やPrイオ ンなど の非ク ラマー スイオ ンを含んだ系で 発見 されて いる興 味深い 低温異 常があ る。そ の異常 物性の起 源が、f電子の 軌道自由度と伝 導電 子との間の新しい機構の相互作用によって起こっている可能性が議論されている。また、

f電 子系一般 におい て、有 限の軌 道角運 動量を 持つ系 は四重 極モーメ ントを 持っが、その四 重極 モーメ ントが 格子上 に配列 する相 転移( 四重極 転移と呼ぱれる)が幾っかの物質で発見 され ている 。これ は、従 来の電 子格子 相互作 用が起 源である構造相転移とは異なった機構に よる転移であると考えられており、現在盛んに研究が行われている。

  こ のf電子 の軌道 自由度に 関する 情報を 得るた めの実 験手段 の中で 、超音 波音速測定は最 も 強 カ な測 定手 段のー つであ る。特 に、良 く局在 したf電 子系お いては 、そのf電子の持 つ 四重 極モーメントは超音波による一様な歪みと一次で結合するので、超音波音速測定により、

f電子の軌道自由度に関する直接的な情報を得ることができる。

  本 研究で は、正方 晶重い 電子系 化合物URu,Si,に注 目した 。この 物質は、F、=17.5Kで比 熱に 明確な 異常を 伴った 二次相 転移をする。中性子散乱実験からは、F、以下で微小磁気モー メン ト(ウ ラン原 子当た り‑0.03pn)による 反強磁 性秩序が 起こっ ている としているが、こ の微 小磁気 モーメ ントが この相 転移の 秩序変 数であ るとすると、転移に伴うエントロピー変 化の 大きさ を説明 するこ とが困 難である。そのため、この微小磁気モーメントがF、での相転 移の 真の秩 序変数 ではな く、何 らかの 隠れた 秩序変 数がrlでの比熱の異常を引き起こしてい る可 能性に ついて の議論 が数多 くなさ れてい る。興 味深いことに、最近の非磁性の秩序変数 が提案されている理論(Santiniらによる結晶場一重項基底状態での反強四重極転移、Barzykin らによる混合価数・U (5F)転移、Amitsukaらによる結晶場非クラマース二重項基底状態での反 強四 重極転 移)で は、r、 での相転移において格子変形を含む可能性が議論されている。そこ で、 本研究 では、URuiSi1の5f電 子の軌 道自由 度及びToでの相 転移と 格子と の間の関係に注 目し 、この 物質の 弾性定 数の温 度磁場 依存性 の測定 を行った 。まず 、0磁場 での弾性定数測

‑  113

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定を東北大・科研・後藤研究室で行い、横波(cll‑c12)12モードがソフト化することを初めて発 見 した。 この横 波弾性 異常を より詳 しく調べるため、本研究室で超音波音速測定装置の製作 を 行い、 この製 作した 装置を 用いて 、12Tまで の磁場 中での 弾性定数測定を行った。これら の 実験結 果を、 両極限 の近似(5f電子遍 歴及び5f電子局 在)のもとで解析を行った。特に、

後 者にお ぃては 、この 系で提 案され ている結晶場モデルについて詳しい検討を行った。本論 文 で は 、 第1章 で製 作し た音速 測定装 置につ いて述 べ、第2章でURuiSiiの弾性 定数測定 の 結果及び考察を述べている。以下にそれらを要約する。

高感度超音波音速測定装置の製作

  本 研究で 製作し た位相 比較法に 基づく超音波音速測定装置は、大別するとパルス法に属す る 装置で ある。こ の測定 方法で は、固体中での超音波パルスの伝搬時間に対応した位相の遅 れ に着目 し、それ と参照 信号と の間の位相差を常に一定にするように、発振器にフイードバ ッ クをか けて周波 数ノを 変化さ せる。 この時 、音速vと発振 周波数′の間に、Avlv〓Af/fの 関係があるので、この周波数シフト△′から音速の相対変化Avlvを知ることができる。この測 定 方法の 主要な利 点は、 上述の 関係式から分かるように、測定に用いる周波数を高くするほ ど 音速の 相対変化 を高感 度に測 定でき ること である 。現在 、‑ 20 MHzの 周波数領 域におい て 、Avlv〓2x l0‑6より良い音速分解能を達成している。他の利点として、出カエコー信号の 大 きさの 変動によ る影響 を本質 的に受けにくい測定方法であること、平均入カパワーを小さ く できる こと、な どがあ る。ま た、製作した装置において考えられる誤差の原因についての 考察を行い、現在の装置の改善すべき点を述べた。

URu、Siユの弾性定数測定と解析

  高精 度の弾 性定数 測定か ら、URuiSiiのTo=17.5Kで の相転 移に伴 い、一 様な格 子変形 は 起こ ってい ないこ とを再 確認した 。それ ゆえ、この相転移の秩序変数が格子と結合している のであれば、その格子変形はQ≠Oの構造でなければならない。

  今回初めてURu.Si,の横波(cIj‑C12)12モードの温度磁場依存性の測定を行い、このモードで ソフ ト化を 観測し た。こ のことか ら、こ の系は 低温で 正方晶 点群Dわ の既約 表現rの 構造不 安定 性を持 っこと が明ら かになっ た。こ のような横波モード(体積変化のないモード)のソ フト 化は、 ウラン 化合物 の中では ほとん ど例のない興味深い実験事実である。観測された磁 場変 化は、 この横 波弾性 異常が電 子起源 であることを示唆している。この弾性異常は、定性 的に 、非磁 性の秩 序変数 が提案さ れてい るすべてのモデルと矛盾しない結果である。また、

この 横波弾 性異常 の発見から、以前に報告のあった縦波c‥モードの異常が、体積効果のみで は説明できないことを明らかにした。

  変形 ポテン シャル による 解析(5f電 子が遍 歴して いると 仮定) からは、ぺの歪みに対して のみ 縮退が とれる ような 異方的な 重い電 子バンドの存在が示唆される。今後、さらなるバン ド計 算及びdHvA効果の 実験が 必要で あろう 。ー方 、提案 されてい る結晶 場モデ ルの歪 み感 受率 による 解析(Sf電子が 良く局 在して いると仮定)からは、提案されている結晶場モデル の中 で、一 重項基 底の反 強四重極 転移の 結晶場モデルが最も良く実験結果を説明できること が明 らかに なった 。この 歪み感受 率によ る解析において、Sf電子と伝導電子との間の相互作 用も 考慮す るなら ば、非 クラマー ス二重 項基底状態の可能性も十分考えられる。今後、希釈 系((Th,U)Ru2Si2など)の弾性定数測定が必要不可欠である。

    ー114―

(3)

学位論文審査の要旨

     学位 論文題名

Elastic Response of theHeavyElectronSyStemURu2Si2Studiedby     HighSenSitiVityUltraSOniCSOundVelOCityMeaSurementS

(高 感度超音 波音速測 定による 重い電子 系URu2Si2 の弾性応 答に関する研究)

   重い電子系分野における最重要課題のーつにウラン化合物URu2SiZ の低温秩序相の解明があげられ る。この物質は、電子比熱に明瞭な異常を伴う 2 次相転移を低温で示す。中性子実験により、Sf 電子 磁気モーメントの反強磁性配列が転移とともに発達する様子が確認されたことから、当初は磁気相転 移と考えられた。しかし、観測された磁気モーメントの大きさが異常に小さく、巨視的物理量の変化 と既存の理論では整合しないことから、他の秩序機構の可能性が活発に議論されている。この相転移 に関する研究の歴史はすでに十余年に及ぶが、現時点においても秩序変数さえ特定できていない状況 にある。

   本論文は、このような現況にあるURuZSi2 の相転移現象について、超音波位相比較法による精密音 速測定により、5f 電子の軌道自由度の役割および構造不安定性の有無を調べることを目的としたもの である。著者は先ず東北大学との共同研究により、この物質の単結晶につしゝて零磁場における音速測 定を行った。その結果、一つの横モードの弾性定数が降温とともに不完全ではあるが顕著なソフト化 異常を示すことを初めて明らかにした。このことから、この物質には少なくとも結晶4 回対称性に対 する構造不安定性があること、また同時に、相転移が一様な格子変形を伴うものではないことを示し た。一般に重い電子系の多くは、重い準粒子の量子凝縮に伴い、低温で縦モードの弾性定数に顕著な ソフト化を示す。本論文で示された横モードのソフト化は極めて珍しい現象であり、この系の電子状 態を考える上で今後注目される重要な実験事実といえる。

   っぎに著者は、この弾性異常をさらに詳しく調べるために、音速の磁場効果を測定した。そのため に、低温強磁場中で稼動する音速測定装置を本学において自ら製作した。完成した装置のもつ実験精 度は、位相比較法による装置としては世界でトップレベルのものといえる。様々なモードの丹念な実 験の結 果、顕著 な磁場効果 が確認され、弾性異常が電子によるものであることをっきとめた。

   この実験結果に基づき、著者はニつの議論を行った。第一に、この相転移に対して提案されている 全ての局在結晶場模型に対する定量的検討を行い、その適否を示した。いくっかの模型における基本 仮定が本論文の実験結果と本質的に適合しないことを示したことは、停滞していた議論にーつの進展 をもたらす成果である。第二に著者は、遍歴電子の立場から定量解析を行い、この系のバンド構造に ヤーン・テラー縮退が存在する可能性を新たに提言した。この提案は、他の実験手段および理論計算 によって今後検討されるべきものであるが、この系の相転移に対する新たな見方として注目される。

郎 義

一 浩

俊 房

原 川

谷 塚

榊 大

熊 網

授 授

授 師

教 教

教 講

査 査

査 査

主 副

副 副

(4)

   一般にウラン化合物の5f 電子状態は、局在・遍歴の2 面性や非クラマース性が絡み、基本理解が 難しい。URu2Si2 の示す物性はその典型例といえる。本論文はURuzSiz の相転移機構の解答を直ちに与 えるものではないが、今後の理論的研究の進展の上で無視できない新たな実験事実と基本的解析を提 供するものであり、十分に評価できると考えられる。

   よ って 著者 は、 北海道 大学 博士(理学)の学位を授与される資格があるものと認めます。

参照

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