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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 理 学 ) 羽 生 千 亜 紀

     学位 論 文題 名

The nonextensive approach to the differential energy distribution of the universal density profile of dark halo

(ダークハローの微分エネルギー分布についての非加法的手法による研究)

学位論文内容の要旨

    様 々 な 観 測 的 な 事 実 か ら 、 宇 宙 に は 、 電 磁 波 に よ っ て 直 接 観 測 で き な い 質 量 、 ダ ー ク マ   タ ー が 存 在 し て い る こ と が 明 か と な っ て い る . 宇 宙 初 期 の 元 素 合 成 の 研 究 か ら バ リ オ ン 物 質   の 質 量 は 限 定 さ れ る た め 、 ダ ー ク マ タ ー は 、 非 バ リ オ ン 物 質 で あ る と 考 え ら れ る , コ ー ル ド   ダ ー ・ ク マ タ ー(CDM)シ ナ リ オ は 、 最 も 有 カ な 宇 宙 の 構 造 形 成 シ ナ リ オ で あ る , CDMは 宇   宙 初 期 の 熱 エ ネ ル ギ ー が0に 近 い 、 重 力 相 互 作 用 を す る f弱 い 相 互 作 用 を し て も よ ぃ ) 素   粒 子 で あ る と 考 え ら れ て い る . そ の た め 、 CDM宇 宙 に お け る 構 造 形 成 は 、 初 め に 大 変 小 さ   な ス ケ ー ル の 密 度 ゆ ら ぎ が 成 長 し 、 そ れ が 合 体 す る こ と を 通 じ て 、 よ り 大 き な ス ケ ー ル の 構   造 へ 成長 し て行 く 階層 的 構造 形成 過 程で あ る,

    こ の よ う に し て 、 銀 河 、 銀 河 団 の ダ ー ク マ タ ー の 分 布 fダ ー ク マ タ … ハ 匸 ー ) は 、 階 層   的 | ニ 形 成 さ れ る . 銀 河 団 は 、 ほ ぼ カ 学 平 衡 に あ る 最 も 質 量 の 大 き い 天 体 、 つ ま り 宇 宙 で 最 近   形 成 さnた 天 体 で あ る . 銀 河 団 は 形 成 ( 緩 和 ) 直 後 の 状 態 に あ る の で 、 そ の 緩 和 の 過 程 を   肝 憲 ナる ニ とは 宇 宙の 構 造形 成を 理 解す る 上で 重 要で ある 、

    銀 河 団 の 緩 和 は 非 線 形 現 象 で あ り 、 自 己 重 力 多 体 系 の 数 値 計 算 、 ニ ミ ュ レ ー シ ョ ン で 調 べ ら   れ て い る .N ava.rroFrenkand White (199,519961997NFWlは 、 標 準CDM宇 宙 、 問 い   ナ :  C.DM宇 宙 、A項 入 む の CDM宇 宙 な ど 、 様 々 な 宇 宙 論 パ ラ メ ー ・ 夕 ゲ 下 で くtDMの ・v  計 算 を行 ′ ニた . 彼ら は 、ダ ークハロー の密度分布が 自己相似、p( ?.)二二Po/fr/′rヨ) /(l十r /7.ヨ戸

: で 表 さ れ る こ と を 示 し た . 他 の 研 究 者 も ま た 彼 ら の 数 値 計 算 と 良 い 一 致 を 示 し た , こ のNFW y^ ブ 口 フ ー イ ル は 、 銀 河 や 銀 河 団 の 形 成 の 理 解 の た め に 重 要 で あ る し か し 、 そ の 物 理 的 根 拠   は 、 依 然 十 分 研 究 さ れ て い な い . そ れ を 明 か に す る た め 、 わ れ ゎ れ は 、 自 己 重 力 系 の 統 計 力   学 的 な 理 解 が 必 要 で あ る と 考 え た . こ の よ う な ア プ ロ ー チ と し て LyndenBell1967) の 試   み が ある が 、そ れ には 次 の様 な問 題 があ る .

    彼 は 、 Boltzmalnnの エ ン ト ロ ビ ー を 最 大 化 す る こ と に よ り 、 ダ ー ク マ タ ー に 対 し て 自 己 重   力 等 温 分 布 が 得 ら れ る 事 を 示 し た 、 し か し 、 こ の 等 温 分 布 は 、 幾 っ も の 問 題 を 抱 え 、NFW  口 フ ん イ ル に 一 致 し な い . こ の こ と か ら 、 わ れ わ れ は 、 自 己 重 力 多 体 系 に 対 し て 、Boltzmann  Gibbs統 計を 用 いる こ とが 不適 切 であ る と考 え た.

    Boltzmann‑Gibbs統 計 の 一 般 化 の 必 要 性 は 、 長 時 間 の 記 憶 を 持 つ 系 や 、 長 距 離 カ の 働 く   系 や 、 多 重 フ ラ ク タ ル 時 空 等 の 分 野 で 多 く の 研 究 者 に よ り 議 論 さ れ て い る . そ の ー っ と し   て 、 Tsallis1988)の 統 計 力 学 が あ る . 彼 は 、 多 重 フ ラ ク タ ル 時 空 で 用 い ら れ る 非 加 法 的 統   計 力 学 に つ い て 研 究 し た . 彼 の 統 計 力 学 は 、 エ ン ト 口 ビ ー の 加 法 性 が な い . そ の 統 計 力 学 の   確 率 分 布 関 数 は 、 指 数 関 数 的 で は な く 、 べ き 関 数 的 で あ る .  Plastino and Plastino19931

149

(2)

  

は 、 長 距 離相 互 作 用 の働 く 系 で ある 星のポ リトロ ープに この統計 力学を 適用し 、その 後、広

  

く 応 用 さ れる よ う に なっ た . こ の統 計力学 を用い て、ダ ークハロ ーの統 計的性 質を理 解でき

  

る可能性がある.

    

そ こ で 、 わ れ わ れ は 、

NFW

プ ロ フ ん イ ル が

Tsallis

統計 に よ っ て理 解 で き るか ど う か を

  

調 べ た . 系 の 統 計 力 学を 調 べ る には 、 分 布 関数 を 得 る 事が 重 要 で ある が 、

N

体 計 算か ら 分

  

布 関 数 を 直 接 得 る の は 困 難 で あ る . わ れ わ れ は 、

N

体 計 算 か ら

NFW

プ ロ フ ん イ ル の 微 分

  

エネルギー分布を求め、その統計的性汁について調べた.

    

本 研 究 で は 、 標 準

CDM

宇 宙 の

N

体 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン を 行 い 、 銀 河 団 の 形 成 を 計 算 し

  

た . そ の 結果 か ら 、 微分 エ ネ ル ギー 分 布 と 、微 分 エ ネ ルギ ー 分 布 をそ の 質 量 で割 っ た量で

  

あ る フ ラ クシ ョ ナ ル な質 量 分 布 を求 め、そ れがTsallis のエスコ ート分 布の形 、P(E ,ず )〓

  P(O

,T ′)[1 十(1 ーq)E ノァ´lq/(l‑q) に一致する事を明かにした.ここで、T ´は、温度パラメー夕、

  g

は、 エントロ ピー示 数であ る.工 ントロピー示数は、q 二ニ0.6 ―0.7 となった.Tsalllis の統計

  

力 学 で は 、物理 量の期 待値が エスコ ート分 布で与 えられ、

q

は系の エスコ ート分 布の形 を変え

  

る 重 要 な バラ メ ー タ であ る .

Tsallis

の統 計 力 学 では 、

g

― →1 の極限で 、Boltzmann ・

Gibbs   

統計が 再現さ れる,

NFW

プロフ んイル では、

g

ニ二二 二0.6 ―0.7 である ことは 、宇宙論的に形成

  

さ れ た ダ ーク ハ ロ ー では

Boltzmann

―Gibbs 統 計が 成 立 し てい な い こ とを 意 味 し てい る. 微

  

分 エ ネ ル ギ ー 分 布 と フラ ク シ ョ ナル な 質 量 分布 が 、 エ スコ ー ト 分 布で あ る こ とは 、

NFW

  

口 フ ん イ ル が 形 成 さ れ た 際 の ダ ー ク マ タ ー の 過程 が 確 率 論的 で あ る こと を 示 し てい る .

    q

二 ニ

0.6

0.7

以 外 の 場 合に 、 ダ ー クハ ロ ー の 密度 分 布 が どの 様 に な るの か を 次 のよ う

  

に 調 べ た . 用 い た 手 法は 反 復 法 であ る , 異 なる

g

は 、 密 度 分布 の カ ス プの 傾 き を 変え る .

  q=

0.25

0.o

で は 、 ダ ー ク ハ ロ ー 中 心 部 の 密 度 部 分は 平 坦 に なり 、

g

0.7

で は 、NFW プ

  

ロフー ・イ; レより も急な 傾きと なった.最近の高解像度数値シミュレーションニま、へFW ブコ

  

フー´ イ7 |/よn も急な密度分布のカスプを示している、これらは、q ‐ 0.75 ―0.8 に対応する.

    

てs allis の統計力 学を宇 宙論的 な構造 に適用 する試 みほ、

Lavagnc et al. (1998)

によって

  

な さ れ て いる , 彼 ら は、 銀 河 団 の特 異 速 度 分布 の 割 合 を、

Tsallis

の エスコ ート積 分で説 明

  

亭 る こ と がで き る こ とを 明 か に し、

q‑

ニ0.23 を 得ている .これ は、わ れわれ が得た 値より も

  

小 さ

I

: 。 系 が 緩 和 に 近 づく に 連 れ て、 系 の

g

1

に 近 づ くと ぃ う 仮 説が あ る

tTsallsl999j

.ヨ, リ譲河 団のダークマターの分布i ま、銀河団の特異な運動よりも緩和が進んでいるニとから、

: わ れ わ れ の 結 果 は 、

Lavagno

ぞ !

al.

1998)

の 結 果 と 矛 盾 し て い な い と 考 え ら れ る . 奮

  

わ れ わ れは 、

NFW

ブ ロフ マ イ ル の分布 関数を 解析的 に求め た.結 果t ま等 温分布 関数と も、

  

楕 円 銀 河 のモ デ ル で ある

King

モ デ ルの分 布関数 とも一 致せず 、われ われが 得た分 布関数 は、

  

高い束縛エネルギーにおいてカットオフがある形をしている.

    

今 後の 課 題 と して 、 な ぜ 分布 関 数が そのよ うな形 を持つ のかを 研究す る必要が ある. その

  

た め 、

Tsallis

統計 以 外 の 非加 法 的 統 計力 学 に つ いて 検 討 する 必要が ある可 能性が ある. ま

  

た、階 層的集 団化シ ナリオ の下で

q

ニ二0.6 ‑ ・0.7 とな る理由を研究する必要がある。そのため

  

に 、 階 層 的集 団 化 以 外の 環 境 で 形成 される 自己重 力系に ついて研 究する ことが 重要で ある,

150

(3)

学位 論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授 助教授

藤 本 正 行 石 川 健 三 和 田    功 羽 部 朝 男 兼 古    昇

    

学 位 論 文 題 名

    

    The nonextenslVeapproaChtothediff

erentialenergy   diStributionoftheuniVerSaldenSityprO

leofdarkhalO

( ダ ー ク ハ ロ ー の 微 分 エ ネ ル ギ ー 分 布 に つ い て の 非 加 法 的 手 法 に よ る 研 究 )

  

宇 宙 の 質 量 の 大 半 は ダ ー ク マ タ ー に よ っ て 占 め ら れ て お り 、 宇 宙 論 的 な 構 造 形 成 に は ダ ー ク マ タ ー が 重 要 な 役 割 を 果 た し て い る こ と が 、 こ れ ま で の 研 究 で 明 ら か に さ れ て い る 。 ダ ー ク マ タ ー は 、 銀 河 や 銀 河 団 の ま わ り に 集 中 し て お り 、 い わ ゆ る ダ ー ク ハ ロ ー を 形 成 し て い る 。 銀 河 が 形 成 さ れ る 過 程 で は 、 ま ず ダ ー ク ハ 口 ー が 形 成 さ れ て 、 そ れ に よ る 重 カ で 集 め ら れ た ガ ス が 冷 却 し て 星 形 成 が 起 こ る と 期 待 さ れ る こ と か ら 、 ダ ー ク ハ 口 ー の 構 造 は 銀 河 形 成 に と っ て 重 要 と 考 え ら れ て い る が 、 そ の 構 造 に つ い て 統 一 的 な 理 解 は 得 ら れ て い な い 。 最 近 の 宇 宙 論 的 な 構 造 形 成 の 数 値 計 算 に よ る 研 究 に よ っ て 、 ダ ー ク ハ ロ ー の 構 造 は 自 己 相 似 で あ る 可 能 性 が 指 摘 さ れ た 。 そ の 後 、 こ の 結 果 は 多 く の 研 究 者 に よ っ て 確 か め ら れ た た め 、 現 在 非 常 に 注 目 さ れ て い る 。 こ の よ う に 重 要 な 指 摘 で あ る に も か か わ ら ず 、 そ の 物 理 的 理 由 は 明 ら か に さ れ て い な い 。

  

本 学 位 論 文 の 著 者 は 、 こ の ダ ー ク ハ ロ ー の 自 己 相 似 性 の 物 理 的 理 由 を 明 き ら か に す る た め 、 ダ ー ク マ 夕 一 が 非 加 法 的 な 統 計 力 学 に 従 う こ と で 説 明 で き る 可 能 性 に 注 目 し て 研 究 し た 。

  

著 者 は 、 宇 宙 論 的 な 構 造 形 成 の 数 値 計 算 を 宇 宙 論 的 な 初 期 条 件 か ら 出 発 し て 行

い 、 相 似 的 な ダ ー ク ハ ロ ー が 形 成 さ れ る こ と を 確 か め た 。 次 に 、 そ の 数 値 計 算 の 結

(4)

果から、ダークハ口ーに分布したダークマターの微分工ネルギー分布を求め、これ が非加法的統計力学で用いられているエスコート分布で近似できることを示した。

著者が求めた微分エネルギー分布関数からダークハ口ーの構造が再現できることを 示し、この場合の微分工ネルギー分布の重要なバラメータであるq バラメータの値が 0.67 であり、このq バラメータが1 であると通常の統計力学であるボルツマン統計力 学から予想されるダークハロー構造となることを解析的に示した。また、著者は微 分エネルギー分布から求めた分布関数は、ポルツマン統計力学とも、有カな非加法 的統計力学であるTsallis 統計の分布関数とも異なっていることを示した。この結果 は、ダークハローの性質を非加法的な統計力学で理解できる可能性をはじめて明ら かにした研究であり、非加法的統計力学の課題を新たに提起した研究として評価さ れる。

     これを要す るに、著者 は宇宙物理 学における 宇宙論的な 構造形成の問題に とって重要な、ダークハローの構造の自己相似性の可能性について新しい知見を得 たものであり、宇宙物理学における宇宙論的な構造形成の研究に対して貢献すると ころ大なるものがある。

   よって審査員一同は、著者が北海道大学博士(理学)の学位を授与される資格あ

るものと認める。

参照

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