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博士(工学)熊澤誠志 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(工学)熊澤誠志 学位論文題名

ファンクショナル IVIRI における 脳 活性部 位の高精度抽出に関する研究

学位論文内容 の要旨

  本論文は、フんンクショナルMRI(以下、fMRI)を用いた脳活性部位抽出においてfMRI 時系列画像信号強度変化の定量解析を導入し、機能局在同定の妨げとなる偽活性部位の低 減について検討したものである。

  近年、脳の機能や構造の科学的な解明を目指す脳研究が最も重要な研究課題として位置 付けられている。知覚から認知、記憶、思考を経て、行動の意思決定、運動遂行とこれら を支える価値判断とぃった人間の高次脳機能を明らかにすることを目標として現在多くの 研究が行われている。fMRIを用いた脳機能解析では、神経活性を反映した微弱な信号強度 変化を解析しているため、被験者のわずかな動きに起因した画像信号強度変化を示す領域 が偽の神経活性化部位として描出されてしまう。このため得られたfMRI脳機能画像にお いて、機能局在を正確に同定できないとぃう問題点がある。

  神経活性からMRI画像信号強度を観測するまでに混入するノイズを低減することで、神 経活性を反映した画像信号強度変化すなわち脳活性部位の抽出の精度向上が期待できる。

神経活性を反映したMRI画像信号強度を観測する際に混入するノイズのうち支配的なノイ ズ源は、被験者の生理的揺動すなわち頭部全体の動き、血管や脳脊髄液の拍動する局所的 な動きである。生理的揺動によるノイズがfMRI脳機能解析に与える影響を低減するため、

flVIRI時系列画像間の頭部の動き推定、補正手法が多数開発されている。これらの手法は被 験者の頭部の動きを剛体運動と仮定しているため、血管や脳脊髄液などの拍動による局所 的な変形を伴うような動きすなわち非剛体的な動きに起因した偽活性部位を取り除くこと は不可能である。またMRIでは被験者毎にコイルの感度を調整しているため、MRI画像信 号強度は定量性を持たない。したがってfMRI脳機能解析において神経活性を反映した画 像 信号強度変 化の定量的 な把握や、 異なる被験 者間でのデ ー夕比較が困難である。

  本論文では、熱的ノイズによる画像信号強度の揺らぎに基づぃたfMRI脳機能解析を導 入し、これによりfMRI時系列画像信号強度変化の定量的な議論を可能にした。また生理 的揺動によるノイズに対して、fMRI時系列画像データから頭部全体の移動のような剛体的 な動きだけでなく、血管や脳脊髄液などの拍動する非剛体的な動きを推定しこれらの動き による影響を取り除く手法を提案した。提案手法では、サブピクセルレベルのオプテイカ

(2)

少フロー(画像中の物体の見かけ上の速度)を検出できる勾配法に基づぃて被験者の動きを オプテイカルフローとして推定しているが、従来手法のように注目するピクセルの局所近 傍では動きが一定であるという仮定を用いていない。提案手法では、各ピクセルにおいて 互いに独立な複数の勾配拘束方程式を与える一般化勾配法を確率モデルに拡張し、ピクセ ル毎の被験者の動き(オプテイカルフロー)を推定している。この確率モデルのパラメー夕 推定においてEMアルゴリズムを用いた最尤推定を行い、またオプテイカルフローの推定 には最大事後確率推定を行っており、統計的手法に基づぃた動き推定を行うのが提案手法 の特徴である。提案手法では確率モデルを導入することで、従来手法でのオプテイカルフ ローの信頼性の問題が解決された。提案手法によって推定された動きに基づぃて画像信号 強度 を補正する ことで動きの影響を取り除き、高精度な脳活性部位抽出を実現した。

  第1章では、本研究の背景としてfMRIを用いた脳機能解析における課題とそれに対する 従来の対策手法について概説し、本研究の位置付けを明確にした上で本研究の目的およぴ 概要について述べた。

  第2章では、偽活性部位の要因となるfMRI時系列画像間の被験者の動き推定および補 正手法について提案じた。本論文で問題としている頭部の剛体、非剛体的な動きを推定す るにあたり、勾配法を用いた従来のオプテイカルフロー検出手法での問題点について述べ た。従来手法の問題点を明確にした上で、これらの問題点を解決した動き推定アルゴリズ ムを提案した。提案手法では画像信号強度の微分値を観測量とし,その観測誤差を一般化 勾配法に織り込んだモデルを導入し、このモデルにおいて画像信号強度の微分値を観測し たもとでのオプテイカルフローの事後確率分布を考え、その確率を最大にする値すなわち 最大 事後確率推 定値をそのピクセルでのオプテイカルフローとして得るものである。

  第3章では、従来手法と提案手法の推定精度について述べた。被験者のわずかな動きを どれだけ高精度に検出できるかが、fMRI脳機能解析における動き推定手法の重要な課題の ーつである。fMRI時系列画像間における被験者の動きはおよそ100冖m程度とされるため、

動き推定手法はこのオーダーの推定精度が要求される。動き(移動量と移動方向)が既知で ある時系列画像データに各手法を適用することで、各手法の推定精度を検証した。動き推 定値と実際の移動量との誤差を比較することで評価し、提案手法がfMRI脳機能解析にお ける動き推定手法に要求される推定精度を持っことを示した。

  第4章では、fMRI脳機能画像における脳活性部位の抽出について述べた。脳活性部位 の抽出は、換言すると神経活性を反映した画像信号強度変化を捉えることである。被験者 に与えた刺激あるいは課題実行による神経活性に起因した画像信号強度変化を、被験者の 生理的揺動やMRI装置に起因したノイズに埋もれることなく観測することが必要不可欠で ある。このため神経活性に起因したMRI信号を観測するのに必要な時空間分解能、神経活 性を導き出す最適な課題実行(刺激)周期を検討した。また熱的ノイズの画像信号強度を基 にfMRI時系列画像信号強度変化において生理的揺動のない理想値を明らかにし、これに 基づぃた脳活性部位の抽出について述べた。さらにfMRI脳機能画像において被験者の生 理的揺動に起因した偽活性部位を除去するため、第2章で述べたそれぞれの動き補正手法 を適用し、脳活性部位抽出結果を示した。従来手法の補正による結果と比較して、提案手

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法による補正の結果得られたfMRI脳機能画像では、偽活性部位が低減し、実験で対象と した機能局在と対応した部位が明瞭に描出された。この結果より本論文で提案した手法で は、脳活性部位抽出が従来手法に比べ改善され、その抽出精度が向上したことを示した。

  最後に第5章では以上を総括し、結論として本研究の意義を述べるとともに、今後の研 究の課題や方向性などについて述べた。

  本論文では、従来のfMRI脳機能解析における脳活性部位抽出精度の限界を明らかにし た。本論文で提案した手法により脳活性部位の抽出精度が向上したことは、高次脳機能を 解明する研究分野に寄与するところがあると考える。

(4)

学位論 文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

ファンクショナルR/IRI における 脳活性部 位の高 精度抽出 に関する研究

  本 論 文 は 、 フ ァ ン ク シ ョ ナ ルMRI( 以 下 、fMRI)を 用 い た 脳 活 性 部 位 抽 出 に お い てfMRI 時 系 列 画 像 信 号 強 度 変 化 の 定 量 解 析 を 導 入 し 、 機 能 局 在 同 定 の 妨 げ と な る 偽 活 性 部位 の 低 減 に つ い て 検 討 し た も の で あ る 。

  fMRIを 用 い た 脳 機 能 解 析 で は 、 神 経 活 性 を 反 映 し た 微 弱 な 信 号 強 度 変 化 を 解 析 し て いる た め 、 被 験 者 の わ ず か な 動 き に 起 因 し た 画 像 信 号 強 度 変 化 を 示 す 領 域 が 偽 の 神 経 活性 化 部 位 と し て 描 出 さ れ て し ま う と い う 問 題 が あ る 。 こ の た めfMRI脳 機 能 画 像 に お い て 、 機 能 局 在 を 正 確 に 同 定 す る に あ た り 、 脳 活 性 部 位 抽 出 の 精 度 向 上 が 重 要 な 課 題 で あ る 。   本 論 文 で は 、 熱 的 ノ イ ズ に よ る 画 像 信 号 強 度 の 揺 ら ぎ に 基 づ い たfMRI脳 機 能 解 析 を 導 入 し 、 こ れ に よ りfMRI時 系 列 画 像 信 号 強 度 変 化 の 定 量 的 な 議 論 を 可 能 に し て い る 。 ま た 生 理 的 揺 動 に よ る ノ イ ズ に 対 し て 、fMRI時 系 列 画 像 デ ー タ か ら 頭 部 全 体 の 移 動の よ う な 剛 体 的 な 動 き だ け で な く 、 血 管 や 脳 脊 髄 液 な ど の 拍 動 す る 非 剛 体 的 な 動 き を 推 定 し これ ら の 動 き に よ る 影 響 を 取 り 除 く 手 法 を 提 案 し て い る 。 提 案 手 法 で は 、 各 ピ ク セ ル に お いて 互 い に 独 立 な 複 数 の 勾 配 拘 束 方 程 式 を 与 え る 一 般 化 勾 配 法 を 確 率 モ デ ル に 拡 張 し 、 ピ クセ ル 毎 の 被 験 者 の 動 き ( オ プ テ ィ カル フ 口 ー )を 推 定 して い る 。こ の 確 率モ デ ル のパ ラ メ ー夕 推 定 に お い てEMア ル ゴ ル ズ ム に よ る 最 尤 推 定 を 用 い 、 ま た オ プ テ ィ カ ル フ 口 ー の 推 定 に は 最 大 事 後 確 率 推 定 を 行 っ て お り 、 統 計 的 手 法 に 基 づ い た 動 き 推 定 が 提 案 手 法 の 特 徴 であ る 。 提 案 手 法 に よ っ て 推 定 さ れ た 動 き に 基 づ い て 画 像 信 号 強 度 を 補 正 す る こ と で 動 き の影 響 が 低 減 さ れ 、 脳 活 性 部 位 抽 出 精 度 が 向 上 さ れ た こ と を 示 し て い る 。   以 下 に 本 論 文 の 概 要 を 示 す 。

  1章 で は 、 本 研 究 の 背 景 と し てfMRIを 用 い た 脳 機 能 解 析 に お け る 課 題 と そ れ に 対 す る 従 来 の 対 策 手 法 に つ い て 概 説 し 、 本 研 究 の 位 置 付 け を 明 確 に し た 上 で 本 研 究 の 目 的お よ び 概 要 に つ い て 述 べ て い る 。

強 夫

之 誠

   

   

秀 克

本 島

本 口

山 北

山 原

授 授

授 授

教 教

教 教

査 査

査 査

主 副

副 副

(5)

  第2章では、偽活性部位の要因となるfMRI時系列画像間の被験者の動き推定および補 正手法について提案している。まず本論文で問題としている頭部の剛体、非剛体的な動き を推定するにあたり、勾配法を用いた従来のオプティカルフ口ー検出手法での問題点につ いて述べている。従来手法の問題点を明確にした上で、これらの問題点を解決した動き推 定アルゴリズムを提案している。提案手法は画像信号強度の微分値を観測量とし,その観 測誤差を一般化勾配法に織り込んだモデルを導入し、このモデルにおいて画像信号強度の 微分値を観測したもとでのオプティカルフ口ーの事後確率分布を考え、その確率を最大に する値すなわち最大事後確率推定値をそのピクセルでのオプティカルフローとして得るも のである。

  第3章では、従来手法と提案手法の推定精度について述べている。被験者のわずかな動 きをどれだけ高精度に検出できるかが、fMRI脳機能解析における動き推定手法の重要な課 題のーつである。動き(移動量と移動方向)が既知である時系列画像データに各手法を適用 することで、各手法の推定精度を検証している。動き推定値と実際の移動量との誤差を比 較することで評価し、提案手法がfMRI脳機能解析における動き推定手法に要求される推 定精度を持つことを示している。

  第4章では、fMRI脳機能画像における脳活性部位の抽出について述べている。被験者に 与えた刺激による神経活性に起因した画像信号強度変化を、被験者の生理的揺動やMRI装 置に起因したノイズに埋もれることなく観測することが必要不可欠である。このため神経 活性に起因したMRI信号を観測するのに必要な時空間分解能、神経活性を導き出す最適な 刺激周期を検討している。また熱的ノイズの画像信号強度を基にfMRI時系列画像信号強 度変化において生理的揺動のない理想値を明らかにし、これに基づいた脳活性部位の抽出 について述べている。さらにfMRI脳機能画像において被験者の生理的揺動に起因した偽 活性部位を除去するため、第2章で述べたそれぞれの動き補正手法を適用し、脳活性部位 抽出結果を示している。従来手法の適用結果と比較して、提案手法を適用した結果では、

偽活性部位が低減し、実験で対象とした機能局在と対応した部位が明瞭に抽出されている。

この結果より本論文で提案した手法では、脳活性部位抽出が従来手法に比ベ改善され、そ の抽出精度が向上したことを示している。

  最後に第5章では以上を総括し、結論として本研究の意義を述べるとともに、今後の研 究の課題や方向性などについて述べている。

  これを要するに、本論文は、fMRI脳機能解析における脳活性部位抽出の精度向上を実現 し、医用画像工学の研究分野に寄与するところ大なるものと認める。よって著者は、北海 道 大 学 博 士 ( 工 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 あ る も の と 認 め る 。

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