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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 生 命 科 学 ) 齋 尾 智 英

     学位論文題名

    NMR analyses of protein structure and interaction uslngtheparamagnetiClanthanidetag      ( 常磁 性ランタニドタグを用いた NMR による      タ ン パク 質の 立体 構造 ・相互 作用 の解 析)

学位論文内容の要旨

  夕ン バク 質の 立体 構造 解析 手法 とし て、X線結 晶解析法とNMR法が広く用いられている。X 線結晶解析法は分子量の制約なく高精度での立体構造決定が可能であるが、結晶パッキングなど によるアーテイファクトの影 響を受ける可能性がある。一方NMR法は、より生体内に近い溶液 状態での解析が可能であることや、弱い相互作用が解析可能であること、動的情報が得られるこ となどの利点が存在する。し かしNMR法は、解析対象の分 子量に対する制約があること、解析 に長期間を要すること、などが難点となっている。このような問題点を解決する上で常磁性ラン 夕二ドプローブ法が有効であ る。常磁性ランタニドイオン(以下Ln)をタンパク質に対して固定 す るこ とで 、擬 接触 シフ ト(PCS)や 残余 双極 子カ ップリング(RDC)、常磁性緩和促進(PRE)な どの常磁性効果が観測され、 そこからタンバク質の構造情報を得ることができる。PCSはLnから 約40A以内 にお ける 距離 ・角 度 の情 報、PREは約40A以 内に おけ る距 離情 報、RDCは 距離の制 限なく角度の情報を与える。このようにラン夕二ドプ口ーブ法は広範囲における定量的な立体構 造情報を与えるため、高分子量夕ンパク質の構造解析において強カな手法となり得る。しかし、

ラン夕二ドプローブ法の応用のためにはLnをタンバク質に対して強固に固定する必要があるが、

これまで有効なLn固定手法が なかったためにラン夕二ドプ口ーブ法はほとんど応用が進んでい なかった。

  本研究では、ランタニド結 合ベプチドを対象夕ンバク質に対して2点で強固に固定する新規ラ ン夕二ド結合夕グ(lanthanide binding tag: LBT)の開発を行った。次いでそのタグを用いてp62 PB1 ドメインの二量体構造決定を行い、手法の有用性の実証を試みた。さらに本研究ではランタニド プ 口 ー プ 法 を 応 用 し 、 新 規NMRリ ガ ン ド ス ク リ ー ニ ン グ 手 法 の 開 発 を 行 っ た 。

1.ランタニピ鎚金夕グの囲登

  ランタニド結 合ベプチドをタンバク質に2点で固定する新規LBTを設計した。ベプチドタグを タンパク質の2点で固定する場合、夕グが対象夕ンバク質に結合する方向をコント口ールし、単 一の生成物が得 られるようにする必要がある。そこで、ジスルフィド結合とべプチド結合という 2種の異なる結合によってLBTを目的夕ンパク質に付加する、以下の手法を考案した。(i)夕ンバ ク質表面にシス テイン変異を導入し、LBT配 列をN末端に融合したコンストラクトを作成する。

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(2)

(ii) TEV protease消化によりLBTのN末端システインを露出さ せる。(iii) DTNB酸化によりLBT N末 端 と タ ン パ ク 質 表 面 の シ ス テ イ ン を 分 子 内 ジ ス ル フ ィ ド 結 合 に よ っ て 架 橋 す る 。   本 研究 で はモ デル タンバク質GB1を用しゝ、LBTを2点で固 定したL2GBを作成した。また、従 来 法 に 従 っ てLBTを ジ ス ル フ ィ ド 結 合1点 の み で 固 定 し たLIGBを 作 成 した 。LIGBとL2GBに 対 し てLnを 結 合 さ せ てRDCを 観 測 し た 結 果 、L2GBで はLIGBの2倍 以 上 大 き なRDCが 得 ら れ た。 夕グ の 運動 性が 高くLnの 運動 性が 高い 場合 、PCSやRDCなどの常磁性効果は平均化され減 弱し てし ま うが 、こ の結 果はLBTの2点 固定 化に よってLnが より強固に固定されていることを 示し てい る 。次 にL2GBに対してPCSを観測し、磁化率テンソ ルを決定したところ、その主値の 大きさは金属結合夕ンバク質の場 合と同等であった。以上より、ベプチドタグを対象夕ンパク質 に対して2点で固定することによって、従来の1点固定夕グと比較してラン夕二ドがより強 固に 固定され、金属結合夕ンバク質の 場合に匹敵するほどの強い常磁性効果が得られることが示され た。

2. 夕2童 用 ! ≧ を 量 ン タ ニ ド プ ロ ー プ 法 に よ る 夕 2Z! 2質 複 金 笠 接 造 鰹 極   2点 固定LBTに よっ てLnが強 固に 固定 され るこ とが確認さ れたため、次にタグを用いたラン 夕二ドブローブ法を実際のタンバ ク質複合体の立体構造解析へと応用し、p62 PB1ドヌイン二量 体の 立体 構 造決 定を 行った。p62 PB1にはOPCAモチーフから 構成される酸性面と、保存された りジ ン残 基 から 構成 され る塩 基性 面が 存在 し、 野生 型p62 PB1は酸 性面 ‐塩 基性面を介した head‑to‑tailの自己多量体を形成する。NMR解析に適した試料を調製するため、それぞれの相互作 用 面 に ア ミ ノ 酸変 異を 導入 した2種の 変異 体DR,KEを作 成し た。DR変 異体 につ い てはNOEに 基 づ い た 一 般 的なNMR法 によ り単 体で の立 体構 造を 決定 した 。DRの立 体構 造に 基 づい てLBT 固 定 点 を 設 計 し、DRに 対し てLBTを2点固 定し た。DRに対 して ラン 夕二 ドイ オン を導 入し 、 複合体の主鎖アミド信号におけるPCSを観測した。さらに複合 体形成に伴う主鎖アミド信号の化 学シ フト 摂 動分 布よ りKEの結合 界面を決定した。PCSと結合 面の情報に基づいてドッキング計 算を 行っ た とこ ろ、RMSD 0.3Aと 良好 な 収束 が得 られた。一般的に、NMRによるタンパク質の 立体構造解析のためには主鎖・側 鎖シグナルの帰属やNOE解析 が必要となり、解析に時間を要す る。本研究では、2点固定LBTを用 しゝてランタニドイオンを対象夕ンパク質に対して導入し、主 鎖アミドから観測されるPCSと化学シフト摂動に基づいて複合 体の構造決定を迅速に行うことが できることを示した。

3.ランタニドプローブを用いた墓剖握塞手法の員登

  薬剤探索手法のーつであるFBDD (Fragment Based Drug Discovery)は、比較的小さな化合物に対 するスクリーニングを行い、それ らを連結または拡張することでより高活性な化合物を作り出す 手法である。NMRはFBDD初期のフラグメントスクリー ̄ニング で用いられることが多いが、NMR を用 いた ス クリ ーニ ング手法に は、夕ンバク質側のNMR信号 を観測するものとりガンド側の信 号を観測するものの2種がある。夕ンバク質信号を観測する場 合、1H−15N HSQCスベクトルなど を用いてりガンド結合に伴うタン パク質信号の化学シフト摂動を評価する。この手法はルガンド の結合部位に関する立体構造情報を取得できるとしゝう利点があるが、スループット性が低いとい う欠 点が 存 在す る。 ルガ ンド ベー スの 手法 では 、主にりガ ンドの1H1次元NMR測定を主体とす るため比較的高スループットであるが、リガンド結合部位の情報を得るのが困難であるとしゝう短 所が存在する。そこで本研究では 、常磁性ラン夕二ドプローブ法を応用し、スループット性が高 く、かつ1」ガンド―夕ンバク質問の立体構造情報が取得可能なスクリーニング手法の開発を行しゝ、

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(3)

次の ようなり ガンド探 索手法を考案した。(A)対象夕ンバク質にLBTを導入し、ラン夕二ドイオ ンを固定する。夕ンパク質のNMR信号からPCSを観測し、磁化率テンソルを決定する。(B) Gd3+ を固定したタンバク質を化合物溶液に加え、PREを観測し、結合したりガンドを同定する。(C)リ ガ ン ド の PCSを 観 測 し 、 ル ガ ン ド ‐ 夕 ン パ ク 質 複 合 体 構 造 を 決 定 す る 。   本研究では複合体の立体構造が既知であるGrb2SH2ドメインとその阻害剤をモデルとし、手法 の開発と検証を行った。

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(4)

学位論文 審査の要旨

     学位論文題名

    NMR analyses of protein structure and interaction using the paramagnetic lanthanide tag

(常磁性ランタニドタグを用いたNMR による タンパク質の立体構造・相互作用の解析)

  夕ンバク質の立 体構造解析手法として、X線 結晶解析法とNMR法が広く用いられている。NMR法は 生体内に近い溶液 状態での解析が可能である ことや、弱い相互作用が解析可能であること、動的情 報が得られること などの利点がある一方、解 析対象の分子量に対する制約があること、解析に長期 間を要すること、 などカ灘点となっている。 このような問題点を解決する上で常磁性ラン夕二ドプ 口ーブ法が有効で ある。常磁性ラン夕二ドイ オン(以下Lmをタンパク質に対して固定することで、

擬接 触 シフ ト(PCS)や残余双極子カップリン グ(RDC)、常磁 陸緩和促進(PRE)などの常磁性効果 が観測され、そこ からタンバク質を形成する 各原子の原子核の距離・角度に関する長距離間での立 体構造I青報を得 ることができる。ランタニドプ口ーブ法から得られる長距離時報は高分子量夕ンパ ク質の構造解析に おいて有効であるが、これ までLnを固定する有効な手法がなかったためにラン夕 二ドプ口ーブ法は ほとんど応用されて。ゝな かった。

  ラン夕二ドプ口 ーブ法を一般的なタンパク 質に対して広く応用するために、本研究ではまず、ラ ン夕二ド結合ベプ チドを対象夕ンバク質に対 して2点で強固に固定する新規ラン夕二ド結合ベプチ ドタ グ(LBT)の 開発 を行 った 。こ の 手法 では 、ジスルフィド結合とべプ チド結合の2点によって Lnを 強 固 に 固 定 す る こ と で 、 よ り 強 い 常 磁 陸 効 果 を 得 る こ と に 成 功 し た 。   さらに、開発し た2点固定LBTを実際のタン バク質立体構造解析へと応用 し、PCSに基づいたp62 PB1―PB1二 量体 の立 体構造決定を行うこと で、2点固定LBTの有用性を実 証した。従来のNMR法に よるタンパク質の 立体構造解析のためには主 鎖・側鎖シグナルの帰属や核 オーパーハウザー効果 (NOE)解析カ泌要 となり、解析に時間を要する 。本研究では、ラン夕二ドプローブ法を用いること によって主鎖アミ ドシグナルから観測されるPCSと化学シフト摂動に基づしゝて複合体の構造決定を 迅速に行うことが できることを示した。

  上記のように、 ランタニドプ口ーブ法の長距離I青報を用いることによって迅速な構造解析が可能 になる。この迅速 性は薬剤探索におけるNMR研 究にとっても有用であるので、実際にラン夕二ドプ ローブ法を用いた 新規薬剤スクリーニング手 法の開発を行った。比較的小さなりガンドを連結また は拡 張 する こと でよ り高活性なルガンドを 作り出すFBDD (Fragment Based Drug Discoveryにお しゝては、夕ンバク質一リガンド複合体の立体構造時報を得ることカ逗要である。FBDDにおいて対象 となる、結合の弱 いりガンドに対して迅速に 立体構造情報を得ることはこれまで困難とされてきた

(5)

が、本研究では常磁陸ラン夕二ドプ口ープ法を応用し、スル←ープット性が高く、かっりガンドータン バ ク質問 の立体 構造情 報が取 得可能 な次のようなスクリーニング手法の開発を行った。尚対象夕 ン バク質 にLBTを導入し、ラン夕二ドイオンを固定する。夕ンパク質のNMR信号からPCSを観測し、

磁化率テンソルを決定する。(B) Gd3+を固定したタンバク質を化合物溶液に加え、PREを観測し、

結合したりガンドを同定する。(C) Tm3+などのLnを用いてりガンドのPCSを観測し、リガンドータ ンバク質複合体構造を決定する。本研究では複合体の立体構造が既知であるGrb2 SH2ドメインとそ の阻害剤をモデルとし、手法の開発と検証を行った結果、常磁陸ラン夕二ドプ口ーブ法による化合 物スクリーニングはとても有効であることがわかった。

  NOEに基づ しゝた従来のNMR法やX線結晶解析法によって、これまで数多くのタンパク質の立体構 造が明らかにされてきた。しかし、立体構造が決定されても、その分子メカニズムが未解明のまま である場合は多い。分子メカニズムの理解のためには、他の分子との相互作用や、構造変化を伴う 一連の変化を解析することが重要であるが、これまでそのような解析を行う有効な手法が存在しな か った。 ラン夕二ドプ口ープ法を用いたNMR法は、このようなタンバク質の動的な解析、相互作用 解 析にお いても強カな手法となる。NNm法は溶液状態でのタンバク質を観測するため、他の分子と の相互作用やそれに伴う構造変化を、連続的に観測することが可能である。さらにラン夕二ドプロ ーブ法から得られる長距離I青報を活用することによって、夕ンバク質の連続的な変化を、3次元立 体構造の変化として観察することができる。このように本研究で開発されたタグを用しゝたラン夕二 ドプ口ープ法は、構造解析手法としての応用ばかりではなく、動的なタンバク質機構の理解ヘ向け た研究への発展も期待される。

  以上のように、著者は、汎用性の高い常磁性ラン夕二ドプロープタグを開発し、蛋白質複合体の 構造解析、化合物スクリーニング、動的な構造I青報の取得に応用できることを示し、NMR解析法の 開発に対して多大なる貢献があった。

  よ っ て著 者 は 、 北海 道 大 学 博士 ( 生 命科学 )の学 位を授 与され る資格 あるも のと認 める。

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