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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 工 学 ) 中 村 吉 志

Analysis of iTz situ nitrifying activity and microbial community   structure in river sediments by using microelectrodes and

         16S rRNA‑based molecular biological techniques

(微小電極および分子生物学的手法を用いた河川底泥内励situ における

    

硝化活性および微生物群集構造解析)

学位論文内容の要旨

  

河川底泥には高い自然浄化能カがあることが知られており、富栄養化の原因となる 窒素化合物がアンモニアとして環境中に排出された際には河川底泥内で生物学的酸 化・還元反応によって除去される。しかし、酸化反応を担う底泥表層の好気領域は数

mm

の非常に限られた空間である。河川底泥内の好気領域を拡大させる要因として光 合成、底生動物による巣穴の形成、植物根からの酸素の放出があげられ、これらの要 因は硝化反応を促進すると考えられているが、in situ における詳細な硝化活性と微生 物群集構造の情報を組み合わせたもの,は少ない。

  

本研究では、河川底泥内の窒素除去メカニズムを解明するために、窒素除去の律速 反応である硝化反応に着目し、河川底泥内での硝化活性および光合成、底生動物によ る巣穴の形成、ヨシ根からの酸素放出が硝化活性と微生物群集構造に与える影響を解 析した。底泥内in situ 硝化活性を評価するために各種微小電極を用い、河川底泥内の 硝化細菌の同定、定量および微生物群集構造の解析を行なうために16S rRNA 遺伝子 を標的とした分子生物学的手法を用いた。

  

河川底泥内の硝化細菌の優占種はアンモニア濃度と塩分濃度に伴って変化してい て、硝化細菌の底泥内深さ方向の分布に変化は見られなかった。暗条件下でのアンモ ニア消費活性は主に底泥表層

1 mm

で観察されたが、明条件下では、光合成が底泥表 層で生じ、表面の酸素濃度が増大し、好気領域が約2 倍に拡大した。それに伴って、

底泥内のアンモニア酸化活性は増大し、また底泥深部でも硝化活性が見られるように

なり、120 %から

270

%に増大した。底生動物によって形成された巣穴内部には直上水

が取り込まれ、巣穴壁面は好気的な環境が形成されていた。そして巣穴壁面は底泥表

層よりも硝化活性が数倍高く、さらに硝化細菌が底泥表面よりも

2

倍程度多く検出さ

れ、底泥内の硝化活性は底生動物が巣穴を形成する事によって促進されていた。ヨシ

根の酸素を放出している約40 mm の範囲では硝酸生成活性が、そして中心部分約20

mm

ではアンモニア酸化活性が観察された。また硝化細菌はヨシ根の酸素を放出して

いる範囲から検出され、酸素を放出していない部分からは検出することができなかっ

た。巣穴壁面およびヨシ根圏生物膜内の微生物群集構造は周辺の底泥に比べて、多様

性が大きく、さらに、鉄、メタン船よぴ硫黄酸化細菌が特異的に検出された。またヨ

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シ根は底泥内に表層の約20 倍に及ぶ好気領域を形成し、硝化活性は底泥表面の約10 倍促進させる事が示唆された。

  

本研究では光合成、底生動物による巣穴の形成、ヨシ根からの酸素放出が硝化活性 および微生物群集構造に与える影響を検討し、これらが河川底泥内の好気領域を拡大 させ、硝化細菌の増殖を促し、硝化活性が促進されていた事が明らかになり、河川底 泥内の硝化活性について詳細な知見を得る事ができた。

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学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主査    助教授    岡部   聡

Analysis of in situ nitrifying activity and microbial community   structure in river sediments by using microelectrodes and

         16S rRNA‑based molecular biological techniques

(微小電極および分子生物学的手法を用いた河川底泥内励situ における

    

硝化活性および微生物群集構造解析)

  河川 の水 環境 保全の観点から、河川の自然浄化能カを定量的に 把握することは重要で あ る。 特に 、富 栄養化の原因となる窒素化合物の除去能力・メカ ニズムの解明が必要で あ る。 河川 の自 浄作用を考えるとき、河床生物膜や底泥の影響を 無視することはできな い 。一 般的 に、 河川水中のアンモニア性窒素は底泥表層の好気的 領域で生物学的硝化反 応 によ って 硝酸 塩ま で酸 化さ れ 、生 成さ れた 硝酸 塩は 嫌気 的領 域でN2まで還元され除 去 され ると 考え られ てい る。 し かし なが ら、 底泥 表面 に形 成さ れる 好気的領域は数mm の 非常 に限 られ た空間であるため、底泥内で生じる硝化活性を加 ぷぬで定量的に解析し た 研究 事例 は少 ない。底泥内部での硝化活性および関与する微生 物群集構造を解析する た め に は 、 時 間 的 ・ 空 間 的 に 高 い 解 析 手 法 が 必 要 不 可 欠 で あ る 。   そこ で本 研究 では、河川全体の窒素除去能カを正確に理解する ため、河川底泥の窒素 除去に果たす役 割を定量的に評価することを目的とする。この目的を達成するためには、

時 間 的 ・ 空 間的 分解 能の 高い 各種 微小 電 極と 最新 の分 子生 物学 的手 法(16S rRNA遺 伝 子クローjング、Real_TimeQuantitativePolymeraseCha血R鋤而on(RTQ.PCR)法など)を 併 用す るこ とに より、底泥内で生じる硝化反応機構を明らかにす ることに加え、底泥の 好 気的 領域 を拡 大させると考えられる、光合成、底生動物および 抽水植物の影響を定量 的 に評 価す るこ とが必要となる。このように、河川底泥内所ぷぬ における詳細な硝化活 性 と 関 与 す る 微 生 物 群 集 構 造 の 解 析 を 組 み 合 わ せ た 研 究 は な い 。   本論文の各章 の内容は以下のようになっている。

  第1章 では 、河 床生 物膜 およ び底 泥内 で生じる硝化反応に影響 を及ばすと考えられる 環境要因(例え ば、光合成、底生動物、抽水植物など)にっいて、文献検索を行い情報の 整理を行うとと もに、本研究の目的を述べた。

  第2章 では 、底 泥内 で生 じる 光合 成の 活性を、各種微小電極( 酸素、アンモニア性窒 素 、 亜 硝 酸 塩、 硫化 水素 、ORP、pH冫を 用い て測 定し た。 河川 底泥 に 光を 照射 した 場 合 、光 合成 は底 泥表 面か ら約O.5mmまで の範 囲で 生じ た。 光照 射強 度を増加させる事

公 行

義 尚

辺 水

渡 船

授 授

教 教

査 査

副 副

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により 酸素濃度 が増大 するとと もに、底 泥内の 好気領域 が約2倍に拡 大した。また、底 泥内 に は 酸 素呼 吸、 硝酸還元 、硫酸 還元反応 が底泥 表層5 mmの範 囲に層 状に分布 して お り 、 こ れ ら 反 応 は 光 合 成 有 無 に よ り 底 泥 内 で 上・ 下 す る事 が 明 らか と な った 。   3章 では 、 汚濁 状況が異 なる3地点の 河川底泥 を対象 として、 アンモ ニア酸化 細菌 および 亜硝酸酸 化細菌 の群集構 造、深さ 方向分 布および加situにおける活性を分子生物 学的手 法および 微小電 極を併用 して解析 した。 微小電極による明暗条件下の河川底泥内 加ざ ぬ で の 硝化 活 性 とRTQ‑PCRによ る 硝 化細 菌の 分布が共 に示され たのは 本研究が は じめて である。 アンモ ニア酸化 細菌およ ぴNitrospiraに近縁な亜硝酸酸化細菌の優占種 はアン モニア性 窒素濃 度と塩分 濃度に影 響され 変化していた。暗条件下でのアンモニア 消費 活 性 は 主に 表層1 mmで観察 されたが 、明条件 下では 、光合成 により 底泥内の 好気 領域 が 約2倍に 拡 大 し、 そ れ に伴 い 底 泥内 の アンモ ニア酸化 活性も120%か ら270% ま で増加 した。こ の時、 暗条件下 ではアン モニア 酸化が観察されなかった底泥深部におい てもア ンモニア 酸化活 性が観察 された。 これら の結果より、河川底泥内における硝化活 性は 、 表 層2 mmの範囲に 限られ が、光合 成が生じ ること により促 進され ることが 明ら かとなった。

  4章では、 河川干 潮域の底 泥内に生 息して いる底生 動物が 窒素循環 に与える影響お よび 巣 穴 が 底泥 内 の 微生 物 群 集構 造 に 与え る 影 響を 、 各 種微 小 電 極 、RTQ‑PCR、16S rRNAgeneク ロー ニン グ法を用 いて検 討した。 その結 果、酸素 は底生 動物の巣 穴を通し て巣穴 内(底泥 表面よ り35011unの 地点) にまで供 給され ており、 巣穴壁面 には好気性 細菌で あるアン モニア 酸化細菌 および亜 硝酸酸 化細菌が 、底泥 表面よゅ も約2倍多く存 在し、 巣穴壁面 におけ るアンモ ニア酸化 活性は 底泥表層 に比べ て約2倍高かった。また 巣穴壁 面に存在 する微 生物群集 は、巣穴 周辺の 底泥内および底泥表層に比べて多様性が 高かっ た。さら に、マ イクロコ ズム実験 により 、底生動物数の増加に伴い硝化および脱 窒反応 が促進さ れるこ とが明ら かとなっ たこと より、底生動物が底泥内の窒素循環に重 要な役割を担っていることが明らかとなった。

  5章では、 抽水植 物の代表 ともいえ るヨシ の根から 放出さ れる酸素 が底泥内の硝化 反応に 与える影 響につ いて検討 した。微 小電極 を用いて基質濃度分布を測定した結果、

根先 端 か ら40mmまで の 領 域で 酸 素 の放 出 が 著し く 、 この 領 域 の みに お いて硝化 活性 が観 察 さ れ た。 さら に根圏内 (根先 端から40mm) におい て、アン モニア 酸化細菌 およ びMお卿ねに 近縁な亜 硝酸酸 化細菌の 存在が 確認され た。ヨ シが存在 することにより、

単位底 泥表面積 当りの アンモニ ア消費活 性は、 ヨシが存 在しな いときの 値に比べて約2 倍増大 すると予 想され 、ヨシ根 が河川の 窒素除 去に重要な役割を果たしていることが示 唆された。

  6章では、 これら の結果を まとめ、 底泥表 層、底生 動物の 巣穴壁面 、ヨシ根の表面 では、 硝化活性 が周辺 の底泥よ りも高く 、窒素 除去に重要な役割を果たしていることが 明らか となった 。今後 は、底泥 内の硝化 活性、 窒素除去メカニズムの解明に加えて、河 川水中 における 硝化活 性を定量 的に把握 するこ とにより、河川全体における窒素除去能 カの評価を行う必要がある。

  以上要するに著者は、微小電極と最新の分子生物学的手法を併用し、これまでブラック ボックスとして取り扱われてきた河川底泥内で生じる硝化反応をより定量的に解析するこ とにより、底泥が河川の自浄作用(窒素循環)におよばす影響を明らかにしたものであり、

水環境工学の発展に貢献するところ大なるものがある。

よっ て 著 者 は、 北海 道大学博 士(工 学)の学 位を授 与される 資格ある ものと 認める。

参照

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