博 士 ( 工 学 ) 米 澤 勉
学 位 論 文 題 名
ユ ー ザ ー ・ デ モ ク ラ シ ー の 視 点 に よ る 「 ま ち づ く り 」 の 社 会 シ ス テ ム 構 築 に 関 す る 研 究
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
我が国の3大都市圏への人口集中が顕在化する一方で、多くの地方都市が抱える空洞化 現象を概観すると高齢社会、就業人口流出や経常収支比率の増大をど「まちづくり」には 多くの課題がある。こうした背景を踏まえ、地方分権改革が進行する中でユーザー・デモ クラシーの視点から地方都市の「まちづくり」に関する市民参加による新たを社会システ ムについて研究する必要がある。
即ち公共サービスの享受者である市民が、自らの生活を支える共同の場に住みたい、住 んでいて良かったと実感できる「まちづくり」に参加し、維持し、持続させるためには、市 民と行政組織が適切を関係の下で、税収や交付税をどの資源を効率的且つ有効に利用する サービスの質と量を検討し、行政計画に如何に反映させるのかが主要を研究課題である。
本研究で は(1)地 方都市 における エキスパウンディング・タウン開発事業と(2)介護保 険制度と首都近郊都市の具体的運用事業を検証し、都市計画を主体とした「まちづくり」
の課題の抽出と解決策を提案し、ユーザー・デモクラシーの視点から市民参加を可能とす る「まちづくり」の社会システムの構築とその有効性について考察することが目的である。
学位論文は次の7章から構成されている。
第1章 では、研 究の背 景と目的 、研究 の方法と 手順およ び構成 について述べている。
第2章では、本研究で用いる「ユーザー・デモクラシー」、「まちづくり」の定義と「総 合 計画」 の概念に ついて 説明し、 加えて既存研究と本件究の特徴について述べている。
第3章 では、計画行政がまちづくりに果たす役割、法に定められた行政計画策定の構造 を国、都道府県、市町村について説明した上で、本研究で「まちづくり」の具体的検証を 行った行政組織(小樽市、三鷹市と両市に関連する自治体組織)の行政計画にっいて時系 列的を検討を行っている。同時に現行の行政計画策定の課題について述べている。即ち、
課 題とし て(1)都道府県や市町村間で経済圏、生活圏が連担する広域地域圏としての行政 計 画の策 定や相互調整機能が誼いこと、(2)行政計画の目標に関する事業化戦略手法や計 画 実施後 の効果測定システムがをいこと、(3)行政計画の基本構想をど長期に亘る計画を 社 会環境 の急速を変化に対応して改正することが困難であること、(4)広範囲且つ多岐に 亘る「まちづくり」の構成分野に関して行政組織独自が公共サービスの享受者である市民 の意向を行政計画に反映させることは合理性に欠け、非効率である点をどについて述べて いる。 ―682―
第4章では、「まちづくり」のマクロ的視点として、小樽市東南地域開発事業について 事業着手から30余年を経た現状を検証し、その課題と解決策の提案について述べている。
大規 模複合開 発によ る市勢の 拡充が果たせをかった原因と課題を検討し、(1)現行の3層 構造(基本構想、基本計画、実施計画)の行政計画に実施検証報告を加えた4層化、(2)行 政計画策定時の各「まちづくり」分野への住区規模(住民の日常生活圏)別市民参加のシス テム 化、(3)自治体行政区を越えて連担する地域を総合した「連携行政計画」の策定が地 域 相 互の 効 率 的事 業 実 施お よ ぴ 地方 分 権 化の 効 果的 促進策 にをるこ とを提 案した。
第5章では、「まちづくり」のミクロ的視点として、2000年に施行された介護保険制度 が改正期を迎えた2006年の改革内容に着目し、首都近郊都市三鷹市の制度運用を検証し、
保険者と市民の福祉サービスに関する課題と解決策の提案について述べている。課題解決 策と して(1)行政区の近隣住区、住区構成とコミュニティセンターをどの公共公益施設の 適正 配置、施設の多機能化、サーピス提供組織の地域密着化、(2)サーピスの享受者であ る高 齢者と家 族が福 祉の「ま ちづくり 」に参 加する社 会シス テム化を どを提 案した。
第6章では、前章までの研究に基づく本論文の総括、結論として、ユーザー・デモクラ シー の視点から「まちづくり」の社会システムの提案の有効性を論証している。(1)現行 3層構造か ら市民へ の公共 サービスの効果をレビューする「実施検証報告書」を加えた4 層構造の行政計画システムの提案は財政健全化を前提とした持続性の高い「まちづくり」
に繋がること、(2)4層の各行政計画の策定への地域に密着した市民参加方式の提案は自律 した 市民社会の生成と小さを行政の実現が図られ、真の地方分権化に繋がるてと、(3)自 治体単位の行政計画策定に加えて連担する自治体間の「連携総合開発計画」策定の提案は 地方 分権の有効性の検証と財政投資の効率性に繋がること、(4)行政計画「実施検証報告 書」に基づく事業執行のマネジメント機能構築の提案は公共サービスの顧客である市民の 税負 担、費用対効果の明確化を前提とした公共事業執行に収斂すること、(5)地域に密着 した 市民の重 層的UC組 織化の提案はサーピスの顧客が行政計画や制度運用の是非への関 与を可能とすることから地域コミュニティの醸成、「まちづくり」制度の適正化と市民満 足度 の高い「まちづくり」に繋がること、(6)既存公共公益施設を社会状況に見合った機 能ヘコンバージョンする「まちづくり」の提案は施設の適正配置、利便性、住民の地域密 着性 に繋がる こと、(7)地域 に密着し た市民 の「まち づくり」分野別UC組織化による活 動の提案は地域コミュニティを再生し、市民の責任感と自立性を生み満足度の高い「まち づ く り」 を 実 現す る 市 民ネ ッ ト ワー ク 形 成に 繋 がる ことを どについ て述べ ている。
第7章では 本論文 に引き続 く今後の 研究課 題につい て述べている。UC組織活動の市民 への負荷と小さを行政組織の検証、市民ネットワーク形成プロセスの実証、市民参加と行 政組織の連携促進策や社会環境の変化に対応したエキスパウンディング・タウン開発計画 の 柔 軟 性 と 法 的 規 制 改 革 を ど に つ い て は 今 後 の 課 題 と し て 説 明 し て い る 。
‑ 683ー
学位論文審査の要旨 主査
副査 副査 副査
教 授 教 授 教 授 准 教授
加 賀屋 中 辻 小 林 高 野
学 位 論 文 題 名
誠 一 隆 英 嗣 伸 栄
ユー ザー ・デモクラシー の見点による「まちづくり」の 社 会シ ステム構築に関する研究
わ が国の3大都市 圏への 人口集 中が顕 在化す る一方 で、多くの地方都市では空洞化減少が進んで い る。そ れらの 現象が 現れる 都市では、高齢社会、就業人口流出、さらに経常収支比率の増大を ど「まちづくり」において多くの課題がある。こうした背景と、地方分権改革が進行する中でユー ザー・デモクラシーの理念から地方都市のまちづくりへの市民参加による新たを社会システムを構 築する必要があるといえる。ここでのユーザー・デモクラシーとは、まちづくりにおける様々を政 策決定や実施過程に、サーピスを利用する主体が参加することによって、公共部門の肥大化を食い 止め、サービスの質の向上を図るためデンマークで開発された行革手法である。すをわち公共サー ビスの享受者である市民が自らの生活を支える協働の場に住みたい、住んでよかったと実感できる まちづくりに参加し、まちを維持していくことともいえる。そのためには、市民と行政組織が適切 を関係の下で、税収や交付税をどの資源を効率的かつ有効に利用するサ―ビスの質と量を検討し、
行政計画に反映させるのが主要課題とをる。
本研究で は、(1)介護保 険制度の首都近郊都市における具体的運用事業と(2)地方都市における ニュータウン開発事業をユーザー・デモクラシーの視点からの検証を行うこと、そしてソーシャル キャピタル面を主体としたまちづくりの課題の抽出と解決策を提案し、ユーザー・デモクラシーを 内包した市民参加を可能とするまちづくりの社会システム構築とその有効性について評価すること を目的としている。
`
本論文の構成は次の7章からをる。
第1章 で は 、 研 究 の 背 景 と 目 的 、 研 究 の 方 法 と 手 順 お よ び 構 成 に つ いて 述 べ て いる 。 第2章では、研究で用いられる「ユーザー・デモクラシー」、「社会システム」、「まちづくり」の 定義と「総合計画」の概念について説明し、加えて既存研究と本研究の特徴について比較的に論じ ている。
第3章では、計画行政がまちづくりに果たす役割、法に定められた行政計画策定の構造について説 明した上で、まちづくりの具体的検証を行った行政組織の三鷹市、小樽市の行政計画について時系 列的誼検討を行っている。同時に現行の行政計画策定の課題について述べている。ここで得られた
‑ 684ー
課題として(1)都道府県や市町村間での経済圏、生活圏を連担する広域地域圏としての行政計画の 策定や相互調整機能がをいこと、(2)行政計画の目標に関する事業化戦略手法や計画実施後の効果 測定システムがないこと、(3)行政計画の基本構造をど長期にわたる計画を社会環境の急速を変化 に対応して改善することが困難であること、(4)まちづくりの構成分野は広範囲かつ多岐にわたる が、現行行政が策定し議会が決済する方法では公共サービスの享受者である市民の意向を行政計画 に反映させることが困難であることをどが論じられている。
第4章で は、ま ちづくり の要素 的視点 の例と して、2000年に施行された介護保険制度が2006年に 改正が行われたが、その改革内容に着目し、三鷹市の制度運用事業を検証し、保険者と市民の福祉 サーピスに関する課題と解決策の提案を行っている。課題解決策として(1)行政区の近隣住区、住 区構成とコミュニティセンター誼どの公共公益施設の既適正配置利用、施設の多機能化、サービス 提供組織の地域密着化、(2)サーピスの享受者である高齢者と家族が福祉のまちづくりに参加する 社会システムを提案している。
第5章では、まちづくりのシステム的視点の例として、小樽市東南地域開発事業について事業着手 から30余 年を経 た現状 を検証し、その課題と解決策の提案を行っている。同市の行政計画が掲げ た大規模複合開発による市勢の拡充が果たせをかった原因と課題を検討し、(1)住宅供給計画への 市民意向の反映、(2)長期に亘る大規模開発事業の行政計画検証と市民参加、(3)住区、近隣住区構 成と市民活動拠点形成をど都市計画基盤整備、(4)行政、市民、事業者による「まちづくり」ネッ トワークの構築をどを提案している。
第6章では、前章までの研究に基づく総括と考察を行っている。考察として、ユーザー・デモクラ シーの視点から三鷹市と小樽市における市民参加構造を比較し、都市計画的側面とソーシャルキャ ピタル的側面について市民参加の基盤整備環境の充実と必要性を明らかにしている。具体的には、
次の3点のまちづくり社会システム、す毅わち行政計画策定への市民参加方法を提案している。そ れらは(1)地域に密着したコミュニティ形成とまちづくりへの市民参加を実現する「利用者・家族 会議」、「分野別・共通ユーザ.コミッティ(以後UCと略す)」、「UC統括会議」をどの市民活動組 織の構 築、(2)市 民活動 組織の 行政計画 策定プ ロセスヘの参加システムの構築、(3)現行3層構造
(基本構想、基本計画、実施計画)から市民への公共サービスの効果をレビューし、実施検証報告を 加えた4層構造の新た極行政計画システムの構築である。同時にこれらの提案の具体的施策、すを わちUCの 構成、 分野別 ・共通行政計画策定主体と行政による市民活動支援方法、市民参加者選別 方 法 、 事 業 検 証 方 法 、 市 民 活 動 拠 点 お よ びUC活 動 の 効 果 に つ い て 論 じ て い る 。 第7章で は、今 後の研究 課題に ついて 述べて いる。 それら はUCの権 利保障 、UC組織 活動の 市民 への負荷と効率的運営、地方議会の行政コスト、生活・経済圏を同じくする地方自治体間の広域的 連携方法などである。
これを要するに、著者は、従来の都市計画策定システムにユーザー・デモクラシー理念と具体的を 市民参加活動主体としてのユーザ・コミッティの導入というまちづくりにおける社会システムの革 新的改善を提案し、それらを介護保険制度に基づぃた福祉計画と、二ユータウン開発計画に適用か つ検証し、新知見を得たものであり、都市計画学、地域計画学において貢献するところ大なるもの がある 。よって 、著者 は北海 道大学 博士( 工学) の学位 を授与 される資格あるものと認める。
―685ー