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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 工 学 ) 巴    保 義

学 位 論 文 題 名

天然ガス生産プロセスにおける二酸化炭素環境中の 鋼の腐食挙動に対するアミン類の作用機構

学位論文内容の要旨

  21世紀 前半のエネルギー供給にお いては、石油と天然ガスが引 き続き主カであり、「より環境 に優しい 」天然ガスへの依存度が高まるものと予想されている。日本国内における最近の石油・天 然ガス開 発においても、世界的な動向と異なることなく、炭化水素の深部貯留層を求めての大深度 掘削、深 部貯留層よりの生産が行わ れるとともに、地球温暖化対 策として、経済的な二酸化炭素 (C02)分 離除去技術の導入が求められ ている。

  高温ゆ えに採用されるクロム含有鋼チュービング(採油・採ガス管)や新規掘削泥水中の掘管の 局部腐食 の軽減は、インヒビター技 術においては新たな挑戦である。また、C02の吸収除去溶剤と して広範 に使用されるアルカノール アミン水溶液は、C02を吸収してもなおアルカリ性であるにも かかわら ず、装置材料として使用される各種ステンレス鋼が全面腐食を受け、経済性が損なわれて いる。

  本研究 においては、大深度掘削、生産に伴い新たに直面した各種装置材料の腐食に関わる諸問題 を取り上 げ、これらに対する総括的対策を提案している。本論文は、六章から構成され、各章の概 要は以下 の通りである。

  第一章 は、序論であり、石油・天然ガス採掘の状況と採掘における腐食問題の現状を述べるとと もに、本 研究の目的を挙げている。

  第二章においては、HSAB(Hard and Soft Acids and Bases)則に基づいて検討対象とし、評価試験 結果を踏 まえて選定した、カルボキシル基含有インヒビター十高沸点炭化水素油による食孔内のオ イルウエ ット化により、高温・腐食 性ガス井の13%Cr鋼チュービ ングに対する腐食抑制効果の長 期化にっ いて検討している。そのさいに、炭化水素油の共存がインヒビターの抑制効果を飛躍的に 高めるこ とを見出している。これは、インヒビターの疎水基と炭化水素油の聞の疎水性相互作用に よるもの と推察している。

  高価な 耐食性合金、あるいは炭素鋼十インヒビターの連続処理等、腐食対策の既存技術に対し、

本研究に おいて確立されたクロム含有鋼十インヒビターの間欠処理は、新たな有カな選択肢となり 得る技術 といえる。

  第三章 においては、検討対象とした新開発の高温用掘削泥水は、溶存酸素のみならず、当該泥水 の高温劣 化により発生するC02が掘管 外面の局部腐食に影響を与 えることと、インヒピターによ る腐食の 軽減にっいて論じている。 酸性ガスの吸収による腐食軽 減の目的で添加されるMEA(モノ エタノー ルアミン)は、泥水に対す るC02の溶解度を高めることにより、逆にこの腐食を悪化させ ることを 明らかにしている。HSAB則 に基づいて検討対象としたア ノード抑制型のラウリン酸は、

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重油との併用により この腐食を効果的に抑制することを見出している。当該高温用掘削泥水は、腐 食以外の技術的問題 を有しないことから、この腐 食抑制技術の確立により、180℃を超える高温掘 削に対する我国独自 の技術が完成された。

  第 四章 においては、C02を飽 和させた高濃度DGA(ジグラ イコールアミン)水溶液中の 炭素鋼の 腐食 機構 の 推定 に関 して 、 腐食 試験 を行 うと と もに 、13 C‑NMRに よ りC02がDGA水溶 液に吸収 されたさいに生成す る物質の分析を行い、両者の 関連にっいて検討している。3 mol/L以上の高濃 度DGA水 溶液 中で 、DGA濃 度 の増 加に よル カル バ ミン 酸イ オン タイ プ の吸 収が 優勢に なるとと もに、炭素鋼の腐食 速度が上昇することを見出している。この腐食の上昇に対し、カルバミン酸イ オンによる鉄イオン との可溶性錯体形成の影響が 推察される。

  DGA系 内に 沈積 し てい る各 種金 属イ オ ンの 沈殿 挙動 の 相違 は、DGAカル バミ ン酸イ オンと金 属イ オン による錯化合物の安 定性の相違とともに、天然ガ ス中の微量H2Sによるものと 推測して いる 。こ の 金属 イオ ンの 沈 殿挙 動の 相違 は、DGAカル バ ミン 酸イ オン が高 温 のDGA系 内の溶液 化学に影響を与えて いるーつの確固たる証拠であ る。また、アルカノールアミンの分子構造とC02 を吸収したさいの腐 食性の関係を調べる目的で、 各種アルカノールアミンを 対象に腐食試験を行 い、両者間の規則性 を明らかにしている。

  こ れら の 知見 に基 づき 、C02除 去装置の腐食対策におい て、C02を吸収したさいの腐 食性が低 い溶剤選定の指針を 提案している。

  第五章においては 、いまーつの腐食対策である耐食性材料の評価を行っている。各種金属材料試 験片 をDGA系 内の 特 に厳 しい 腐食 環境 中 に浸 漬し 、耐 食 性を調べるとともに、実験室 において C02を飽 和さ せた 高 濃度DGA水溶 液中で、候補材料及び合 金元素の電気化学的挙動を検 討し、以 下の こと を 見出 して いる 。 すな わち、C02を吸収した高濃 度DGA水溶液中の鉄/ニッケ ル基合金 の耐食性は、その合 金中のクロム濃度に依存する 。

  最 終評 価では、共存する微 量H2Sと実装置の動的環境に 着目し、耐食性をより詳細に 検討して いる。そのさいに、 分極抵抗法による腐食速度と交流インピーダンスを測定し、腐食メカニズムの 解析を行い、以下の ことを明らかにしている。すたわち、テストした全ての環境に対し、工業用純 チタンが優れた耐食 性を示す。しかし、H2Sを含 む厳しい腐食環境中では、工業用純チタン表面に 存在した不働態皮膜 が劣化し、腐食速度が一旦増加するものの、保護性の高い不働態皮膜が速やか に再 構築 さ れ、 高い 耐食 性 が得 られる。しかし、工業用 純チタンは非常に高価な材料 である。

  第 四、 五章の検討結果を総 合的に判断し、使用中のC02除去装置に若干の改造が必要 となるも のの 、DGA水 溶液 がC02を 吸 収し たさぃの腐食性が低いア ルカノールアミン水溶液に交 換するこ とを提案している。 それ以降、当該C02除去装置 において腐食に関連した問題は発生していない。

  第六章は総括であ る。本論文は、大深度掘削、生産に伴い新たに直面した各種装置材料の腐食に 関わる諸問題を取り 上げ、これらに対する総括的対策を提案したものであり、対象材、対象温度な どの観点からインヒ ビターの適用範囲を拡大する とともに、今後ますます重 要性が高くなると考 えられる、C02吸収除 去溶剤の選定において、腐 食対策の観点で確固たる指針を示したことから、

石油・天然ガス開発 産業のみにとどまらず、広範な工業分野の発展に多大な貢献をもたらすもので ある。

    以上

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学位論文審査の要旨 主査    教 授    高橋 英明 副査    教 授    幅崎 浩樹 副査    教 授    大塚 俊明 副査    助教授   坂入正敏

学 位 論 文 題 名

天然ガス生産プロセスにおける二酸化炭素環境中の 鋼の腐食挙動に対するアミン類の作用機構

  21世紀前半のエネルギー供給においては、石油と天然ガスが引き続き主カであり、「より環境に 優しい」天然ガスヘの依存度が高まることが予想されている。我が国における最近の天然ガス開発 においては、6,OOOmを越え る大深度掘削、深部貯留層よりの生産が主役になるとともに、経済的 なC02分離除去技術の導入が求められている。すなわち、1)クロム含有鋼チュービング(採油・採 ガス管)および新規掘削泥水中の掘管の局部腐食の軽減のために、新しいインヒビター技術が求め られるとともに、2)C02の吸 収除去溶剤として使用されているアルカノールアミン水溶液は、装置 材料の腐食を引き起こすため 、腐食性の低いC〇2吸収剤 および高耐食性材料の開発が求められて いる。

  本研究においては、大深度掘削・生産に伴い、新たに直面した各種装置材料の腐食に関わる諸問 題を取り上げ、これらに対する総括的対策を提案している。本論文は、六章から構成され、各章の 概要は以下の通りである。

  第一章は、序論であり、石油・天然ガス採掘の状況と採掘における腐食問題の現状を述ぺるとと もに、本研究の目的を挙げて いる。

  第二章においては、高温・ 腐食性ガス井の13%Cr鋼チュ ービングの腐食について調 べるととも に、防食対策について述べている。その結果、HSAB(Hard and Soft Acids and Bases)則に基づぃて 検討し、腐食抑制評価試験により選定したカルボキシル基含有インヒビターを、高沸点炭化水素油 と共存させることにより、インヒビターの防食効果が飛躍的に向上することを見出し、これは、イ ン ヒ ビ タ ー の 疎 水 基 と 炭 化 水 素 油 の 間 の 疎 水 性 相 互 作 用 に よ る こ と を 明 ら かし て いる 。   また、上記の実験結果に基 づぃてインヒビター間欠処 理を行い、高温・腐食性ガス 井の13%Cr 鋼チューピング内の腐食ピットのオイルウエット化を行った結果、腐食の進行が大幅に抑制され、

チュービングの長期使用が可 能となることを述べている 。

  第三章においては、合成粘土鉱物であるスメクタイトを含む、新規開発中の高温用掘削泥水の掘 管外面の腐食作用について調 べるとともに、インヒビタ ー処理による防食対策について述ぺてい る。その結果、堀管の腐食は 、掘削用泥水の劣化により 生ずるC〇2および溶存酸素により引き起

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こ さ れ る こ と を 明 ら か にす る とと もに 、 泥水 にイ ン ヒビ ター を 添加 する こ とに より 、 腐食 が大 幅 に 抑 制 さ れ る こ と が 見 出 して い る。 また 、 モノ カル ボ ン酸 がジ カ ルボ ン酸 よ りも 強い 防 食効 果を 示 す が 、 ポ リ プ ロ ピ レ ン グ リ コ ー ル(PPG)の 共 存 下 で は 、モ ノカ ル ボン 酸の 一 種で ある ラ ウリ ン酸 が き わ め て 強 い 防 食 効 果 を 示 す こ と を 明 ら か に し て お り 、 こ れ ら の 機 構 をHSAB則 に基 づ いて 推論 し 、 堀 管 へ の 新 し い 防 食 処 理 法 を 確 立 し て い る 。

  第 四 章 に お い て は 、 ガス 井 から 得ら れ た天 然ガ ス からC2を 分離 する 装 置の 腐食 に 関連 し、C〇2 を 飽 和 さ せ たDGA(ジ グ ライ コ ール アミ ン )水 溶液 中 の炭 素鋼 の 腐食 機構 に つい て調 べ ると とも に 、 各 種 ア ル カ ノ ー ル ア ミ ンの 腐 食性 につ い て比 較検 討 し、 以下 の 知見 を得 て いる 。。 す なわ ち、 炭 素 鋼 の 腐 食 速 度 は 、DGA濃 度 の 増 大 と と も に 減 少 す る が 、3mal/L以 上 で は 、 逆 に 増 大 し 、 こ れ は 、 1mol/L以 下 で はDGAの 炭 素 鋼 表 面 へ の 吸 着 に よ り 、 腐 食 が 抑 制 さ れ る の に 対 し 、3mol/L以 上 で は 、DGAC02と の 反 応 に よ り 生 成 す る カ ′ レ バ ミ ン 酸 イ オ ン が 、Fe2+イ オ ン と 錯 イ オ ン を 形 成 す る こ と に よ り 、Feの 溶 解 速 度 が 促 進 さ れ る た め で あ る 。 ま た 、 ア ル カ ノ ー ル ア ミ ン とFe2+ オ ン と の 錯 体 の 安 定 性 は 、2座 配 位 子 がFe2+5員 環 を 形 成 す る こ と に よ り き わ め て 高 く な る こ と を 見 出 し 、C2. の 吸収 能 カが 高く て 腐食 性の 低 いア ルカ ノ ール アミ ン の選 定の 指 針を 提案 し て い る 。

  第 五 章 に お い て は 、C2分 離 装 置 の 保 全 対 策 と し て 、 各 種 耐 食 性 材 料 のC2を 飽 和さ せた 高 濃 DGA水 溶 液 中 に お け る 耐 食 性 を 、 動 的 環 境 に お い て 調 ベ 、 以 下 の こ と を 見 出 し て い る 。 す な わ ち 、 鉄 / ニ ッ ケ ル 基 合 金の 耐 食性 は、 そ の合 金中 の クロ ム濃 度 が高 いほ ど 向上 する が 、そ の耐 食 性 は 、 限 定 的 で あ る 。 ま た 、 工 業 用 純 チ タ ン は 、HSを 含 む 厳 し い 腐 食 環 境 中で も、 不 働態 皮膜 が 劣 化 し 、 腐 食 速 度 が 一 且 増加 し たと して も 、保 護性 の 高い 不働 態 皮膜 が速 や かに 再構 築 され 、高 い 耐 食 性 を 示 す 。

  第 六 章 は 総 括 で あ る 。

  こ れ を 要 す る に 、 本 論文 は 、大 深度 掘 削・ 生産 に 伴っ て新 た に直 面し た 各種 装置 材 料の 腐食 に 関 わ る 諸 問 題 を 取 り 上 げ 、 各 種 材 料 の 腐 食 機 構 に お け る イ ン ヒ ビ タ ー お よ びC2吸 収 剤の 役割 を 明 ら か に す る と と も に 、 イ ン ヒ ビ タ ー .C2吸 収 剤 お よ び 金 属 材 料 の 選 定 を含 む総 括 的防 食対 策 を 提 案 し た も の で あ り 、 腐食 科 学、 材料 工 学の 発展 に 貢献 する こ と大 なる も のが ある 。 よっ て、 著 者 は 、 北 海 道 大 学 博 士 ( 工 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 あ る も の と 認 め る 。

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参照

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