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博士(工学)古市正彦 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(工学)古市正彦 学位論文題名

航空旅客需要の統合型予測モデルに関する研究 学位論文内容の要旨

  空港整備に携わる者にとっては空港整備の基礎情報として,―。方,航空各社にとっては新規路線 等 の 採 算 性 の 検 討 に 当 た っ て 航 空 旅 客 の 需 要 予 測 は 極 め て 重 要 な 情 報 で あ る .     まず,前者にとっては,マク口情報としてi)航空旅客の総需要,また,ミクロ情報として11 空港配置計画や空港アクセス交通計画の基礎となる航空旅客の出発空港選択行動分析が特に重要で ある,一方,後者にとっては,ミク口情報としてiii冫運賃.飛行時間,フライト頻度などの路線の サービス水準に応じた路線別の需要予測が必要不可欠であると同時に,IV)新しい観光地の開拓等 の基礎となる観光旅客の目的地選択行動分析も重要である.これらに関する研究はこれまで個別に は行われてきているが,これらを統合化した実務者の使用に耐える方法はまだ確立されていない.

  ー方 ,分析 手法に目 を向け れば,非 集計モ デルによ る多次元 選択行 動分析に関する総合 的 な 議論 が ,Ben‑Akiva及びMcFaddenに よ って な さ れて い る . その なか で,多次 元選択 の選 択肢の 全ての組 み合わ せを選択 肢とした ジョイ ントロジ ットモ デルはその選択肢の数 が多 〈なり 過ぎるこ となど の実用上 の問題点 が指摘 されてい る,他 方,多次元選択に階層 構造 を仮定 すること によル ジョイン トロジッ トモデ ルの自由 度を緩 和したネステイッド口 ジッ トモデ ルは選択 肢の数を抑えられるなど,階層的な選択構造の仮定さえ適切であれば.

その実用上の価値は高い.

  伝統 的 な 交通 需要予 測では,4段 階推定法 によってi) 発生交通 ,ii)分 布交通,Iii 交通 機関分 担,1V)経 路配分 の順に行 う,し かしなが ら,航空 旅客交 通は,中・長距離の 広域 交通を 対象とす る場合 他の交通 モードと の競争 関係をほ とんど 無視し得るので,通常 4段階 推 定 法の 第3段 階で あ る 交通 機 関分 担を省略 するこ とができ る,例 えば,我 が国 のよ うな島 しょ国の 国際航 空旅客を 対象とす れば, この仮定 は極め て現実的であることが 明 ら かで あ る .航空 旅客の選 択行動 ブロセス をこの3段階 の階層構 造とし て位置付 けるこ と に より , 上 位の階 層から順 にi) 発生交 通,11)目 的地選 択(「分 布交通 」に相当 ).

111) 出 発空 港 選 択( 「 経 路配 分 」 に 相当 ) の3段 階 で 需要 予 測 を行 う こ とが で き る.

  本論 文 で は, この3段階の 階層構 造に非集 計ネステ イッド ロジット モデル を中心に 適用 し, 下位段 階のモデ ルで得 られた情 報をスケ ールバ ラメータ を介し て上位のモデルに取り 込む という 「モデル の統合 化」を行 った.こ のこと により, 従来の 方法では算定が困難で あった

  i)交通サービス水準の改善によって誘発される潜在需要,

  Il)交通政策のシナリオに対して現状から転換する需要 の算定が可能となった,

  本論 文で提 案する統 合型予測モデルは下位から順に,i)出発空港選択モデル.   II)目 的 地 選択 モ デ ル,III)発生 原単位 モデルに よって構 成され ている. 第1及び第2段階を 構 成す る出発 空港選択 及び目 的地選択 について は,「 出発空港 の選択 は目的地の選択のもと で意 思決定 される」 という 階層的な 選択構造 を仮定 し,非集 計ネス テイッドロシットモデ

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ルを 適用 した . 一方 第3段階では, ネステイッド口ジットモデル推定の過程で算出される

¨logsum¨変数と旅客の出発地ゾー ンのポテンシャルを利用して定義する¨LOS‥変数を導 入することにより,アクセス交通や ,ラインホール交通のサービス水準の向上によって誘発 される潜在需要の算定が可能な発生 原単位モデルを提案した,

  また,政策分析においては,分析 の対象となるシナリオに対してアクセス交通やライン ホール交通に関するサービス水準を 設定し,交通量の予測値を計算する必要があるが,現 状維持のシナリオに対する予測値は 必ずしも観測値に一致しない.このため,分析対象と なるシナリオの影響による交通量の 増加分あるいは減少分を正確に特定することが難しい,

そこで,これを解決すること,さら には煩雑な予測作業の作業量を軽減するため,シナル オで設定したサーピス水準の現状か らの変化分を入カし,交通量に関する増加分あるいは 減少分を出カすることのできるイン クリメンタル形式を本論文で提案した統合型モデルに 適用し,その定式化を行った.

  本研究の成果を章立ての順にまと めれば以下のとおりである.

  本 論文 は, 第I編 「航 空旅 客需 要の 統合 型 予測 モデ ルに 関す る理 論的 展開 」と第Il編

「航 空旅 客需 要 の統 合型 予測モデルに関する事例研究」とぃう2編によって構成されてお り, 第I編 第1章 では ,本 研究 の背 景, 本研 究全 体の 目的及び本研究全体の構成について 紹介した.

  第I編第2章 で は, 既存 研究 のレ ピュ ーを きめ 細か く行い,本研究の位置付けを明確に した.具体的には,航空旅客の総需 要に関する研究,航空旅客の出発空港選択行動に関す る研究,航空旅客の路線別需要予測 に関する研究,及び航空旅客の目的地選択行動に関す る研究についてそれぞれレビューし ,これら既存研究の限界を示すとともに本研究の必要 性について言及した.

  第I編第3章 で は, 本研 究で 提案 する 航空 旅客 需要 の統合型予測モデルの前提条件とそ れぞれの段階のモデルの基礎理論を 紹介し,本研究で提案する統合型モデルの定式化を行 う.さらに,政策分析においてモデ ルの簡便な利用方法を提供するインクリメンタルモデ ルを統合型モデルに適用し.その定 式化を行った.

  第1編 第4章 で は , 本研 究の 結論 を示 し, 第II編で 行う 事例 研 究に 向け て注 意す べき 課題を整理した.

  っ づぃ て, 第II編 では 事例 研究 とし て, 他の 交通 モ―ドとの競争をほとんど無視でき る我 が国 の国 際 航空 旅客 に対して本モデルを適用し,第I編で提案した航空旅客需要に関 する統合型予測モデルの有効性を実 証した.

  第II編 第1章 では ,事 例研 究に 用い る国 際 航空 旅客 動態 調査 の概 要を 紹介 するととも に,モデル作成の基礎となる交通サ ービス水準データの計測方法等のデータの定義を明ら かにした,さらに,事例研究を進め るうえで重要となるマーケットセグメントの要因の選 定を行った.

  第II編 第2章 で は ,統 合型 モデ ル の第1段 階と なる 航空 旅客 の 出発 空港 選択 モデ ルの 推定を行い,論理的整合性の検討, 統計的検定,適合度検定等の議論のなかで最適なモデ ル(推定結果)を選定した.さらに ,モデルの推定結果から算出される交通時間価値につ い て 考 察 を 加 え , 選 定 さ れ た モ デ ル の 妥 当 性 を 多 面 的 に 確 認 し た .   第II編 第3章 で は ,統 合型 モデ ル の第2段 階と なる 航空 旅客 の 目的 地選 択モ デル の推 定を行い,論理的整合性の検討,統 計的検定,適合度検定等の議論のなかで最適なモデル

(推定結果)を選定した,さらにネ ステイッドロジットモデルの推定結果から,モデルの

「階層構造の仮定」の妥当性を示す スケールバラメータについて考察を加えた.また,こ のネ ステ イッ ド ロジ ット モデ ルの 予測 カの 検定 を行 い,その予測カの高さを実証した.

  第II編 第4章 では ,航 空旅客の発 生原単位モデルの推定を行い,論理的整合性の検討,

統計 的検 定, 及 び適 合度 検定 等の 議論 のな かで 最適 なモデル(推定結果)を選定した.

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  さらに,第II編第5章では,仮想の政策シナリオを4種類設定し,それぞれに対する 政策分析をインクリメンタル形式の統合型モデルを用いて行い,本研究で提案した統合型 予測モデルの有効性と実用性の高さを実証した.

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学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主査   ′教授   五十嵐日出夫 副 査    教 授    佐 伯    浩 副 査    教 授    佐 藤 馨 一 副 査    教 授    大 内    東

学 位 論 文 題 名

航 空 旅 客 需 要 の 統 合 型 予 測 モ デ ル に 関 す る 研 究

  一般に空港の整備計画は、三つの側面から検討されねばならない。すなわちそ の第一は、運輸省(国).地方公共団体等の空港設置及ぴ管理者の側面からであ り、第二は航空企業等あるいは旅客などの利用者の側面からであり、そして第三 は地域住民等の生活に影響を及ぽす環境の側面からである。しかして第ーの検討 において重要な情報は、マクロ情報では、全国あるいは全地域の@航空旅客総需 要量であり、ミク口情報では、空港配置計画や空港アクセス交通計画の基礎資料 となる◎出発・到着空港選択行動分析である。また第二の検討では、ミクロ情報 として、◎運賃、飛行時間、フライト頻度などの路線のサーピス水準に対応した 路線別の需要予測である。また同時に、都市や観光地等の開発計画の基礎資料と なる業務交通及び観光交通の@目的地選択行動分析も重要である。そして、第三 の検討では、騒音・振動、大気汚染等の環境情報及ぴ航空機の墜落等の事故情報 などが挙げられよう。

  ところで、これらの情報は本来統合されたシステムとして与えられるべきもの であるが、これまではそれそれについて個別に研究されていて、システム化され ていない。しかも実際の計画立案にも役立つシステム分析法として、十分に確立 されているとはいえない。そこで本研究は、今日の交通施設計画の需要予測にお いて、最も普及している、いわゆる4段階推定法に著者の新しい工夫を加え簡略 化し、さらに「出発空港の選択は目的地の選択のもとで意思決定される」という 選択構造を仮定し、ネステイッドロジットモデル(Nested Logit Ftodel)を巧み に適用して航空旅客需要の統合型予測モデルの構築に成功した。なお本研究では 第三の環境の側面には触れられていない。

  いま、本論文の構成順に内容を略述し、それそれについて評価すれば以下のと おりである。すなわち本論文は、第I編「航空旅客需要の統合型予測モデルに関 する理論的展開」と第II編「航空旅客需要の統合型予測モデルに関する事例研究」

の2編から 成り、さ らに第I編 は4章、第II編は5章、 合計9章から構成されて いる。そ して第I編 第1章(I−1章、以下同様に表記)では、本研究の背景、

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目的、構成について述べられてしヽる。

  I―2章では、既存研究の詳細なレピューとそれらの限界が示され、本研究は それらを超えるものであることが述べられている。

  I―3章は、第I編の理論的展開において最も高く評価される章である。すな わちこの章では、

(1)出発空港選択及ぴ目的地選択について、非集計ネステイッドロジットモデ ル を 適 用 す る こ と に よ り 統 合 型 予 測 モ デ ル の 定 式 化 に 成功 し てい る 。

(2)Logsum変数を利 用して定義したLOS変数を導入することにより、アクセ ス交通やラインホール交通のサーピス水準の向上によって弓「き起こされる誘発交 通量 の推定を 可能にす る発生原単位モデルを構築している。そしてさらに、

(3)統合型予測モデルについて、増分モデル(incremental model)を導出し、

こ れ を用い て計画代 替案に対 する独得 な感度分析 を可能な らしめて いる。

  そして次のI一4章では、理論的展開の成果を総括し、第II編の事例研究に向 けての若干の課題を明快に整理している。

  続く第II編は、第I編で開発された航空旅客需要に関する統合型予測モデルを 実例研究に適用し、同モデルの有効性を実証したものである。すなわちその第1 章(II−1章)では、研究対象として採上げる新東京国際空港(成田)、大阪空 港、名古屋空港、福岡空港の現状について調査した。そして事例研究を進めるう えで重要となるマーケットセグメントを旅行目的に着目して行った。すなわち旅 行を業務目的と観光目的に分けて、それぞれについて要因選定が行われている。

  II−2章では、統合型モデルの第1段階となる航空旅客の出発空港選択モデル が12種類(Model―l‑‑‑Model―12)構築され、論理的整合性の検討、統計的検定、

適 合 度 検 定 等 に よ っ て 最 適 モ デ ル (Model―12) が 選 定 さ れ た 。   II−3章では、統合型モデルの第2段階となる航空旅客の目的地選択モデルが 3種類(Model―l〜Model−3)構築され、IIー2章と同様な検討と検定によって最 適モデル(Model−3)が選定された。さらにネステイッドロジットモデルの推定結 果から、モデルの「階層構造の仮定」の妥当性を示すスケールバラメータについ て考察が加えられた。またネステイッドロジットモデルの予測カの検定が行われ た結果、その予測カの高さが実証された。

  IIー4章では、航空旅客の発生原単位モデルが構築された。そして最後のII― 5章では、4種類の仮想の空港政策シナリオが設定された。そしてそれそれのシ ナ1Jオについて、インクリメンタル形式の統合型モデルを用いて独得の感度分析 か行われ、本研究で開発された統合型予測モデルの有効性と実用性の高さが実例 によって検証された。

  これを要するに、著者は、航空旅客需要の統合型モデルを開発することにより、

空港整備計画の立案に対して有益な新知見と有用な新手法を与えるもので、交通 計画学の進歩に貢献するところ大なるものがある。

  よって著者は、北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認 める。

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参照

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