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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 地 球 環 境 科 学 ) 谷 口    博

     学 位 論 文 題 名    ´

  Physical interpretation of unstable modes ofalinear shear flow in shallow water on an equatorial beta plane

(赤道〆平面浅水系の線形シアー流中で発生する      不安定モードの物理的解釈)

学位論文内容の要旨

  慣 性不 安 定 現象 は , 複数 の 惑 星大 気 中 で起 こっ ていると 言われ ている. 地球の冬 期に於 ける 上 部成層圏 赤道域 では,正 負の温度 偏差が 鉛直方向 に交互 に重なっ て現れ る,パン ケーキ構造が 衛星によって観測されている(Hitchman etof.,1987;Fritts etof.,1992; Hayashi eto;.,1998

;Smith and Riese,1999). Hitchman etnf.(1987)やHayashi etof.(1998)らは この構 造の現 れ る 場 所 がポ テ ン シャ ル 渦 度PVと コリ オ リ ・パ ラ メ ータ ノ の 積 が負 と な る領 域 ( 後述 す る 慣 性 不安定領 域)に 対応して いること ,擾乱 の空間構 造が慣 性不安定 モード のそれと よく似ている こ と,を根 拠とし てパンケ ーキ構造 は慣性不安定であると論じている.一方っ地球だけではなく,

金 星 や タイ タ ン でも 赤 道 付近 に 慣 性不 安 定 領域 が 存 在 しう る こ とが ,GCMシミュレ ーショ ンに よ り示され ている(Allison etof.,1994).また,木星型惑星においても,慣性不安定による角運動 量 の 混 合が , 上 層に お け る帯 状 風 プロ フ ァ イル の維持機 構のーっ として 働いてい ると議 論され ている(Allison et。f.,1995).

  本 研究 で は ,以 上 の 世の 中 の 議論 に 対 して ,2つの問 題を提起 する,1っめ は言葉 の濫用の 問 題 である. 地球大 気で観測 されたパ ンケー キ構造は ,東西 非対称な 構造を しており っいわゆる東 西 対 称 な慣 性 不 安定(Eliassen,1952; Charney,1973)と は異なる ,しかし ,理論 的な考察 が十 分 な さ れて い な いに も か かわ ら ず ,パ ン ケ ーキ 構造は慣 性不安定 モード であると いう議 論が定 着 してしま った, 赤道域の 慣性不安 定の理 論的な考 察は,Eliassen (1952),Charney(1973)によ る ァ 平 面 上 の 慣 性 不 安 定 の 議 論 を 赤 道p平 面 に適 用 し たDunkerton (1981)やStevens (1983) に 始まる, 彼らは ,東西対 称基本場 を用い て,PV・ア が負と なる領域 (以下 では,慣 性不安定領 域 と 呼 ぶ) が 存 在す る 場 合に は 慣 性不 安 定 が発 生するこ とを示し た.こ れを受け て,Boyd and Christdis (1982),Dunkerton (1983)は, 赤道戸 平面上の 東西対 称基本場 に発生 する東西非対称 な 不 安 定モ ー ド につ い て 考察 し た .彼 ら は っ東 西非対称 な不安定 モード の振幅も 慣性不 安定領 域 で 大 きく な る こと を 示 し, こ の 結果 を も とに 彼らが得 た東西非 対称な 不安定モ ードを 慣性不 安 定モード と呼ん だ, Hitchman et al.(1987)やHayashi etof.(1998)はこの結果をもとに,東 西 非対称な パンケーキ構造を慣性不安定である,と言った.しかし,Boyd and Christdis (1982), Dunkerton (1983)が 得 た 東西 非 一 様 な不 安 定モ ードがい わゆる 慣性不安 定と同 じメカニ ズムで 生 じている かどう かはまっ たく検討 されて いない. 現状で は、慣性 不安定 という言 葉があまりに 安易に使われている.

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  2っ め の 問 題 と し て , 赤 道域 のシ ア一 流中 に 発生 する 不安 定に 関す る理 解は 意外 にも 浅い も の だ と い う 点 が あ る . 赤 道 域 の シ ア ー 流 中 に 発 生 す る 不安 定の メカ ニズ ムと して ,Boyd and Christdis(1982)は,南北シアーが小さぃ場合には赤道ケル ビン波が不安定化し,南北シアーが大 きい 場合 には 赤道 ケル ビン 波が 不安 定化 した も のが 慣性 不安 定モ ード にな るこ とを 議論 して い る. Natarov and Boyd (2001)では ,シ アーの大きさで方 程式系を漸近展開することで,シアー があ る場 合に は赤 道ケ ルビ ン波 は必 ず不 安定 化 する こと が示 され てい る. とこ ろが ,両 論文 と もに ,な ぜ赤 道ケ ルビ ン波 が不 安定 化す るのかといった物 理的な解釈は行われていない,また、

複数 の惑 星大 気で 慣性 不安 定が 発生 する 可能 性 が指 摘さ れて いる にも かか わら ず. 惑星 大気 を 想定 した 広い パラ メー 夕範 囲に わた って 赤道 の シア 一流 中で 発生 する 不安 定モ ード には どの よ うな もの があ るの か, それ ら不 安定 では メカ ニ ズム の相 違は ある のか とい うこ とは 調べ られ て いな い. ケル ビン 波以 外に 不安 定化 する 波は 存 在し ない のか どう かも まっ たく 調べ られ てい な い. 赤道 域か ら亜 熱帯 や中 緯度 域に まで 拡張 し た系 で不 安定 モー ドを 探索 した 例(Stevens and Ciesielski,1986; Winter and Schmitz,1998; Iga and Matsuda,2003)では,複数の種類の不安定 モー ドが 存在 する らし いと いう こと が示 され て いる のだ がい ずれ も基 本場 が難 しい など の理 由 により各不安定モードの解釈は不十分なものとなっ ている.

  そこ で本 研究 では ,赤 道域 の線 形シ ア一 中に 生 じる 不安 定モ ード を広 いパ ラメ ー夕 範囲 にわ た って 求め ,得 られ た不 安定 モー ドの それ ぞれ が 物理 的に 性質 の異 なる もの であ るか どう かを 検 討し た, 解釈 を行 なう こと が可 能と なるように,基本場 には簡単な線形シア一流を用いる.赤 道 ロ平 面浅 水方 程式 系を 用い て固 有値 計算 をお こ なkゝ, 赤道p平面 上の シア 一流 中に 発生 しう る あら ゆる 不安 定モ ード を求 めた .さ らに,中立波の共鳴 という観点から,得られた東西対称な 不 安定 モー ドと 東西 非対 称な 不安 定モ ード が物 理 的に 性質 の異 なる モー ドで ある かど うか を検 討 した .慣 性不 安定 と呼 ばれ てき た東 西非 対称 不 安定 モー ドを 本当 に慣 性不 安定 と呼 んで 良い の かど うか に対 して 答え を提 示す る.

  ま ず , 無 次 元 パ ラ メ ー タで あるLambパラ メー 夕Eを 変化 させ て, 不安 定モ ード の有 無・ モー ド の 構 造 ・ 方 程 式 中 の 各 項の バラ ンス を調 べた .そ の結 果,logEく―1.0で は不 安定 モー ドは 存 在 し な い こ と , ―1.0くlogEく1.2の 場 合 に は 東 西 非対 称な 不安 定モ ード のみ が出 現す るこ と ,1.2くlogEく2.0で は 東 西 非 対 称 不 安 定 モ ー ド が 東西 対称 不安 定モ ード より も大 きな 成長 率 で 出 現 す る こ と ,logE冫2.0で は 東 西 対 称 不 安 定 モ ー ド が 東 西 非 対 称 不 安 定 モー ドよ りも 大き な成 長率 で出 現す る こと ,な どが 分か った ,さ らに ,得 られ た不 安定 モー ド のそ れぞ れが 物理 的に 性質 の異 なる モ ード であ るか どう かを 検討 する ため ,中 立波の共鳴(Iga,1993)という 観点 から 分散 曲線 の交 差 を詳 細に 調べ た. その 結果 ,安 定なlogE.<―1.0の領域では ,正負の 擬運 動量 を持 つ中 立モ ー ドの 共鳴 は見 られ なか った .東 西非 対称 不安 定モ ード の みが 存在 する

−1.0くlogEく1.2の 領 域 で は , そ れ ぞ れ 正 負 の 擬 運 動量 を持 つ赤 道ケ ルビ ン波 と連 続モ ード の共 鳴で 不安 定が 発生 す る,   logE冫1.2では,東西非対称不安定モードを構成する分 散曲線の 組が 変わ りっ 少な くと も 混合 ロス ビ一 重力 波と 赤道 ケル ビン 波と の共 鳴で 不安 定 が発 生す るこ とが 明ら かに なっ た. 一 方,logE冫1.2の 領域 で発 生 する 東西 一様不安定モードは,分 散曲線上 では っ赤 道ケ ルビ ン波 と 連続 モー ドの 共鳴 で発 生す る不 安定 モー ドに っな がっ て いる こと もわ かっ た. 以上 の結 果Fり ,東 西非 一様 不安 定モ ード は っい わゆ る東西一様な慣性不安定 モードと は 異 な る 中 立 モ ー ド の 組 合 せ で 発 生 す る 場 合 が あ る こ と が 示 唆 さ れ た .

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学 位 論 文 審 査 の 要 旨

主 査  教授  山崎 孝 冶  ´ 副 査  教授  久保 川  厚 副 査  助教 授  藤 原 正 智

副 査   教 授   林   祥 介 ( 大 学 院 理 学 研 究 科 ) 副 査  助教 授  伊賀 啓太(九 州大学応 用力学研 究所)

     学位論文題名

  Physical interpretation of unstable modes ofalinear shear flow in shallow water on an equatorial beta plane      ( 赤 道 グ 平 面 浅 水 系 の 線 形 シ ア ー 流 中 で 発 生 す る      不安定モードの物理的解釈)

  慣性不安定現象は,複数の惑星大気中で発生していると言われている.地球の冬期赤 道域上部成層圏では,パンケーキ構造と呼ばれる東西非対称な温度擾乱が存在し,慣性 不安定によるものと論じられてきた(Hitchman et al.,1987;Hayashi et al.,1998; Smith and Riese,1999). Hitchman et al. (1987)らは,この構造が現れる領域では慣性 不安定が起こり得ること,擾乱の空間構造が,東西非対称な慣性不安定モードを求めたと 主張するDunkerton(1983)の結果と良く似ていること,を根拠としてパンケーキ構造 は慣性不安定であると論じた.一方,地球だけではなく,金星やタイタン,さらに木星 型惑星に おいても赤道付近に慣性不安定な領域が存在しうることが示唆されてきた (Allison et al.,1994,1995).

  このように,場が慣性不安定であれば東西非対称な擾乱であっても,そこで生じる流 れを慣性不安定と考える,という議論がなされてきたが,東西非対称な循環構造を慣性 不安定と安易に呼んでしまうのは問題である.なぜなら,いわゆる慣性不安定によって 生じる流れとして,一般的に想定されるのは対称的な構造を持つ循環であるからである.

実は,Boyd and Christdis(1982)やDunkerton (1983)らが求めた東西非対称擾乱を東 西対称ないわゆる慣性不安定(Dunkerton,1981;Stevens,1983)と認識して良いかどうか 子細に検討されていないのである.また,複数の惑星大気で慣性不安定が発生する可能 性が指摘されているにもかかわらず,惑星大気を想定した広いパラメータ範囲にわたる 調査はこれまで行われてこなかった,

  そこで本研究では,赤道口平面浅水方程式系を用いて固有値計算を行い,赤道口平面 上のシアー流中に発生しうるあらゆる不安定モードを求めた.さらに,中立波の共鳴と     ―74―

(4)

い う観 点か ら, 得ら れた 東西 対称 不安定モードと東西非対称不安定モードが物理的に性 質の異なるモードであるかど うかを検討した.

  まず,無次元パラメータで あるE (=,y4/(gHロ )(ッ:基本場の南北シアーの大きさ,

g:重力加速度,H:等価深度 ,ロ:コリオリパラメータの南北傾度)を変化させて,不安 定モードの有無・モードの構 造・方程式中の各項のバランスを調べた.その結果,logE〈 1.2の場合には非重力波的な 構造を持つ東西非対称な不安定モードのみが出現すること,

1.2<logE〈2.0では 重力 波的 な構 造を 持つ 東西 非対 称不 安 定モ ード が東 西対 称不 安定 モ ード より も大 きな 成長 率で 出現 する こと ,logE〉2.0で は重力波的な構造をもつ東西 対 称不 安定 モー ドが 東西 非対 称不 安定モードよりも大きな成長率で出現すること,等が 分かった.さらに,得られた 不安定モードのそれぞれが物理的に性質の異なるモードであ る かど うか を検 討す るた め, 中立 波の 共鳴(Iga,1993)と いう観点から分散曲線の交差 を 詳 細 に 調 べ た . そ の 結 果 , 東西 非対 称不 安定 モー ドの みが 存在 するlogE〈1.2の領 域 では ,そ れぞ れ正 負の 擬運 動量 を持つ赤道ケルビン波と連続モードの共鳴で不安定が 発 生す るこ とが 分か った .一 方,logE〉1.2では,赤道ケルビン波と西進混合ロスビー 重 力波 との共鳴で不安定が発生する事が明らかになった,さ らに(k,mr)平面上の分散 曲 線を 調べ るこ と, 赤道 域シ アー 流中で発生する中立波,不安定波の成長率を解析的に 導 出 しk→0の 極 限 を 調 べ る こ と , の2っ の 検 討 に よ りlogE〉1.2の 領 域 で 発 生 す る 東 西一 様不 安定 モー ドは 赤道 ケル ビン波と西進混合ロスビー重力波の共鳴で発生する東 西非対称不安定モードの分散 曲線上に存在することも分かった.以上の結果より,1.2〈 logE〈2.0で 発 生 す る 東 西 非 対 称 不 安 定 モ ー ド は ,logE〉2.0で発 生す る東 西対 称な い わゆ る慣 性不 安定 モー ドと 同種 の不安定モードであると結論された.このことから,

Boyd and Christdis (1982)やDunkerton(1983)が 得た 東 西非 対称 不安 定モ ード は,

Dunkerton(1981) やStevens (1983)が 得た 東西 対称 なぃ わゆる慣性不安定モードと同 種 の不 安定 モー ドで ある と解 釈で きた .さ らに ,外 部パ ラ メー夕Eの変化を自転角速度 の 変化 と捉 える こと によ り, 金星 のような低回転の惑星ではケルビンモードと西進混合 ロ スビ ーモ ード の共 鳴に よる 不安 定が出現する可能性があること,木星のような高回転 の 惑星 では ケル ビン モー ドと 連続 モードの共鳴による不安定が出現する可能性があるこ とが示唆された.

  当研究によって、赤道口平 面浅水系の線形シアー流中で発生する東西非対称なさまざま な不安定モードを広いパラメ ータ領域で精査することができ、それらの物理的解釈ができ るようになった。この成果は 、地球大気・海洋のみをらず、惑星大気にも適用できるもの であり、将来の発展が期待さ れる。

  審査員一同は、こ れらの成果を高く評価し、また申請者が研究者として誠実かつ熱心で あり、大学院課程に おける研鑽や取得単位なども併せ、博士(地球環境科学)の学位を受 けるのに十分な資格 を有すると判断した。

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参照

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