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経営学的手法を用いた学校組織改革の一考察

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博 士 論 文

経営学的手法を用いた学校組織改革の一考察

- 公立高校における学校組織と学校経営改革への提案 -

平成31 年1月

長崎大学大学院経済学研究科 経営意思決定専攻

佐藤 辰生

(2)

目 次

序 章 経営学的手法を用いた学校組織と学校経営改革の研究目的と方法 ・・・1

第一節 研究の背景と目的 1

第二節 学校組織と学校経営改革の必要性 2

第三節 経営学的手法を用いた学校組織と学校経営改革案 3

第四節 本論文の構成 4

第一章 学校組織マネジメント ・・・6

第一節 学校組織マネジメントのはじまり 6

第二節 学校組織マネジメントの現状と課題 9

第一項 PDCA サイクルとSWOT分析の不完全性 9

1.PDCA サイクルとは 9

2.学校における PDCAサイクルとSWOT分析 11

3.学校における PDCAサイクルとSWOT分析の不完全性 14

第二章 地方教育行政の歴史的課題と教育制度改革 ・・・18

第一節 地方自治と地方分権 18

第一項 日本国憲法による地方自治 18

第二項 地方分権と地方公共団体の行政改革 21

1.地方分権推進と教育行政の変化 21

2.地方分権一括法による地方自治法改正 25

第二節 わが国の公教育の歴史 27

第一項 近代教育のはじまり 27

第二項 日中戦争後からの教育制度とその変革 29

1.日中戦争から1950年代まで 29

2.1960年代からの教育制度改革 32

第三節 教育委員会制度改革 36

(3)

第三章 ニーズからみた高等学校の現状 ・・・39

第一節 ニーズを考慮していない高校 39

第一項 普通科高校と専門学科高校 40

第二項 定時制高校 42

第二節 ニーズを考慮している高校 46

第一項 総合学校高校 46

1.総合学科高校のはじまり 46

2.総合学科高校の課題 52

第二項 通信制高校 54

第三節 平成29年度長崎県公立高等学校進学希望状況調査結果から 56

第四章 経営学的手法による組織と経営改革 ・・・61

第一節 マーケティングとは 61

第一項 マーケティングの定義 61

第二項 民間企業におけるマーケティング 64

第二節 バランス・スコアカードとは 66

第一項 バランス・スコアカードの発展 68

第二項 バランス・スコアカードの4つの視点 72

第三項 バランス・スコアカードの戦略マップ 75

第四項 バランス・スコアカードとインタンジブルズ 76

第三節 シックス・シグマとは 78

第一項 シックス・シグマの発展 79

第二項 シックス・シグマの特長と利点 85

第三項 シックス・シグマの課題 87

(4)

第五章 経営学的手法導入による学校組織と学校経営改革 ・・・90

第一節 学校組織マネジメントの私案 90

第二節 マーケティング導入による学校組織改革 97

第一項 教育ニーズを知るためのマーケティング 98

第二項 教育ニーズに対応したセグメンテーション、 ターゲティング、ポジショニング 100

第三項 学校教育におけるマーケティング・ミックス 102

第四項 マーケティング導入における課題 103

第三節 バランス・スコアカード導入による学校組織と学校経営改革 106

第一項 バランス・スコアカード導入 107

第二項 スクール・レピュテーション導入 111

第三項 バランス・スコアカード導入の課題 116

第四節 シックス・シグマ導入による学校経営改革 120

第一項 シックス・シグマの導入 120

第二項 シックス・シグマ導入の課題 124

終 章 本論文の成果と課題 ・・・127

第一節 各章の要約 127

第二節 本論文の成果と課題 128

参考文献 132

謝 辞 142

(5)

1

序 章 経営学的手法を用いた学校組織と学校経営改革の研究目的と方法

第一節 研究の背景と目的

高校進学率は第二次世界大戦直後から上昇し、1974年(昭和49年)には90%を超え、2017 年(平成29年)には98.8%に達して1、高校教育の「準義務教育化」が進んでいる。この要 因としては、文部省が高等学校の入学選抜に関して、1966年(昭和41年)の初等中等教育 局長通達2の「高等学校の入学者の選抜は・・(中略)・・その教育を受けるに足る資質と能 力を判定して行うものとする。心身に異常があり修学に堪えないと認められる者その他高 等学校の教育課程を履修できる見込みのない者をも入学させることは適当でない。」という

「適格者主義な考え方」から、1984年(昭和59年)7月20日の初等中等教育局長通知3の「公 立高等学校の入学選抜は、・・(中略)・・各高等学校、学科等の特色に配慮しつつ、その教 育を受けるに足る能力・適性等を判断して行うものとする。」と変更したことや、1999年

(平成11年)の中央教育審議会答申4においても、同様な提言がなされたことも一因である。

しかしながら、小・中学校の学習を十分に習得できていない生徒が高校に入学したため に、いわゆる「学び直し」を実施している学校5が増加し、現在の高校教育は、かつてのよ うな教育ができない状況である。

また、わが国は少子高齢社会が進み、特に離島等の過疎化が著しい地域では公立の小・

中・高校の統廃合等が行われ、その一方で、大学等進学者の増加、生徒の多様化、不登校 生徒の増加等がみられる。

このような状況において、これからの公立学校は、生徒とその保護者、地域住民等のニ ーズに対応した学校組織や学校経営が求められているが、私立高校のように柔軟な学校経 営を行うことが難しい。

以上のことから、本論文の目的は、公立高校を設置する地方公共団体の地方教育行政の 変化、公立高校における学校組織マネジメントの経営学的手法、各高校の学校数や生徒数 等の推移を確認したうえで、新たな経営学的手法を用いた学校組織マネジメントの提案し、

1文部科学省学校基本調査.

2文部省初等中等教育局長通達「公立高等学校の入学者選抜について」昭和41718日.

3文部省初等中等教育局長通知「公立高等学校の入学者選抜について」昭和59720日.

4中央教育審議会「初等中等教育と高等教育との接続の改善について(答申)」平成111216日.

5教育関係の企業が「学び直し」用のテキストやテストを作成・販売していることから、この事の重大さ を理解しなければならない。

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2

学校組織と学校経営の改革の可能性を検証することである。

第二節 学校組織と学校経営改革の必要性

1980年代中頃以降、先進諸国では、公的部門の経費節減と効率化・合理化を図るために、

従来型のシステムに市場原理と競争原理を導入したニュー・パブリック・マネジメント

(New Public Management:以下、NPM)理論6に基づく改革が推進された。日本におい ても、国・地方公共団体は、常に合理的で効率的、かつ、機能的な行政組織改革が求めら れ、行政運営に関して住民に対するアカウンタビリティの周知徹底、行政情報の公開を義 務付けられた。

行政機関におけるアカウンタビリティに関して、佐藤(2005)は、行政活動の結果及び 財政状況等の行政情報を正確かつ迅速に市民に公表することで、行政運営に関する信任を 得ることができ、行政機関は、民間企業的なマネジメント理論をアレンジし、市民に効率 的かつ効果的な行政サービスを提供すると述べている7

2001年(平成13年)、日本政府は、「聖域なき構造改革」のための経済財政諮問会議を 設置し、いわゆる『骨太の方針』8を、閣議決定を経て 2007年(平成 9年)まで毎年基本 方針を打ち出し、行政改革に関して NPM の導入・実施、地方公共団体の行政運営の効率 化を図る観点から、外部委員が参画する行政評価制度の導入、行政コストや公的部門の財 政状況を明確にする企業会計方式の導入等、民間企業経営の手法を行政運営へ導入する最 終意見書をだした。

地方公共団体のNPM導入に関して、岡(2012)は、基本的に自治体の自発的な取組み で、業績測定や成果志向という点で行政評価が取り組まれ、民間企業の経営管理手法のバ ランス・スコアカード、活動基準原価計算(Activity Based Costing)のほか、日本経営 品質賞やISO9001等、独自に取り組む地方公共団体もあると述べている9

公立学校への NPM 導入に関して、遠藤(2015)は、NPM の発想と手法が一つの潮流

6NPMとは、地方公共団体において民間企業における経営手法を導入し、組織の効率化・活性化を はかるものであり、岡(2012)は、「NPMとは、1980年代半ば以降、イギリス、ニュージーランド等 のアングロサクソン諸国を中心に、民間企業における経営理念、経営手法、成功事例を可能な限りパブ リック・セクターに適用して、パブリック・セクターの効率化・活性化をはかるという、革新的な行政 マネジメント論である」と述べている。岡(2012)3ページ.

7佐藤(200553ページ.

8正式名称は、政策の基本方針『今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針』

9岡(20123ページ.

(7)

3

として普及しつつあり、学校選択制の導入、民間人の学校長起用、学校給食の民間委託、

賃金と連動した人事考課制度の導入等、既に具体化され、文科省等により推奨された「学 校の組織マネジメント」や「学校経営のマネジメント化」という発想や手法も、こうした 一連の政策動向の中に位置付けられていることも認識しておく必要があると述べている10

このように公立学校においても、自校の特性を活かした特色ある学校づくりや、入学者 に対応した学科改変や教育課程等の策定、都市部での生徒獲得等の必要性に迫られ、NPM の手法を用いる等マネジメントの必要性が認識されたが、実際の教育現場ではほとんど実 施されてはいないのが現状である。

このような状況の中、2015年(平成27年)の「地方教育行政の組織及び運営に関する 法律」(以下、地方教育行政法)の改正に伴い、新しい地方教育行政がスタートし、教育委 員会制度や教育に対して都道府県の首長の権限の強化が図られた。都道府県の首長、教育 委員会、公立高校の校長は、ステークホルダーである生徒や保護者、学校周辺の地域住民、

小・中学校、大学、企業等の学校に対するニーズの調査・分析を求められている。

しかし、学校組織と学校経営の改革を行うためには、既存の学校組織マネジメント手法 では不可能で、そのためには新たな経営学的手法を導入することが、必要であると考える ようになった。

第三節 経営学的手法を用いた学校組織と学校経営改革私案

本論文では、学校組織改革のために、新たな経営学的経営手法導入として、「マーケティ ング」、「バランス・スコアカード」、「シックス・シグマ」をあげている。

これらの経営手法を学校組織に導入方法としては、第一に、公立高校のステークホルダ ーである、生徒とその保護者、納税者、学校の地域住民・企業、生徒の進学・就職先であ る企業や大学等のニーズを把握するために、都道府県において新設の部署を設け、都道府 県職員が「マーケティング」を実施し、その結果を分析する。各都道府県の首長は「教育 大綱」の策定をはじめとする教育行政の条例等の策定を命じる。

第二に、都道府県は、策定した「教育大綱」に基づき、「マーケティング」の分析結果を 考慮して「バランス・スコアカード」により全県下の学校組織改革への戦略策定を行なう。

都道府県教育委員会は、都道府県と連携をとり、公立高校の校長・副校長等の管理職に対

10遠藤(2015315ページ.

(8)

4

して、既存のSWOT分析(SWOT analysis)、PDCAサイクル(PDCA cycle ,plan do check

act cycle)の活用と新たに「バランス・スコアカード」を導入させ、各高校に適切なミッ

ションを決定し、学校経営戦略を策定させる。

第三に、各学校の全教職員は管理職が決定したミッションや学校経営戦略に従い、自己 管理目標等を定め、それに基づきPDCAサイクルに加えて、校務分掌や学年等で「シック ス・シグマ」を導入してそれぞれの課題等を改善する。

以上のように、本論文では、公立高校へ新たな経営学的手法の導入することで、ニーズ に対応した学校組織改革や学校経営改革が可能であることを提案する。

第四節 本論文の構成

本論文は、第一章から第三章までを第一部、第四章と第五章を第二部とする二部構成と なっている。

第一部第一章では、本論のテーマである学校組織マネジメントの現状の確認を行う。ま た、学校経営マネジメントや経営学的手法の導入に関して言及する。第二章及び第三章で は、第一章を踏まえて、歴史や調査結果から学校教育の変化を検証し、現在の高校の状況 に言及する。

第二部第四章において、企業におけるマーケティング、バランス・スコアカード、シッ クス・シグマについて、それぞれの成り立ちとその手法の役割や発展を確認する。第五章 において、第四章の内容を前提として、公立高校にマーケティング、バランス・スコアカ ード、シックス・シグマを導入することで、学校組織マネジメントが補強され、状況に応 じた適切な改革が可能となることを検証する。

最後に、これまで論述してきたことを総括し、本論文の成果と課題を述べる。

(9)

5 本論文の構成は以下のとおりである。

序 章

学校組織マネジメント

〈課 題〉 公立高校における学校組織マネジメント改革 〈研究目的〉 現在の学校組織マネジメントの検討

新たな学校組織マネジメントの提案

第一章 学校組織マネジメント

学校組織の形成過程と高校の現状確認

第二章

地方 教育 行政 の歴 史的 課題 と 教育 制度 改革

地方自治と地方分権 わが国の公教育の歴史

第三章

ニー ズか らみ た高 等学 校の 現状 ニーズの考慮をしていない高校

ニーズの考慮をしている高校

経営学的手法の導入による学校組織と学校経営改革

第四章 経営学的手法による組織・経営改革

第五章 経営学的手法導入による学校組織・学校経営改革 マーケティング

バランス・スコアカードによる戦略策定

シックス・シグマによる改善

(10)

6

第一章 学校組織マネジメント

経営管理論に関して、吉永(1989)は、企業の経営管理問題に適用可能だけではなく、

各種の組織体、例えば、企業、学校、病院、行政、家庭、教会等の組織体のマネジメント にも適用可能であると述べている11

また、経営管理論は、各種の組織体の合理的で科学的な経営管理(マネジメント)に関 する一般理論を探求し、解明することを課題としている学問であり、その組織体のマネジ ャーや管理者に対して経営管理活動の実践上の指針を提供することを重要課題として持つ 実践的経営学として特質づけられる。したがって、経営管理学の諸理論は企業組織だけで はなく、その他の人間活動の諸領域集団の研究に対しても適用可能な一般理論(general

theory)であり、一般原理(general principle)を提供可能であると述べている12(吉永

1989)。

これらのことは、現在の学校教育における学校組織マネジメントや学校経営13にも適用 可能であると考えられる。

第一節 学校組織マネジメントのはじまり

第二次世界大戦後のわが国における教育改革14は、1947年(昭和 22年)に「教育基本 法」と、「学校教育法」、翌1948年(昭和23年)に「教育委員会法」の施行により、開始

11吉永(1989)106ページ.

12吉永(199378ページ.

13学校経営とは、組織としての学校をうまく機能させる営み、うまく機能する組織をつくりあげる営み のことである。そのため、校長は学校のミッションとビジョンを含めた学校経営方針を策定し、「目指 す学校」を具現化するため、教職員・予算・設備・情報・その他の経営資源を活用し、最も有効な手段 により学校運営を行う。

このことは、教育の質の維持・向上を目指す経営行為でもあり、その手法として、PDCAサイクルが 教育活動のあらゆる場面で継続的に学校経営の改善・充実を図るプロセスとして用いられている。その 他学校経営に用いられる経営学的手法としてSWOT分析がある。

学校経営について、佐古、他(2011)は、組織としての学校をうまく機能させる営み、

うまく機能する組織をつくりあげる営みのことと述べている。

また、小島、他(2016)は「教育事業経営体である学校において、学校づくりのビジョン

と戦略を設定し、その実現のために学校経営を策定して、ヒト、モノ、カネ、情報、学校力などの経営 資源を調達、運用して、それぞれの資源を機能させる組織をつくり、組織を通して意思決定を図り目標 を達成しようとする計画的で持続的な行為である。学校づくりは、つまるところ学校力の構築とその質 的向上を目指す経営行為であり、そのことにより社会からの信頼を得ることができるとともに、学校の レーゾンデートルが認知される。その成否は学校づくりのリーダーシップに多く依存している。」と述 べている。

14戦後における教育改革の中で、「教育行政の地方分権」、「地方教育行政の一般行政からの相対的自主 性」、「教育委員の公選制」が地方教育行政改革の三つの原則であった。

(11)

7 された15

例えば、「教育委員会法」の施行により、教育委員会は、第二次世界大戦前・戦中の中央 統制を排除し、「教育の地方自治」を実現するために公選制教育委員会制度16を導入した。

これらの法律により、戦前と比較して学校に教育の自治権と経営権が大幅に認められ、専 門性と民主化という観点から学校経営の組織構造や意思決定システムが構想された。

しかし、1956年(昭和31年)に地方教育行政法が施行され、「教育委員会法」が廃止と なり、教育委員は首長に任命されるとともに、教育委員会の予算・条例原案の作成・送付 権の廃止等が定められ、これらにより、教育委員会はそれまでの自主性や自律性を失った。

このことに関して、平原(2002)は、講和条約を経た頃になると、集権的・官治的・官僚 的行政への回帰が始まり、中央集権支配による画一的・管理的教育行政体制が形成された と述べている17

しかも、地方公共団体の首長権限が強化され、再び中央集権的教育行政と行政主導によ る学校経営が整備されて、文部省を頂点とした都道府県と市町村の教育委員会という縦の 行政系統の構築、各学校に対する教育委員会の統制強化等により、学校の自主性や自律性 も喪失して、学校は「管理された学校」となった。

しかし、1980年代における不登校・中途退学者の増加等の教育的問題、行政改革におけ る地方分権等により、学校は「管理された学校」から「学校の自主性・自律性」と「学校 運営への住民の参画」を基調とする自律的学校経営が求められ、1995年(平成8年)に は「地方分権推進法」が制定され、「地方分権推進委員会」が設置された。

遠藤(2015)は、1998年(平成10年)9月の中央教育審議会の「今後の地方教育行政 の在り方について」の答申18が、学校教育改革の方向性の文脈で「マネジメント」の概念 を使用した最初の答申であると述べている19。そして、「学校の自主性・自律性の確立」に 向けた具体的方策の一つとして、校長、教頭の学校運営に関する資質能力養成の観点から、

企業経営や組織体において経営者に求められる専門知識や教養を身に付けるとともに、学

15その後、1949年(昭和24年)に「社会教育法」、1949年(昭和24年)に「私立学校法」等の新教育 制度の組織と運営を定めた教育関係法規が制定された。

16教育委員会法(昭和23年法律第170号)

第七条 都道府県委員会は七人の委員で、地方委員会は五人の委員で、これを組織する。

2第三項に規定する委員を除く委員は、日本国民たる地方公共団体の住民が、公職選挙法(昭和二 十五年法律第百号)の定めるところにより、これを選挙する。

3委員のうち一人は、当該地方公共団体の議会の議員のうちから、議会において、これを選挙する。

17平原(200257ページ.

18中央教育審議会「今後の地方教育行政の在り方について」答申 平成10921日.

19遠藤(2015315ページ.

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校事務を含む総合的なマネジメント能力を高められるように研修の内容・方法を見直すこ とが指摘されたと述べている20

また、当時の小渕首相によって、2000年(平成 12年)に設置された私的諮問機 関である教育改革国民会議は、同年に「教育改革国民会議報告-教育を変える17の提案

-」を示し21、そのなかで、学校に組織マネジメントの発想を導入し、校長による独自性 とリーダーシップの発揮の可能性を求め、文部科学省は、学校の自主性・自律性の確立、

職員会議の位置付けの明確化、学校評議員制度の導入等を内容とする学校教育法施行規則 の改正に伴う省令の施行について通知22を行った。

これらの答申や提言を受け、2002年(平成14年)に、文科省は「マネジメント研修カ リキュラム等開発会議」を発足させ、研修会のモデル・カリキュラムづくりに着手、翌2003 年(平成 15年)5月には最初のモデル・カリキュラム用の冊子を都道府県教育委員会に送 付し、同年9月に最初の中央研修会を実施した23

このことは、学校を教育事業の経営体とし、21 世紀型自律的学校経営の構築のために、

校長はリーダーシップを発揮して、学校経営を行うことを意味する24。すなわち、全学校 活動の全体的・総合的マネジメントを行い、学校づくりのビジョンを策定し、そのビジョ ン達成のために戦略を図る等、学校経営に関する最終意思決定の責任者としての役割を求 められたのである。また、学校運営に関しても、これまでの教職員中心の学校運営から、

保護者、卒業生、地域住民等の参加を義務付けられた。

20遠藤(2015)315ページ.

21教育改革国民会議「教育改革国民会議報告-教育を変える17の提言-」平成 121222日.

4「新しい時代に新しい学校づくりを」の「学校や教育委員会に組織マネジメントの発想を 取り入れる」

「学校運営を改善するためには、現行体制のまま校長の権限を強くしても大きな効果は期待できな い。学校に組織マネジメントの発想を導入し、校長が独自性とリーダーシップを発揮できるように する。組織マネジメントが必要なのは、学校だけでなく、教育行政機関も同様である。行政全体と して、情報を開示し、組織マネジメントの発想を持つべきである。また、教育行政機関は、多様化 した社会が求める学校の実現に向けた適切な支援を提供する体制をとらなくてはならない。」

22文部科学省 「学校教育法施行規則等の一部を改正する省令の施行について(通知)」

平成12121日.

23遠藤(2015)315~316ページ.

24児童・生徒の成長や発達を促す手法や理論を追求する学問である学校経営学は、学校経営を効率的に 合理的に行うために、企業経営での組織論やリーダーシップ論等の理論が用いられている。

くわえて、佐藤、他(2012)は、「学校経営学は、学校・教室・コミュニティにおける「学ぶことと 教えること」(learning and teaching)を創造するために、組織マネジメントの方法や理論を探求する 学問である。まず、「学ぶことと教えること」に関する理念を特定し、そこから学校経営の理論と実践、

組織論、教師の専門性を論究することが、学校経営学の確立の道である。」とし、「学校の組織と運営だ けでなく、校内研修〈授業研究〉の運営、学年経営、学級経営等もカバーしている。さらに、近接領域 である教育行政学・教育方法学・教育社会学等の研究者と交流し、新しい概念や研究動向を適宜、直接 ないし間接的に活用することも学校経営の発展にとって重要であろう。」と述べている。佐藤、他(2012 63ページ.

このように、学校経営学を広範囲な学際的学問であると捉えている。

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9

以上のことから、学校教育における学校経営とは、学校に関係する全ての行為のことで あり、21世紀型自律的学校経営のために、学校の管理職である校長は、学校経営を行う際 にはリーダーシップを発揮して、学校のビジョンを明確にして学校経営を行うことを求め られている。

ただし、学校経営と学校管理の関係において、織田(2005)は、学校経営を特定の学校 の創意機能とし、学校の個性や特性を出すための工夫を必要とし、学校教育法第28条第 3 項25を根拠に学校管理の延長として学校内の経営業務も司っていると考えられるが、学校 には民間企業と異なって組織を量的・経済的に拡大発展させる志向はなく、既存の学校組 織の維持及び質的向上が中心的機能となり、その維持発展のために校長の合理的な運営・

監督が必要になると述べている26。すなわち、学校教育は民間企業との違いを明確にし、

管理職が学校運営を行い、学校組織の維持・向上を行わなければならないのである。

第二節 学校組織マネジメントの現状と課題

第一項 PDCAサイクルと SWOT分析の不完全性

1.PDCAサイクルとは

現在、学校組織マネジメントで用いられる主な経営学的手法としては、PDCA サイクル

(以下 PDCA)があげられる。

PDCAは、本来、シューハート27(Walter Andrew Shewhart)と、デミング(William

Edwards Deming)により考案された品質管理手法である。

19 世紀から 20 世紀初期のアメリカにおける品質管理手法は、生産工程の「仕様」「生産」

「検査」の 3 段階工程を直線的な流れとしてとらえ、生産した「物」だけを品質管理の検 査対象とする考え方であった28。それ故、当時の製造業における品質管理は全品検査であ り、基準を満たさない製品を一つ一つ排除するプロセスが一般的であった。

25学校教育法第 28条第3項「校長は校務をつかさどり、所属職員を監督する」

26織田(200552ページ.

27シューハートは、品質管理に統計的手法を導入したことから、「統計的品質管理の父」とも呼ばれ、

製造工程の管理中心へと品質管理の概念を大きく変えた人物で、「管理チャート」の創始者でもあ り、この品質管理は統計的品質管理へと発展した。渡邊(2012)393ページ.

28山本(2012355ページ.

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10

しかし、第一次世界大戦当時のアメリカでは、戦勝国として戦後の繁栄を謳歌し、アメ リカ人は大量生産の恩恵を受けていた29。生活水準の向上に伴い、消費者は製品の品質に 関心を持つようになり、製品の品質管理にまで遡及していった。

図1 シューハートの 3段階環状経路30

このような状況の中で、ベル研究所のシューハートは、図1のように、品質管理の3段 階を1本の直線に沿って進むのではなく、一つの円に沿ってすすんでゆくべきものとし31、 製品の品質に影響を与える要因に関して、管理できない「特殊要因」と、管理できる「一 般要因」に分け、管理できる「一般要因」を制御することで品質の統計的な分布を一定の 許容範囲内に収めるという考え方を提唱し、品質の維持を可能にした。

デミング32は、日本との関係も深く、GHQの要請で日本の国勢調査計画立案のため日本 政府の国勢調査コンサルタントとして来日し、日本の経済界との交流も深め、統計的品質 管理手法を日本の企業経営者に講義を行った33。その際開かれたセミナーの講義録は、日 本で邦訳され出版されている34

デミングは、シューハートから学び、製造業や経営に統計的手法を導入することに興味 を持ち、1950年代には、生産プロセス(業務プロセス)の中で改良や改善を必要とする部 分を特定・変更できるようなプロセスを測定・分析し、それを継続的に行うための改善プ ロセスが継続的なフィードバック・ループとなるように提案した。それゆえこのサイクル

29Praveen Gupta(2006),”Beyond PDCA A New Process management Model”, QUALITY PROGRESS,July 2006 ,p46.

30シューハート著、坂元監訳(1960)73ページ.

31シューハート著、坂元監訳(1960)73ページ.

32デミングは、アメリカの統計学者であり、「品質管理の父」といわれた著述家、企業コンサルタント である。ワイオミング大学で電気工学を、コロラド大学ボルダー校で数理物理学と数学の修士号を取得、

イェール大学で数理物理学と数学の博士号を取得後、アメリカ農務省に勤務後、統計アドバイザーとし てアメリカ国勢調査局に勤務し、ニューヨーク大学経営管理学大学院教授に就任した。

33経営者や管理者向けの「品質の統計的管理8日間コース」を皮切りに2カ月間で数々の講義を開催し た。この講義には主要な製造業のトップが参加し、その後の日本におけるQCサークル活動の源流とな り、日本の製造業が高い品質を武器に大きく成長していったのである。デミング博士はこの時の講演料 や速記録の印税の受け取りを辞退したため、それを原資としてデミング賞が創設された。1960年には、

日本産業発展への貢献に対して、日本政府から勲二等瑞宝章を授与された。

34デミング著、小柳訳(1952『デミング博士講義録-統計的品質管理の基礎理論と応用』日本科学技 術連盟

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11

をデミングサイクルと呼んだが、晩年にはPDSAサイクルという名称を使うようになった。

PDSAサイクルは、P(Plan):計画、D(Do):実行、S(Study):評価、A(Action):

改善をくり返すことからそう呼ばれた。現在ではこのサイクルを「PDCAサイクル」と呼 ぶが、デミングは、評価の重要性を強調してC(Check)をSとし、品質管理や品質改善の 考え方として提唱していた。

2.学校におけるPDCAサイクルとSWOT分析

現在、学校では学校経営を行う際に、前述した2002年(平成14年)に発足した「マネ ジメント研修カリキュラム等開発会議」により作成された研修のカリキュラム及びテキス ト等を参考に、PDCAとSWOT分析を用いている。

このカリキュラム及びテキストでは、学校という組織の特性を鑑みて、学校におけるマ ネジメントは、ミッションを重視することからミッション・マネジメントというマネジメ ントの考え方に重きを置いている35。その理由は、学校が組織的に生徒に教育を行うとい う使命は社会的に認められ、付託されたものであり、その使命であるミッションがマネジ メントを構築・構成するという考え方に基づくことから、学校組織のミッション・マネジ メントは、学校組織の存在意義、その使命等の課題を基本として、マネジメントの在り方 を追求するからである36

学校組織マネジメントでは、教職員が「自校のミッションの探索」を行い、学校におけ る組織目標の設定や、短・中・長期的な計画の策定、重点や方針の確認、さらに個々のプ ロジェクト企画に至るまで体系的な構築を行う。

「学校組織マネジメント研修テキスト」において、学校経営ビジョン全体の構成を次のよ うに示している。

①ミッション(存在意義・使命) ②重点事項 ③行動規範 ④組織構造

⑤運営のしくみ ⑥リーダー論 ⑦能力・資源の開発

これらは学校経営の基点であり、ここでのミッションとは、教職員が現任校のミッショ ンを探索するという意味で、生徒や保護者、地域住民を前提としたミッションの探索であ り、これにより教職員は現任校の現状を正確に把握し、学校の課題や問題に対し適切な対

35木岡(2007)25ページ.

36木岡(200725ページ.

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12 応をとり、学校経営を計画・策定を行う。

図2に示すように、管理職である校長・副校長、教頭はこのミッションの探索を行い、

学校の教育目標を策定する。それに基づき学校の外部・内部環境をSWOT分析により判断 し、具体的な学校経営計画を計り、実施し評価するPDCAを行う。

図2 PDCAサイ クル

「学 校組 織マ ネジ メン ト研 修―これ から の校 長・ 教頭 のた めに―(モデ ル・ カリ キュ ラム)」 より 引用 SWOT分析とは、マーケティング戦略の「マーケティング環境の分析」として外部環境・

内部資源・消費者行動の分析が必要不可欠のため、行われる分析方法である。

学校経営の場合、図3に示すように、外部環境である「機会」(opportunities)・「脅威」

(threats)と、内部環境である「強み」(strengths)・「弱み」(weaknesses)の 4つのカテゴ

リーに分け、学校を取り巻く環境分析と対策を検討するために分析することで、阻害要因 の解決手法となる37

37外部環境の「機会」とは、協力的な保護者、教育熱心な保護者、中高一貫教育などがあげられる。「 脅 威」とは、地域の生徒数の減少、高齢化、保守的な考え方などがあげられる。

一方、内部環境の「強み」とは、生徒の成績が良い、積極的な生徒が多い、進学・就職に関す るデー タ蓄積があるなどがあげられる。「弱み」とは、強みの逆であり、その他に教師の多忙感、設備の老朽 化などがあげられる。

(17)

13 図3 SWOT分析

「学 校組 織マ ネジ メン ト研 修―これ から の校 長・ 教頭 のた めに―(モデ ル・ カリ キュ ラム)」 より 引用

Planでは、学校経営計画を達成させるために人材、物、財、情報等の資源を活用しなが ら、教育目標、ミッション、学校経営ビジョン、年度重点目標、具体的年度計画・評価計 画を行うとなっており、学校の現状を知るためにSWOT分析を行い、教育目標、ミッショ ン等を計画し、中期学校経営計画の立案や今年度の重点課題の確定を行い、Doでは活動 の実施し、Checkでは活動を評価し、Actionでは次期への活動を行うという、PDCAの活 用を求めている。

しかしながら、長谷川(2007)は、環境分析のためのSWOT分析やPDCAの組織マネジ メント・サイクル等を、「従前型学校経営」の中で機能させようとしても現実的には無理 があり、従来においても同様な実態分析や、PDSサイクル(plan:計画 Do:命令 See:

統制)で経営を機能させてきたが、それらはいずれも形式化・形骸化し、経営改善にまで 結びつかなかったと述べている38。また、「自律型学校経営」には、それに相応する経営 原則や組織原理が必要で、それとの有機的結合を図ってこそ、この組織マネジメント・サ イクルが有効に機能できると述べ、現在の学校経営においてSWOT分析やPDCAが機能せ

38長谷川(2007123ページ.

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14

ず形式化・形骸化していること、「自律型学校経営」には経営原則や組織原理が必要であ ることを指摘している39

また、公立学校において、管理職が転勤した場合、転任校への着任後僅か数日間での学 校経営方針等の策定は困難である。また、一般の教職員も同様であり、くわえて、経営学 を学んだ経験や経営に関する知識がない場合、学校組織マネジメントの理解は難しい。

3.学校におけるPDCAサイクルとSWOT分析の不完全性

現在、PDCA は、品質管理だけではなく、経営管理、経営戦略、リスク管理等にも適用 され、個人の活動、一般企業、非営利組織、国家の政策運営等で用いられている。しかし、

平井、他(2009)は、PDCAには実際に社会的に誤解されている部分と限界が存在すると 述べている40

「学校経営計画」と「学校評価」のPDCAに関して、佐藤、他(2012)は、第一に、

PDCAによる学校経営計画が不明確で、日本の学校経営計画は抽象的な文言を示すにとど まり、数値目標を示したとしても、短期的に達成可能な低い数値目標、すなわち安易な数 値目標を設定することが多いこと41、第二に、PDCAのCheck、つまり評価のあり方で、

教育実践の改善に貢献する学校評価が日本では極めて少ないこと、の二つの問題点を挙げ ている42

日本高等学校教職員組合は、学校教育における PDCAが多くの学校で機能不全になって いる背景として、学校現場の実態との乖離を挙げ、Plan・Do・Checkに関しては各学校の 創意工夫で対応は可能でも、Checkを検証し Actionをする時期が年度後半の学校行事や 進路指導等繁忙な時期と重なり十分な検討時間が確保できない、物理的に困難な側面があ るという認識に立つべきとして、PDCAを教育現場に導入するには、教職員の多忙を解決 しないと難しいと述べている43。また、2013年(平成 25年)の中央教育審議会第2期教

39長谷川(2007)123ページ.

40平井、他(2009)56~57ページ.

411の問題点として、確かに校長による学校経営の計画が具体的に述べられることは少なく、抽象的 な文言で書かれることが多い。それはその学校に勤務する教職員が一年間の自己目標を決め、目標管理 シートを作成する場合の目標となるために、抽象的な文言の方が目標設定をしやすく、それぞれの教師 が学年・分掌・部活動などの目標を定めやすくできる利点も考慮しなければならない。

42佐藤、他(2012)76ページ.

43平成 23216 中央教育審議会 14回教育振興基本計画部会配付資料 日高教意見等

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育振興基本計画について(答申)においても PDCAについて反省点が指摘されている44。 須藤(2018)は、民間出身の高校校長が「PDCAサイクル・学校評価」のアンケートにお いて、その疑問点や改善の必要を感じていると考えられると述べており45、私立高校にお いても岩崎(2008)もアンケート調査の分析結果から私立高校の学校評価において制度的 にほとんど構築されていない印象を持ったと述べている46

学校教育におけるPDCAの問題点としては、Planの時の情報収集の不徹底と情報不足・

情報分析力の不足等により適切な計画が立案できていないこと、SWOT分析の問題点とし ては、学校の外部環境と学校の内部環境に関する情報不足であり、根本的には経営学的思 考力不足であると筆者は考える。

学校の存在目的や存在意義は、学校所在地の地域により異なり、特に公立高校では、学 校所在地の地域性、主要産業、各家庭の経済状況等により、進路等に対する考え方が大き く異なる。そのため、内部環境の分析と比較して外部環境の情報収集・分析は必要不可欠 である。高校は、普通科高校以外に、工業科・商業科・水産科等の専門学科高校、総合学 科高校等があり、その中には、進学校、就職希望が多い学校、教育困難校等が、また、離 島等の人口が少ない地域では、高校一校のみで進学・就職から、資格取得等の対応を求め られるからである。

小・中学校の児童・生徒とその保護者が将来を見据えて、どの高校の、どの学科で、部 活動を含めて何を学びたいのか、卒業後はどうするのか、等の情報収集とその分析も必要 である。このためには、各学校はマーケティングを行うべきであるが、それには専門知識 や経験によるスキル等も必要であり、企業就職未経験者が多い公立学校教職員が可能か否 かは非常に疑問である。そのためにも、専門知識、ノウハウや技術を有する人材またはコ ンサルタント企業の協力が必要となる。もし、これらのことが実現可能ならば、各学校と も適切な学校目標が建てられ、地域のニーズに合う学校経営も可能となる。

44平成25425日 中央教育審議会 第2期教育振興基本計画について(答申)

2)第1期計画の総括と今後の方向性

(教育課題が依然として指摘される要因の例)

「どのような成果を目指すのか」「どのような力の修得を目指すのか」といった明確な目標が設定さ れ、その取組の成果について、データに基づく客観的な検証を行い、そこで明らかになった課題等を フィードバックし、新たな取組に反映させる検証改善サイクル(PDCAサイクルが、教育行政、学校、

学習者等の各レベルにおいて、必ずしも十分に機能していなかったこと)

と述べ、PDCAサイクルが機能していなかったことに対して改善が不可欠であるとしている。

45須藤(2018)51ページ.

46岩崎(2008123ページ.

公立学校においても、PDCAサイクルの形式化、機能不全の発生が指摘されている事例があると述べ ている。岩崎(2008123ページ.

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つまり、PDCAのPlanにおいては、情報収集(data collection)・分析(analyses)、マ ーケティング(marketing)、スキル(skill)が必要となると考えられる。

また、先ほど述べたように、文部科学省は、各学校の管理職に対して学校教育目標を定 めさせ、SWOT分析を求めているが、管理職が自らできる分析は限られ、学校経営におけ るPDCAの活用に関しても問題点が指摘されている。

なぜなら、学校教育では生徒一人ひとりの生活環境や能力等を考慮し、その個人に合わ せた指導をすべきであること、学校は4月から翌年3月までを基準とした一年周期の年度 により行事等が行われ、Check、Actionまで到達することなく PDCAが未完成に終わるこ とが多い等、人を育て教育することを目的とする学校教育の特殊性がPDCAの活用の大き な障害となっている。

しかも、高校の学校経営に関しては、小学生・中学生の児童・生徒やその保護者が抱い ている高校への要望等を正確に把握することが不可欠となるが、各高校において要望等を 調査・分析を行うことは教職員の多忙さや分析を行うための専門的知識の有無等から考え ただけでも難しく、また可能だとしても学校の統廃合、学科改編、教職員人事、財源等に ついて、一高校だけでは対応不可能である。

そこで、生涯学習や地域住民の教育に対する要望、学校の有効活用等を考慮し、都道府 県による継続的かつ広域的な学校教育に対するニーズの調査及び分析と、その分析に基づ いた組織改革や学校改革を行うのが効率的である。そのため、調査及び分析を行う専門の 部署を都道府県の教育委員会に設置し、調査・分析に関する知識や技術を有する専従職員 を従事させることで、学校組織と学校経営の改革が可能となる。

しかしながら、都道府県の教育委員会の学校改革に関する部署の人員は少なく、充分な 調査・分析や、それに基づく組織改革・学校改革は不可能である。しかも、教育委員会に は議会へ予算執行等の財政に関する権限や条例提出権等の権限はなく、都道府県の首長の 意向に依拠せざるを得ない状況にある等、教育委員会の教育行政の「二元化の側面」や、

教育予算や行使、条例制定に関する責任の所在の不明確さ等の問題を抱えている47。 そこで、都道府県において学校教育に関する調査・分析を行い、都道府県・市町村の教 育委員会やそれぞれの議会にその分析結果や必要な情報を提供することで、今まで教育委 員会が成し得なかった財源の問題や条例制定等の問題が解決され、学校教育に必要な学校 組織改革や学校経営改革が可能となる。また、都道府県の首長である知事は各地域の要望

47大西(201385ページ.

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等に即した教育行政を行うことも可能となるであろう。

(22)

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第 二 章 地 方 教 育 行 政 の 歴 史 的 課 題 と 教 育 制 度 改 革

本論文は、公立高校における学校組織改革を主題としていることから、公立学校の設置 権限を有する地方公共団体に関する規定を日本国憲法の「地方自治」から確認し、戦後の 民主化、社会の変化等に伴う地方分権と、それに伴う教育制度改革を概観する。

そ の 中 で 、 中 央 集 権 的 な 教 育 制 度 か ら 地 方 分 権 に 基 づ い た 教 育 制 度 へ の 転 換 が な さ れ て い る 状 況 を 確 認 し 、 今 後 の 公 立 高 校 の 学 校 組 織 や 学 校 経 営 の あ り 方 を 考 察 す る 。

第 一 節 地 方 自 治 と 地 方 分 権

第一項 日本国憲法による地方自治

大日本帝国憲法における「地方自治」に関して、芦部、高橋(2015)は、憲法上明確な 規定がなく、全て法律により定められており、地方自治制は著しく官治的であったが、日 本国憲法においては、第 8章に「地方自治」の章を設け、憲法上の制度として厚く保障し、

一般に、地方公共団体の自然権的・固有権的な基本権の保障ではなく、地方自治という歴 史的・伝統的制度の保障(いわゆる制度的保障)と解されると述べている 1

このように、「地方自治」は、日本国憲法第 8章の第92条から第95条の規定に、憲法 上の根拠を持つが、日本国憲法制定までにはあまり問題視されることはなかった 2

そ の 一 方 で 、GHQ は、「地方自治」に対して積極的な対応をとり、「日本の統治体制の

改革」(SWNCC228)3において、「都道府 県の職 員は、できる 限り多数 を、民選 するか 、

またはその地方庁で任命すれば、内務大臣が都道府県知事の任命を行う結果としてかつて 保持していた政治権力を弱めることになるであろう。このことは同時に、地方公共団体に おける真の地方議会の代議制の発達を一段と助長することにもなるであろう。」と記載して

1芦部、高橋(2015367ページ.

2このような状況を影山(1975)は、大日本帝国憲法時代の徹底した官治行政の歴史が戦後においても 地方自治を国民自身が構想する力を抑圧してしまうほどに重圧であったと述べている。

影山(1975328ページ.

また、横田(1985)は、大日本帝国憲法の行政制度の厳しさを感じることができると述べている。

横田(1985278279ページ.

3国務・陸軍・海軍三省調整委員会が承認した日本の戦後処理の基本文書の1つである。

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いる 4。これは、大日本帝国憲法下の「地方自治」に関して、地方行政に法律上ある程度 の独立や代議制も認められていたが、現実には中央政府が地方自治体の公職の任免権を握 り、厳格な中央集権体制であったことが起因している。

日本政府は「憲法問題調査委員会」に憲法改正草案作成を付託したが、1946年(昭和 21年)2月8日にGHQに提出された憲法改正要綱(甲案)には「地方自治」に関する特 段の規定はなかった。GHQは、この松本案に対して、「地方自治について何も言っていな い。公共団体の住民に、その地方の政治問題に参与する道を開くいかなる保障の提案もな

い」(Political Reorientation of Japan,連合国軍総司令部民生局)として、民生局内の「運

営委員会」と「地方自治小委員会」において、地方自治を包含した独自の憲法草案の作成 に取り組み、2月13日にGHQの改正草案を日本政府に手渡した(大西2007)5

GHQの改正草案第 8章には、「地方自治(Local Government)」が設けられていた 6。 これを受け、日本政府は、大日本帝国憲法体制下の官治的中央集権的統治体制への反省か ら、第 86条「地方自治体の長・議員の直接公選制」、第87条「住民自身の憲章を作成す る権利」、第 88条「一地方に適用される特別法の原則的禁止」の三か条からなるGHQ案 の審議を経て、地方自治制を憲法上の保証規定としてもつ日本国憲法を制定した 7

日本国憲法第 92条は、「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨

4Reform of the Japanese Governmental SystemSWNCC228).

“9. Explicit provision in the Constitution for the guarantee of fundamental civil rights both to Japanese subjects and to all persons within Japanese jurisdiction would create a healthy condition for the development of democratic ideas and would provide foreigners in Japan with a degree of protection which they have not heretofore enjoyed. The position of a representative legislative body would be further strengthened by granting to the Diet the right to meet at will and allowing any other organ of the government only a temporary veto over legislative

measures approved by the legislative body, including amendments to the constitution. The popular election or local appointment of as many of the prefectural officials as practicable would lessen the political power formerly possessed by the Home Minister as a result of his appointment of governors of prefectures. At the same time it would further encourage the development of genuinely representative local government.”

筆者が下線を引いている。

5大西(2007175ページ.

6CHAPTER VIII Local Government

Article LXXXVI. The governors of prefectures, the mayors of cities and towns and the chief executive officers of all other subordinate bodies politic and corporate having taxing power, the members of prefectural and local legislative assemblies, and such other prefectural and local officials as the Diet may determine, shall be elected by direct popular vote within their several communities.

Article LXXXVII. The inhabitants of metropolitan areas, cities and towns shall be secure in their right to manage their property, affairs and government and to frame their own charters within such laws as the Diet may enact.

Article LXXXVIII. The Diet shall pass no local or special act applicable to a metropolitan area, city or town where a general act can be made applicable, unless it be made subject to the acceptance of a majority of the electorate of such community.

7横田(1985280281ページ.

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20

に基づいて、法律でこれを定める。」と規定しているが、その中の「地方自治の本旨」とは 日本国憲法の基本原理である「国民主権」、「基本的人権の尊重」、「平和主義」の中の前者 2つが考えられる 8。また、「地方自治の本旨に基づいて」に関しては、田中(1972)は 、 この文言自体抽象的で、意図するものが必ずしも明確ではないが、一般的には地方自治の 理念と意義に沿うことと同じと説明している 9。すなわち、地方自治を考察すると、住民 の意志に基づいて地方自治が行われるという「住民自治」と、地方が国から独立した1つ の団体と認められ、団体自らの意思と責任のもとで地方自治がなされるという自由主義 的・地方分権的な「団体自治」から成り立っていると考え 10、芦部、高橋(2015)は、地 方公共団体の廃止、地方議会を諮問機関とすることは「地方自治の本旨」に反する措置と して違憲となると述べている 11

そして、横田(1985)と伊藤(1995)は、これを具体化しているものとして、日本国憲 法第 93条から第95条をあげ、第92条の一般原則に基づき、地方自治法・地方財政法・

地方公務員法等や、警察法・消防法等も制定されたと述べている 12

日本国憲法第 93条第1項では、「地方公共団体には、法律の定めるところにより、その 議事機関として議会を設置する。」と規定し、さらに第 2項で「地方公共団体の長、その 議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が直接これを選挙 する。」と規定し、地方自治機関の民主化の実現を定めている 13

8第一に、「国民主権」を民主主義と考えれば、国より小さい地方公共団体のほうが、より「民意に基づ く政治」を実現しやすい。なぜなら、地方自治のレベルでその住民の意思を地方政治に反映させ、その 積み重ねにより国の政治が行われるというシステムのほうが国民の意志に基づく政治を実質化できるか らである。そして、国では実際に不可能な直接民主制的な制度も規模の小さい地方公共団体では可能で ある。

第二に、「基本的人権の尊重」は人権保障を意味しており、日本国憲法第11条、第13条、第97条に おいて、中央政府と同様に地方公共団体にも人権の尊重が義務づけられており、地方公共団体には国家 レベルでは対応できない、それぞれの地域や地方公共団体の実情に応じた対応と処理方法が考えられる ことから地方自治が不可欠であると考えられる。

9田中(197274ページ.

10田中(197274ページ.

11芦部、高橋(2015367ページ.

12横田(1985281282ページ.

伊藤(1995598599ページ.

13日本国憲法では地方自治の単位を「地方公共団体」としているが、「地方公共団体」とは何かを規定して いない。地方公共団体に関しては、日本国憲法の施行にあわせて1947年(昭和22年)417日に地 方自治法が公布され、以下のように規定している。

地方自治法第1条の3

1 地方公共団体は、普通地方公共団体及び特別地方公共団体とする。

2 普通地方公共団体は、都道府県及び市町村とする。

3 特別地方公共団体は、特別区、地方公共団体の組合、財産区及び地方開発事業団とする。

以上のように、地方公共団体には、都道府県・市町村の普通地方公共団体と、特別地方公共団体が存 在することがわかる。日本国憲法にいう「地方公共団体」としては、第2項の都道府県と市町村が該 当すると考えられている。しかし、特別区いわゆる東京23区は、 地 方 自 治 法 上 「 特 別 地方 公 共 団 体 」

参照

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