博 士 ( 理 学 ) 宇 津 木 充
学 位 論 文 題 名
A Theoretical Study on Seismomagnetic EffeCtCOnSideringtheInhomogeneouSly MagnetiZedEarth SCruSt.
( 地 殻 の 磁 化 不 均 質 を 考 慮 し た 地 震 地 磁 気 効 果 の 理 論 的 研 究 )
学位論文内容の要旨
地 震活 動に 伴い 地球 磁場 が変 化 する現象(地震地磁気効果) は比較的古くから知られてお り、 これ まで にも いく っか の観 測 例が 報告 され てい る。 この 現象 の原 因の ひと つに 、ピ ェ ゾ磁気効果(磁歪の逆効果)が考えられてい る。
一 般に 磁性 を持 つ物 質は 、外 部 応カ を加 えら れる 事に より その 磁化 を変 化さ せる 性質 を 持っ てお り、 これ をピ ェゾ 磁気 効 果と 呼ん でい る。 この 現象 が、 強磁 性鉱 物を 含む 岩石 に 於い ても 観ら れる 事が 岩石 実験 に より 明ら かに され てい る。 この 事か ら、 地震 活動 で地 殻 中に 生じ る応 力変 化に より 、地 殻 中の 帯磁 した 岩石 の磁 化率 に変 化が 生じ 、こ れが 磁場 変 化を もた らす とぃ うプ ロセ スが 考 えら れて いる 。岩 石実 験の 結果 から は磁 化変 化と 応力 変 化と の間 の線 形的 な関 係が 認め ら れ、その経験式が提示されて いる。これを構成式として、
地 震 地 磁 気 効 果 に よ る 磁 場 変 化 を 数 値 的 、 又 は 解 析 的に 見 積も る試 みが なさ れて 来た 。 解 析的 なア プロ ーチ では 初等 関 数で簡便に表わされた磁場変 化の解析解を得るために、一 様帯 磁し た地 殻モ デル (地 表か ら 地温がキュリー点を越える深 さまで一様帯磁していると仮 定したモデル)が用いられた。その結果、これまでに垂直なstrikeーslip及びtensile−opening 型と ぃう 限ら れた タイ プの 断層 運 動に よる 磁場 変化 の解 析解 のみ が得 られ てい た。 また 、 数値 的な アプ ロー チで は断 層端 面 にお ける 応カ の特 異性 を回 避す る為 、又 計算 量の 軽減 の 為2次元の断層、 地殻モデルでの計算が主であった。
本 研究 では 、こ うし たこ れま で の研 究で の断 層、 地殻 モデ ルの 制約 を除 き、 より 現実 的 な磁場変化の計算を可能にするため以下の研 究を行った。
1.一 様磁 化モ デル を用 い、 任意 の傾 き を持 った 全て のタ イプの断層による磁 場変化を与 え る解 析 解を 求め た。
2.1.に 於 いて 断層 パラ メー タが 磁場変化に与える影響を明らかにした上で不 均質磁化モ デ ルで の 磁場 変化 の解 を求 めた 。
本論文では、その研究成果を以下 の6つの章で述べた。
第1章 の 序 章 で は 、 こ れ まで の地 震地 磁気 効果 の研 究の 成果 に つい て述 ベ、 同時 に本 研 究の位置付けを示した。
第2章 で は 、 基 本 と な る 地震 地磁 気効 果の 定式 化に つい て説 明 した 。特 に、 解析 解を 求 める 際の 基 本と なる 、ピ ェゾ 磁気 ポテ ンシ ャル の表 現定 理の 導出 過 程に つい て解 説し た。
第3章 で は 、 一 様 磁 化 モ デル を用 い、 任意 の傾 きを 持っ た有 限 断層 によ る磁 場変 化の 解 析解 を求 め た。 その 解を 用い 、北 半球 の中 緯度 域で 地震 が生 じた 場 合に 期待 され る磁 場変 化を 、断 層 運動 のタ イプ 及び 断層 の傾 きを 変え なが ら計 算し た。 そ の結 果、 磁場 変化 の振 幅は 断層 の 傾き に依 存す るが その 変化 の仕 方は 以下 のよ うに 断層 の タイ プに よっ て変 わる 事が明らかになった:(1)磁場変化の振幅はstrike―slip及びtensile―opening型の断層では、
傾 き が 垂 直 の 場 合 振 幅 が 最 大 。 (2) dipーslipで は 傾 き が45度 付 近 で 最 大 。 こ の 章 で 得 ら れ た 解 の 具 体 的 な 形 をAppendixA及 びBと し て 示 し 、 さ ら に 磁 場 変 化 の 計 算 を 行 うFORTRANプ ロ グ ラ ム を 開 発 し て そ の ソ ー ス コ ー ド をAppendixCと し て 示 した。
第4章 で は 、 磁 化 不 均 質 モデ ルで 磁場 変化 を求 める ため の解 を 求め た。 磁場 変化 を与 え る式 は、 帯 磁領 域の 表面 につ いて の表 面積 分の 形で 定式 化さ れる が 、そ の被 積分 項の 形か ら こ の2重 の 積 分 の 一 方 を 、楕 円積 分を 用い て解 析的 に解 くこ と が出 来る 事を 示し た。 ま た、具体的に求められた解をAppendixDとして示した。
こ うし て 磁化 不均 質モ デル での 磁場 変化 は単 なる 一次 の積 分で 表 され 、こ れを 数値 的に 解く 事で 磁 場変 化を 求め る事 が出 来る 。そ の計 算例 を第5章に示 した。この章ではまず、不 均質 磁化 モ デル とし て、 キュ ーブ 状の 領域 を考 え、 その 内部 と外 部 で磁 化率 が異 なっ てい る場 合を 想 定し た。 ここ で、 微小 なキ ュー ブを 足し 会わ せる 事に よ り任 意の 地殻 の磁 化構 造を 考慮 し た磁 場変 化の 計算 をす る事 が可 能に なる 。こ のモ デル で 、有 限断 層に よる 磁場 変化 を計 算 した 結果 、一 様磁 化モ デル に比 ベキ ュー ブの 端面 付近 で 磁場 変化 の振 幅が 増幅 され た。 そ の増 幅率 は断 層モ デル 、キ ュー ブと 断層 面の 位置 関係 に より 異な るが 、最 大で 約100倍 に も 上 っ た 。 こ れ は、 キュ ーブ の境 界で の磁 化率 の違 い を反 映し 、境 界面 の表 裏 で生じる磁化変化が異なるためで ある。
ま たこ の 章で は、 計算 の一 例と して 発生 が予 想さ れる 東海 地震 に より 期待 され る地 磁気 変化 を求 め 、そ の結 果を 示し た。 ここ で、 一様 磁化 を仮 定し た場 合 と、 震源 域近 傍の 磁化 構造 の不 均 質性 を考 慮し た場 合の 結果 とを 比較 した 所、 磁場 変化 の 様相 が大 きく 異な る事 が示 され た 。こ の様 な計 算に は、 来る べき 地震 に備 えた 観測 点配 置 に対 する 情報 等が 求め られ るが 、 この 計算 結果 から その 様な 要請 に答 え得 る為 には より 現 実的 な磁 化構 造を 考慮 しなければならない事が示された 。
最後に第6章に於いて、全体の研究成果を総括してまとめた 。
学位 論文審査の要旨 主査
副査 副査 副査
教授 教授 助教授 助教授
西 田 泰 典 小 山 順 二 笹 谷 努 笹 井 洋 一
学位論文題名
A Theoretical Study on Seismomagnetic EffCtCOnSiderlngtheInhomogeneouSly MagnetiZedEarth SCruSt .
( 地 殻 の 磁 化 不 均 質 を 考 慮 し た 地 震 地 磁 気 効 果の 理 論 的研 究 )
強 磁 性 体 物 理 学 や 岩 石 磁 気 学 を 基 礎 と し て , 岩 石 に 応 カ が 加 わ る と そ の 磁 化 が 変 化 す る こ と が 知 ら れ て い る . そ の よ うな 圧 磁 気 効果 に も とづ ぃ て ,地 震 や 地殻 応 カ の 蓄 積 に 伴 っ て 地 磁 気 が 変 化 す る 現 象 を 地 震 地 磁 気 効 果 と 呼 ぶ . こ の よ う な 現 象 は , 近 年 の 地 磁 気 観 測 の 精 密 化 に と も な っ て 野 外 観 測 の 上 か ら も 確 立 さ れ て き た . し か し な が ら , そ の 観 測 量 を 定 量 的 に 解 釈 す る に は , ま だ モ デ ル 計 算 手 法 の 進 歩 が 必 要 な 段 階 に あ る . 解 析 的 手 法 で は , 一 様 磁 化 し た 半 無 限 弾 性 体 に お い て , 垂 直 断 層 運 動 に 伴 う 地 磁 気 変 化 の 場 合 の み 解 が 得 ら れ て い る . 一 方 , 不 均 質 磁 化 媒 質 に た い し て は 数 値 解 法 的 ア プ ロ ー チ が 試 み ら れ て い る が , 現 実 の フ イ ー ル ド に 適 応 す る に は あ ま り に も 計 算 時 間 が か か り す ぎる . そ の ため 現 状 では , き わめ て 限 られ た 例 につ い て の計 算 が ある 程 度 であ る .
本 学 位 申 請 者 は 解 析 的 手 法 を 発 展 さ せ て , 上 に 述 べ た 限 界 を 克 服 す る こ と を 試 み た . ま ず 申 請 者 は , 一 様 磁 化 し た 半 無 限 弾 性 体 に お い て , 一 般 的 な 地 震 に 適 用 で き る よ う に , 任 意 の 走 向 ・ 傾 斜 お よ び 任 意 の 発 震 機 構 (strike‑slip型 , tensileーopening型 ,dip slip型 ) をも つ 断 層運 動 に 伴う 地 磁 気変 化 の 解析 解 を 求 め た .ま た そ の解 析 解 をも と に ,地 表 で 観 測さ れ る であ ろ う 磁場 の ,断層 の深さ ,走向,
お よ び 傾 斜 依 存 性 を 調 べ た . 全 て の 場 合 に つ い て , 断 層 の 端 部 付 近 で 大 き い 振 幅 の 磁 場 変 化 が 現 れ る と 同 時 に , 断 層 が 浅 くな る ほ ど 磁場 変 化 が大 き く なる . ま た走 向 の 変 化 に 伴 っ て 磁 場 の 変 化 パ タ ー ン は 大 き く 異 な る が , 最 大 振 幅 は ほ と ん ど 変 わ ら な い . さ ら にstrike‑slip型 お よ びtensile opening型 の 断 層 運 動 に お い て は 断 層 の 傾 斜 角 が 90° ( 垂 直 ) で 最 大 の 振 幅 が 観 測 さ れ る が ,dip ‑slip型 に お い て は45
° で最 大 振 幅が 観 測 され る , など の こ と が明 ら か にさ れ た .
地 震 地 磁 気 効 果 に た ぃ す る 断 層 の 走 向 ・ 傾 斜 や 発 震 機 構 依 存 性 の 一 般 化 に
成功したのを受けて,申請者は次に媒質を一様磁化から不均質磁化に拡張すること を試みた.地殻を細かい領域に分け,各領域内では磁化が均質であるが,領域毎に は異なると考えることにより地殻の磁化不均質性を近似している.各々の領域にたい する地震地磁気効果を計算し,それらをたしあわせることにより全体の地磁気変化が 求められることになる.本研究では,1 っの領域を均質磁化した立方体と考え,それ の地震地磁気変化の解析的解法を開発している.一般に,均質磁化した物体の圧 磁気ポテンシアルは,変位と歪みを含む関数を物体表面について積分することによ り表現される.半無限媒質のように積分区間が無限大の場合には,初等関数で表さ れる解析解が得られる.しかしながら立方体のような有限区間の表面積分の場合に は解析解がない.しかし申請者は,表面積分の内,一方の座標に関する積分は,楕 円関数を用いて解析的に表現できることを見いだした.その結果,残りの一次積分 のみを数値的に行えば良いことになる.
均質磁化した媒質中に,異なる磁化を持つ立方体が埋め込まれた場合につい ての計算例では,断層近傍の他に,立方体の端部にも磁場の振幅の著しい増大が 見られた.このことは,断層から離れた場所においても地殻の磁化が異なる境界付 近で地磁気観測を行うことにより,有効な地震地磁気効果の検出が可能であることを 示しており,地殻活動のモニターを行う立場にとっても極めて意義のある結果となっ ている.
以上のように,地震地磁気効果のモデル計算の手法を,一般的な断層運動や 不均質磁化地殻の場合に解析的に拡張した申請者の研究は,地殻活動の場を推定 する重要な手がかりを与えるとともに,地球磁気学的手法による地震予知研究にも資 するところ大である.