日本小児循環器学会雑誌 12巻6号 785〜786頁(1996年)
<Editorial Comment>
(以下は松尾浩三他:著しいdextroversionを伴ったII型総動脈幹症に対する総動脈幹壁を用いた右室・肺動脈路 再建の1例,日小循誌1996;12:714−718に対するEditorial Commentである.)
総動脈幹症の外科治療一直接吻合の勧め一
岡山大学心臓血管外科 佐野 俊二
総動脈幹症は新生児期,乳児期早期に発症し,どの様な外科的治療を行っても,死亡率の極めて高い疾患で あった.従って,多くの施設で長い間,肺動脈絞拒術などの姑息術が行われていたり2).乳児期早期の根治術の 有用性を証明したのは,1984年のEbertの発表3)に始まり,以来治療成績は急速に向上し,現在では生後2〜3 カ月以内での根治術が一般的になっている4ト6).しかし,この手術は一般的には右心室と肺動脈の間に弁付導 管を用いるため,数多くの術直後,および遠隔期の問題を投げかけてきた7} v9).新生児,乳児期早期の患児に はhomograftにしろ, heterograftにしろ,またnon−valveのものにしろ,小さなサイズの導管しか挿入でき ないことである.現在,入手可能なheterograftの弁付き導管は12mmが最小であるが,低体重児などでは12 mmの弁付導管さえ,挿入できないことがある.この事が体・肺動脈シャント術後に,弁付導管を用いた根治 術となる肺動脈閉鎖症や,肺動脈狭窄を伴う大血管転移症などに比し,乳児期早期の根治術を必要とする総動 脈幹症の手術成績の向上を妨げていた.更に,弁付導管は患児の成長に伴って,大きいサイズのものと交換す る必要が生じる.我々の経験では,12mmのheterograft弁付導管では平均27カ月で導管の交換を,14mmの 弁付導管では,平均48カ月で導管の交換を要した7).この様な問題を抱える弁付導管を使った修復に対し,
Reid1°)やBarbero−Marcial11)は弁付導管を用いない修復術を考案し良好な成績を発表した.以後この術式は homograftが使用困難な日本を中心に普及,術式の改良がなされている】2).
我々の施設でも5例の総動脈幹症全例に弁付導管を用いないこの術式を用いた.また肺動脈閉鎖症に対して も弁付き導管を用いない術式を採用しているが,いくつかの問題点も現れてきた.即ち肺動脈と右心室を直接 吻合するため肺動脈を引き下ろさなければならず,主肺動脈のない症例や短い症例では吻合に際し過度の緊張 がかかる場合があることである.
この様な症例に対し左心耳を間に置くなどの工夫がなされている11)が,左心耳が成長した場合,右室流出路 内に突出する可能性があるのではないかとの危惧もある.そのため著者らは左心耳を使用した術式は採用して いない.左心耳を使用した経験を持つ施設からの遠隔期の成績が待たれるところである.
他の方法は総動脈幹フラップを作製して主動脈後壁を作製することである.我々は更に肺動脈切開を前壁上 方にコの字型に置くことによって,主肺動脈の後壁を作製する方法も用いているが,大部分の症例ではこれら の方法で肺動脈・右心室の直接吻合が可能である.ただし,このような方法を行うためには左右肺動脈中心部 が十分大きいという条件が必要となる.いずれにしても直接吻合による過度の緊張が分岐部狭窄の原因の一つ であり,これを防止するような術式の工夫改良が必要である.
以上のような工夫を行う事により,多くの症例で弁付導管使用を防止することができるが,直接吻合による 後壁の成長の有無,それに伴う再手術の防止,延長の可能性,更には術後遠隔期における右心機能など今後弁 付導管使用例との検討が待たれるところである.
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786−(48) 日小循誌、12(6),1996
文 献
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Br Heart J 1986;56:388 390
11)Barbero−Marcial M, Riso A, Atik E、 Jatene A:Atechnique for correction of truncus arteri()sus type I and II without extracardiac conduits. J Thorac Cardi(.)vasc Surg I990;99:364 369
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