Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
№10:ガム咀嚼はストレスを緩和するか
Author(s)
紺野, 倫代; 武田, 友孝; 川上, 良明; 鈴木, 義弘; 河
野, 克明; 中島, 一憲; 小澤, 卓充; 石上, 惠一; 近藤,
祥弘; 酒谷, 薫
Journal
歯科学報, 114(3): 287-287
URL
http://hdl.handle.net/10130/3338
Right
目的:口臭は自分自身で感知することができないた め,たとえ口臭がなかったとしても自身の口臭に対 する不安や悩みを抱えることがある。口臭外来受診 者に対し,客観的な口臭測定データを提示し口臭を 認めない旨を説明しても,懐疑的な反応をされるこ とがある。これらの受診者は,併せて何らかの口腔 内不快症状を訴えることが少なくない。本研究では 口腔内の不快症状の有無と実際の口臭測定結果との 関連性を明らかにするため,東京歯科大学千葉病院 口臭外来の初診受診者における,各種の口腔内自覚 症状と口臭検査結果との関連性を検討した。 方法:平成21年1月から平成23年12月までの3年間 に東京歯科大学千葉病院口臭外来を初めて受診した 429名のうち,研究の趣旨を説明し同意を得た363名 (男性123名,女性240名)を対象とした(東京歯科 大学倫理委員会 第375号)。ただし,4名について はデータ不備のため研究対象から除外した。口臭外 来受診時に記入された口臭質問票のうち,口臭の自 覚と口腔内自覚症状との関連性,および受診時の口 臭検査結果との関連性について,カイ二乗検定を用 いて検討した(p<0.05)。また,各口腔内自覚症 状間の関連性について,Spearman の順位相関係数 を用いて検討した(p<0.05)。 結果および考察:対象者の約8割(294名)が口臭 を自覚していたものの,官能検査や揮発性硫化物濃 度との間に関連性は認めなかった(p>0.05)。こ のことから,「口臭の自覚」と実際の口臭の発現と の間に関連性はないことが明らかとなった。また, 「舌苔の付着」や「口腔内の変な味の自覚」は「口 臭の自覚」との間に有意な関連性を認めた(p= 0.012,p=0.016)ことから,舌苔の付着や口腔内 不快症状の自覚が口臭を意識するきっかけになる可 能性が示唆された。「口腔内乾燥感」は「口腔内の ネバネバ感」,「口腔内の変な味」,「舌苔の付着」と の間に有意な相関を認めた(p<0.05)。このこと から,口の乾きを自覚する者はいわゆる口腔内不快 症状も併せて自覚している傾向が明らかとなった。 目的:人を対象とした研究において咀嚼がストレス 緩和に有効であるとの報告は少なくない。また動物 実験でも木片咬合時の不動化ストレスにより惹起さ れる様々な反応を緩和したとする報告等もある。し かしその神経生理学的メカニズムに関しては,不明 な点が多い。そこで今回,ガム咀嚼のストレス緩和 の効果を検討するため,ストレス刺激として神経心 理学の分野で幅広く使用されている The Interna-tional Affective Digitized Sounds-2(IADS)を用 いて検討を行った。 なお,本研究は東京歯科大学倫理委員会の承認を 得ている(No.436)。 方法:6つのレスト(ブラウンノイズ:30秒)およ び5つのタスク(不快音=IADS より戦争,暴力, セックスを除き Valence 値3以下のものを選択: 30秒)からなるブロックデザインを刺激提示ソフト ウェア上で作製し実験に供した。測定評価項目とし ては,脳波(α 波),前頭前野のヘモグロビン酸素 化状態,心拍数,感情評価とした。脳波計測には ポータブル脳波計,前頭前野のヘモグロビン酸素化 状態計測には近赤外線マッピング法(NIRS),心拍 計測に は パ ル ス オ キ シ メ ー タ ー,感 情 評 価 に は State-Trait Anxiety Inventory-Form JYZ(STAI) と Visual Analog Scale(VAS)を用いた。測定は約
30分の安静の後,ガム咀嚼は自由なスピードとして 行った。被験者は20歳代の3名の成人男性とした。 結果:α 波は不快音刺激時においても認められた。 しかし,ガム咀嚼によってその値は増加する傾向で あった。被験者により部位および活動性に多少の差 異は認められたが,IADS 刺激により両側性に前頭 前野に活動が認められた。その活動はガム咀嚼に よって影響を受け活動に増加傾向が認められた。心 拍数はガム咀嚼により増加する傾向であった。ま た,STAI, VAS の値はストレス緩和傾向を示した。 考察:快状態においてはα 波の増大を見ることが これまでの研究で明らかにされている。また,前頭 前野の活動は感情,情動に対してその認知あるいは 制御に関わることが推測され,特にその左右のバラ ンスあるいは右側の活動性が影響するものと考えら れている。本研究の結果,ガム咀嚼は IADS による 不快音刺激時のα 波を増大させ,また前頭前野の 活動性に影響を与える可能性が示唆された。自律神 経系および心理学的検討においても不快な反応を軽 減する傾向が示唆された。これらの結果は,ガム咀 嚼が先行研究によるストレス緩和の結果を支持する ものであり,そのメカニズムの解明の一助となるも のと考えられる。今後被験者数を増し,より詳細な 検討が必要と思われる。