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腫瘍組織を利用したmonoclonal抗体産生による肺の浸潤性粘液性腺癌の細胞表面抗原の探索

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Academic year: 2021

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(1)

腫瘍組織を利用したmonoclonal抗体産生による肺の

浸潤性粘液性腺癌の細胞表面抗原の探索

著者

河合 瞳

発行年

2020

学位授与大学

筑波大学 (University of Tsukuba)

学位授与年度

2019

報告番号

12102甲第9541号

URL

http://hdl.handle.net/2241/00160976

(2)

-

河合 瞳

学 位 の 種 類

博士(医学)

学 位 記 番 号

博甲第 9541 号

学 位 授 与 年 月

令和 2 年 3 月 25 日

学位授与の要件

学位規則第4条第1項該当

審 査 研 究 科

学 位 論 文 題 目

人間総合科学研究科

腫瘍組織を利用した

monoclonal 抗体産生による肺の浸潤性

粘液性腺癌の細胞表面抗原の探索

筑波大学教授

博士(医学)

関根 郁夫

筑波大学講師

博士(医学) 小林 尚寛

筑波大学助教

博士(医学)

小田 ちぐさ

筑波大学助教

博士(医学) 渡邊 幸秀

論文の内容の要旨

河合 瞳氏の博士学位論文は、粘液性線癌という臨床病理学的に非常に特徴的な経気道散布を来す肺 線癌細胞の細胞膜蛋白を探索し、転移の機序を追求するもので、その要旨は以下のとおりである。 (目的) 肺線癌の 5%を占める特殊型の一つである浸潤性粘液性線癌(IMA)は、組織形態的には結腸の杯細 胞に類似した高円柱状で細胞質内に豊富な粘液を有する癌細胞が肺胞置換性に増殖し、他臓器への遠隔 転移は少ないもののしばしば経気道散布によって肺葉の他の部位に転移巣を形成する。経気道散布には 癌細胞の基底膜からの遊離、遊離後の生存と移動、転移部位への癌細胞の接着と増殖という 3 段階が必 要で、いずれも接着分子のような細胞膜蛋白が関与していると推測されるが、ヒトの腫瘍組織そのもの を用いた研究の報告がなく、機序は不明である。著者は本研究において、IMA 腫瘍細胞の細胞膜成分か ら腫瘍の経気道散布に関連する蛋白を同定し、その機序を解明を試みている。 (方法) 著者は、つくばヒト組織バイオバンクセンターにて凍結保存されていた IMA 切除標本 2 例から Mem-PER Plus Membrane Protein Extraction Kit を用いて細胞膜蛋白を抽出し、ウエスタンブロットで分画 を確認している。抽出した細胞膜蛋白50μg とアジュバント TiterMax Gold 200 μl を混合、界面活性剤を 除去し免疫原とし、8 週齢 BALB/c マウスの両側踵に合計 50 μg の初回免疫を、10 日後に追加免疫を行 っている。3 日後にマウスを安楽死後膝窩リンパ節を摘出、リンパ球を回収してマウスミエローマ細胞 SP2/0 と混合し、ポリエチレングリコールを用いて細胞融合し、HAT 選択培地で増殖してきたハイブリ ドーマコロニーを回収して 96 ウェルプレートにて培養している。著者は、免疫組織化学による 1 次ス クリーニングとして、肺腺癌(IMA、微小乳頭型腺癌、腺房型、充実型、肺胞置換型、乳頭型)および非 腫瘍性の肺組織が搭載された tissue microarray (TMA)を作製し、2 次スクリーニングには、肺、子宮、胃、 結腸、膵臓、卵巣の粘液性腺癌のホールスライドと諸臓器(胃、結腸、乳腺、肝臓、膵臓、胆管、肺、子 宮、前立腺、腎臓、膀胱、精巣、卵巣、脳、軟部組織)の非腫瘍性組織・腫瘍組織(粘液性腫瘍、非粘液 性腫瘍いずれも含む)が搭載された TMA を用いている。選択したハイブリドーマ細胞が産生する抗体の

(3)

-

2 アイソタイプも決定している。次に著者は、ハイブリドーマ細胞を BALB/c マウス腹腔内に投与し、回 収した腹水から硫安による塩析、透析、Protein G アフィニティークロマトグラフィーによる精製を経て 精製抗体を作成している。 IMA の組織と肺腺癌細胞株から抽出した蛋白を抗原とし、ハイブリドーマ培養上清と精製抗体を一次 抗体としてウエスタンブロットを行っている。精製抗体 10μg をアガロースビーズに結合させ、A549 細胞溶解物を用いて免疫沈降を行い、免疫沈降サンプルを SDS-PAGE 後に銀染色し、バンドを切り出し てトリプシン消化をした後、液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS/MS)を行っている。 LC-MS/MS の結果、フィラミン A が目的とする細胞膜蛋白候補として上がったので、著者はフィラミ ン A 市販抗体(ポリクローナル抗体)を用いてウエスタンブロット、免疫沈降、免疫組織化学を行い、 J04 精製抗体との結果を比較検討している。 (結果) 著者は、肺 IMA の細胞膜タンパクを認識するマウス単クローン抗体のハイブリドーマを計 207 個を 作成している。免疫組織化学一次スクリーニングで腫瘍細胞の細胞膜に陽性を示した 18 個のうち、腫 瘍で陽性率が高く、気管支腺等の非腫瘍性組織には陰性のクローンは 13 クローンであることを示して いる。著者はさらに二次スクリーニングで 5 クローン(E01, E04, J04, J10, L03)を選別している。J04 は諸 臓器の粘液性腺癌で 100%陽性、非粘液性腺癌では陽性率が低かく、E01 は非粘液性腺癌で陽性率が高 かった。次に著者は、ウエスタンブロットで 5 クローンとも類似したパターンを呈し、約 200kDa の部 分にバンドが検出されることを示している。さらに、免疫沈降サンプルのウエスタンブロットは、J04 精製抗体では 200kDa および 100-120kDa のバンドが検出され、E01 精製抗体では 200kDa, 100-120kDa, 80kDa のバンドが検出されることを示している。J04 の 200kDa のバンドを切り出し、LC-MS/MS 解析を 2 回したところ、1 回目は 80 個の、2 回目は 51 個の蛋白がそれぞれ同定されている。そのうち、ユニー クペプチドが 2 以上でネガティブコントロールで同定されなかった蛋白はそれぞれ 8 個、2 個であった。 著者は、それらの中からケラチンとミオシンを除き、残ったフィラミン A と Nuclear receptor corepressor 1(NCOR1)を候補細胞膜蛋白としている。 次に著者は肺腺癌細胞株 A549, PC9, Calu-3 の細胞溶解物を用いて 2 つの抗フィラミン A 抗体による ウエスタンブロットを行い、それぞれ 220 kDa より高分子量、200kDa、90-100kDa の 3 本のバンドを検 出している。さらに抗フィラミン A 抗体で免疫沈降したサンプルを用いて J04 精製抗体を 1 次抗体とし たウエスタンブロットを行い、200 kDa 付近にバントを検出している。免疫組織化学では肺線癌に対す る抗フィラミン A 抗体の陽性率 83.3%、J04 精製抗体の陽性率 38.6%、IMA に対する陽性率はそれぞれ 50.0% と 83.3%と乖離が見られている。抗 NCOR1 抗体による免疫組織化学ではほとんどすべての正常組織・ 腫瘍組織で核・細胞質いずれにも陽性像が見られたため、著者は NCOR1 についての研究を終了として いる。 (考察) 著者は、J04 精製抗体の認識する抗原としてフィラミン A を候補に上げている。抗フィラミン A 抗体 を用いた免疫沈降サンプルに対し、J04 精製抗体を用いたウエスタンブロットでは 200 kDa のバンドが 得られている。今後は J04 精製抗体を用いた免疫沈降サンプルに対し抗フィラミン A 抗体を用いたウエ スタンブロットを行い、同じ分子量(200 kDa)のバンドが得られるかどうかを確認する必要があると考 察している。肺腺癌の TMA を用いた免疫染色では抗フィラミン A 抗体の方が J04 精製抗体よりも陽性率 が高かったが、それについて著者は、市販の抗フィラミン A 抗体はポリクローナルなので、J04 精製抗 体が認識する抗原とは異なる抗原を検出している可能性があると考察している。

審査の結果の要旨

(批評) 本研究において著者は、IMA という経気道散布を起こす特殊な組織を材料にして、がん細胞の膜蛋白 を抗原とするモノクローナル抗体を作成することによってその膜蛋白を同定するという、非常に創造性 に富んだ研究を施行している。がんの転移機序はまだ詳細不明な部分が多く、本研究は今後さらなる学 術的な発展が期待される。 令和 2 年 1 月 10 日、学位論文審査委員会において、審査委員全員出席のもと論文について説明を求 め、関連事項について質疑応答を行い、最終試験を行った。その結果、審査委員全員が合格と判定した。 よって、著者は博士(医学)の学位を受けるのに十分な資格を有するものと認める。

参照

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