博 士 ( 工 学 ) 嶋 田 太 平
学 位 論 文 題 名
Volatilization Characteristics of Ix/Iinerals in Coal Ash by Chlorination Treatment
( 石 炭 灰 鉱 物 質 の 塩 化 処 理 に よ る 揮 発特 性 )
学位論文内容の要旨
石炭は炭素と水素を主成分とする有機質と種々の金属化合物を含む鉱物質から成り,
エネルギーへの転換利用に伴い鉱物質は灰として排出される.しかしながら,石炭灰の 鉱物質組成は産炭地や同じ産炭地でも炭層によって大きく異なるため,異種の石炭から 得た灰を均質な素材として用いることが難しく,現在わが国では排出灰の40% 以上が埋 立,廃棄されているが,急速な石炭消費量の増大によりこれ以上の埋立地を確保するの が不可能になっている.他方,苛性ソーダは海水中の塩化ナトリウムを原料として製造 され,塩素を副生する.塩素はこれまで溶剤や冷媒,高分子モノマー等,種々の塩素化 合物の製造に利用されてきたが,これらが廃棄物となったときに有害物質源となる塩素 を回収する方法はまだ確立していない.
本研究は,両廃棄物の同時処理,すなわち石炭灰鉱物質を余剰塩素や塩素系廃棄物か ら発生する塩化水素により塩素化して金属塩化物として抽出し,これを金属素材源とす ると同時に,均質な灰残渣を素材として得ることを目的とし,本論文はこれに関する一 連の基礎研究成果を纏めたものである・
論文は,っぎの5 章から構成される.
第1 章では,本研究と関連する既往の研究をレビューし,本研究の背景と目的につい て述べている.
第2 章は,
5種類の石炭を高温灰化または低温灰化して得た灰を試料とし,熱天秤を
用いて炭素系還元剤が存在しない条件で塩素ガスと接触させ,1273K まで10K/min で定
速加熱し,
60min保持したときの重量変化を測定し,灰中鉱物質の塩化反応および生成
塩化物の蒸発特性を検討すると同時に,残渣の元素組成および融点などの物性変化を測
定した結果を述べたものである.炭素系還元剤の存在しない系においても灰鉱物質の塩
化反応が進行し,特定金属塩化物が選択的に揮発,抽出されること,これにより得られ
る残渣の組成が類似したものとなり,各試料の塩基度や融点の差が小さくなることを見
い出している.さらに,鉱物質の数種のモデル化合物を同様に処理し,塩化処理中の灰 重量変化が,モデル化合物単昧の塩化揮発特性に基づいて定性的に説明できることを明 らかにしている.
第3 章では,上記5 種類の高温灰化灰を試料とし,上述した実験方法により塩化水素 ガスを塩素源としたときの鉱物質の塩化および揮発化特性について検討した結果を述べ ている.まず,ポリ塩化ビニル樹脂(PVC) の熱分解により発生する塩化水素ガスが共 存する灰中の鉱物質を塩化処理できることを明らかにしている.ついで,塩化水素ガス 流通下で上と同様の実験を行い,鉱物質の塩化および生成塩化物の蒸発特性を系統的に 検討し,処理中の灰重量変化が単成分モデル化合物の塩化反応および揮発特性だけから 説明できず,塩化反応に及ぽす共存鉱物質の影響を考慮しなければならないことを明ら かにしている.
第
4章は,第2 章で得た塩素ガスを用いた塩化処理による灰重量変化の測定結果を,
塩化反応の進行を記述する未反応核モデルと生成した塩化物の蒸発モデルを組合せたモ デルにより解析し,説明することを試みた結果について述べている.すなわち,各モデ ル化合物について,モデルにより決定した塩化反応速度および塩化物蒸発速度係数を用 い,灰中の元素組成だけをモデル変数としてモデル基礎式を同時に解き,異なった元素 組成を持つ灰の重量変化を定性,定量的に説明している.
第5 章は,本研究の成果を総括したものである.
学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主 査
副 査 副 査 副 査
教授 教授 教授 助教授
千 葉 忠 俊 竹 澤 暢 恒 服 部 英 林 潤一郎
学位論文題名
Volatilization Characteristics of Minerals in Coal Ash by Chlorination Treatment (石炭灰鉱物質の塩化処理による揮発特性)
石 炭 は , 炭 素 と 水 素 を 主 成 分 と す る 有 機 質 と 種 々 の 鉱 物質 か ら 成り , 転 換利 用 に より 鉱 物 質 を 灰 と し て 排 出 す る . 灰 の 鉱 物 質 組 成 は 産 炭 地 や 同 じ産 炭 地 でも 炭 層 によ っ て 大 き く 異 な る た め , 灰 を 均 質 な 素 材 と し て 用 い る こ と が 難 し く , 現 在 わ が 国 で は40%以上 が 埋 立 さ れ て い る が , 急 速 な 石 炭 消 費 量 の 増 加 に よ り こ れ 以上 の 埋 立地 確 保 が不 可 能 に な っ て い る . 他 方 , 苛 性 ソ ー ダ は 海 水 中 の 塩 化 ナ ト リ ウ ム を電 気 分 解し て 製 造さ れ , 塩 素 を 副 生 す る . 塩 素 は こ れ ま で 溶 剤 や 冷 媒 , 高 分 子 モ ノ マ 一等 , 種 々の 塩 素 化合 物 の 製 造 に 利 用 さ れ て き た が , こ れ ら が 廃 棄 物 と な っ た と き に 有 害な 塩 素 を回 収 す る方 法 は ま だ 確 立 し て い な い . 本 研 究 は , 両 廃 棄 物 の 同 時 処 理 , す な わち 石 炭 灰鉱 物 質 を余 剰 塩 素 や 塩 素 系 廃 棄 物 か ら 発 生 す る 塩 化 水 素 に よ り 塩 素 化 し て 金 属塩 化 物 とし て 抽 出し , こ れ を 金 属 素 材 源 に 転 換 す る と 同 時 に , 均 質 な 灰 残 渣 を 素 材 と して 得 る こと を 目 的と し た 一 連 の 基 礎 研 究 成 果 を 纏 め た も の で , そ の 主 要 な 成 果 は っ ぎ の 点 に 要 約 さ れ る .
@ 灰 鉱 物 質 の 塩 素 ガ ス に よ る 塩 化 反 応 は 炭 素 系 還 元 剤 が 存 在 し な い と き も 進 行 し , 特 定 金 属 塩 化 物 を 蒸 発 に よ り 抽 出 で き , 組 成 が 類 似 し た 残 渣 を 得 る こ と が で き る . そ の 結 果 , 残 渣 の 塩 基 度 や 融 点 な ど の 灰 種 に よ る 差 が 小 さ く な る . ま た , 塩 化 に よ る 灰 重 量 変 化 は , 鉱 物 質 の モ デ ル 化 合 物 単 昧 の 塩化 揮 発 特性 に 基 づ いて 定 性 的に 説 明 でき る .
@ 塩 素 源 を 塩 化 ピ ニ ル 樹 脂 の 熱 分 解 に よ り 発 生 す る 塩 化 水 素 ガ ス と し て も , 塩 素 ガ ス と 同 様 の 灰 重 量 変 化 が 起 こ る が , モ デ ル 化 合 物 単 昧 の 塩 化 反 応 お よ び 蒸 発 特 性 だ け か ら は 説 明 で き ず , 塩 化 反 応 に 及 ぼ す 共 存 鉱 物 質 の 影 響 を 考 慮 し な け れ ば な ら な い ・
◎ 異 な っ た 元 素 組 成 を 持 つ 灰 鉱 物 質 の 塩 素 ガ ス に よ る 塩 化 お よ ぴ 生 成 金 属 塩 化 物 の 蒸
発による重量変化は,未反応核モデルと生成金属塩化物の蒸発モデルを組合せたモデ
ルにより記述できる.